試作小説保管庫   作:zelga

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遺跡侵入&チュートリアル



試作その5 第2話

「ここもハズレ、と」

 

 

様々な音が鳴り響くとある国の田舎街。そこのとあるカフェの一室で僕は出されたコーヒーを飲みながら資料の表紙に×印を付ける。

 

あの研究所を出てからはや数ヶ月。聖遺物探しの結果は、散々たるものだった。あの時に見つけた資料に記されていた聖遺物の数は5。そのうち今日で4つ目までの所在を確認できたのだが、どれも外れだった。

 

1つ目から3つ目までの聖遺物は米国が所持していることが資料に記されていたためすぐにわかった。

侵入して奪おうと考え、一度保管場所まで向かってみた。しかし、さすがに警備が厳重だったため、ばれた場合常に奴らに追い回される可能性が浮上したので取りやめた。

 

4つ目の聖遺物は遺跡に保管されていることが調査の結果判明した。そこで長い期間を使い、補完されている場所までたどり着くことに成功した。

が、あれは駄目だ。自立型らしいのでサポート要員として使えそうだが、巨体のため取り回しが悪い。さらに逸話上、夜になると行動できなくなるので今回は見送った。確かに強力ではあるが、拠点でもない限りあれを手に入れようとは思わない。

 

 

「……ハァ、せめてこいつが当たりであることを願おう」

 

 

ため息をはきつつ、残っているコーヒーを飲み干す。何もいれていないため苦味が強いが、このくらいの刺激がないとやってられないのだ。

 

そして俺は資料をしまい、カフェを出る。さすがにここで飛べば騒ぎになりかねないので、次の目的地に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここか。完全聖遺物『エンキドゥ』が眠る遺跡は」

 

 

国をまたいで移動した俺はようやく目的にたどり着く。飛行能力のおかげで数か月かかったであろう移動も数日で済ませることができた。

 

そう思いつつ例の遺跡を見上げる。遺跡というよりは墳墓に近いであろうそれは厳かな空気がにじみ出ていた。

 

 

「なるほど、現地民が近づかないワケだ」

 

 

まぁ俺には関係ないが、と呟く。

 

確かに入るのにためらってしまう程の凄味を感じるが、生憎とここをやめてしまうと聖遺物を追加で手に入れることはほぼ不可能になってしまう。

 

つまり俺にここに入らないという選択肢はないのだ。

 

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

 

 

そう考えつつ、遺跡の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほぉ」

 

 

遺跡に入って数分後。最深部を目指しながら進んでる途中、目の前の空間が歪んだと思ったら出てきた存在を見てそう呟く。

 

そいつは人型だが人間ではなく無機質な外観をしていて、顔だと思われる範囲には液晶ディスプレイのようなものが輝いている。そして両手は変形し、アイロンのような形状になっていた。

 

僕は奴をにらみつける。異形の存在、僕はそいつらの名前を知っていた。

 

 

 

ーーー認定特異災害、ノイズ。

 

その異形の存在の呼称であり、人類の天敵である化け物共の名前だった。

 

 

「前回の聖遺物探索の時もこいつらは出てきた。……どうやら、今回も当たりを引けたようだ」

 

 

この奥に聖遺物は存在する。それを確信した俺は目の前の障害を排除するために構え、意識を集中する。すると服越しだが胸元から淡い光が漏れ出る。

 

それを確認して、奴に向かって駆け出す。それに反応したのかノイズは身体を紐状に変換して特攻し、襲いかかる。 偶然か必然か、心臓めがけて正確に放たれたノイズの一撃を俺はただじっと見る。

 

そして一瞬で懐に入ったそれは、俺の胸を貫こうと近づきーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅い。相変わらず一辺倒だな」

 

 

ーーー胸に触れるその直前、両手でその体を止めた。序盤こそ少し押されていたが徐々にノイズに勢いがなくなり、片手で抑えれるようになったところで、右手を貫手にして奴の身体を貫く。

 

そして手を抜くとそこからひびが入り、炭化してノイズは崩れ去る。それを伏目に俺は自身の右手を見る。

 

 

 

人間はノイズに干渉できず、ノイズから触れられると炭化する。これは誰もが知っていることだが、先ほどのように俺はその常識から逸脱できる。

 

奴等に干渉できない理由は『位相差障壁』によるもので、ノイズは『現世に存在する比率』を操ることで物理的な干渉を減少させる。これにより一般的な兵器はほぼ無効化してしまうのだ。

 

だがこれにも弱点はある。物理的な干渉ができないときは、ノイズ共もまた干渉できないのだ。詰まる所、奴らが俺に接触しようとする瞬間、つまり攻撃してくる間だけはノイズに対し攻撃が通用するのだ。

 

かと言ってノイズに触れると炭化してしまうのだが、それの対策も出来ている。資料を読んだ結果わかったのだが、聖遺物の力を用いることで炭化せずにノイズに干渉できるらしいのだ。それを知って試したところ、光っている間は炭化せずに物理的な干渉を行えるようになった。

 

本来なら位相差障壁もある程度無効化できるらしいのだが、俺の場合は正常に起動しているわけではないらしい。なのでこういったカウンター形式でないとダメージを与えられないということだ。

 

 

「……さて、これはどうしたものか」

 

 

正面にいるノイズ共(・・・・)を見ながらつぶやく。狭いと言うわけではない遺跡の通路、そこには数十体のノイズがひしめき合っていた。

 

先ほども言ったが俺の戦い方は基本的にカウンターによる一撃必殺だ。だが目の前のノイズ共は一斉に襲ってくるのが見て取れる。つまりこの状況は俺に不利ということだ。

 

 

……さて、どうするか。そう考えつつ、軽く足踏みをする。するとわずかだが軽く高い音がした。下の空間が詰まっているのなら低く鈍い音がするはず。おそらくだが、この遺跡の続きと思われる空洞があるのだろう。

 

 

「この手しかない、か。上手くいってくれよ……!」

 

 

奴等のうち手前にいた数体が紐状になった瞬間、右手に力を込めて全力で地面に打ち付ける。すると当たった箇所からひびが急速に広がり、通路が崩れ、下へと続く穴ができる。力を加減していたので崩れるのは俺の周りだけだ。

 

そして襲ってきたノイズ共が頭上を通っていくのを見届けつつ、俺は暗闇の中へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ、これでは意味がない……!」

 

 

通路を急いで移動する。あの時の賭けは成功し、目論見通り下には通路があった。結果的に無事に奴らから逃げおおせたと言うわけだ。

 

 

 

……そう、逃げたのだ。俺は奴らから。

 

 

「なぜだ、なぜ完全に起動しない……!」

 

 

そう言いながら胸元を握る。

 

確かにこいつの力の恩恵でノイズと戦うことはできる。だがしかし、こいつの力はそんなものではないはずだ。

 

 

 

『おしえて?』

 

 

 

あの時、声が聞こえた時。感じた力の奔流はこれの比ではなかった。つまり俺はまたこいつの力を引き出せていないということだ。

 

 

「……考えたところで、この状況は打開できんか」

 

 

一旦思考を打ち切り、周囲のことに集中する。服装こそボロボロだが身体は十分に動き、体力もまだ余裕がある。ノイズも少数なら相手どれそうだ。

 

 

……ハ、ずいぶんと変わってしまったものだ。これもこいつの恩恵ということか。

 

 

穴から落ちた時、もちろん俺は無傷ではなかった。重症ではないが、軽いとも言えない傷を負っていたのだ。

 

だがしかし、今歩いている俺の身体は全快になっている。普通では考えられない回復速度だろう。

 

恐らくだが、これも胸元の聖遺物の恩恵だ。元々鍛えていたとはいえ、それはあくまで付け焼刃。目覚めた後の身体能力は比べ物にならないほど向上していた。

 

腕力は地面に穴を開けれるほどになり、視力は特攻してくるノイズの軌道を見極めれるほど。そして極めつけはこの回復力だ。中傷程度なら数分とかからず全快する。軽傷なら治る過程が目に見えるほどだ。

 

だがそれだけだ。これでは人間相手ならともかく、ノイズ相手では心もとない。だからこそ……。

 

 

「だからこそ、エンキドゥは絶対に手に入れる……!」

 

 

自身に言い聞かせるように呟き、通路の奥へ向けて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーそうだ、強く願え。

 

 

その思いが高まれば高まるほど。

 

 

我々の力は、強くなる。

 

 

 

 

 




お宝ゲット
 ↓
中ボス降臨
 ↓
お宝起動&戦闘
 ↓
【】BOU☆SOU


まさかの目標のうち1つしか進まなかったでござる。

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