リリカル・ストラトス 元織斑家の魔導師   作:妖精絶対許さんマン

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先に謝罪します。すいません。

前回、この話で2巻終了と言いましたが、長くなりそうなので分けました。


女は恋をすればどんな風にも変わるんですよ? by スコール・ミューゼル

「ここは・・・・・生徒会室?」

 

気がつくと俺は海中の生徒会室に居た。

 

(どういうことだ?確か・・・・・俺は暮桜擬きに斬られて、気を失ったはずなのに)

 

生徒会室を見回す。長机を3つくっつけただけの簡単な机。椅子に至ってはパイプイスだ。金あるんだから良いの買えよ。

 

「ブレッシングハート」

 

〈・・・・・・・・・・〉

 

呼び掛けるが反応なし。夢・・・・・明晰夢ってやつか?

 

「懐かしいな・・・・・」

 

二年間。長いようで短い時間だったが、生徒会役員も悪いものじゃなかった。初めは俺と鳴子と虎千代、つかさの四人だけの生徒会だった。虎千代とつかさは書類仕事が壊滅的だったから俺と鳴子が書類仕事を担当、虎千代とつかさは力仕事を担当していた。たまに、結希が手伝いに来てくれていた。

 

「て、懐かしんでる場合じゃない。夢から覚める方法を探さないと・・・・・」

 

でも、どうしたものか・・・・・夢の覚め方なんて聞いたこと無いぞ。

 

 

カッチャ

 

 

「・・・・・・・・・・?」

 

扉から鍵の開く音がした。

 

「出ろってことか・・・・・」

 

進まないとどうにも成らないし・・・・・行くか。

 

『鳴子。その書類取ってくれるか?』

 

『これかい?はい』

 

『ん、ありがとう』

 

扉に手をかけた瞬間、後ろから俺と鳴子の声が聞こえてきた。思わず振り返ってしまった。だが、誰も居なかった。

 

「気のせいか?」

 

別に鳴子とは二度と会えない訳じゃないのに・・・・・明晰夢にしては縁起が悪いな。

 

「行くか!」

 

目覚めたら鳴子に電話するか。俺は扉を開けて、外は出た。

 

 

ーーーーーーーーマドカ視点ーーーーーーーー

 

 

「さて、四人は呼ばれた理由が分かりますね?」

 

私と刀奈と簪、スコールは学園長室に居る。まあ、理由は一〇〇%織斑を攻撃したことだろうね。

 

「織斑君に対する過剰な攻撃・・・・・ですよね?」

 

「その通りです。何か、申し開きはありますか?」

 

私達はお互いの顔を見合わす。答えなんて決まっている。

 

「「「「ありません」」」」

 

申し開きなんて無い。少しだけやり過ぎたと思うけど、後悔は無い。

 

「そうですか・・・・・なら、処分を言い渡します」

 

私達どうなるんだろう・・・・・。別に退学になっても構わない。翠屋で働きながら通信教育で高校の卒業資格を得れば良いし。

 

「まず、ミューゼル先生。貴女には一週間の停職と半年間の減給です」

 

「え?」

 

スコールが呆けた声を出した。うん、驚く気持ちは分かるよ。私も驚いてるし。

 

「更識楯無さん、更識簪さん、高町マドカさんは停学三日間と反省文七〇枚です」

 

「ちょ、ちょっと待ってください学園長!」

 

刀奈が驚きの声を上げた。

 

「どうかしましたか、更識さん?」

 

「その・・・・・余りにも罰が軽すぎませんか?私達、退学や退職を覚悟してたんですけど・・・・・」

 

「そうですか?これでも重い方ですよ?今回のことは喧嘩両成敗として処理していますし」

 

喧嘩両成敗ってことは・・・・・織斑にも罰があるってこと?

 

「あの・・・・・学園長。織斑にも罰があるんですか?」

 

「あるにはありますが・・・・・IS委員会からの通達でそれほど重い罰にはなりません」

 

“世界最強の弟”って言う肩書きは本当に便利だね。何をしても許されるんだから。人を殺しても許されるんじゃない?でも、考え方を変えたら織斑には肩書きしか無いってことだよね。

 

「学園長。織斑君の罰は何なんですか?」

 

スコールが聞く。どうせ反省文五枚とかでしょ?

 

「織斑一夏君の罰は一年間の専用機の没収と授業と行事以外でのISの使用禁止、反省文一〇〇枚です」

 

使用禁止ってことは放課後にしてる自主練(笑)も出来ないんだね。

 

「ミューゼル先生はこちらの書類にサインをお願いします。更識さん達にはこちらのプリントをお渡しします」

 

学園長は執務机の引き出しからプリントの束を取り出して、私達に渡してきた。私達は学園長からプリントの束を受けとる。

 

(お、重い・・・・・・!?)

 

な、何これ!?紙束なんてレベルの重さじゃないよ!?凶器だよ!?人を殴ったら撲殺できるよ!?刀奈と簪なんて重すぎて腕がプルプルしてるもん!

 

「反省文の提出は私か妻に渡していただければ結構ですので、頑張ってください」

 

学園長がニッコリと微笑む。

 

「そ、それじゃあ、学園長。私達は失礼します。簪ちゃん、マドカちゃん。行きましょう」

 

「し、失礼しました・・・・・」

 

刀奈が頭を下げて学園長室から出ていく。簪もフラフラしながら出ていった。私も学園長に頭を下げて学園長室から出ていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「次は家かよ・・・・・」

 

生徒会室から出たと思ったら家の二階だった。関連性が全くわからない。

 

(下に降りたら何か分かるか?)

 

幸いなことに階段の下には廊下が見えている。降りてそのまま落下なんてことは無さそうだ。

 

(関連性・・・・・あるとすれば生活圏と言ったところか?)

 

だけど、情報が足りなさすぎる。

 

『お兄ちゃん!テストで一〇〇点とれたよ!』

 

『お!ホントかなのは!頑張ったな!』

 

『うん!お兄ちゃんが教えてくれた問題が出たの!』

 

階段を降りてすぐに俺となのはの声が聞こえてきた。俺は急いでリビングに走っていく。

 

「なのは!!」

 

リビングを覗くが誰も居なかった。

 

「・・・・・・・・・・」

 

自分のことだが嫌になる。夢の中で妹の幻聴を聞くなんて。

 

 

カッチャ

 

 

また、鍵が開く音が聞こえてきた。次は玄関か。俺は玄関まで歩いていき、何故か出されていた靴を履く。

 

「ーーーーーーーーーー行ってきます」

 

誰も居ない、夢の中の家でそう言った。どうしてか自分でも分からない。だけど、言わないといけない気がしたからだ。俺は玄関の扉を開けて、家の外に出た。

 

 

ーーーーーーーースコール視点ーーーーーーーー

 

 

「ミューゼル先生。高町君の容態は?」

 

「今は安定しています。怪我の方も医療用ナノマシンのお陰で塞がりました。ただ、傷痕は残るそうです」

 

「そうですか。・・・・・何か不満があるようですね」

 

あら?顔に出てたかしら?

 

「不満・・・・・と言いませんが疑問があります」

 

私は疑問に思っていたことを学園長に問う。

 

「今回の織斑一夏君の罰・・・・・重すぎませんか?」

 

今回の織斑君の罰は重すぎる(・・・・)。授業と行事以外でのISの使用禁止なんて、IS委員会が許すはずがない。委員会なんて名前だけで自分達で利益を独占したいだけの化物の巣窟。そんな奴らが貴重な男性操縦者から専用機を取り上げて、訓練機も使えないようにして許すはずがない。

 

「ええ、そうですね。IS委員会からはミューゼル先生以下三人を退学、退職にするよう通達がありましたが、一方だけに罰を与えても示しがつかないですからね。織斑君にもそれ相応の罰を与えることにしました」

 

「IS委員会はなんと・・・・・?」

 

「何も?IS委員会に報告する義務はありませんし、委員会に従う理由もないので。IS学園はどこの国家、組織に干渉されませんので。いくら有名無実化しているとは言え、文句は言えないでしょう」

 

ホント、食えない人ね。

 

「それにしても驚きました。裏社会で黄金の魔女(ゴールデンウィッチ)毒蜘蛛(ポイズンスパイダー)と言えば現代のアン・ボニーとメアリー・リードーと呼ばれていましたが・・・・・すっかり丸くなりましたね」

 

「学園長。女は恋をすればどんな風にも変わるんですよ?」

 

一番変わったのはオータムとマドカよね。今までオータムはお洒落なんて興味なかったのに、秋に恋してから服装なんかに気をつけたり。マドカは亡国機業時代からは考えられない程明るくなって、ブラコンになったり。

 

「それでは学園長。私はこれで失礼します」

 

「はい。停職期間中は学園に居られるのですか?」

 

「いえ、居候先に帰ろうと思います。学園にいたら仕事を押し付けられそうですし」

 

「そうですか。それでは、一週間後に」

 

「はい。失礼します」

 

私は学園長に一礼して部屋を後にした。部屋に戻ったら服の用意をしないとね。そうだ。お土産でも買って帰りましょう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ここは・・・・・」

 

家から出たら山の頂き。雪が積もった地面。海が見える展望台。忘れない。いや、忘れられない場所。空も、風も、風景も。すべてがあの日と一緒だ。

 

「そう・・・・・ここは彼女。リインフォースが消えた場所」

 

展望台に俺以外の声が後ろから聞こえた。振り向くと、少し離れた木に寄り掛かるように一人の女性が立っていた。

 

「誰だ・・・・・お前」

 

腰まである漆黒の髪。黒い布地に椿模様の着物。どことなくリインフォースに似ている。

 

「んー、教えても良いんだけど今は内緒」

 

「なんだよそれ・・・・・。まあ、良い。ここは何処なんだ?」

 

「どこだと思う?」

 

女性は悪戯っ子のような笑みを浮かべる。

 

「明晰夢・・・・・だと俺は考えている」

 

「半分正解で半分不正解。ここは明晰夢であって明晰夢じゃない。この世界は君の心象風景。ここに辿り着くまでに歩いてきた場所は、君が心から安らげる居場所だよ」

 

「・・・・・・・・・」

 

確かに家や生徒会室は安心できたし落ち着けたな。

 

「・・・・・そろそろ時間切れかな?」

 

女性が呟くと、俺の爪先から徐々に消え始めた。

 

「しばらくのお別れ。でも、案外すぐに会えるかもね」

 

女性は手を振る。

 

「待て!名前を聞かせろ!」

 

「私の名前?良いよ、教えてあげる。私の名前はねーーーーーーーー」

 

女性の名前が聞こえる前に、俺は明晰夢から弾き出された。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「うんうん!秋も大きくなってたね!」

 

崩壊していく秋の世界で、女性は一人笑っている。

 

「私も行かないとね」

 

女性の前の空間が裂け、〇と一で構成された世界と橋があった。

 

「悪い子にはお仕置きが必要だよね。わるーいわるーい、(白騎士)には特に・・・・・ね」

 

女性は裂け目に入り、姿を消した。そして、秋の心象世界は崩壊した。




一夏に対する罰に不満を持つ人もいるかも知れませんが、そう言う仕様だと思ってください。

最後に出てきた女性は前作を読んでた人には分かると思います。

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