リリカル・ストラトス 元織斑家の魔導師   作:妖精絶対許さんマン

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時間が一気に飛ぶし、適当です。


そんなに・・・・・そんなに偽物の家族の方が良いのかよ!? by 織斑一夏

簪の専用機は無事に完成した。名前は“打鉄弐式・真打”。心と結希と簪がテレビ通話で話し合い、システム面が完成どころか、性能が遥かに向上したらしい。何より、3人は仲良くなっていた。スラスターも問題なく稼働した。そして、カートリッジ・システム登載型可変式弓“天穹の弓(タウロポロス)”が完成した。“天穹の弓”は数種類の矢を射ち出すことが出来る。詳しいことは秘密だ。そして、学年別タッグトーナメント当日。

 

「私たち、勝てるよね・・・・・?」

 

「ああ。俺たちタッグは最強だ」

 

問題はボーデヴィッヒだ。専用機の情報が無いから対策の立てようが無い。

 

「おにぃぃぃぃぃちぁぁぁぁぁん!!」

 

「ぐはぁ!?」

 

マドカの声が聞こえたと思ったら、背後からマドカに背中に抱き付いてきた。

 

「マ、マドカ・・・・・?タックルは止めてくれないか?」

 

「やだ!」

 

「しゅ、秋・・・・・?大丈夫?」

 

「大丈夫・・・・・じゃない」

 

むっちゃ痛い。

 

「お兄ちゃん私との約束覚えてるよね?」

 

「覚えてるよ。タッグトーナメントが終わったら2人だけで出掛けるんだろ?」

 

「うん♪よろしい!」

 

マドカはニコニコ笑いながら俺の背中から降りた。

 

「マドマド~、走らないでよ~」

 

「あ、本音のこと忘れてた!」

 

マドカが走ってきた方から本音が走ってきた。

 

「もぉ~マドマド速いよ~」

 

「ごめんね、本音?」

 

マドカと本音がタッグみたいだな。

 

「秋。トーナメント表が出るよ」

 

簪に言われてモニターを見る。トーナメントは1年生から始まる。さて、初戦の相手は誰だ?マドカ達じゃないと良いんだけど。

 

「え・・・・・」

 

「マジかよ・・・・・」

 

俺と簪の初戦の相手はーーーーー織斑とデュノアだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一方、秋と簪の初戦の相手チーム、一夏とシャルロットは秋達とは反対のピットに居る。

 

「初戦から高町君と更織さん・・・・・で良いのかな?」

 

「相手が誰だって関係ない。戦って勝つ。それだけだ!」

 

「そうだね。頑張ろう、一夏」

 

(待ってろよ秋。記憶が無いとか関係ない!お前をぶん殴ってでも、俺達のところに連れ戻してやるからな!)

 

一夏は2つの勘違いをしていた。1つ、自身が強くなったと思っていること。確かに、クラス対抗戦よりは強くなっただろう。それでも、一夏は秋の足元にも及ばない。剣道を辞め、バイト生活に明け暮れて、2ヶ月程しかISの訓練をしていない一夏と、店の手伝いに剣術の鍛練、何より命を賭けた戦いを乗り越えて来た(・・・・・・・・・・・・・・・)秋。練度も経験も、そして覚悟も違う。

 

 

 

 

 

そして、2つ目の勘違いは、“秋は心の底では自分達のことを家族と思っている”と思ったことだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『学年別タッグトーナメントの開幕を宣言します!』

 

『司会はクラス対抗戦と同じ、3年1組所属の神藤那珂ちゃんと!』

 

『同じく川内夜子よ』

 

『時間も無いからちゃっちゃと進めるね!タッグトーナメントの初戦を飾るのは、1年1組所属の織斑一夏君とシャルル・デュノア君の男子ペアーと!』

 

『1年1組所属の高町秋と1年4組所属の更織簪の生徒会ペアーね』

 

『いやー、両ペアーとも専用機持ちだね、夜子ちゃん!』

 

『そうね。それと1つ訂正があるわ。クラス対抗戦の時に発表した更織簪の専用機、“打鉄弐式”はまだ完成していなかったらしいわ』

 

『てっことは・・・・・?』

 

『完成したうえにパワーアップもしたみたいね』

 

『おおー!これは期待できる試合になるね!それじゃあ、両ペアー入場!』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『簪。織斑は俺を狙ってくるはずだ。デュノアのことを頼む』

 

『わかった。気をつけてね』

 

『ああ。簪もな』

 

ピットから飛び出して、アリーナに降り立つ。反対側のピットからも一夏とシャルルが飛び出して来た。

 

「秋!お前には負けないからな!」

 

「勝手にほざいてろ」

 

4人は各自武装を展開する。秋は“紅蓮”を、簪は超振動薙刀“夢現”を、一夏は“雪片弐型”を、シャルルはアサルトカノン“ガルム”と連装ショットガン“レイン・オブ・サタディ”を。

 

『試合開始!!』

 

 

ーーーーーーーー簪VSシャルルーーーーーーー

 

 

「僕から行かせてもらうよ!」

 

シャルルはジグザグ移動しなが“ガルム”と“レイン・オブ・サタディ”を撃ちながら、簪に接近する。

 

「・・・・・・・・・・」

 

簪は迫り来る弾丸を見ながら背中に登載されている荷電粒子砲“春雷”から光弾が放たれる。光弾は簪に迫っていた弾丸を撃ち落としながら、そのままシャルルに迫る。

 

「おっと!」

 

シャルルは光弾を難なく避けた。だが、簪は間髪容れずに“夢現”で斬りかかる。

 

「くっ・・・・・!」

 

シャルルは咄嗟に“ガルム”で防ぐ。2人の鍔迫り合いが続くが、戦況は変化する。シャルルは“ガルム”を手離して、“拡張領域”から近接ブレード“ブレッド・スライサー”をすぐさま展開して、今度はシャルルが簪に斬りかかる。“高速切替”。それは、シャルルの最も得意な技術だ。

 

「・・・・・・・・・・」

 

簪は降り下ろされるブレードを冷静に見極めて、手に持った “夢現”を回転させることで、シャルルの手から弾き飛ばした。シャルルはすぐに簪から距離を取った。

 

「強いね・・・・・更織さん」

 

「デュノア君はそうでもないね」

 

簪はどこか残念そうに言う。シャルルはその言葉に腹を立てたのか、少し頬がひきつっている。

 

「デュノア君の攻撃には“覚悟”が宿っていない。そんな攻撃じゃ、私を倒すどころか、私の“覚悟”は打ち砕けない」

 

簪はずっと見てきた。接してきた。尊敬した。親友になった。好きになった。あの3人に比べればシャルルの攻撃は紙切れを投げ付けているに過ぎない。

 

「なら、その“覚悟”を僕が打ち砕かせてもらうよ!!」

 

リヴァイブの左装甲の盾が弾け飛び、中から杭が露出した。第2世代ISが誇る最大火力の武装“灰色の鱗殻(グレート・スケール)”。通称“盾殺し”。

 

「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

シャルルはパイルバンカーを構えて簪に向かって突撃する。

 

(私はこんな所で立ち止まるわけにはいかない。お姉ちゃんが、マドカが、秋が立っている場所はまだ遠い。背中すら見えてない。でも、必ず追い付く。同じ場所に立てるように。同じ景色を見れるように!)

 

簪は“夢現”を地面に突き刺す。“拡張領域”から新武装“天穹の弓”と矢筒を展開する。矢筒から矢を取り出して、弓に番る。

 

「カートリッジ・・・・・!!」

 

〈Exceed Charge〉

 

“天穹の弓”の側面から薬莢が排出されて、白色のエネルギーが矢に流れていく。

 

「凍結矢・永久凍土」

 

簪は矢を放つ。矢はシャルルに向かって飛んでいく。

 

「当たらないよ!」

 

シャルルは飛来する矢を身を屈めて避ける。矢は通り過ぎていく。

 

「ーーーーー修正。反転から下方40度」

 

簪が呟くと、矢は反転し、シャルルに迫る。

 

「そんな!?」

 

シャルルは咄嗟のことに反応できず、パイルバンカーで受け止めてしまった。

 

「凍結」

 

矢が突き刺さった場所は徐々に凍っていき、パイルバンカー全体を凍らせただけではなく、パイルバンカーから上を凍らしていく。

 

「早くパイルバンカーを外した方が良いよ。凍傷になるから」

 

シャルルは簪の言葉を聞くとすぐにパイルバンカーを切り離した。パイルバンカーは切り離された衝撃で粉々に砕け散った。

 

「さ、試合を続けよ。武装はたくさん積んでるんでしょ?」

 

「リヴァイブの武装を1つ破壊したぐらいで調子に乗らないで欲しいね!」

 

シャルルはアサルトライフル“ヴェント”を展開、簪に向けて発砲する。簪は水平移動やジグザグ移動を組み合わせて回避していく。簪は回避しながら矢筒からコイルがぐるぐる巻きにされている矢を引き抜く。

 

(ここだ・・・・・!)

 

簪は急停止する。そして、弓をシャルルに向ける。

 

「神の雷霆は此処にありーーーーー」

 

〈Exceed Charge〉

 

“天穹の弓”からカートリッジが2発排出される。白色のエネルギーが矢に辿り着くと、コイルから青白い雷電の円環が現れた。

 

「ーーーーー人類神話・雷電降臨(システム・ケラウノス)!!」

 

矢は放たれる。矢はシャルルに迫るにつれて、鏃から徐々に消滅していく。そして、シャルルの眼前で完全に消滅した。矢を向けられたシャルル本人も、観客も困惑している。

 

「不発・・・・・?」

 

観客席の誰かが呟いた。シャルルは好機と踏んだのか一歩踏み出そうとしてーーーーーできなかった。

 

「ーーーーーーーーーーえ?」

 

リヴァイブは操縦者の意に反して、膝を着いた。

 

「周り、見た方が良いよ」

 

「周り?ーーーーーッ!?」

 

シャルルは周りを見て、驚愕した。シャルルの周りには青白い雷電の円環が回転していた。

 

「その輪は、一種のジャミングシステム。そして・・・・・」

 

簪は指を鳴らす。すると、円環が発光する。

 

「これで・・・・・終わり!」

 

雷電の円環は回転数を上げていく。円環の回転数が限界に達すると、轟音を響かせながら、8つの雷がシャルルを貫いた。

 

「あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

8つの雷をその身に受けたシャルルは悲鳴をあげる。リヴァイブの絶対防御が発動、SEを急激に減らしていく。シャルルは高圧電流によって意識を失ったのか気絶した。

 

『シャルル・デュノア!ラファール・リヴァイブ!戦闘不能!!』

 

アナウンスでシャルルの敗北が告げられる。

 

 

ガアンッ!!

 

 

放送が終わると同時に、土煙を巻き上げながら何かが落下してきた。土煙が晴れる。そこにはーーーーー。

 

「ぐっ・・・・・!かはっ・・・・・!」

 

装甲が所々罅割れ、立ち上がるのも困難な程にダメージを受けた一夏だった。

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 

上空には“紅蓮”のシリンダーから薬莢を排出、新しい薬莢を詰めている秋がいる。秋の目には明確な怒りが宿っていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「カートリッジ」

 

〈Ready〉

 

“紅蓮”の柄に内蔵されているシリンダーが回転、赤色のエネルギーが刀身に流れていく。

 

「はあっ!!」

 

秋は様子見と言わんばかりに赤色の斬撃を飛ばす。三日月状の斬撃は一夏に向かっていく。

 

「うおっ!?」

 

一夏は慌てて回避する。

 

「何時まで避けられる?」

 

秋は斬撃を飛ばす。縦、横、斜め、様々な角度で斬撃が一夏を襲う。

 

「はあっ!」

 

一夏は飛来する斬撃を、身を反らし、“雪片弐型”で斬り払いながらゆっくりと、確実に秋に接近していく。

 

「・・・・・へぇ?」

 

秋は純粋に感心していた。入学してから2ヶ月程でここまで強くなったことに。秋はすぐさま“拡張領域”から“ガトリングイージス”を展開する。

 

「ほら、追加だ。避けれるものなら避けてみろ!」

 

“ガトリングイージス”から無数の青色の光弾が一夏に向かって飛んでいく。そして、秋は“ガトリングイージス”で射撃をおこないながら、空中に浮いている一夏に接近する。

 

「おらぁ!!」

 

秋は“紅蓮”を縦に降り下ろす。

 

「ッ!?うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

一夏はダメージを受ける覚悟で“紅蓮”を防がず、“雪片弐型”を横に一閃。秋の胴を切り裂こうとする。

 

「無駄ァ!」

 

秋は迫る“雪片弐型”の刀身を蹴り上げて防いだ。

 

「なにっ!?あぐっ!?」

 

意外な方法で自分の攻撃を防がれた一夏は動揺していまい、秋の攻撃を受けてしまった。間髪入れずに秋は一夏に攻撃する。顔を殴り、怯んだところを首筋を蹴り、蹴った勢いで後ろ回し蹴りを首筋に叩き込む。

 

「げほっ!ごほ!ごほ!」

 

一夏は首筋を蹴られたことで咳き込む。

 

「どうした?俺を倒すんだろ?そんなんじゃ、俺を倒すのに100年掛かるぞ?」

 

秋は一夏を挑発する。

 

「・・・・・どうして。どうしてお前はそんなに強いんだよ!」

 

「・・・・・はぁ?」

 

秋は一夏の叫びに意味がわからないと言った顔をする。

 

「ISを動かした時期は俺とお前は一緒だって聞いた!なのに!どうしてこんなに兄弟で・・・・・俺とお前で差が出るんだよ!!」

 

一夏は自分と秋の実力の差を今まで理解していなかった。一夏は幼い頃から千冬に守られて生きてきた。成長するにつれて一夏は『誰か(何か)を守る』と言うことに固執してきた。だから、一夏は『弟の秋も自分が守る』と決めていた。自分にはそれを成し遂げられる力がある。そう思い込んでいた。だが、蓋を開けてみればどうだ?守るべき弟に一方的にやられている。一夏にはその事実が納得できなかった。そんな、一夏を秋は冷めた目で見る。そしてーーーーー。

 

 

「ーーーーーーーーーーーーーくっだらねえ」

 

 

吐き捨てる様に呟いた。

 

「くだらない・・・・・だと?」

 

「ああ、くだらない。ようやくわかったよ。お前と闘っていても楽しくない理由が」

 

秋は戦闘狂だ。自分でも認めているし、所属している部隊でも認知されている。その秋が、一夏との闘いを楽しくないと言った。秋の戦闘狂の面を知っている人間が聴けば耳を疑うだろう。

 

「お前は機械だ。ただ、入力された命令を実行するだけのロボットだ。闘っても楽しくない訳だ。ロボットと闘ってるんだからな」

 

「俺はロボットなんかじゃねえ!!」

 

「いいや、お前はロボットだ。1つのことに固執して、周りを見ようとしない。俺の事だってそうだ。未だに俺のことを弟だと思ってるんだろ?」

 

「そうだ!お前は俺と千冬姉の弟だ!だから、俺達のところに戻ってこい!!」

 

「認めるよ。確かに俺とお前らは姉兄だったかも知れない。だけど、もう違うんだよ。この世の何処にも“織斑秋”は居ないんだよ。簡単に言えば“織斑秋は死んだ”んだ」

 

“高町秋”は“織斑秋”の存在を否定した。秋からしたらこれ以上の問答をする気は無い。“紅蓮”を構えて、一気に決着をつけようとする。

 

「そんなに・・・・・」

 

「ん?」

 

一夏は小さく呟いた。その呟きが、秋の禁忌に触れると知らずに。

 

 

「そんなに・・・・・そんなに偽物の家族の方が良いのかよ!?」

 

 

その言葉を叫んだ瞬間、一夏の顔面に白刃が襲いかかった。

 


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