試作小説保管庫   作:zelga

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戦闘
 ↓
立ち直り


≪9/24追記≫物足りなかったので追加。更に全体的に1人称変更(次話から戻ります)




試作その5 第7話

米国のとある場所にある研究所。ここで今、1つの怪物がその巨大な力をふるっていた。

 

 

「ーーーーーーーーーッッッ!!」

 

 

その怪物の名は【アルビノ・ネフィリム】。

本来ならば黒い容姿をしている完全聖遺物【ネフィリム】を歌を介さずに起動しようとした結果、暴走した存在である。

 

暴走により人の制御を受け付けなくなったその存在は、周囲のものを破壊しようと手当たり次第に暴力をふるっていく。

 

そんな白き怪物の前に、一人の少女が立ち塞がる。その身には白銀の鎧をまとい、濃い亜麻色の髪を肩まで下ろしていた。

 

 

「みんな……。今まで、ありがとう」

 

 

少女の名はセレナ・カデンツァヴナ・イヴ。この研究所の被験者の一人であり、聖遺物【アガートラーム】の適合者でもある。

 

彼女は暴走するアルビノ・ネフィリムを止めるため、大切な人たちを守るため。

 

覚悟を持って、この場に立っていた。

 

 

「--------!」

「Gatrandis babel ziggurat edenaーーーきゃっ!?」

「セレナッ!!」

 

 

しかし暴走していても完全自立型の聖遺物。彼女の行動が自身への脅威と判断したのか、彼女へと狙いを定め、攻撃する。

 

暴走を抑えるための切り札ーーー絶唱を放とうとしていた彼女はそれに反応できず、なすすべもなく吹き飛ばされる。壁にぶつかり、その衝撃のせいかセレナは動けない。それに止めを刺すべく、アルビノ・ネフィリムは彼女へ近づいていく。

 

その様子を見ていたもう一人の少女がセレナに近づこうとするも、それは複数の大人によってさえぎられる。

 

 

「放して、このままじゃセレナが!」

「やめなさいマリア! 今あなたがあの場所に行ったところで、状況は悪化するだけです!」

「嫌、イヤ!!」

 

 

そう諫められるが少女ーーーマリアはまだ思春期を終えたばかりで心が幼い。それに大切なたった一人の妹を守りたいという気持ちが前面に出ているため、大人たちの声を聞かず暴れる。

 

そのやり取りとは裏腹に、アルビノ・ネフィリムは着々と目の前の少女へ近づく。そして目の前に立ち、口を大きく開く。

 

それを見てこれから起きる惨劇を、周りの人間たちは本能で理解してしまった。

 

 

「いや、セレナ……セレナ!!」

「っ、セレナ、今すぐアガートラームを手放しなさい! でないと諸共喰われてしまいますっ!!」

「---っ」

 

 

しかし恐怖によって動けない彼女はあっさりと怪物につかまる。

 

そして徐々に怪物の口は少女へと近づいていく。

 

 

「あ…………」

「セレナァァァァァァッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ミツケタ』

「……え?」

 

 

しかしてその惨劇は、また別の怪物によって覆される。

 

先ほどまで少女を喰らおうとしていた白き怪物。奴は少女から視線をそらし、天井を見ている。

 

その視線の先に、先ほどまでいなかった存在がいた。

 

 

「なんです、あれは……?」

「……わかりません。確かに先ほどまではいなかったのに、今この瞬間、奴はここに現れました!」

「なんですって!?」

 

 

白き怪物と対を為すようにその存在は黒かった。人型のようだが四肢は肥大化し、背部ユニットが翼のように広がっている。

 

そして右手にはその鎧と同じく黒の剣を持ち、周囲には鎖が浮いていた。

 

 

『ワレワレヲキョウイトミナシタカ、ナラバクルガイイ』

「------ッ!」

「……助かった、の?」

 

 

 

白き怪物は少女を手放し、吠える。それは敵を威圧するのと同時に、自身を鼓舞するかのような咆哮だった。

 

奴は感じ取ったのだろう。自身の聖遺物を喰らう本能に勝るほど、目の前の敵が強大な存在であると。

 

それを開始の合図とみなしたのか、黒き怪物は武器を構える。そして数瞬後、二つの存在は同時に動き出しーーー

 

 

 

 

 

『サァ、ワレワレトタノシモウ……サラナルトウソウヲッ!!』

「-----------------ッッッ!!!!」

 

 

ーーー白き怪物と黒き怪物、二つの怪物がぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……自覚したとはいえ、それほど衝撃だったかい?」

 

 

草原にて、事実を告げた存在は青年に問いかける。それに対し、うずくまっている青年は反応を返さない。

 

その反応を見て、ため息をはきながらその存在は近づく。するとそれを遮るかのように、青年の前に少年が立つ。

 

 

「……なんのつもりかな?」

『それはこちらの台詞だ、エンキドゥ。なぜ今、彼に真実を話した?』

 

 

怒っているのだろうか、険しい表情で問いかけている。それを見てエンキドゥは微笑を浮かべる。

 

 

「君がいつまでも話そうとしないからだよ。せっかく奴らの意識から切り離してやったというのに、自我がない振りなんかしちゃってさ」

『…………なにを』

「気づいてないとでも思った? あの中に奪われた連中が亡霊のようにさまよっているのは知っている。それに……」

『もういい。確かに今、私は奴らの支配下にない。だが、だとしても』

「いずれわかることだ。それにボクの適合者である以上、生半可な覚悟では力を振るうのは許さない」

『ならば暴走を抑えた後、彼が落ち着いてから話すべきだった!』

 

 

そう言ってエンキドゥの胸ぐらをつかむ少年。険しい表情である彼に対し、エンキドゥの表情は余裕のある笑みだった。

 

 

『彼はまだ脆い。このままだと彼は…………砕け散るぞ』

「その時はその時さ。ボク達はただ、彼がどう選択するかを待つだけだよ」

 

 

そう言ってエンキドゥは少年の横を通り抜ける。そして青年を通り過ぎ、木の根元に座り込む。

 

その様子を尻目に少年もしゃがんで青年の隣へ座る。そして青年を見ながら呟いた。

 

 

『駄目だ。まだ君は、いなくなってはならない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー君の名前は?

 

 

……わからない。

 

 

ーーーーどこから来たの?

 

 

わからない。

 

 

ーーーーなぜ君はここにいるの?

 

 

ワカラナイ。

 

 

ーーーー年齢は? お父さんの名前は?お母さんの名前は?妹の名前は?友達の名前は?好きな食べ物は?大切な人は?

 

わからないわからないわからないワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーどうして力を求める?

 

 

……それ、は。

 

 

ーーーーどんな力が欲しかった?

 

 

わから、な……い……?

 

 

ーーーー家族を消したノイズを、どう思う?

 

 

……許せない。

 

 

ーーーー家族を奪ったノイズに対して、どうしたい?

 

 

……復讐したい。大切な家族を消した奴らを一つ残らず、この世から消し去りたい……!

 

 

ーーーーけど、今の君ではそれは果たせない。

 

 

……そんなこと、わかっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、よこせ。お前が持つ力を。

 

 

ーーーーけど、今の君はもう消えかけだ。

 

 

全てをくれてやる。≪-----≫と言う存在の、そのすべてを。

 

 

ーーーー…………。

 

 

復讐さえ果たせるのなら、僕はもう何もいらない。

 

 

ーーーーじゃあ、どんな力が欲しい?

 

 

強大な力。たとえそれが運命だったとしても、それを打ち破れるほどの力だ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー君はどうして、ここにいる?

 

 

()は……ノイズをすべて消すために、ここにいるッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………っ』

「覚悟を決めたみたいだね」

 

 

草原にいる二つの存在は感じ取る。彼が行った選択を。

 

 

『お前はどうするつもりだ?』

「どうもこうもないよ。その結末がどうであれ、ボクは彼に従うさ」

『……そうか』

 

 

君はどうするつもりだい? エンキドゥの眼からはそう言った問いを感じ取る。

 

それを見た少年は、隣で眠っている青年を見ながら口を開いた。

 

 

『私もだ。彼がそこにいる限り、私は彼を祝福する』

「そう……それじゃあ、さっそく頑張ろうかな」

 

 

そう言ってエンキドゥは立ち上がり、目を閉じる。すると身体が輝き始める。

 

 

『なにをするつもりだ?』

「まあ、ボクの主となる彼のためにちょっとしたおせっかいを、ね」

 

 

 

 

 

 

 




戦闘の決着
 ↓
新章世界での一応の終結

こんな感じで。


場面切り替わる際のちょうどいい目印が欲しい。空白だとなんか違う気がする。

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