特殊タグとかも活用していきたい
「はぁっ!」
まず一番近くにいるノイズに向かって右手を突き出す。まだ攻撃をしていないからか、目の前のノイズは実体化していない。
が、そんなの関係ない。今の俺は確証があったからだ。この攻撃は通る、と。
そしてそれは実現する。肥大化した右手は確かにノイズを捉えた。そのまま反撃を許さぬようにすぐ左手でもつかみ、持ち上げる。
「消え去れっ!!」
力を込め、その胴体を引きちぎる。これが生物なら血と臓物が散っていたであろうが、奴らはすぐ炭となって崩れ去る。
その様子を確認したのち、左右へ両手を突き出す。すると掌が光り出し、そこから数え切れないほどの紫電が放たれる。
それらはノイズ共に殺到し、視界に写る全てをなぎ倒していく。一見無制御に見えるそれだが、一つ一つがまるで意志を持っているかのようにノイズの胴体を貫いていく。
「今までとは比べ物にならないな……!」
それを実感しつつ、次の集団へ肉薄し、蹂躙する。
近接では以前からやっていた格闘術、中・遠距離では紫電による殲滅攻撃。些か慢心ととられるかもしれないが、ノイズ程度に引けをとるとは思わなかった。
「さて、どうするか……」
そう思考しつつ、上空からの刺突を受け止める。いつの間に近づいたのか、タコ型の中型ノイズが複数同時に攻撃していた。だがそれはあまりにも直線的だ。原始的なのだから当たり前だが、この姿の時なら完全に見極めることができる。
牽制と致命傷にならない攻撃は無視し、急所を狙って来る刺突をまとめて受け止め、握りつぶす。そして奴等をまとめて引き寄せようとした時、空中にあるそれに気づいた。
「……なるほど、こいつらは陽動でお前たちが本命か」
空中を浮遊している視界を覆い尽くすほどの球体。それらはおそらく地上にいるあの大量の人型ノイズが放った物だろう。俺を大きな脅威と判断して、自分たちごと爆破するつもりか。
「だが、まだ甘い」
両肩のユニットを展開する。円柱状のそれは二つに分かれ、間からタービンが高速回転する音が響く。それが最高潮に高まった時、そこから複数の光線が上空へ放たれる。
それらは光線だというのに直角に近い角度で屈折し、次々と爆弾を貫いていく。光線が貫き終えたのち、一拍遅れてすべての爆弾が空中で爆発する。
「そして……その力は、面白い」
その言葉とともに、背部に意識を集中させる。そして背部ユニットに付属している小型ユニットを展開し、それらをすべてあの爆弾を放った人型ノイズ向け、放つ。
西洋剣の刀身のような形状をしたそれは凄まじい速度で近づき、ノイズを貫いていく。このままいけば奴らは炭化して崩れ去るだろう。
だが、それを許すつもりはない。小型ユニットから伝わる感覚を元に、集中する。
明らかに致命傷と言える傷を負ってるノイズ。壊れかけの機械の様に振動しているが、その肉体が炭化する徴候はない。自身を突き刺しているモノを引き抜こうと動き始めた時、異変が生じ始める。
突き刺さっている場所から唐突に翡翠色の結晶が生えてきたのだ。最初こそゆっくりとだったが、徐々に増える速度は上昇していき、ついにノイズの全身を覆う。そしてそれは収縮していき、小型ユニットに格納されるように消えていった。
それを確認した俺は、ケーブルでつながっている小型ユニットのうち一つを呼び戻す。ケーブルを伝って元の位置に収納された時、頭の中に大量の情報が流れてくる。
「ほぉ……ならば、こう使おうか!」
そして再び肩のユニットを展開し、光線を放つ。それらは次々とノイズを貫いていくが、先ほどのとは違い軌跡が明確に残っていた。
「無に還るがいい、ノイズ!!」
空中に飛びあがった俺はそう言ってその光線を起爆する。軌跡のように残っていたそれはすべてが爆弾であり、それらが爆音とともにノイズを消し去っていく。
そして残響が消え、煙も晴れ切った時。俺の周りにはもう何も残らなかった。
それを確認した俺は降り立ち、力を抜く。すると身体は光に包まれ、それが消えた時には普段の格好に戻っていた。
「これが聖遺物の本来の力か……なるほど、確かにこれは扱い方を間違えば世界を滅ぼすな」
そう呟きながら、再び台座へと赴く。あれほど激しい戦闘があったのにもかかわらず、その台座はきれいに存在していた。そしてそこには先ほどまでなかったはずのものが静かに置いてあった。
それを確認するため目の前まで歩き、それを持ち上げる。見た目はただの鎖なのだが、そこから確かな力を感じる。
「これが完全聖遺物、エンキドゥ」
それを持ちながらつぶやく。先ほどの戦いで放出していたエネルギー、それがここの仕掛けを稼働させるのに十分な量だったのだろう。
「伝承通りならありとあらゆる姿に変わるはず。汎用性ならトップクラスだろう」
俺にこいつを扱えればの話だがな、と心の中でつぶやく。そしてそれを握りしめたまま、目をつむる。すると二つの聖遺物が共鳴するかのように激しく光り出す。
だがエンキドゥの輝きがいくらか弱い。まさかと思い僕の中に感じるエネルギーをエンキドゥに流し込んでいくと、明らかに輝きが増していく。
「そうか、こいつもまた想起しただけ。完全な起動状態には至っていないということか」
そう考え、さらにエネルギーを送っていく。もうすでに俺の中に残っている半分以上は流し込んでいるのだが、それでも完全な起動には至らない。
ここまで来たら後戻りはできないな。そう考え、残っているすべてを流し込み始める。限界が近いのか身体が重くなり、視界が点滅する。
「っぐ、うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!」
二つの聖遺物、それぞれの光が徐々に納まっていく。そして握りしめている聖遺物に力を込め、集中する。すると鎖が急激に伸び、まるで俺を守るかのように周囲に展開した。
「どうやら、うまく起動できたようだな……」
それを確認した時、体力が空になったのか足に力が入らず、思わず膝をつく。
「ハァ、ハァ…………。さすがに、きついな……」
大勢のノイズとの戦闘。初めての聖遺物の完全起動。あの世界で見た様々な光景。エンキドゥを起動させるための手段。一日どころかわずか数時間で起きたとは思えないほど濃密な時間だった。
とりあえず、次の行動は休んでからにしよう。そう判断し、エンキドゥが起動し続けているのを確認しつつ眼を閉じる。そしてゆっくりと意識が沈んでいき、そしてーーー
『まだだ。こんなものでは、我々は止まらない』
「なに?…………ガッ!?」
瞬間、胸元から強烈な輝きが発せられる。だがそれは今までのようなまばゆい光ではない。闇が具現化したかのような黒い光、それは衰えることなく輝き続ける。それとともに身体の重みがどんどん増していき、頭痛が激しくなってくる。
「ッグ、まさか……暴走……!?」
『そうだ』
そう呟いた時、頭の中に声が響く。それはここ最近で何度も聞いた声だった。
「ニヒトか……これもまた、君の祝福だとでも言うのか……!?」
『これは祝福ではない。この現象は、我々が我々である限り必ず起こりうること』
「なん、だと……? グアアアァァッ!!」
今の姿勢を維持する事も出来ず、あおむけに倒れる。いつの間にか光だけではなく紫電も発せられており、それは全身を包み始める。
『君はまだ力を理解できていない。理解しなければ、その先には消滅しかない』
「力、だと……!?」
『そうだ、そのためにも君は知らなければならない。我々の本質を』
あれほどの力、あれでもまだ全てではないのか。それを感じ取り、思わず身震いをする。
それがきっかけかはわからないがその瞬間、頭に声が響く。
『ワレワレハ、マモルチカラニアラズ』
『ユルスナ、ヤツラヲ』
『ニクメ、ヤツラヲ』
『ゾウオノホノオハヤマズ、ソノミガツキルマデモエツヅケル』
『ワレワレノチカラハ、ハカイノタメニ』
「ぐ……あぁぁ……!!」
抑えようとするがその抵抗もむなしく、徐々に意識が黒い意志に飲まれ始める。
「僕は……力が欲しいんだ……!」
『ソウダ、ソノタメニワレワレノゾウオヲウケイレヨ』
「もう失わないために……奴らから、守り抜くために!」
『ソノタメニヒツヨウナチカラハ、タダヒトツ』
あぁ、そうだ。その為に必要なのはーーー
『アタエヨウ、オオクノテキヲケスチカラヲッ!』
「……ハハッ」
ーーー1体でも多くのノイズを消す力だ。
その瞬間、光が急速に強くなり、ついに部屋全体を照らすまでに至った。
『見ているがいい。我々のーーーダインスレイフの力を』
かくして担い手は眠り、災厄の魔剣が目を覚ます。
突撃!お前が晩御飯
次はこんな感じ。
今更公式設定見たらさっそく矛盾が生じちゃった。まあいいや(適当)