リリカル・ストラトス 元織斑家の魔導師 作:妖精絶対許さんマン
「見えたぞ、一夏!」
「!!」
箒の背に乗りながら、白式のハイパーセンサーに目標の福音が映し出された。事前に開示された情報とは違うことに気になったが、一夏は疑問を頭の片隅に追いやる。
「加速するぞ!目標に接触するのは十秒後だ。一夏、集中しろ!」」
「ああ!」
紅椿は一気に速度を上げ、福音に迫る。正面から来る福音は頭部の一対の翼の内側全面に陣を展開される。
「aaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
陣から小型のエネルギー弾が一夏と箒目掛けて降り注ぐ。
「箒!」
「このまま進むぞ、一夏!」
箒は空裂と雨月でエネルギー弾を防ぎながら、突き進む。
「今だ、一夏!!」
「ああ!零落白夜ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
一夏は白式の単一使用能力“零落白夜”を起動して、箒の背を蹴る。そして、福音との距離を縮め、零落白夜を起動した雪片を振り下ろす。
「aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!?」
福音は右肩から左脇腹まで斬られた。装甲の切断面から黒い液体状の物が溢れでるが、ピタッと溢れるのが止まり、逆再生のように装甲の中に戻っていく。そして、その時が来た。
「aaaaaaaaaaaa!!」
福音は振り下ろされたままの一夏の右腕を跳ね上げる。そして、右手を貫手の形にして、無防備になった一夏の腹部目掛けて勢いよく突く。ズブリッ、と辺りに肉を抉る音が響いた。
「げほっ・・・・・!」
「い、一夏あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
一夏は口から血を吐き出し、雪片が手から滑り落ちる。福音は力なく項垂れている一夏を放り捨てる。箒は放り捨てられた一夏を受け止め、最大速度で旅館に撤退した。自身の不甲斐なさに唇を噛み締めながら。
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「待てよ、秋!」
海が見える岬に向かって走っていると、後ろから追いかけてきたオータムに肩を掴まれた。
「離せよ、オータム!」
「っ!」
オータムの手を振り払おうとすると、無理矢理オータムの方に体を向けられて、頬叩かれた。
「いい加減にしろよ!何も言わないで飛び出して!アタシだって怒るぞ!?」
「・・・・・・・・・・悪い」
オータムに叩かれたことで少しだけ頭が冷めた。それでも、早く福音の元に行かないといけない。
「話してくれよ、秋。話してくれないと何も分からないだろ?」
「・・・・・・・・・・」
魔法のことはオータム達には余り詳しくは話していない。巻き込みたくないから、心配をかけたくないから話さないでいた。でも、そろそろ潮時なのかも知れない。
「あれは・・・・・アイツはもう、銀の福音じゃない」
「福音じゃない?」
「アイツは闇の書の闇・・・・・自動防衛運用システム“ナハトヴァール”。去年の冬、俺たちが・・・・・いや、彼女が二度と再生しないように消滅させたものだ。だけど、どんな因果かアイツはまだ起動している」
アイツを殺すのは俺たち魔導師の役目だ。決して他の人間がやるべきことじゃない。
「・・・・・どうやったら倒せるんだ?」
「恐らく、ナハトヴァールは福音のコアと一体化してるはずだ。今度こそアイツを消滅させるには福音のコアごとアイツを消滅させる。今度こそ、跡形もなく」
「それは・・・・・」
そうだ。ナハトヴァールを消滅させる=福音のコアも破壊することになる。そうなったら国際問題どころではない。それでも、ナハトヴァールは存在してはいけない。
「なら・・・・・アタシも一緒に行く」
「ダメだ」
「どうして!?」
「あれはもう、ISじゃない。ISの絶対防御もどこまで通用するか分からない。それに・・・・・オータムに危ないことをしてほしくないんだ。だから・・・・・」
〈・・・・・チェーンバインド〉
オータムの足元にミッド式の魔法陣が展開され、鎖がオータムの両手、両足、腹部を拘束する。
「ここで待っててくれ。必ず戻ってくるから」
「秋・・・・・」
俺はウィザードの待機状態の指輪を外し、オータムの
「それじゃあ・・・・・行ってくる」
俺はオータムに背を向けて、走り出す。岬に設置されている柵を飛び越える。真下には刺のような岩がある。
「ブレッシングハート!ーーーーーセットアップ!!」
〈イエス、マイ、マスター!〉
首から下げていたブレッシングハートが輝く。俺は光に包まれる。白色のシャツに蒼色のバリアジャケットを纏い、左手に籠手が装着され、腰の左側に鞘に収まっているブレッシングハート・ソードフォームが装着されている。
「行くぞ、ブレッシングハート!」
〈はい、マスター!〉
俺は福音の元に向かって最大速度で飛翔する。
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「秋・・・・・」
段々と小さくなって行く秋を見ながらアタシは秋の名前を呼ぶことしか出来ない。
「馬鹿・・・・・秋の馬鹿!!」
アタシを拘束していた蒼色の鎖が消える。今ならまだ秋に追い付ける。
「・・・・・・・・・・」
アタシだってわかっている・・・・・。アタシが秋についていっても足手まといになるってことぐらい。それでも、ただ見てるだけじゃ、待ってるだけじゃ嫌なんだ。
「アタシにも・・・・・戦う力があればっ!」
左手薬指にはめられた指輪を触れながら、アタシは涙を流しながら地面に座り込むことしか出来なかった。
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「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・?gya!?」
何かを感じた福音は頭部を上げるとーーーーー頭を吹き飛ばされた。
「aaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
福音は突然の狙撃に戦闘体勢に入る。だが、気づいた。自分を狙撃した魔力が、殺したい相手の魔力だということに。
「aaaaa!!」
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〈初弾命中!ですが効いていません!〉
「だろうな!!」
〈結界の展開を確認!ナハトヴァール、此方に猛スピードで接近してきています!距離は・・・・・残り三キロです!!〉
「ちっ!ブレッシングハート!!」
〈ロード・カートリッジ!〉
ブレッシングハートの銃身に埋め込まれているシリンダーが回転する。そして、銃口に魔力が集り、秋の背後に十五基のスフィアが展開される。
「メテオシューター・ファランクスシフト!」
〈Fier!〉
トリガーを引くと同時に銃口から魔力砲が発射され、十五基のスフィアから十秒間に七発、合計千五十発の蒼色の魔力弾の掃射が
「・・・・・どうだ?」
〈魔力反応感知!
ブレッシングハートの言葉と同時に黒煙が吹き飛ぶ。黒煙が晴れ、姿を現した
「装甲の一つでも破壊しておきたかったんだがな・・・・・」
〈直撃する寸前に翼で防御したんでしょう。あの翼をどうにかしない限り、此方の手詰まりです。詰みです〉
「・・・・・シグナムたちは?」
〈反応はありません。恐らく、結界によって此方の詳細な座標が分からないため、探しているんでしょう〉
「救援も期待できないな・・・・・」
「最低でも時間稼ぎ、
〈勿論です、マスター。私とマスターに倒せない敵は居ません〉
秋はブレッシングハートを構える。
「aaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
(バインドブレイク・・・・・間に合わない!なら!)
秋はブレッシングハートに魔力を籠めて鎖に振り下し、鎖は切断する。だが、
「ぐっ!?」
秋はブレッシングハートの刀身の平な部分で受け止める。秋は殴られた衝撃で大きく後ろに後退させられた。
「カートリッジ!」
〈ロード・カートリッジ!〉
秋の足元に魔法陣が展開される。そして、左手に魔力で作られた短剣を二本、
「山を抜きーーーーー」
秋は新たに短剣を作り、投擲する。
「水を割りーーーーー」
「なお堕ちる事無きその両翼ーーーーー」
足元の魔法陣が光、
「ーーーーー鶴翼三連!!」
「aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!?」
「aaaaa!!」
「っ!」
「aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!」
「aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!」
「ああ・・・・・クソッ!!」
秋は防御姿勢をとる。
ーーーーー
次の話はもしかしたら、秋君が飛び出した後の話か、秋君VS福音の続きかも。