リリカル・ストラトス 元織斑家の魔導師   作:妖精絶対許さんマン

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駄文です。

それと、今回は作者なりの解釈ぽい物があります。

賛否両論あるだろうー


違う!!そいつら全員偽者だ!!俺と千冬姉だけが秋の家族なんだ!! by 織斑一夏

「一夏・・・・・どうしてあんなことをしたんだ?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

IS学園取調室。そこには1年1組担任にして世界最強(ブリュンヒルデ)の織斑千冬と、右腕をギプスで固定した世界で1人目の男性IS操縦者の織斑一夏がいた。

 

「黙ってないで何か言ったらどうだ?」

 

「・・・・・・・・・俺は悪くない」

 

虚空を見つめながら一夏は言う。その目には光が宿っておらず、虚ろだった。

 

「失礼するわよ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

取調室に入ってきたのは、スーツ姿のスコールとオータムだった。スコールは普段通りだが、オータムは一夏のことを睨んでいる。

 

「・・・・・何をしに来た?」

 

千冬は取調室に入ってきたスコールとオータム、厳密にはスコールを睨んでいる。

 

「織斑一夏君の事情聴取だけど?何か問題あるかしら?」

 

「大有りだ!生徒に暴力を振るっておいて、どの面下げて来た!?」

 

「あら?生徒に暴力なら貴女の方が酷いじゃない。出席簿で生徒叩く貴女より、まだ私の方がマシじゃないかしら?」

 

スコールと千冬は睨み合う。片や弟を攻撃された姉。片や想い人を間接的に傷つけられた女。お互いに譲れないモノがある。

 

「それとも、私達が居たら不都合なことでもあるのかしら?例えば・・・・・織斑君の都合がいいように報告書を捏造する、とか」

 

「そんなことするわけ無いだろ!!!!!」

 

「なら、問題ないじゃない」

 

スコールは近くに置いてあった椅子に座る。オータムは一夏の後ろの壁にもたれ掛かる。取調室に静寂が満ちる。

 

「・・・・・ねえ、織斑君。どうして秋が貴方を庇ったかわかる?」

 

静寂を壊すように、スコールがいまだに虚ろな目をしている一夏に問う。

 

「それは・・・・・秋が俺のことを家族だと思っているから・・・・・」

 

「違うわ」

 

スコールは一夏の答えを分かっていたのか、すぐに切り捨てる。

 

「貴方は勘違いしているわ。秋は貴方のことを家族だなんて微塵も思っていない」

 

「違う!!秋は俺が兄弟だから助けてくれたんだ!!」

 

一夏は怒鳴りながら立ち上がる。

 

「座れ」

 

一夏の後ろに控えていたオータムは一夏の両肩を押さえ、無理矢理座らせた。

 

「貴方は増やさなくて良い被害を増やしたのよ。分かってる?」

 

スコールは立ち上り、一夏の前に行く。

 

「貴方は秋が弟と言ったわね。秋の兄は高町恭也、ただ一人。秋は恭也君を慕っている、なついている、尊敬している」

 

スコールは一夏と千冬の周りを歩く。

 

「貴方は秋からその幸せを奪うの?どんな理由で?貴方にどんな権利があって?」

 

「俺と秋は家族だ!!兄弟だ!!家族が一緒に暮らすことは間違ってるのかよ!!」

 

「いいえ、間違ってないわ」

 

「なら!!」

 

「だから、秋は家族と暮らしてるじゃない。血は繋がってなくても、実の子供のように接している両親。実の弟のように可愛がってくれる兄姉。兄と慕ってくれる妹2人。ほら、上げただけでも秋には6人の家族が居るじゃない」

 

スコールは机の縁に腰掛ける。

 

「違う!!そいつら全員偽者だ!!俺と千冬姉だけが秋の家族なんだ!!」

 

「・・・・・はぁ」

 

スコールは溜め息を吐く。

 

「・・・・・今からは“教師のスコール・ミューゼル”としてじゃなく、“スコール・ミューゼル個人”として話させてもらうわ」

 

スコールは金糸のような髪をかき上げる。

 

「どうも、私は貴方のことを過大評価してたみたいだわ。私は秋のことしか知らないから、秋基準で貴方を見てたわ」

 

スコールは立ち上がる。

 

「貴方は試合の時、秋に聞いてたわね。『兄弟でどうして差があるのか』って。当たり前じゃない。貴方と秋は別人。まったく同じに成長する訳ないじゃない。貴方と秋の違いは『力の使い方』をハッキリわかっているか」

 

「力の・・・・・使い方?」

 

「貴方はどう考えてるの?自分に与えられた(白式)を?」

 

スコールは一夏に問う。目の前で自身の力で苦しむ少年を見てきた。なら、目の前でその少年の兄だと名乗る彼は、一体、自分に与えられた力が何か理解しているのか?スコールはそれが気になった。

 

「俺の力は誰かを守る為の力だ!」

 

「誰を守るの?」

 

「千冬姉を、箒を、セシリアを、鈴を、シャルルを、俺に関わる全ての人だ!!」

 

「何から守るの?」

 

「決まってるだろ!理不尽な暴力や理由のない暴力からだ!」

 

一夏は叫ぶ。自分の考えが正しいと信じて。だが、気づいていない。自分が挙げた名前全員が自分より強いことに。

 

「貴方は・・・・・現実から目を背けているのね」

 

スコールは可哀想なモノを見るような目で一夏を見る。

 

「貴方は人の悪意を知らないのね。理不尽な暴力や理由のない暴力から誰かを守る?無理ね、そんなの」

 

一夏は悪意を知らない。いや、正確には大きすぎる悪意を知らない。織斑千冬という女尊男卑の世の中で、不動の地位を築き上げた人物の弟という肩書きに、人は恐れた。何より、一夏の周りには優しい人間で溢れていた。

 

「貴方のその考えは素敵だわ。感動するわ。だけど、無意味よ。その考えを持つには、貴方は余りにも未熟すぎる」

 

スコールは薄々感じていた。一夏の歪さを。

 

「貴方の『自分に関わる全ての人を守る』ってことは不特定多数の人を守ることになるのよ?」

 

「それの何がいけないんだ!」

 

「不特定多数の人を守り続ければ、貴方は本当に守りたかった人を失うかも知れない。不特定多数の人を守ることが出来るのは、創作物の中だけよ」

 

不特定多数の人ーーーーー例えばコンビニで店員と話をするとしよう。それは一夏に関わったことに成らないだろうか?そうすると、一夏の中でその店員も守る対象になる。やがて、親しくもない人間がネズミ算式で守る対象になっていく。そして、最後は一夏が本当の意味で守りたかった人達を失う。

 

「秋は貴方の考え方とは真逆。秋は自分の力で守れる人だけを守る。言い方は悪いけど、取捨選択が出来るのよ。優柔不断な貴方と違ってね」

 

秋は自分の力でどれだけの人間が守れるのかを理解している。身内と他人なら秋は迷わず身内を取る。

 

「貴方は出来る、取捨選択を?そうね・・・・・篠ノ乃さんと凰さんが人質に取られているとして、どちらかしか助けられない状況、貴方はどっちを助ける?」

 

「両方助ける!!俺にはそれが出来るだけの力があるんだ!!」

 

「・・・・・質問が悪かったのかしら?織斑先生と篠ノ乃さんが人質になっている。一人しか助けられなくて、どっちを助ける?」

 

スコールは千冬と箒を例えにして質問する。

 

「千冬姉が人質なんかになるわけないだろ!!」

 

一夏は無意識の内に千冬を絶対視していた。千冬姉は誰にも負けない、千冬姉を越える人間は居ない。そう思い込んでいた。

 

「あら?織斑先生も人間よ。油断もすれば慢心もする。それに・・・・・織斑先生より強い人間は居るわよ?少なくとも秋の友人に居るわ」

 

確かに千冬は強い。ISでも、生身でも。だが、IS業界で最強でも、生身で最強とは限らない。

 

「例えばーーーーー」

 

スコールは振り向きざまに千冬の喉元にボールペンを突き付ける。

 

「ーーーーー私とか、かしら?」

 

千冬はとっさのことで反応できず、一夏は口をパクパクしながら固まっている。スコールはボールペンをしまい、扉の方に歩いていく。

 

「それにね、貴方の自信の根源にある白式だけど。学園の方で没収される可能性があるかもね」

 

「なっ!?なんでだよ!!」

 

「許可無しでのIS使用に無断出撃、間接的な被害の拡大。遡れば、アリーナの遮断シールドの破壊による一般生徒の命を脅かした。管理される理由としては充分だと思うわよ?まあ、まだ正式に決まった訳ではないけど」

 

実際、一夏の専用機“白式”は無理な出撃と秋とマドカの蹴り、刀奈のバッティング、簪の連撃によりダメージレベルD。オーバーホールして壊れた部品を交換、修復が必要なレベルだ。

 

「おめでとう織斑一夏君。これで貴方は再び守られる側の人間に逆戻りよ」

 

(ま、貴方は誰一人も守れていないけどね)

 

スコールは微笑みを浮かべて出ていった。

 

「・・・・・・・・・」

 

オータムは一言も発せずに、取調室から出ていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・後のことは任せたわよ」

 

「おう・・・・・」

 

スコールとオータムは二人だけの廊下を歩いて行く。

 

「処分はどうなると思う?」

 

「そうね・・・・・良くて減給か停職、悪くて退職ってところかしら?」

 

スコールがしたことは教師として許されない行動だ。だが、彼女には後悔は無い。別に教職に未練は無い。強いてあげるなら、生徒会の面々の卒業式に立ち会えないことぐらいだ。

 

「それじゃあ、私は学園長に呼ばれてるから」

 

「ああ・・・・・四組のことは任せろ」

 

スコールは学園長室に続く右の廊下を、オータムはICUに続く右の廊下を歩いていった。交わす言葉は無い。二人とも長い付き合いだ。言葉は無くとも考えていることはわかるからだ。




次回で原作2巻終了です。

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