リリカル・ストラトス 元織斑家の魔導師 作:妖精絶対許さんマン
「織斑さん。今日はどんな用件で来られたのかしら?」
「その話をするより・・・・・秋は何処にいるんですか?」
「あの子なら出掛けてるわ。妹達と一緒にね」
桃子は微笑みながら千冬に言う。ただし、目は笑っていない。それは七年前の“ある事件"からの因縁のせいだ。
「・・・・・此処に来たのは“高町秋"がISを動かしたので強制的にIS学園に入学をさせるためです」
「秋はISを動かしてないわ」
「受験会場に設置してあった複数の監視カメラにISを動かした秋が映っていました」
千冬は鞄から秋とマドカが写っている写真を机の上に出した。
「・・・・・嘘を付いても無駄みたいね。確かに秋はISを動かしたわ。でも、IS学園には入学させない」
「・・・・・理由をお聞きしても?」
千冬は平静を装っているが、桃子を睨んでいる。
「本人が行くと言うなら私達は止めないわ。でもね、秋本人の考えを聞かないままで入学を決める訳にはいかないの。そう言うことだから今はお引き取りしてもらって
良いですか?」
それはハッキリとした拒絶の現れ。元来、高町桃子という人間は人の好き嫌いは無く、子供好きだ。ただ、千冬は桃子の親としての“信念"を土足で踏み荒らした。
「そうですか・・・・・」
千冬は立ち上がり、出ていこうとした。
「織斑さん。七年前の答えを聞かせてもらえないかしら?」
「・・・・・・・・・・」
七年前。それは織斑千冬にとって別れの日であり、“織斑秋"が死に“高町秋"が生まれた日だ。その話は長くなるのでまた今度話そう。
「・・・・・・・・・・失礼します」
千冬は答えずに高町邸から出ていった。
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突然だが刀奈の家は広い。俺の家も広い方だと思うが刀奈の家とは比べ物にならない。道場は家にもあるから分かるけど、何で蔵なんかあるんだ?一度刀奈達に聞いたら目を逸らしながら“知らない方が良いこともあるのよ"と言われた。怖えょ・・・・・。
「お姉ちゃん、入るね」
「えっ!?ちょっ、待ってちょうだい簪ちゃん!?」
部屋の中から刀奈の制止の声を無視して簪が襖を開けた。そこには・・・・・
「しゅ、秋くん・・・・・?」
「お、おう・・・・・」
下着姿の刀奈がいた。紫・・・・・エロいな。
「お兄ちゃん、見ちゃダメ!!」
ブスッ!
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!目がぁぁぁぁぁぁ!?目がぁぁぁぁぁぁぁ!?」
マドカからまさかの目潰しを食らった。まさか、某大佐みたいな悲鳴を上げることになるとわ・・・・・。
「刀奈!今すぐ服を着て!!」
「は、はい!!」
マドカが叫んでいるが目が痛くて開けない。
「秋お兄ちゃん大丈夫!?」
「な、なのはか・・・・・大丈夫だ。ただ、見えないから引っ張っていってくれないか?」
「うん!」
なのはが俺の手を引いて部屋の中に入っていった。
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「ひ、久しぶりね秋くん」
「そ、そうだな・・・・・」
目の痛みも退き、何とか視力を取り戻した俺は刀奈と向かい合う形で座っている。お互いに顔は赤くなっている。
「お見合いみたいですね」
クーちゃん・・・・・お願いだから余計なことを言わないでくれ。
「さ、さて!今日は何して遊びましょうか!」
「マリオ○ート」
簪は何処に持っていたのかマリオ○ートのパッケージを持っていた。
「え~!大乱闘が良い!」
「私はマリオ○ートが良いなぁ」
「私も大乱闘ですね」
マドカとクーちゃんが大乱闘。簪となのははマリオ○ートか・・・・・。
「う~ん。なら、交代交代でやりましょう。先にマリオ○ート。それから大乱闘で良いんじゃないかしら?」
まあ、それが妥協点だな。マドカ達も納得したのか頷いてるし。
「ならさぁ~マリオ○ートするのは良いけど順番どうするわけ?」
「持ち主の簪ちゃんは確定として、あとはくじ引きで良いんじゃないかしら」
刀奈はそう言うと手早くアミダくじを作り始めた。
「ささ、みんな名前を書いて」
刀奈は右端に名前を書き、順番にマドカ達が名前を書いていき、最後に俺が名前を書いた。
「えーと、最初は簪ちゃんと私、クロエちゃんと秋くんね」
マドカとなのはは見学か・・・・・だから、そんな寂しそうな目で見ないでくれなのは。
「はぁ・・・・・おいで、なのは」
「うん!」
なのはは寂しそうな目から一転、ニコニコして俺の膝に座った。なのはって髪がフワフワしてて気持ちいいんだよな。フェイトはサラサラしてて撫でやすいし、はやてはなのはとフェイトを足した感じの髪質だな。
「うぅ~~~~~!」
マドカがものすごく羨ましそうな目でなのはを見ていた。何故に?
「さあ、ヤるわよ!!」
ヤル気満々だな刀奈。
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マリオ○ートから大乱闘に変わり、今は簪とマドカ、なのはとクーちゃんが対戦している。俺と刀奈はその対戦を見ながらチェスをしている。
「そういえば刀奈。櫛奈さんと十夜さんは」
「お父さんとお母さん?二人とも出掛けてるわ」
「ふ~ん」
「何でも“二人の男の子"がISを動かしたみたいなの。二人の内、一人の身元は分かってるけど、もう一人の身元は分かってないのよね~」
バレてる!?いや、俺の他に二人が動かしたんだ。そうに違いない!(自己完結)それに身元が分かってないなら問題ない!
「そろそろお母さんから電話が来るはずなんだけど・・・・・」
プルプル~プルプル~
「あ、かかってきた。ちょっと行ってくるね」
刀奈は急いで部屋から出ていった。
「ちょっ、簪!?そこでスマッシュ技は反則だろ!?」
「勝負の世界は弱肉強食」
「にゃあぁぁぁぁぁ!?クーちゃん、必殺技は反則なの!?」
「勝てば良いのです!!勝てば!!」
「て、私達も巻き込むな!!」
「あ、ストック無くなった・・・・・」
マドカはガノン○ルフ、簪はマ○ス、なのははピ○ト、クーちゃんはスネー○を使っている。クーちゃん、キャラが変わってるぞ。
「秋くーーーーーーーーーーん!!」
部屋の外からドタドタと足音を鳴らしながら刀奈が入ってきた。
「秋くん!貴方、ISを動かしたの!?」
バレたーーーーーーーーーー!?何で!?何処から!?どんな経由で!?
「ウ、ウゴカシテナイヨ?」
「嘘!なら、何でカタコトなのよ!!」
し、しまった・・・・・。動揺してカタコトになってしまった。
「お兄ちゃん・・・・・諦めよ」
マドカが俺の肩を叩いてきた。
「はい・・・・・動かしました」
怖い・・・・・刀奈がものすごく怖い。後ろに般若が浮かんでるんだもん。
「マドカちゃ~ん・・・・・」
「なの姉~刀奈が怖いねぇ~」
なのははマドカの後ろに隠れた。戸籍上だとなのはがお姉ちゃんなんだけど。
「秋くん。貴方は強制的にIS学園に入学する事になるわ」
「まあ、世界でISを動かした二人の内、一人だからな」
入学するのは良いけど、管理局の方はどうしよう?空佐に頼んで夏休みまで休暇を貰うか?てか、もう一人って誰だ?
「入学するのは別に良いけど、マドカも一緒に入学する事は出来るか?」
「そうね・・・・・学園の教師から推薦とかあれば特例で入学試験を受けることはできるけど・・・・・」
学園の教師からの推薦・・・・・あ!
「あ、スコール?お願いがあるんだけど・・・・・」
いつの間にかマドカがスコールに電話をかけていた。
「これで問題は無いな」
「ええ。なら、私の方で入学試験の準備を進めておくわね。でも・・・・・良いの?お義母様達に話してからじゃなくて?」
お母様の言い方がおかしかった気もするが気にしないでおこう。
「母さんと父さんの場合、自分で決めた事には賛成してくれるからな」
俺となのはが魔導師に成るのも悩んでいたけど認めてくれた。
「ブレッシングハート」
〈何ですか、マスター?〉
俺は首にかけていた俺のデバイス、ブレッシングハートに呼び掛ける。
「空佐に繋げてくれないか?」
〈分かりました!〉
ブレッシングハートはそう言うと俺の前に画面が現れ、数秒すると画面には黒い長髪に、赤のメッシュが入った女性が映し出された。これを簪の前で見せたらキラキラした目で見てきた。
『アンタの方から通信してくるなんて珍しいじゃない、高町三等空士?』
「ええ。頼みがあって通信させてもらいました、アンジェラ空佐」
アンジェラ・ウォン三等空佐。俺が所属する“時空管理局本局所属 空士157部隊"の部隊長で管理局切手の問題児だ。この人がもつ武勇伝は数え切れない。やれ、犯人逮捕の為に建物丸々一つを吹き飛ばした。やれ、気に入らない上官を模擬戦と称して、病院送りにしたり。やれ、告白してきた二佐の子供を“弱いからイヤ"の一言で突っぱねたり。話始めたらきりがない。まあ、この人が起こした問題行動は何れも理にかなっていた。建物を吹き飛ばしたのは犯人が爆弾を仕掛けていたから。上官を病院送りにしたのは、その上官が部下に訓練と称したイジメをしてたかららしい。
『頼み?給料の前借り以外なら聞いてあげるわ』
「違います。実は所用で半年程有給を取りたいんですが・・・・・」
『半年の有給?・・・・・わけありみたいね。良いわ。半年の有給を認めてあげる』
「本当ですか!?ありがとうございます!」
『そのかわり!此方(ミッドチルダ)に来たら・・・・・覚悟しなさいよ?』
「りょ、了解・・・・・」
空佐はそれだけ言うと通信を切った。あぁ・・・・・ミッドチルダに行ったら確実に書類の山が待ってるな。
「秋くん。今の人は?」
「俺の上司だ」
刀奈にそう言って俺は立ち上がる。
「俺は母さん達にこの事を話すから先に帰るけど、マドカとなのは、クーちゃんはどうする?」
「なのはも帰る!」
「私も帰らせてもらいます」
「私はもう少し残るね」
「分かった。それじゃあ、刀奈、簪。お邪魔しました」
「お邪魔しました!」
「お邪魔しました」
「また来てね~」
「みんな、バイバイ」
俺たち三人はそう言って刀奈の家を出た。
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「ねえ、刀奈。もう一人ISを動かしたのって誰?」
「どうして知りたいのかしら?」
お兄ちゃんが帰ったのを確認した私は刀奈に聞く。
「ただの興味・・・・・じゃダメ?」
「・・・・・この事は秋くんには内緒よ?」
「分かった。聞かせて」
「ISを動かしたもう一人は“織斑千冬"の弟、“織斑一夏"君よ」
やっぱり・・・・・。
「“世界最強"・・・・・いえ、“私のオリジナル"の弟ね」
私は“織斑千冬"の遺伝子から生まれたクローンだ。私がお母さん達に引き取られる前まで“亡国機業"と呼ばれるテロリストの一員だった。まあ、四年前ぐらいにウサギに潰されたけど。
「復讐・・・・・何て考えてないわよね?」
刀奈が厳しい目で見てきた。簪も心配するような目で見てくる。
「考えてないよ。今の幸せを失いたくないしね。・・・・・何より、友達と戦いたくないもん」
まあ、模擬戦とかなら容赦なくボコボコにするけど。
「私もよ」
私がまだ“亡国機業"に居たらこんな関係は無かっただろうね。
「さて、私も帰るね。今ならお兄ちゃん達に追い付くだろうし」
「分かったわ。あ、秋くんに入学試験の日時が決まったら連絡するって言っておいてちょうだい」
「分かった。じゃあね、刀奈、簪」
「バイバイ、マドカ」
私はそれだけ言って刀奈達の家から出た。走ればお兄ちゃん達に追い付くかな?