ヘルサレムズ・ロットの中心で愛を叫びたい 作:三代目盲打ちテイク
クリスルートが半ば確定だったのでクリスルート開始。
レオの選択は――。
――クリスさんについていく。
「じゃあ、僕、クリスさんの方に行くよ」
「はい、ではクラウスのおじ様。お気をつけて」
「うん。二人とも気を付けるのだぞ。何かあればすぐに呼ぶんだ。遠慮はいらない」
そう言ってクラウスはエレベーターへ乗り込んで行った。
「では、私たちも行きましょうかレオさん」
「うん」
二人でエレベーターに乗り込む。ゆっくりとゆっくりと下へ降りていく。エレベーターの中は狭い。ふとすれば彼女の匂いが感じられる。
花のように素晴らしい匂い。それにレオはドギマギする。更には、連鎖的に彼女の胸を揉んだことなんかも思い出したりなんかして赤くなるレオ。
(おおおお、おおぉお、落ち着くんだレオナルド! 平常心だ、平常心!)
何やら念仏でも知っていれば唱えそうなくらいの勢いで平常心と唱えまくるレオ。
「どうかなさいましたかレオさん?」
そんなレオの顔を覗き込むようにしゃがんでレオの顔を見るクリス。
「なななな、なんでもないよ!」
「そうですか? 何かあれば言ってくださいね。レオさんは大切な人ですから」
「は、はは、はい!」
落ち着け、落ち着くんだ、レオナルド! 大切な人って多分友達とかそういう奴だから。だって、いつもクリスさん、言ってるじゃないか。
愛しい人だって。彼女、頑張ってる人が好きらしいし。なんか、人間がみんな大好きとか言ってたし! だ、だから期待するなよレオナルド!
とそう言って期待するんじゃないとか、色々と心の防波堤を築く。そんなことをやっているから一向に落ち着けない。
「大丈夫ですか? 顔が赤いですよ? えっと、こういう時は――」
そう言って、
「ふぁ!?」
コツン、と自分の額とレオの額をくっつけるクリス。
「熱は……少し高いですね。本当に大丈夫ですか?」
「あ、あああ、あのあの、な、ななな、なにを?!」
「? これはですね。こういう時はこうすればいいとお友達に聞きましたので実践してみました。えっとここから押し倒せと言われたのですが、狭いので無理ですね。まあ、ベッドに寝かせるためだと思うのですが、ここにはないから無理ですね。その次は添い寝でしたっけ。何やら食っちゃいなさいよぉ、とか言われたんですけど、どういうことでしょうか?」
「そそそそそそ、そうだねえええ!」
ここがエレベーターで本当によかった! と思うレオ。というかもういっぱいいっぱいなレオナルド君。とにかく早くついてくれと、願うばかりだ。
そして、そんなことを教えた馬鹿な友人を盛大に
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「クシュ――!」
「風邪かいアリギュラ」
「んー、誰かが噂してるんじゃなぁい?」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
そんな永遠にも感じるほどの時間――実際は数分――でエレベーターは下降を終了した。エレベーターが降りて扉があいた瞬間、そこから感じられたのは異常な熱気だった。
女性の甲高い歓声が響いている。それから聞こえるのは拳打の音。
「ここは?」
目の前に広がるのは檻とボクシングリングのようなフィールド。そこで戦う一組の女たち。レフェリーの声が会場内にガンガンに響いていた。
「地下闘技場だよ」
ああ、なんてあの人向きの場所なんだろう。とレオは思う。中は繋がっていると言っていたが、クラウスの姿はない。どうやら、隣にももう一つリングがあるらしい。いるとしたらそっちだろう。
「女の人しかいませんねぇ。どうやら、こちらは女性専用の闘技場と言ったところですか」
そうクリスが納得して、とりあえずザップを探そうと一歩踏み出したところで、スポットライトが彼女に当たる。
「!?」
「クリスさん!?」
そして、あれよあれよという間にリング上へとあげられるクリス。
「レディイイイイイイイス、エン、ジェントルメエエエンン! ディスイズthe! ライブラ! クリスチャン・ローゼンクロイツゥウウウ!」
「はい?」
「ようこそ、特別ゲスト! ようこそ!! 女による女と強い女が大好きな草食系男子の為のステゴロの祭典へ!! ここがエデンだァ!!」
「えっと、あの? 私、ザップさんを捜しに来ただけなんですけど」
「そうかいそうかい。ルールは2つだ。その一、武器は使うな。その二、一対一で戦え。なに、安心しな。お前さんが戦えばザップに会える」
「そうですか」
クリスは納得したようにうなずいた。
「クリスさん!!」
マズイ。マズイぞ。レオは慌てる。とにかく、マズイ。術師である彼女が肉弾戦をしているところなど見たことがない。
明らかにこれは罠だ。いくら術師としてクリスが優れていたとしても、ここは先のルール説明でもあったようにステゴロ。つまりは素手で戦う場所だ。
クリスとは相性が悪すぎる。だから、なんとか止めようともがくが、レオでは届かない。
「大丈夫ですよ。さて、エモノの確認ですか? どうぞどうぞ」
そう言って、首の機械を渡す。
「ほう、術師か。まあ、関係ねぇ。けっこう、けっこう。さあ、始めようか!」
その言葉と共に観客のボルテージが上がって行く。
「ライブラ、実在したのねぇ」
「あの子術師だってよ。まさか、それでここに来ているだなんて、馬鹿じゃないのかしら」
「そうね、私の方が可愛いわ」
「…………」
「…………………………」
とてもつなく巨大な肉体を誇る異形女性たちがそんな会話をしている横で、対戦相手が入場する。すらりとした黒髪の凛とした女性。
「エルザだ」
面白くなってきた。と観客たちが興奮する中で賭けが行われる。オッズはエルザが1.06。クリスが3。レオはというと。
「あ、クリスさんに20ゼーロ」
ちゃっかり参加していた。
「って、そうじゃないよ。どうしよう。大丈夫って言っても」
その間もリングの上では戦いが始まろうとしていた。
「あなた、本当に大丈夫?」
「何がです?」
「あまり、こういう場所に慣れている風でもないし、術師って感じよ。大方、ザップに嵌められたんじゃないの? 今ならまだ怪我しないで済むわよ」
「あー、そうですね。これは確かに大変そうです。ですが、それと何の関係が? むしろ、私は今、感動しているくらいですよ。自分の不得意分野での戦い。試練です! あなたとて異界人の中で戦ってきた一人なのでしょう。私は、あなたみたいな人が好きです。だから、全力でやりましょう」
「…………」
そんなクリスの言葉に一瞬、きょとんとしたエルザは、大笑いして
「いいねぇ。それじゃあ、まあ、お互い後悔はなしってことで」
「はい」
「開始だあああ!」
リングがなると同時に試合は始まる。
まず動いたのはエルザ。すらりと長い脚から放たれる蹴り。顔面狙い。それに対して、クリスは腕を脚と顔面の間に置いて防御する。
骨を伝わる衝撃は、強い。その防御の上から、エルザは足を振りぬいた。
「クッ――」
そのまま返す。振りぬいた足とは逆方向に上半身を回して、その勢いのまま踵が戻ってくる。流れるクリスの側頭部に踵が入る。
打撃の鈍い音が会場に響き渡った。
「休ませはしないわよ?」
下ろした脚で踏み込む。手を広げて、クリスの顔面を掴み、そのまま地面へと叩き付けた。観客が沸く。浮き上がる彼女の身体を蹴り上げて、その腹に拳打を叩き込む。
ロープまで飛ばされるクリス。
「ツゥ――、やりますね」
「ほら、どうしたの? その程度?」
「まさか」
そう言って、彼女はコートを脱ぎ捨てる。
「この程度、このくらい。ああ、あなたから見れば私はそうなのでしょうね。拳打の基本も、構えも私は知りません。しかし、それがどうだというのですか。
ここは私とあなたの二人舞台。ならばこそ、共に踊りましょうよ。心行くまで、ここはそういう場所なのでしょう? 共に全力で、さあ、あなたの全力を私に見せてください。私もまた、あなたに全身全霊で挑みましょう。殴られたのならば、相応に殴り返して魅せましょう!」
そう言って踏み込む。拳を握り、強く、ただ強く基本など知らないのだから当然だ。全力。全てにおいて、ただ全身全霊で拳を叩き込むのだ。
エルザは当然防御。そのままカウンターで拳を叩き込む。それにクリスは笑みを浮かべた。ああ、良いぞ。もっとだ、もっと。そういうように。
足など使わない。そもそも、使えない。足を止めての殴り合い。そんな様相を呈す。
「お、おお!」
「おおおおおおお!」
観客もまた、そんな泥臭い試合に歓声を上げるのだ。派手な試合もいいだろう。それもまた好みだ。だが、しかし、時にはこのような泥臭い試合も見たくなる。
人の欲とは恐ろしいもので、食べ慣れたジャンクフードが如何においしくても、バリエーションが欲しくなるのだ。これもまたニーズ。
拳打によってボロボロになっていく美少女とあれば誰でも興奮するだろう。その手の欲求を持っている者らはここには多い。
だからこそ、ここは女の闘技場。派手な試合は隣の男の楽園でしているが良い。ここでは、ここでしか見られないものがあるのだ。
打、打、打。その中でエルザはクリスの変化に気が付いていた。拳打に重さが乗って来ていた。
「なるほど、こうですね」
試合の中で彼女はエルザの動きを見ていた。何度殴ろうとも、蹴ろうとも、彼女は視線を外さない。エルザの全ての挙動を見ていた。
そして、格段に彼女の動きが良くなってきている。
拳閃が鋭くなっていく。一撃ごとに研ぎ澄まされていく。無駄の多い動きの流れから無駄が消えていく。教化されている。
「なるほど、ザップめ」
「さあ、もっとです、もっと!」
振りぬかれた拳。頭が後ろへと流れる。
「さあ、その程度ですか! もっとやりましょう! あなたはこんなものではないでしょう!」
いつの間にか試合の主導権が逆になっていた。
「舐めんじゃないよ!」
ならば見せてやろう。本気と言うものを――。
そして、勝利のゴングが鳴り響く。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「なかなか、やるじゃないの」
女性拳闘場のオーナーの女性がクリスが勝利した試合を見てそう言う。筋骨隆々というか恰幅の良い女。
「チッ、旦那の方は旦那の方で、めちゃくちゃだし。虹色頭の方は、なんだありゃ、もっとぼこぼこにされると思ったのに何やってんだ」
「試合の中で成長する。まるで、どこかの主人公みたいじゃぁないの。いいねえ、次の試合を組みな。盛り上がるやつをねぇ」
「任せろよ」
とは言うものの、ザップとしては当てが外れている。クラウスの方はまだいいとして、クリスの方はまったくもって予想外だ。
エルザ相手でもぼこぼこにされるだろうと踏んでいたのだが、どういうわけか、適応してきている。先ほど勝利したのがその証拠だろう。
華々しい勝利ではないが、それでも勝利したというのが重要だ。術師としての能力をザップは認めているが、彼女の格闘能力なんてそんじょそこらのガキと一緒くらいだ。
それがなんで拳闘の達人相手に勝利しているのかと言いたい。
「頼むぜぇ、俺の為になぁ」
良いから負けろ。そう祈るザップ。どこまでも屑であった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「さあ、やりましょう!」
一回戦が終了し、ぼろぼろのクリスは満面の笑みでレフェリーにそう言った。
「ちょっ! クリスさん!?」
「あ、レオさん、預かってて下さい」
そう言って、スカートを脱いでレオへと投げる。
「わぷっ!? え、あ、な!?」
「ふぅ、動きやすくなりました」
スッパッツ姿になりながら拳打を握る。
「さあ、やりましょう」
「オーケーオーケー! あんたのサービス精神もいいじゃないの! それじゃあ、二回戦と行こうぜぇええ!!」
観客が沸いていく。次の相手は筋骨隆々の異界人。
「レディイイファイッ!!」
ゴングと共に突っ込む対戦相手。クリスを優に超える太さと長さの腕から極大の拳が放たれる。トップスピードから放たれる拳打。
この一撃を鍛え上げてきたのだろう。開始直後に一気にトップスピードへ持っていく踏み込み。引き絞られた弓のような拳。鍛え上げられた肉体は女ではなく、まさに戦士のそれだ。
岩すら砕く一撃。いや、アイアンパンチというリング名からして鉄すらも砕くのだろう。ああ、見てみたい。その輝きを。
ゆえに、その一撃をその身でクリスは受ける。まさに鉄を砕く一撃。めきめきと嫌な音が響き渡る。
「クリスさーん!?」
「ふふ」
その中でも彼女は笑っていた。
「ああ、ごふっ、素晴らしい! 気持ちがいいですよ! 貴方の一撃はなんて素晴らしい! 磨き上げてきたのでしょう。あなたの実力見せてもらいました!
何者をも粉砕しようと。ならばこそ、私も全身全霊でお相手します!! まさか、避けるなどしないですよね! あなたの勇気を私に見せてください!!!」
もはやなんで立っているのか、と言うくらいのダメージは喰らったはずだ。少なくとも、それくらいの一撃であった。
だが、クリスは立って拳を握りしめて振りかぶっていた。引き絞られた弓のように。それは先ほど見た彼女のそれのようで。
良いから、全力で撃ちあおう。そう言っている。ぐちぐちと避けながら戦うなど、そんなことしないだろう。全力で撃ちあおう。
そう言って、全力で殴りつけていた。その一撃、一撃ごとに、重さを増しながら。その一撃一撃ごとに鋭さを増しながら。
クリスチャン・ローゼンクロイツは、次第に会場の全てを魅了していった。
「勝者、クリスチャン・ローゼンクロイツぅううううう!!!」
拳闘の夜は始まったばかり。
テンション上げて書き上げた。
クリスもまさかの殴り合い。
本当は魔術合戦にでもしようと思った。でも、甘粕さんならばそんな逃げはしない。
というわけで、クリスも殴り合いに参加。女の為の女による拳闘の祭典へようこそ。これがクリスルートだ。
というわけで、滅茶苦茶な殴り合い。クラウスさんと違って近接戦の素人なので一撃で倒すなんてことは出来ません。
ゆえに、順繰りに教化していきます。
彼女の学習能力は高め。というか、相手の方が今は圧倒的に強いので覚醒コンボ入ってます。能力値にプラス補正が働いています。
学習速度が倍増しています。
つまり? 諦めなければ夢は叶う状態。
もっとわかりやすく。つまり、戦えば戦うほど強くなる状態。
ザップはやらかしております。クリスを一回戦目でぼこぼこにする計画だったのに、逆に接近戦の訓練をしているという結果に。
はい、ザップが死ぬことが確定しました。
あ、クリスが脱いだ服は全てレオが回収してます。誰かに拾われた残り香を嗅がれることはありません。
レオが全て嗅いでます。……冗談です。
ちなみに、脱げるのは後二枚。現在スカートを脱ぎ捨て、スパッツ姿に。あとは上にシャツ。二回戦目でベストを脱ぎ捨てます。
三回戦目ではシャツ。その下には、一応Tシャツ的なものを着ているので直後に下着が見えることはないです。
てか一番にスカート脱いだのはルーレットのせいです笑。