リリカル・ストラトス 元織斑家の魔導師 作:妖精絶対許さんマン
「あら?オータムったら何処に行ったのかしら?」
IS学園の生徒達が海で思い思いに遊んでいるなか、俺はスコールに連れられてパラソルの下にいる。スコールの言い方だとオータムはここに居たみたいだ。
「オータムを探してくるわ。秋はここで待っててちょっだい」
「わかった」
スコールは来た方向とは逆の方に歩いていった。それにしても、オータムはどこに行ったんだろうな。
「しゅ、秋・・・・・」
「え?オータム?いつからそこに居たーーーーー」
オータムに名前を呼ばれて後ろを振り向くと同時に、絶句した。
「な、何だよ・・・・・なんか言えよ!」
オータムが何か言っているが頭に入ってこない。オータムの服装は水着だ。ああ、海ということを考えれば当たり前だ。問題はオータムの水着だ。オータムの水着は黒色のビキニの上にシャツを羽織っている。普段はストレートのオレンジ色の髪を紐で縛り肩から流すようにしている。俺にはその姿がものすごく魅力的に見えた。
「うぅ・・・・・や、やっぱり似合ってないのか?」
「そ、そんなこと無い!!に、似合ってるよ!」
オータムの悲しそうな顔を見て、すぐに思考を切り替える。
「そ、そうか・・・・・な、ならさ、秋。日焼け止め・・・・・塗ってくれないか?」
「日焼け止めって・・・・・自分で塗れるだろ?」
「せ、背中は塗れないんだよ・・・・・だ、だから、秋に塗ってほしいんだよ」
背中・・・・・背中だけなら問題ないよな。で、でも、恋人でもない女性の肌を触るのはどうなんだ?
(マスター、マスター)
俺がオータムの肌に触れるか触れないかで悩んでいると、念話でブレッシングハートが話しかけてきた。
(マスター。こう考えてみればどうですか?将来の予行演習だ、と)
(予行演習?何のだよ?)
そう返すと、ブレッシングハートがトンでもないことを言ってきた。
(将来的にマスターとオータムさんが結婚して、子作りするときの予行演習ですよ!)
(こっーーーーー!?)
お、俺とオータムが結婚・・・・・子作り!?
「そ、そんなこと想像できるわけ無いだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
思わず大声を出してしまった。
「しゅ、秋・・・・・?どうしたんだ?暑さにやられたのか?水飲むか?」
オータムに心配されてしまった。いや、確かに大声を出した俺が悪いけどなんか納得できない。
「はぁ・・・・・まあ、いいや。わかった。塗るよ、日焼け止め」
「本当か!?」
おおぅ・・・・・いきなりテンションが上がったな。
「な、なら・・・・・お願いします」
オータムは俺に日焼け止めを渡して、ビキニの紐をほどいて、シートに寝転がった。勝手が分からないが、とりあえず液体を手の平に出し、オータムの背中に塗る。
「ひゃっ!?」
すると、とても可愛らしい悲鳴をオータムがあげた。
「ば、バカっ!日焼け止めは手で少し暖めてから塗るんだよ!」
「そ、そうなのか?」
へぇー、知らなかった。次からは気をつけよ。それより、オータムの背中綺麗だな・・・・・できれば、ずっと触っていたい。
「な、なあ・・・・・秋」
「なんだ?」
背中に日焼け止めを塗りながら返事をする。
「前も・・・・・塗ってほしいなぁ?」
オータムが上目遣いで言ってきた。前・・・・・だと?ま、前ってことはオータムのむ、胸を触るってことか?お、俺だって思春期男子だ。そ、そういう行為にも興味はある。でも、相手はオータムだし・・・・・いや、でも、本人が良いって言ってるし・・・・・。俺の中の理性と本能が反発しあっている。
「あら?なら、私が塗ってあげるわ」
「へっ?スコーリュゥ!?」
いつのまにか俺とオータムの前に米神に青筋を浮かべて、笑顔のスコールが立っていると思ったら、しゃがみ、あろうことかオータムの胸を揉み始めた。
「あら、オータム。貴女、胸が少し大きくなったわね」
「や、やめっ!す、スコール!!しゅ、秋が見てるからやめて!!」
オータムは揉まれるのが嫌だったのか、立ち上がった。そうなると必然的に水着が落ちる訳で・・・・・。
「ーーーーーーーーーーッッッッッ!?!?」
オータムは体を庇うように胸の前で両腕を交差さして、しゃがみこんだ。オータムの顔は首まで真っ赤にして、涙目で俺を見てきた。
「・・・・・・・・・・見た?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめん」
俺は正直に謝った。一つだけいえることはオータムの胸はとても綺麗だった。
「~~~~~~~~~~っ!?!?しゅ、秋のバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
「俺が悪いのか!?」
オータムは水着を拾い上げて、旅館の方に走り去っていった。
「・・・・・私、悪いことしちゃったかしら?」
スコールの言葉が辺りに静かに浸透した気がした。
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「美味しいー!」
「何でも漁港から直送してもらってるらしいからな。新鮮さならここら辺一帯の旅館で一番じゃないか?」
夜。俺たちIS学園一年生は花月荘の大広間で夕飯を食べている。全員、浴衣を着用している。なんでも、この旅館では食事中は浴衣着用が義務付けられている。オータムとスコールも近くにいるが、オータムは俺と一切目を会わしてくれない。まあ、オータムのむ、胸を直視しちゃったしたな・・・・・。
「・・・・・お兄ちゃん。さっきからオータムの方ばっかり見てるけど、何かあったの?」
「い、いや・・・・・何にも無かったぞ?」
「そお・・・・・?」
マドカが心配したような目で見てくるが、悟られないようにしないと。もし、オータムの胸を見たことがマドカに知られたら、軽蔑されるか母さんと父さんに報告される。この事が母さんと父さんの耳に届いたら・・・・・。
『秋?女の子の胸を事故とはいえ見たんだから責任とらないとね。楽しみだわー、お赤飯の準備しないと♪』
『そうか・・・・・僕もついにお爺ちゃんか。感慨深いものがあるね』
なんて言うに違いない!外堀から埋められて絶対に逃げれないようにするはずだ!俺はまだ、結婚とかしたくないんだ!そ、それに・・・・・まだ、告白の返事をしていないし・・・・・こ、恋人らしいことなんか何もしていない。
(お兄ちゃん・・・・・さっきからどうしたんだろう?何か悩んでるみたいだけど・・・・・どうして私に相談してくれないんだろう?)
何故か目の前のマドカの雰囲気がしゅんっとなった気がする。それを表すようにアホ毛も元気がない。
「・・・・・・・・・・」
俺は無言でマドカの頭を撫でる。すると、マドカは少しだけピクッ!とした後、アホ毛が横に揺れている。
「・・・・・・・・・・♪」
少しだけ元気が出たみたいだな。良かった、マドカには何時までも笑っていてほしいんだよ。
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「はぁ・・・・・」
夕飯も食べ終わり、各人思い思いに自由時間を楽しんでいるなか、俺は旅館から少し離れた海が見える高台にいる。
「俺は・・・・・どうしたいんだろう?」
オータムの告白に対する返事・・・・・早く返さないといけないのはわかっている。それでも、どうしたら良いのか分からない。
「本当・・・・・最低だな、俺」
俺は柵に寄り掛かりながら、海を見つめる。すると、後ろから砂を踏む音が聞こえてきた。
「あ、やっぱりここに居たっすね」
「自由・・・・・?」
歩いてきたのはジャージ姿の自由だった。普段つけているネコミミ風カチューシャをつけていない。そっか・・・・・海中の二年生が来てるなら必然的に自由もいるんだったな。
「どうしたんだ、こんな時間に?轟鬼先生にバレたら怒られるぞ?」
「大丈夫っすよ。轟鬼先生には会長に会ってくるって言ったら、あっさり許してくれたっすから」
仕事しろよ、轟鬼先生。
「それより、どうして俺がここに居るって分かったんだ?」
「自分たちが止まってるホテルから会長が出ていくのが見えたんすよ。それに、会長って無意識かも知れないっすけど海が見える所に必ずいるんすよ。それこそ、会長を探すなら海が見える場所っていう情報が流れるぐらいに」
た、確かに・・・・・俺はよく考え事をする時は海が見える所に行く気がする。
「それより、会長。悩み事でもあるんすか?」
「・・・・・どうしてそう思うんだ?」
「勘って奴っすね。ほらほら~、観念して自分に話してくださいよぉ~。優しい後輩が聞いてあげるすっから」
一人で考えるより聞いてもらった方が案外すっきりするかも知れないな。
「・・・・・そうだな。なら、付き合ってくれるか?」
「はいっす!大船に乗ったつもりで話してくださいっす!」
自由は胸を叩き、アピールしてきた。
「俺さ・・・・・告白されたんだよ」
「っ!?・・・・・そ、そうなんすかー。御相手は誰っすか?同じクラスの人っすか?」
「違う・・・・・告白してきたのは教師だよ。自由は会ったこと無いだろうけど、うちに居候してた一人なんだ」
自由が生徒会に入る頃にはオータムとスコールはIS学園で教師をしていた。だから、スコールとオータムとは面識が無いはずだ。
「たださ・・・・・自分がどうしたいのか分からないんだ」
オータムは魅力的だ。だからこそ、俺みたいな男じゃなくて、もっとマシな男を好きになってほしい。でも、オータムが他の男と一緒にいるところを想像すると腹が立つ。
「・・・・・悪い。つまらなかったな。俺は戻るから、自由も戻れよ」
俺は自由に背を向けて、花月荘に向かって歩き始める。
ーーーーーポスッ
背中に軽い衝撃が走った。
「自由・・・・・?」
俺は後ろ手に自由を見る。自由は俺の背中に額をくっつけて、浴衣を両手で握りしめている。
「・・・・・行っちゃやだっす」
「行っちゃやだって・・・・・俺もお前も学校の行事で来てるんだぞ?戻らないとみんな心配するだろ?」
俺は自由の方に振り向く。そして、俺は驚愕した。
「自由・・・・・どうして
自由は泣いていた。どうして泣いているのか俺には理解できない。
「泣きたくもなるっすよ・・・・・ぐすっ・・・・・」
自由は俺の浴衣から手を話す。それでも、少し自由が顔を上げるだけでもキスできる程近い。
「自分は・・・・・私は・・・・・」
自由は意を決したように顔を上げる。
「私は・・・・・小鳥遊自由は!!」
自由は目に涙を溜めて、顔を赤くしながら口を開く。
「小鳥遊自由は!!高町秋さんのことが好きです!!一人の異性として、好きです!!」