試作小説保管庫   作:zelga

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試作その1 第1話

 

 

俺がこの世界に転生してから、一年たった。

 

いや、別に冗談を言っているわけじゃない。本当に1年たったのだ。

あの後廃墟街から離れた俺は、世界中を旅することにした。と言っても言うほど大層なものではなく、気の向くまま色々なところに赴いている。

 

その途中、立ち寄った町々で情報を集めたが、この世界が『D・Gray-man』の世界であることはほぼ間違いないようだ。

『黒の教団』、『AKUMA』、『怪奇現象』。これらについて調べたところ、様々な情報が出てきた。そのうちほとんどが憶測によるデマだったが、一部の情報は信じれそうなものだった。まぁこれも、原作知識を持ってるからなんだけどね。

 

まぁ、そんなこんなで黒の教団の存在を確認したが、ぶっちゃけ俺は教団に行くつもりはない。なぜならひとつ疑問が残っているからだ。

 

それは、現時点で原作が始まっているのかどうか、ということ。現在の年号はわかるが、元々原作で詳細な年号は書かれていないため、今がどのあたりなのかわからない。

 

始まっているのなら問題ない。むしろ追々千年伯爵やノアの一族と戦うのだから教団に所属していたほうが何かと都合がいい。

 

だが、もし始まっていなかったら。まだ教団がイノセンス適合者たる『エクソシスト』を増強しようと非道な人体実験を繰り返しているような時代だったら。

正直そんな状態の教団に行くつもりはない。表向きは何もないが、裏ではそういうことをやってるとわかっているので、正直居心地が悪い。

 

まぁ原作後の場合もあるが、その可能性は低いと思う。その理由は後で言う。

 

まぁそんなわけで、この1年間俺は各地を転々とまわり、怪奇現象を調べて現場に行った。原作では『怪奇現象のあるところにイノセンスがある』とあったように、怪奇現象の原因がイノセンスである可能性があったからだ。そうだとしてイノセンスが可能なら回収し、後で教団へ行く際の土産にでもしようと思ったのだ。

 

ほとんどはデマだったが、とある3か所での怪奇現象はイノセンスが原因だった。そのうち2つは俺が回収し、もう一つは黒の教団所属のエクソシストが回収した。その時俺は顔を見られないよう行動していたので、あいつらに顔バレはしていない。

 

各地の怪奇現象に首を突っ込んだので、AKUMA共とはよく戦った。と言ってもほとんどが球状のレベル1で、特殊な形状のレベル2が時々、レベル3以上の奴等とは一度も出会ってない。

これが先ほど言った「原作後である可能性は低い」ということの理由の一つである。原作終盤になると、レベル1のAKUMAはほとんど出現せず、レベル2以上の奴らばかりだからだ。

 

本来AKUMAを倒せるのはイノセンスに適合した人間『エクソシスト』だけなのだが、俺はAKUMAと戦える。

 

というのも、俺の両腕にある腕輪、こいつがイノセンスらしいのだ。こいつの能力かどうかは知らないが、戦おうと感情を昂らせると腕輪が光り、薄い光の膜のようなモノが体を覆う。すると全身が軽くなり、AKUMAの血の弾丸をかわせるほど高速で動けるようになる。さらに、弾丸すら通さないAKUMAの硬い肉体を素手で貫けたり、手刀で切り裂けたりるようになったりするのだ。まぁこれも、AKUMAと戦い続けるうちにわかってきたことだけど。

 

そしてもう一つの理由であり、これのおかげで原作後ではないことが確信できる理由でもあることだが、それは現在の俺が闘っている目の前の人間にある。

 

そいつは男で、浅黒い肌色をしている。その筋肉質な体は2mはあろうか。上半身は異形に変貌していて、全身から雷を放電している。

 

「お前、さっきから逃げ回ってばっかりだなぁ。つまんねぇぞ」

 

そう言いながらさらに雷撃をこちらに放ってくる男の名はスキン・ボリック。

 

人類を滅亡させようとする千年伯爵と共に戦う『ノアの一族』の一人だ。

 

「うるせぇ。今お前をはっ倒す計画ねってんだよ!」

 

そう言いながら俺は雷撃をかわして奴の後ろに回り込み、奴の心臓を貫こうと貫手で突き刺す。が、浅く刺さるだけで奴の体を貫くには至らない。

 

「っ、AKUMAだって貫けるんだぞ。お前硬すぎだろ!?」

「無駄だ。お前の攻撃じゃ己は殺せない。【ライ】」

「無視ですかそうですか。っと!」

 

スキンが俺をつぶそうと雷を纏ったこぶしで殴りかかってきたため、すぐさま奴から離脱する。

 

「変だ」

「あ、なにがだよ?」

 

少し距離を取ったところに着地したら、スキンは俺に向かって疑問を投げてきた。

 

「今のやり取り、もう何度目だ。お前は己に何度攻撃した?」

「そんなの数えてるわけねえだろ」

 

少なくとも2桁はいってるとは思うがな。突破口がない今、こうやってチマチマ攻撃するしかない。

 

「そうか。15回だ、己にこぶしを当てた回数は。なのになぜ、お前は平然としていられる?」

 

そういうスキンの顔は、ただ純粋に疑問に思っているって顔だ。怒っているとか焦っているとか、そういうのじゃない。

 

「己は『怒り』を司るノア。この体躯には何百万ボルトもの高エネルギーが満ちている。わかるか?お前がそのこぶしを己に叩き込む瞬間、己のすべてがお前に流れ込むんだ。それなのになぜ」

 

お前は平然としていられるんだ?と。

 

「・・・あぁ、何かと思えばそんなことか」

「なんだと?」

「その答えは簡単さ。俺にその類は通用しねぇ」

 

さすがに多少は痛いけどな、ぶつける度に手がビリビリする。そう言いながら俺はさらに体に力を込める。すると腕輪がさらに輝き、俺の体を覆っていた光が電気を帯びる。

 

「・・・なるほど、そういうことか。お前のイノセンスの力は己と同系統のようだな」

「あぁ、そうだ」

「だが、お前が己を倒すには馬力が足りない」

「ハッ。俺に攻撃を当てることも、俺の攻撃をよけることもできないノロマがよく言う」

「・・・このままやるのは時間の無駄だ。そう思わないか?」

「同意だな。どうする、やめるか?」

「そんなわけがあるか。【ライ】【ライ】【ライ】」

 

そう言いながらスキンは力をためる。素早い俺を仕留めるために、避けれないほど膨大な範囲の雷撃を放つつもりだ。

 

うん、これを避けるのは無理そうだな。

 

「これで決めるぞ。お前が死んだら己の勝利だ」

「ってことは、俺が生きたらお前の負けだな。上等ぉ!!」

 

俺はイノセンスの力のすべてを防御に回す。すると雷光の膜が俺を中心に円状の結界のようなものを形成した。

 

「じゃあな、死ね。【雷】!!」

「死んでたまるか、出力全開っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい本部、聞こえるか?」

「あぁ、例の場所に着いたぞ。なんもねぇ。ガレキの山だけだ」

「・・・ん、なんだこいつ」

「・・・イノセンス。こいつが例のエクソシストかもしれないって奴か」

「おい、報告にあった例の奴を見つけた。たぶん間違いねぇだろ」

「・・・ッチ、わかった。一度こいつとイノセンスを持っていく」

「つまんねぇ。せっかくノアと殺り合うことができると思ったのによ」

 

 

 

 

 

 


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