急展開とキャラ崩壊なので注意です。…コラボしてくださった神凪さん、すみません。
《霊夢がスキマに落とされる数時間前》
〈絆side〉
一月前から、寝ている時に同じ夢ばかりみます。僕自身の闇、アンチ・ボンドが苦しそうに、悲しそうにしている夢。
闇だとはいえ、それは僕自身。見捨てるなんてできない。助けようと近づくと闇に殴られて…夢が終わる。
葉やゆかりん、お嬢様に相談もしたが、結局何もできなかった。
どうにかして助けてあげたいけど、僕は何もしてあげられない。
僕は、僕を助けたい。
僕に出来ることは、ひとつだけ。
これは危険な方法だけど、これをするしか方法がない。
僕は、出来ることを行動に移した。
『絆の力《アンチ・ボンド》』
瞬間、意識が暗転する。その左眼には“Э”と赤く記されていた。
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…………………
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……スベテ、オモイダシタ
キズナ…カナシイダケ。
トモダチ…ウラギリモノ。レイム、マリサ、サクヤ、レミリア、ウドンゲ、モコウ、ユカリン、ミンナ…ミンナボクヲキラッタ。
シマイニハ……ダイスキナ……ハニモ、ミステラレタ
ボクハ、ドウスレバイイノ?
ダレモシンジラレナイ…ウラギラレタクナイ…
ボクハダレモシラナイ!!!!
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《スキマの中》
〈霊夜side〉
気がつくとスキマの中には多くの人がいた。目の前には赤と白の脇をだした巫女服を着ている女の子、黒と白の魔法使い、青いメイド、赤いもんぺの女性、そして緑色の少女…
更には魔理夢、ディア、ダークまでいる。
でも、
でも、どこかであった気もする。
あれ?魔理夢やディア、ダーク…俺は何故この人達の名前を知っている?初対面のはずだ。
とにかく、魔理沙と思われる人物に声をかけることにした。
「魔理……夢?」
「なっ!?お前は何故私の名前を知っている!?」
すると魔理夢は俺に向かっていきなり銃をつきだしてきた。
射たれる。
そう思った時だった。
「皆集まったようね…」
声につられて振り返ると傘をさした女性が立っていた。不信感を覚えていると、俺達の足下が急に輝きだす。
「みなの失われた絆を取り戻せ!境符『疑いと信頼の境界』!」
すると雷にうたれたような衝撃と同時に、記憶を取り戻す。
そうだ、霊夢に魔理沙、咲夜、妹紅。皆俺達の大切な仲間だ。
「「「「「うっ!!!」」」」」
どうやらスキマの中の人達全員が記憶を取り戻したようだ。そして、魔理夢は慌てて銃を引っ込める。
「あ、あぁぁぁ!?兄貴、スマン!」
「まぁ仕方ないよ。記憶がなかったんだから。」
魔理夢が謝るが、そんなに気にしてはいない。気になるのは…
「どうして俺達は記憶を失ったんだ?」
「悪いけど説明している時間がないし、私もよくわかってないのよ。わかっているのは、こうしている間にも幻想郷が崩壊しつつあるわ。
あるところでは吸血鬼が本気の姉妹喧嘩を始め、あるところでは大量の幽霊が人里を襲い、あるところではウサギが月を襲い、あるところでは神様同士で戦争が起こり、あるところでは天狗同士の争いがおこり、あるところでは仏教と道教の大きな争いが起こり、あるところでは道具が人や妖怪を殺めてしまい、あるところでは面霊気が荒れ狂い、あるところではオカルトの力で結界が破られそうになったり…
色んなことがまとめて起こっているのよ。
スキマの奥に、このことをよく知る人がいるから、ついて来てちょうだい。」
紫が真剣な顔で話している。扇子を使わず口元が見える状態で。それほど、危機的な状況なのだろう。
よくわからないが、確かなのは絆のいた幻想郷が崩壊しつつある。
皆は黙って紫についていくことにした。
紫の先導で着いたのは宇宙のような神秘的な空間。そこには
「ゆ、紫さんが二人?」
「まさに外道だな。幻想郷の賢者というだけでも十分強いのに、分身さえ出来るとは…」
「これは…狐が心配だな」
「疲労が二倍だぜ」
僕が唯一名前を知らない緑色の少女が困った顔で戸惑い、ディアは苦笑い。そして妹紅と魔理沙は主が増えた狐を心配している。反応は多種多様だ。
しかし、俺から見てこの二人の紫は語り方や仕草、雰囲気などが全然ちがう。俺達を引率していた紫よりもこの空間の紫は幼く感じる。
すると俺達の目の前にいる紫がもう一人の紫の紹介をする。
「彼は『幻想郷』そのものよ。あなた達の所に人形を配置したのは彼よ。」
「ふーん。あの面倒な人形はあんたのものだったのね…」
「私の八卦炉を返してもらうぜ!」
「私の懐中時計やナイフもね。」
その紹介を受けた東方守絆然の住人達は皆一斉に幻想郷に対して攻撃を仕掛けるが、全てすり抜けてしまう。
「ごめんね、皆にはやってほしいことがあるんだ。それをしてもらう前に皆に死んで欲しくなかったから、人形を置かせてもらったんだ。」
どうやら何か頼みごとがあるらしい。
これは聞くしかない。
「やって欲しいことっていうのはね…絆君が、閉じ籠っちゃったんだ。彼を、解放してくれないかなぁ。」
絆が、閉じ籠った。彼は明るい性格から、よほどのことがない限り自ら閉じ籠るような人では………
いや、そういえば絆は大切な人を失ったショックで部屋から出てこなくなったことがある。
絆は繊細な所もあるのだ。そしておそらく、それを支える存在として葉という妖怪がいる。
「えっ…でも昨日いっしょに寝ました……」
「なんだか前にも似たことがあった気がするぜ」
「………なんだか嫌な予感がするわ」
「全く、最近いないと思ったら何してるのよ」
「………」
絆の世界の住民の反応は皆違った。
緑色の少女…おそらく葉だろう。彼女は絆と会っていたらしい。
幻想郷は話を続ける。
「彼は、過去にとある事情で大きな闇を抱えていた。でも記憶に封印をしたから今まで安全だったんだ。…“Э”によってその封印が破壊されない限りは」
「闇……?」
緑色の少女がつぶやく。
でも俺達は闇に見覚えがある。
考えたくはない。でも、もし考えている通りだとしたら…
「相棒、もしかしてアンチ・ボンドは…「アンチ・ボンドは、元々絆の封印された記憶なのか…?」…相棒に台詞とられた」
「そうだね、君たちはЭによって無理やり引きずり出された彼を知っている。」
やはり、あれは元々絆に潜んでいた闇だったんだ。
「絆さんの闇……あっ!?」
葉は何か思い当たることがあったようだ。
「夢に自分の闇が出てくるって言ってました!苦しそうだから助けたいって!」
「そう言えば言っていたわね、そんなこと。でも夢だから私達は何も出来ないわ。夢に干渉するなんて、バクでもない限りそんなことは不可能よ。」
「それって、まさか!?」
もう思い当たるのは一つしかない!
「相棒、絆はもしかして「絆の闇との絆の力をつかったんだ!」…また台詞とられたー!」
「そう。闇というより、黒に近いのかもしれない。底なしに大きくて、暗い闇。彼の秘密を知った絆は一人で、それも自身に封印術をかけた状態で閉じ籠っている。」
それが本当なら、つまり…
「絆君は自ら閉じ籠っているんだね。闇というより黒に近いのは、絆君は過去に犯したおおきな罪を背負っているということ。」
「話が早くてたすかるよ。閉じ籠っている場所は…あそこだ。」
幻想郷が指さした先は…宇宙に出来ている巨大な穴、ブラックホール。
しかし、ここで咲夜が不満気に口をはさむ。
「まぁ、だいたい言いたいことはわかったわ。絆を説得して連れ戻してほしいのよね。」
「そうだよ。」
「これと異変はどんな関係があるのよ?」
だいたい俺も同じような疑問を抱いていた。絆が居なくなったからといって、各地で争いが起こるのだろうか。
「…絆はみんなとの縁の糸。それは出会いや別れにその人との思いで、そこで得た感情なんだ。絆君は無意識にその感情を結び、簡単にはほどけないようにしている。でも、自身に結界を張った上で世界の境界に引きこもっちゃった。」
俺は簡単そうで難しい幻想郷のたとえに頭を回転させる。
絆は糸…そして絆君は糸を結ぶ者…
「そういうことか。」
「相棒、全くわからん。解説頼む」
一人納得をしていると横からダークが耳打ちしてきた。幻想郷の言い回しと彼は相性が良くないようだ。
「えっと、絆君は人が伸ばした絆どうしを修繕していたんだ。
では絆君がいなくなればどうなるか。きっとがむしゃらにとばされた糸が結ばれなくなるだろう。するといろんなところで絡まって…」
「なるほど、ぐちゃぐちゃの結び目が出来る。」
「うん、なるほど。わからん!」
本当にダークは幻想郷の言い回しと相性が良くないようだ。
「あーっと、簡単にいうと、絆がぐちゃぐちゃになったことが今回の異変なんだよ。」
すると幻想郷が拍手しながら笑顔ではなす。
「ピンポーン、だーいせーいかーい。じゃあ、絆君をよろしくね。」
「私からもよろしく頼むわ。私はあなた達の絆を管理しないといけないから、一緒にいけないの。あ、このスキマを使えば、あのブラックホールの中に入れるわよ。」
「あぁ、任せろ!」
こうして、レイ達は幻想郷と紫に見送られながら絆の元へと向かうのだった。
ー全ては、絆を取り戻すために
あぁ、何故かダークが残念キャラに…