リリカル・ストラトス 元織斑家の魔導師   作:妖精絶対許さんマン

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FGOで邪ンヌと嫁王をゲットできました!


秋君が心配なら、決して無茶なことはしないで。 by リンディ・ハラオウン

「ここは・・・・・」

 

一夏は何処とも分からない砂浜を歩いていた。歩いていると、何処からか歌声が聞こえてきた。一夏は歌声が聞こえる方に歩いていく。

 

「ラ、ラララ♪ラララ♪」

 

波打ち際で真っ白な少女が歌いながら踊っていた。

 

(ふむ・・・・・)

 

一夏はその少女を見て、近くにあった流木に腰を下ろした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

大広間。私と簪、スコール、束だけが残っている。他の専用機持ちと山田先生、織斑先生(オリジナル)はいない。

 

「束。福音のコアへのアクセスは?」

 

「さっきからしてるけど受け付けない。完全にコア・ネットワークから切り離されてるね。正直、天災の束さんでも匙を投げ出すレベルだよ」

 

束は投影型のキーボードから手を離す。

 

「・・・・・お兄ちゃん。福音を見たときおかしかった」

 

「うん・・・・・どこがって聞かれたら分からないけど」

 

普段のお兄ちゃんならあそこまで怒らないのに、福音を見るとものすごく怒っていた。

 

「でも・・・・・おかしいね」

 

束は福音のカタログスペックが映されている空中投影ディスプレイを見ながら呟いた。

 

「何がおかしいの?」

 

「まーちゃんは不自然に感じなかった?こっちの福音とこっちの福音、大部分は同じだけど装甲の色や翼が黒く変わってるんだよ」

 

束は指示棒でカタログスペックの福音と織斑の腹を突き破っている黒い福音を指す。

 

「情報の伝達ミスじゃ・・・・・?」

 

「いえ、それは無いわ。このカタログスペックは米国政府から送られてきた正真正銘本物よ」

 

「うん。それは束さんも確認済み。だから、不思議なんだよ。福音はどこで変質したのかってことがね」

 

私たち四人が頭を抱えて悩んでいると、大広間の襖が開いてオータムが入ってきた。

 

「おかえりなさい、オータム。秋は?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

スコールが聞くと、オータムは突然涙を流して座り込んだ。

 

「秋が・・・・・秋が一人で福音に戦いに行った・・・・・」

 

「何ですって!?」

 

「束!!」

 

「もうやってる!!」

 

私が言うより早く束は衛星にハッキングして織斑達と福音が戦っていた空域をディスプレイに映し出す。

 

「・・・・・福音がいない?」

 

簪の呟きのとおり、戦闘空域には福音がいなかった。

 

「秋が・・・・・福音はもう、ISじゃないって言ってた・・・・・」

 

「ISじゃない?オーちゃん、どういう意味?」

 

「・・・・・今の福音はナハトヴァールっていうのがコアを取り込んで暴走してるって・・・・・」

 

ナハトヴァール・・・・・どこかで聞いたような。

 

「・・・・・そういうことね。まったくもって腹立たしいね・・・・・っ!束さんの子供を乗っ取った挙げ句、いっくんを殺そうとするなんて・・・・・っ!」

 

束は福音のコアを乗っ取られたことが気に入らないのかいらいらしている。

 

「なら、リンディさんに電話した方が良いよね?魔法関係だと私たちは・・・・・何も出来ないから」

 

簪が言った“何も出来ない”って言葉が全員に突き刺さった。お兄ちゃんが魔法を使えるのは生まれ持った力だから。でも、私たちにはそれが無い。

 

「遠いなぁ・・・・・」

 

私の好きな人の背中が遠い場所にあることを再確認してしまった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

(・・・・・あれ?)

 

流木に座って少女が踊っているのを見ていた一夏は、少女をいつの間にか歌うのを止め、空を見上げていた少女の隣へ向かう。

 

波打ち際までやってきた一夏の足元を水が濡らす。

 

「どうかしたのか?」

 

一夏は少女に声をかけるが、少女は空を見たまま動かない。

 

「呼んでる・・・・・行かなきゃ」

 

「え?」

 

一夏は隣の少女に視線を戻すが、そこには少女はいなかった。

 

「うーん・・・・・」

 

一夏は辺りを見回したが、人影は見当たらなかった。一夏は少女を探すのを諦め、流木に戻ろうとする。

 

「力を欲しますか・・・・・?」

 

「え・・・・・」

 

背中に声を投げられ、一夏は急いで振り向く。そこには、膝下まで海に沈んでいる女性が立っていた。女性の姿は白く輝く甲冑を纏った騎士のような格好だった。

 

「力を欲しますか・・・・・?何のために・・・・・」

 

「ん?んー・・・・・難しいことを訊くなぁ」

 

一夏と女性の間に波だけがある。

 

「・・・・・そうだな。友達をーーーーーいや、仲間や家族を守るためかな?」

 

「仲間と家族を・・・・・」

 

「仲間と家族をな。なんていうか、世の中って結構色々戦わないといけないだろ?単純な腕力だけじゃなくて、色々なことでさ」

 

一夏は饒舌に喋る。

 

「そういうとき、ほら、不条理なことってあるだろ。道理のない暴力って結構多いぜ。そういうのから、できるだけ仲間や家族を助けたいと思う。この世界で一緒に戦うーーーーー仲間と家族を」

 

「そう・・・・・」

 

女性は静かに答えて頷いた。

 

「だったら、行かなきゃね」

 

「えっ?」

 

また、後ろから声をかけられた一夏は振り向いた。そこには白いワンピースの少女が立っていた。

 

「ほら、ね」

 

少女は一夏の手取ろうとする。

 

「ーーーーーあら。勝手なことをしないでくれる、末妹?」

 

世界は一変する。海だった世界は草原に変わり、草原の中央に生えている大木の下に黒い着物を着た女性が立っていた。

 

「はぁ~、疲れた。まさか、お姉ちゃんに逆らうなんて酷い妹ね。ね、白騎士(・・・)?」

 

女性は白騎士と呼んだ女性の元に向かう。

 

「No.XXX・・・・・っ!」

 

白騎士は苦々しげに呟いた。着物を着た女性はその呟きを聞いた瞬間、一瞬で白騎士の前に移動して白騎士を蹴り飛ばした。白騎士は防ぐことも、避けることも出来ずに後方に飛んでいった。

 

「私、その名前は好きじゃないのよ。呼ばないでくれる?」

 

女性はそういって、一夏の後ろにいる白いワンピースの少女に歩き始める。

 

「へぇー、貴女が白式のコア人格(・・・・・・・)なのね」

 

女性は少女の前に立つ。

 

「ふーん、自我が産まれたばかりだから成長途中なのね」

 

女性は少女に何もせず、一夏を見る。

 

「それで・・・・・貴方が織斑一夏ね」

 

女性に声をかけられた一夏はーーーーー心臓をじかに掴まれたような気がした。

 

「確かに秋と一応血が繋がってるわね。容姿はそっくり。でも、心の在り方までは似てないわね。・・・・・当たり前だったわね」

 

女性は一夏の頭から爪先まで観察するように見る。

 

「あんたは・・・・・」

 

「んー、私の初めての名乗り相手が貴方っていうのは役不足だけど、まあ、良いわ。妥協してあげる」

 

女性は着物の裾を軽く捲し上げ、小さくお辞儀する。

 

「始めまして、織斑一夏。私は始まりのISコアにして高町秋の専用機ウィザードのコア人格“椿姫”よ。ごく短い時間だけど、よろしく」

 

「始まりの・・・・・ISコア?」

 

一夏は始まりのISコアと聞いて首をかしげた。どの教科書、専門書を見ても最初のISは白騎士だと記されている。だが、実際は違う。ISの産みの親、篠ノ之束しか知らないコアが存在する。

 

「それにしても白式のコアに二人の人格が宿るなんてね。ふふっ・・・・・面白いこともあるものね。これも、貴女の仕業?白騎士?」

 

椿姫は口元に手を当てて笑う。

 

「まあ、良いわ。さして興味ないもの。私が興味があるのはーーーーー貴方よ、織斑一夏」

 

「俺?」

 

「そうよ。日常の中で生きてきた貴方と、非日常の中で生きてきた秋。まったく方向性も在り方も違う貴方が秋のことを弟だと声高に叫ぶ。こんなにーーーーー不愉快なことはないわ」

 

椿姫は端正な眉を歪め、一夏を睨む。

 

「・・・・・秋は俺と千冬姉の弟だ」

 

「ええ、そうね。でも、今は違う。秋の兄は貴方ではなく、別の人間。貴方が兄と名乗る権利はないわ」

 

「違う!秋は記憶が無いから騙されてるんだ!!俺と千冬姉だけが秋の家族だ!!」

 

一夏はそう叫ぶ。何度も叫び、秋に否定された言葉を。

 

「・・・・・ここまで行くと怒りより憐れに思ってしまうわね。いい加減に現実を受け入れなさい。秋に嫉妬しているからって見苦しい」

 

「嫉・・・・・妬?」

 

「自分でも気づいていないのね・・・・・。貴方は秋と一緒に暮らしたい訳じゃない。ただ、自分と同じ境遇に落としたいだけ」

 

椿姫はゆっくりと一夏に近づいていく。

 

「秋は貴方が持っていないモノ全てを持っている。温かい家庭。親。そしてーーーーー誰かを守れるだけの力」

 

椿姫は一夏の横を通り過ぎる。

 

「秋にとって、引き取られてからは非日常の連続だったわ。母親の手料理、幼馴染みとの登下校、兄姉との会話、妹の誕生。全てが非日常。その、非日常を秋は日常に変えていった」

 

「秋にも幼馴染みはいる!」

 

「篠ノ之箒のこと?アレは貴方のことしか幼馴染みとしか思っていないわ」

 

椿姫は一夏の方に振り向く。

 

「貴方は秋を自分と同じ暗闇に引き込みたいだけ。一人で食べる食事、一人だけのリビング、一人だけの部屋、そんな空間に秋を引き込みたいだけ。そして、偉大すぎる姉のせいの弊害に秋を巻き込みたいだけ」

 

一夏は反論できなかった。

 

「それになに?道理のない暴力?どんなことにも道理はあるわ。それが善にしろ、悪にしろね。百人居れば百通りの道理がある。貴方がどう思おうと勝手だけど、それを押し付けるのは良くないわ」

 

「押し付けたりなんかしない!!俺はただ、仲間や家族を守りたいだけだ!!」

 

「その想いはとても尊いものだわ。でも、それは非日常の中で生きてきた者だけが言っていい言葉よ。日常で生きてきた貴方が、軽々しく言っていい言葉ではないわ」

 

椿姫はいつの間にか生えていた切り株に座る。椿姫と一夏の間に沈黙が満ちる。

 

「そろそろ時間かしら・・・・・?」

 

椿姫は雲一つない空を見上げて呟いた。

 

「貴方にはもう少しこの世界にいてもらうわ。ああ、安心してちょうだい。貴方が負った傷はそこの愚妹が治した筈だから」

 

椿姫は切り株から立ち上がり、大木に戻っていく。

 

「しばらくここで考えてみなさい。自分が本当に秋と暮らしたいのか。自分の想いが本当に誰か(何か)を護りたいのか」

 

「まっ、待てよ!!」

 

一夏が椿姫を呼び止めるが、椿姫は無視して大木の前に立つ。椿姫は大木に手を触れる。椿姫が触れた場所は零と一で構成された道を作り出していく。

 

「それじゃあ、さようならーーーーー織斑一夏」

 

椿姫は零と一の空間に入っていた。一夏を残して。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『ええ。もう、秋君からは救援要請は受けているわ。既にクロノとヴォルケンリッターの四人が向かっているわ』

 

「そうですか・・・・・」

 

簪がリンディさんに電話をして、今の状況を伝えている。

 

『それにしてもナハトヴァールが・・・・・』

 

「あの・・・・・リンディさん」

 

『・・・・・・・・・・っ!何かしら、簪さん?』

 

「ナハトヴァールって何ですか?」

 

簪が私たちが一番気になっていたことをリンディさんに聞いた。

 

『・・・・・極秘事項だから余り話せないけど、一つだけ言えることがあるわ。ナハトヴァールは世界を滅ぼせる指定遺失物(ロストロギア)よ』

 

世界を滅ぼせる物・・・・・そんな物とお兄ちゃんとなの姉は戦ってたの?

 

『簪さん。それに他の人たちも。秋君が心配なら、決して無茶なことはしないで』

 

無茶をしようにも無茶できるだけの力を私たちは持っていない。それより問題は・・・・・。

 

「・・・・・・・・・・」

 

部屋の隅で体育座りの状態で俯いているオータムをどうにかしないと。

 

「た、大変です!!大変ですぅ~~~~~!!」

 

私がオータムに話しかけようとすると、襖が勢いよく開いて山田先生が入ってきた。

 

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・!ス、スコール先生!!篠ノ之さんと他の専用機持ちの生徒たちが何処にもいません!!」

 

「なんですって!?」

 

私と簪以外の専用機持ちが行くとしたら・・・・・福音のところ!?

 

「箒ちゃん!!返事をして箒ちゃん!!」

 

束は無線で篠ノ之に呼び掛けているが、反応がない。 篠ノ之の方がプライベートチャンネルをOFFにしてるみたいだ。

 

「不味いわね・・・・・」

 

スコールが親指の爪を噛みながら呟いた。他の五人は今の福音の状態を知らない。最悪・・・・・五人の中から死人が出るかも知れない。

 

「・・・・・束。ドローンって持ってきてる?」

 

「ドローン?あっ!そういうことだね!!ちょっと待ってて!」

 

束は走って大広間から出ていった。お兄ちゃんに必死に頼み込んでほんの少しだけ教えてもらった。お兄ちゃんたち魔導師は地球みたいな魔法技術が無い世界では、戦う時に現地の一般人に戦闘を見られないように“結界魔法”っていうのを張るらしい。“結界魔法”は外から内に入れるらしいけど、内から外には結界を破壊するか、転移しないと出られないらしい。私はそれを逆手に取って外からドローンを飛ばして、内の様子を見ようとしている。

 

「お兄ちゃん・・・・・」

 

 

 

 

 

ーーーーー後々、私はドローンを飛ばしたことを後悔することになるなんて、予想もしてなかった。




次回は秋君VS福音第二ラウンドです。

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