絆side
僕が
「ウラルルグァァァ!」
木でできた謎の竜がいるだけ。そして、僕の闇によって前世界の記憶を取り戻した僕は知っている。
「葉…絶対助けるから!」
あれは葉のなれのはて。そして、この幻想郷を破壊したのは…僕だ。
前世界の僕は葉が消えることを恐れ、葉を無理矢理封印した。そして、葉と一緒に閉じ籠って生涯一緒に暮らそうとしたのだ。
でも、そんな無理な生活をしていたものだから、いつしか二人纏めて狂気に陥った。
結果、僕達は封印を破壊して迫り来る幻想郷の者達をなぎ倒し、さらには博霊大結界まで破壊してしまった。
また、狂った葉が全ての植物の力を吸いとって竜と化してしまった。狂った僕は人を信じられなくなって絆を否定する者へと変化していった。生き残った人達も絆を失っていさかいが絶えなくなった。
幻想郷は仕方なく僕の記憶を封印し、僕を別の幻想郷の紫のもとへおくった。
しかし、本来ならば思い出すことのなかった記憶は『
…助けたい。この世界の、僕達を。
そう思った僕は僕の世界とこの世界の間に結界をはって閉じ籠り、
さらに、竜の鱗が尋常じゃないほどに固い。
刃は通らず、魔法は跳ね返され、お札はいとも簡単にひちちぎられる。
また、何故か僕が戦っている間、僕の闇は戦闘に関わることはしなかった。
ずっと一睡もせずに1週間近くたった僕は体力の限界を迎えた。それに、もうお嬢様の元へ帰らねばならない。
僕の闇もそれを悟ったのか、僕をスキマで無理矢理元の世界へと送った。「これは俺の問題だから、もう来るな」という言葉とともに。
でも、僕は助けるって決めた。葉達と会えたのは嬉しかったけど、帰った日の夜にまた壊れた幻想郷へと戻った。
そこでは、余裕を見せる竜と肩で息をしている僕の闇がいた。
「大丈夫ですか!?交代してください!」
「…だまれ!これは俺の問題なんだ!俺がアイツをたすけるんだ!」
「………」
そうだ…僕の闇を助けたつもりではいたけど、まだ僕の闇は絆を信じられずにいるのかもしれない。
「………葉を助けるんですよね。一緒に戦いましょう!」
「なんで!?また裏切られる!もういやだ、こりごりだよ!」
「…………」
たしかに、前の世界で僕は友達になった人みんなに裏切られた。霊夢さんもお嬢様も、ビョウちゃんやスミレちゃん、ゆかりんさえ………
でも、僕はしっている。前の世界の僕と今の僕の違いを、前の世界の僕が犯した大きな過ちを。
横で竜がこちらに足音をたてて近づいてくるなか、僕はさけんだ。
「…裏切ったのは僕のため、皆のためだった。僕が葉とともに過ごせば、絆を結ぶ僕は皆から孤立してしまい、皆が絆を失うことを知っていた!」
「……うん、そうだ!でも、俺は葉を助けたかったんだ!」
「葉の気持ちを裏切ってまでですか!僕は正直、そのころの僕が追い詰められていたのだと思います!」
「追い詰められていた…?」
僕の闇が首をかしげた時、僕は僕の闇の胸ぐらをつかみ、叫んだ。
竜は目の前に迫っていたが、それにすら気がつかないくらい興奮して叫んだ。
「葉に、僕が告白出来ないまま葉が消えてしまうことが怖かった!」
「!?」
「結局あなたは、僕は我が儘だったんですよ!だから周りが見えてなかった!僕を裏切って悲しむ人の顔も、僕の我が儘で苦しんだ葉の顔も!」
竜が僕に向かって爪を降りおろすと同時に僕は声を震わせて言った。
「そうです!周りなんてどうでもいいんです!僕らは幻想郷の住人、助けたいなら助けましょう!周りに迷惑かけても、やりたいことができればいいんです!」
気がつけばもう竜の爪は視界を覆い隠していた。もう回避は間に合わない。怖くてとっさに目をつぶる。
そして、竜の爪が二人を襲った。
「導くよ希望、切り開け明日を!SPELL CARD“風符「ストームラッシュ」”」
すろとどこからともなく竜巻のような風が吹きすさび、竜の爪は動きを止める。
「待たせたね、絆君。」
「霊夜さん!?」
幻想五光輝の世界で出会った、霊夜その人だった。
「なんだコイツ?」
「こりゃ竜じゃねぇか!」
「ついに竜と刃を交えるとは…まさに外道だ」
「絆が二人?」
「いえ、どちらも絆よ。」
「難しいことはわかんないが、あれをぶっとばせばいいんだな?」
僕達の前には、幻想五光輝の世界にいるはずの霊夜さん達、そしてかつて植物異変を解決するために行動をともにした皆がいた。
「皆さん…お願いします、前の世界で犯した罪を許せとは言いません。どうか、彼らを助けてください。」
すると、皆は意気揚々とそれぞれの特物をかまえ、竜へと立ち向かってゆく。
「俺は葉を…助けたい。だから…俺はお前らが何しようが葉を助ける!」
「そういうの好きだぞ!アイツをぶっとばす!ぶっとばせば葉は助かる!やってやるぜえぇ!」
僕達は竜に立ち向かう。僕の大切な人を助けるために。