ヘルサレムズ・ロットの中心で愛を叫びたい 作:三代目盲打ちテイク
ある昼下がり。
「今日こそ、その顔ぶっ飛ばしてやるぜえええ、この虹色頭あああああああ」
「緑の術法――てい」
ドガッ、バキ、グター。そんな擬音が似合うくらい簡単に虹色頭ことクリスチャン・ローゼンクロイツに襲い掛かったザップ・レンフロはコテンパンにされた。
レオが見た限りでは、風の拳によってバッキバキにされているのだが、
「ぬおおおおお」
呻いて悔しがるくらいには元気のようだ。
「あのザップさん、なんでクリスさんにまでちょっかいかけてるんすか」
今まではクラウスに問答無用で殺しに行っていたような馬鹿なので、これもまた同じ風に考えれば別に問題はないのだが――いや、問題だらけだが――クリスにも行くようになったのが気になったのだ。
問われたザップは無駄にキリッっとした良い顔で、
「そりゃ、お前、この頃、俺のライブラ内でのヒエラルキーが落ちまくってるからだよ。新入りに負けてるなんぞあっちゃならねえ」
「な――!?」
あのザップさんがヒエラルキーだなんて、そんな難しい言葉を知っているなんて、と驚くレオ。
「てめぇぶっ飛ばすぞ!」
「あ、しまった。つい、本音が」
「お前、回復したらぎっしぎしに泣かすかんな!」
いや、まあそれは置いて置いて、本当のところはクラウスに襲い掛かるのと理由は一緒。強い相手だから。一度は勝っておかないとプライドが許さないのだろう。
なんだかんだ言いつつクリスのことを認めている証拠だ。そうでなければ女に本気で襲いかかるなんてないはずである。
クラウスにぶっ飛ばされ、クリスにもぶっ飛ばされるザップ。そんな光景がいつも通りになりつつあるライブラの昼下がり。
「あれ?」
今日は何か違和感があった。そして、レオは直ぐに気が付く。
「今日はザップさん、暴れてないんですね」
「ん? そう言えばそうだな」
コーヒーをすすりながらスティーブン・A・スターフェイズが言う。
「心折れて諦めたに一票」
臆面もなくサムズアップで言うのがチェイン・皇。
「いやいや、まさかのあのザップさんですよ?」
「そうです。私の尊敬するザップさんが諦めるわけありませんよ」
あれで尊敬できるとかすげー、とか思うレオだったが、そこに電話がかかってくる。噂をすればなんとやら。ザップ本人からの電話だ。
出てみると
「おおおおおおぉぉぉおいいいぃぃぃぃぃ、旦那ぁー、虹色頭ぁー、そこにいるかぁぁぁ」
なっっっさっけない声色でクラウスとクリスをザップが呼んでいた。刃物やら銃火器やらを突きつけられて今にも殺されそうなザップがスマホの画面に映っている。
「…………」
「…………」
「…………」
そのあまりに嘘くさい画面に閉口するスティーブ、チェイン、レオの三人。その間もザップはお構いなしに棒読みを更に棒読みにした感じで、
「おれ、ころされちゃうよー、助けてくれってつたえてくれよぉおおお。ウワーン、ウワーン、ウワァァアァン」
ここまで来ると誰も信じないだろうというくらい清々しい棒読みだ。こんなものを信じる奴はと言えば、
「行くぞ、レオナルド君! ザップが危ない」
「行きますよ、レオさん! 私やクラウスのおじ様に倒されても向かって来た不屈の彼が、この程度で助けてくれという。そんな腑抜けた根性を叩き直しに行きますから!」
(やっぱり、行くんすねえええええ)
まさかの三人乗りで指定されたポイントへ向かうクラウス、クリス、レオの三人。絶対あれ、そんなに大変な事態じゃないよ。むしろ2人を呼び出す為に仕組まれているに決まっている。
しかし、二人はそんなこと微塵も疑っていない。片や本気でザップを助けに行こうとし、片やあの程度で助けを求めてきたザップの性根を叩き直しに行こうとしている。
どちらも本気だ。巻き込まれたくないのか、チェインとスティーブンは早々に退散してしまっているので、必然彼らを送るのはレオの役目。
燃えに燃えている二人を止めることなどできず、後ろにクラウス、その後ろに器用に立っているクリスというなぞの一人乗りに三人タンデム状態。
なんかもう凄い状態のまま爆走中。爆発する地面。地面を走るチェーソーの刃。今日も今日とて人死に満載。死亡確率120パーセント。
今日もヘルサレムズ・ロットは平和です。
「――あ、これ、死んだ」
「フン!」
「えいっ!」
何やら絶望するレオだが、この二人には関係なしとばかりに、容易く越えていく。彼と彼女の目標はザップのみ。
このようなところで足止めなどされている暇などないのだ。そのせいで、また一つ世界滅亡規模の事件が解決していたりするのだが。
「……ここ、見たいですね」
そんなこんななんやかんや。ザップが捉えられているらしい倉庫街的なところにやってきた。ここに来るまでに雨数十の世界がヤバイ案件を結果的に処理してしまった二人は、見張りの異界人の所へと向かう。
「あの」
「あ?」
明らかに凄んでいる異界人。あわや乱闘か、と思われたが、
「私、こういうものでして」
クラウスが名刺を差し出した。
「ズコー!?」
「入んな」
レオがすっころんでいる間に話は進んで中に通される二人。レオも慌ててついていく。
「えっと、私が右で」
「私が左か。レオナルド君はどうするかね?」
「えっと、中って通じてるんですか?」
「そうみたいですよ? しかし、ここ何なんでしょうね」
「わからんが、気を引き締めていこう。ザップが待っている」
「そうですね」
そういうわけで、二人して指示されたエレベーターに乗り込んでいく。レオは迷っていた。どっちに行くべきかを。
――クリスさんについていく
――クラウスさんについていく
レオの選択は――。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「来たようだな」
「来たようね」
二人の男女が、やって来たクラウスとクリスを見て言う。恰幅の良い男と、女だ。どちらもこの闘技場のオーナーと言える人物。
「ああ、そりゃそうさ。鉄板だ。来るに決まってる」
あいつらはそういう奴だ、と彼らにザップは言う。
「で、本当にこれで俺の借金はチャラなんだろうな」
「それは、今日の興行しだいだ」
なら、心配はいらねえ。ザップはそう返す。
「なにせ、奴らはマジもんだからな」
クラウスとクリス。ふたりは マジだ。
「楽しめると思うぜ」
だから、頼む。どっちでもいいから、俺の借金のために頑張ってくれよ。そして、あわよくば――。
などと思いながらザップはエレベーターに乗って降りてきた二人を見て下卑た笑みを浮かべるのであった。
短いので、投稿。共通ルートです。
ええと、ここからルート分岐します。別段どっち行っても話には関係ないけど、ここでクリスルートとクラウスルートに分岐します。
クラウスルートは原作通りですが、少しばかり違う相手も出てきます。具体的に言うと騎士団とか。
クリスルートは、オリジナル。彼女の戦闘が見れます。あと、彼女が脱ぎます。クラウスも脱いだし、クリスも脱ぎます。
結末は拳客のエデンとあまり差はないですけど。どちらが先がいいですか? どっちがいいか感想のついでに書いてもらえると助かります。
多少クリスルート書いてたらレオ爆ぜろと言いたくなりました。
あと引き続き騎士団員を募集しています。詳しくは活動報告をご覧ください。
ではでは。