リリカル・ストラトス 元織斑家の魔導師 作:妖精絶対許さんマン
「ねぇ、秋を助けたくない?」
「えっ・・・・・・?」
アタシは確か・・・・・・旅館に居たのに。アタシは草原に立っていて、アタシの前に黒の着物を着た女が立っていた。
「お前は・・・・・・」
「私のことは良いわ。それより、質問に答えてくれないかしら?」
「質問・・・・・・」
アタシだって秋を助けたい。でも、アタシには秋と一緒に戦える力なんて無い。
「自分に力が無いことを気にしているの?」
「・・・・・・・・・・っ」
女の言葉がアタシの心を抉る。
「なら、契約しましょう。私は貴女に力を貸す。その代わり、貴女は秋とずっと一緒にいてあげて」
秋と一緒にいてほしい?馬鹿にするな。秋がアタシ以外の誰かを選んだとしても、絶対に秋から離れるもんか。アタシは蜘蛛だ。狙ったモノは絶対に逃がさない。
「いいぜ・・・・・・っ!秋を助けられるならアタシは悪魔とだって契約してやる!!」
「ーーーーーー契約成立ね。本当は秋にしか使われたくないけど、今回は特別ね」
アタシは女が差し出してきた手を取る。瞬間、世界が光に飲まれていく。
「ーーーーーー秋のこと、よろしくね」
完全に光に飲まれる前に、女の言葉が聞こえた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「箒ちゃん!!」
「オルコットさん、凰さん、デュノアさん、ボーデヴィッヒさんも居るわね・・・・・・」
ドローンから送られてくる映像を見ながら束が叫ぶ。束は妹の危機に居ても立っても居られずに大広間を出ていこうとする。
「どこに行くつもり、束?」
「決まってるでしょ!?箒ちゃんを助けに行くんだよ!?」
「馬鹿なことを言わないで!」
スコールは束の肩を掴み、自分の方に体を向けさせて胸ぐらを掴み上げた。
「貴女が行ったところであの状況が変わるわけ無いでしょ!?わかっているの!?」
「それでも私は!!箒ちゃんを助けにいきたいの!!」
束はスコールに負けじと言い返す。
「スーちゃんはしゅー君を助けたくないの!?」
「私だって助けに行きたいわよ!!でも!私が行っても足手まといにしかならないよ!!」
「行ってみないとわかんないじゃん!!」
「行かなくても分かるのよ!!あれは私たちじゃ倒せない!!貴女だけが助けにいきたい訳じゃないのよ!!マドカや簪を見てみなさい!!」
束はマドカと簪の方を見る。簪は唇を噛みしめ、マドカは血が流れるほど強く手を握っている。
「マドカ達も秋を助けにいきたいのを必死に我慢してるのよ!!それでも!今行ったらどうなるか分かってるのよ!!」
マドカと簪も今すぐにでも飛び出して秋を助けにいきたい。それでも、秋の負担になるのが嫌で必死に耐えている。
「貴女も大人しくしていなさい。無理矢理にでも行こうとするなら私はーーーーーー貴女を殺してでも止めるわ」
スコールは束の胸ぐらから手を離す。束は座り込み、呆然としながらモニターを見る。スコールもモニター見ようと振り向く。
「ーーーーーー助けに・・・・・・行かなきゃ」
振り向いた瞬間、今まで俯いていたオータムは立ち上がり、ふらふらと窓際まで歩いていく。
「待ちなさい、オータム。秋のところに行く気?」
「・・・・・・・・・・」
オータムは何も答えずに歩く。ただ、想い人の場所を目指すように。
『疑似操縦者認証確認。アーマー再構築を開始ーーーーーー終了』
「ーーーーーーセットアップ」
『コード認証確認。セットアップ』
オータムの指に嵌められていたウィザードが光だし、オータムを包み込む。
「オータム!!」
スコールは光を遮るように手で眼を覆いながらオータムの名前を呼ぶ。
「オー・・・・・・タム?」
スコールの前にはオレンジ色のスーツではなく、青のインナーの上に胸までしかない黒いコートを着て、白の短パンを履いている。なにより一際眼を引くのは右手に持っている黒の槍。
「ーーーーーーーーーーーー」
オータムは自分を見つめる四人に目もくれず、窓を突き破って秋がいる方向に飛んでいった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「初弾命中。続けて砲撃を行う!」
秋たちと
「なっーーーーーー!?」
「aaaaaaaaaaa!!」
「ぐっーーーーーー!!」
ラウラは本能的に両腕を頭上でクロスさせて防ごうとする。だが無意味、無駄でしかない。現在地球最強の兵器のISの性能と別世界の
「aaaaa!!」
「ーーーーーーっ!?」
ーーーーーー既存のISを遥かに凌駕する。ラウラは悲鳴を上げることも出来ずに海中に叩き落とされた。
「ラウラ!!」
「ぐっ・・・・・・シャル・・・・・・ロット」
「ラウラ!!良かった!!無事なんだーーーーーー」
シャルロットは気づいた。いや、気づいてしまった。ラウラの
「ラウラ・・・・・・腕が!」
ラウラの両腕は
「今すぐ・・・・・・ここから逃げろ!アレに・・・・・・私たちには勝てない!!」
ラウラはシャルロットに支えられながら叫ぶ。一撃。たった、一撃でラウラは理解した。自分達が戦おうとした相手はISではないことに。
「シャルロット!ラウラを連れて旅館に戻って!」
「鈴たちは!?」
「あたし逹は福音と戦うわ」
鈴は双天牙月を両手で構えながら言う。その手は微かに震えている。
「馬鹿者!!アイツの力を見ていなかったのか!?殺されるぞ!?」
「それでも!!あたしは逃げない!!」
鈴は叫ぶ。自分を鼓舞するように。自分を勇気づけるように。だが、その空間にギチギチという音が響く。音源は
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「な、なんですの・・・・・・あのエネルギー量?ISが出せる出力を遥かに越えてますわ・・・・・・!」
この場にいる全ISのハイパーセンサーに『ERROR』の文字が表示されている。
「まさか・・・・・・!ラウラ!!シャルロット!!今すぐ逃げなさい!!」
鈴はすぐに
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
黒い流星が二機のISを破壊せんと迫る。シャルロットとラウラはその場から動けない。シャルロットはラウラを支えていることですぐには動けず、ラウラのシュヴァルツェア・レゲーンはスラスターに海水が入り込み機能不全に陥っている。
「くっ・・・・・・!」
「えっ!?ラウラ!?」
ラウラはシャルロットの腕を振りほどき、シャルロットにタックルして突き飛ばす。
「逃げろーーーーーーシャルロット」
黒い破壊の流星がラウラを飲み込んだ。
「ラ、ラウラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
シャルロットが悲鳴を上げる。ラウラがいた場所に煙が立ち込める。
〈ディストーションシールド展開完了!〉
「どれくらい魔力を持っていかれた?」
〈二割と言ったところでしょうか?〉
煙が晴れ、ラウラの前には秋が左手を前に突きだし、所々にヒビが入っている立体的な円形の楯が展開していた。
「た、高町・・・・・・?」
ラウラは突然現れた秋の名前を呼ぶが、秋はラウラを一瞥しただけだった。
「秋!」
「シャマル。怪我人がいる。治療してやってくれ」
「ええ、わかったわ」
秋に遅れてクロノとヴォルケンリッターの四人が追い付いた。秋はシャマルにラウラの治療を頼み、
「クロノ。アースラは来てるのか?」
「いや、来ていない。今頃はミッドを出航して地球に向かってるはずだ。早くてもアースラが着くのは明日だ」
「ちっ・・・・・・五人の避難は出来ないか」
「ああ。それにアースラが来ていたとしても転移魔法で避難させるのは難しい」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「な、何よ・・・・・・あれ?」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
触手の先端にある口から魔力砲が無造作に放たれる。
「全員死にたくなかったら避けろ!!」
秋の言葉に一斉に回避行動に移る。ザフィーラはラウラとシャマルの前に立ち、砲撃を防ぐ。
「ちょっと、高町!!アイツ何なのよ!?本当にISなの!?」
「喋る暇があるなら避け続けろ!!ーーーーーー避けろ!!」
秋は鈴を突き飛ばす。黒い魔力砲が秋めがけて飛来する。
「ブレッシングハート!」
〈はい!魔力固着、最大出力!!〉
ブレッシングハートの刀身に魔力が集まる。
「はあっ!!」
魔力固着によって刀身の強度を上げて魔力砲に叩き付ける。
「つぅ・・・・・・あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
秋はよりいっそう力をこめ、魔力砲を縦に裂く。
〈次弾来ます!!〉
「ちっ!!」
秋は魔力砲を切り裂くのを止め、上空に逃げる。
「一気に仕掛ける!ブレッシングハート、スフィアの制御は任せる!」
〈はい!〉
秋の回りに六基のスフィアが展開させる。スフィアから発射される魔力弾で魔力砲を逸らしながら
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
秋が
「ぐっ!?」
絶対防御が発動するが今の蹴りで箒の肋骨の一本が折れた。
「ーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「あっ・・・・・・」
(一夏・・・・・・!)
箒は内心で想い人の名を呼ぶ。自分を助けに来てくれることを信じて、眼を瞑る。それは、死を覚悟したのかは箒自身にも分からない。
「・・・・・・・・・・っ?」
箒は待っても来ない衝撃に疑問に思い、目を開ける。そこにはーーーーーー
「ーーーーーーーーーーーー!!!!!」
ーーーーーー右腕を触手に喰われ、肩から血を流している秋がいた。箒の顔に秋の血が跳ぶ・・・・・・。
・ディストーションシールド
秋が使う防御魔法。『受け止める』より『逸らす』ことに特化した防御魔法。