リリカル・ストラトス 元織斑家の魔導師   作:妖精絶対許さんマン

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ーーーーーーーーーーお前を母親のもとに送ってやる by 高町マドカ

「悪い、遅れた」

 

「ごめんね!遅れちゃった!」

 

生徒会室に行くと既に刀奈に簪、スコール、オータムが集まっていた。

 

「大丈夫よ。私たちも今来たところだから」

 

いつもと同じ、真っ赤なスーツを着たスコールが言ってきた。

 

「お昼の用意も出来てるから食べながら話しましょ」

 

刀奈は布に包まれた重箱を手に取る。各人自分の席に座る。

 

「それで?俺達を呼んだ理由はなんだ?」

 

俺は玉子焼きを食べる。お、だし巻き玉子だ。

 

「今日転校してきてラウラ・ボーデヴィッヒちゃんとシャルル・デュノア君のことよ」

 

「ウサギちゃんと男装君がどうしたの?」

 

「あ、やっぱりデュノアって男装してたのか」

 

「私は2人とも見たことない」

 

簪は4組だからな。

 

「はい。これが2人の資料よ」

 

スコールは分厚い資料を俺達全員に渡してきた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツ軍所属で階級は少佐。所属部隊は“シュヴァルツェ・ハーゼ”。ドイツが誇るIS特殊部隊の隊長か」

 

オータムは資料を読み進めていく。

 

「そんなに凄いのか?」

 

「凄いなんて物じゃないよ。ドイツは10機のISを保有していて、その内の3機を部隊が所有してるの」

 

「それが普通なんじゃないか?ISは言い方は悪いが現行最強の兵器として見られている。今のご時世、ISは国防の要だ。なら、IS専門の部隊にISを出来るだけ多く配備するのは当たり前なんじゃないか?」

 

「それでも、第2世代ISのラファールや打鉄が国防の要なの。他国なら自分の国の第3世代ISを自慢したがって軍属にしないものなの。でも、ドイツは第3世代ISを軍属にしてるの。だから、ドイツの第3世代ISの性能はほとんど出回ってないの」

 

スコールが詳しく説明してくれた。

 

「要するにボーデヴィッヒはエリートってことか?」

 

「簡単に言うとそうね」

 

「もっと、分かりやすく言うとオルコットの上位互換ってところかな?」

 

「あ、それ分かりやすい」

 

上手い例えだな。

 

「で、ここからが本題。2人から見てボーデヴィッヒちゃんはどう見える?」

 

刀奈の問い掛けに俺とマドカは顔を見合わせる。

 

「どう見えるって・・・・・ねぇ?」

 

「ああ。生まれながらの軍人気質だよ、あれは」

 

「正直関り合いを持ちたくないね。アイツは織斑千冬を狂信してる。あの手の奴は厄介だよ。自分が信じている物が絶対、その教えを受けた自分は選ばれた人間だと思ってる」

 

管理局でも滅多にお目にかかれないタイプだ。ゼストさんでももう少しフランクだ。

 

「そう・・・・・。問題を起こさないでほしいわね・・・・・」

 

絶対に起きる。

 

「次はシャルル・デュノア君。マドカが言った通り男装してるわ。本名はシャルロット・デュノア。フランスの大手ISメーカーデュノア社社長の不倫相手が産んだ子供よ」

 

「デュノア社・・・・・?」

 

そんな会社あるのか?

 

「お兄ちゃん。実習で使ったラファールを作ってる会社だよ」

 

「ああ・・・・・。ラファールを作った会社か」

 

「話を続けるわよ」

 

スコールは資料のページを捲る。

 

「デュノア社は今、第3世代ISの開発に息詰まっているの。恐らく秋と織斑君の専用機のデータ収集が目的じゃないかしら?」

 

「へぇ・・・・・」

 

 

ブルッ!

 

 

ヤバイ・・・・・。何がヤバイって隣のマドカが放つオーラがヤバイ。ナハトヴァール並にヤバイ。刀奈達も震えている。マドカの隣に座っているオータムなんか涙目だ。ちょっと可愛い。

 

「デュ、デュノア社は第3世代ISの開発が行き詰まっていて、経営不振に陥っているのよ」

 

「へぇ・・・・・。だから、男装してお兄ちゃんのデータを集めに来たんだ。・・・・・あの“自主規制”モンキーが」

 

ああ・・・・・マドカから黒いオーラが。オータムがすすり泣きしてる。こうなったら・・・・・。

 

「落ち着こうなー、マドカ」

 

黒いオーラを溢れ出しているマドカを俺の膝の上に座らせて、頭を撫でる。

 

「ふみゃ~あ♪」

 

マドカは猫のような声を上げる。俺の方からは見えないが蕩けきった顔しているのだろう。何故か、ネコ耳と尻尾が見える。

 

「ほっ・・・・・」

 

真横でマドカの黒いオーラを受けていたオータムは胸を撫で下ろしていた。

 

「秋君とマドカちゃんには2人の行動を監視、とまでは言わないけど見張っておいてほしいのよ」

 

「了解」

 

「にゃぁ~♪」

 

俺は普通に返事、マドカはネコ化しながら返事をした。

・・・・・今度アニメ○トでネコ耳買ってこよ。

 

「ねえ、マドカ。いつまで秋の膝に座ってるつもり?」

 

俺の対面に座っている簪が聞いてきた。・・・・・目が据わっている状態で。

 

「んー、ずっと!」

 

マドカの顔は見えないが、それはもう最高の笑顔なんだろう。

 

「・・・・・・・・・・」

 

あ、簪の顔から表情が消えた。簪は皿と箸を持って俺の方に来ると、マドカを押し退けて俺の膝の上に座った。

 

「ちょっと!お兄ちゃんの膝の上は私となの姉の特等席なの!簪は座っちゃダメ!」

 

「関係無い。秋の膝は皆の物。言わば共有財産。だから、私にも座る権利はある」

 

ねえよ。

 

「良いよね、秋?」

 

「ダメだよね、お兄ちゃん!?」

 

簪とマドカが見つめてくる。

 

「あー、別に良いんじゃないか?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

俺がそう言うとマドカはガーン!とショックを受けている。簪は勝ち誇った顔をしている。

 

「うー!やっぱり納得いかなーい!!お兄ちゃんの膝は私の物なの!簪は刀奈の膝に座ったら良いじゃない!!」

 

「お姉ちゃんの膝は座りにくい。それに抱き締めたりしてくるから嫌」

 

「簪ちゃん!?」

 

二次被害で刀奈までショックを受けている。それより弁当食べたいんだけど。

 

「秋。あ~ん♪」

 

スコールに呼ばれて、振り向いたら、笑顔で玉子焼きを挟んだ箸を差し出していた。

 

「あ~ん♪」

 

回りを見回すが、マドカと簪は言い争い、オータムはいまだにすすり泣きしていて使い物になら無い。刀奈は簪に嫌と言われて部屋の隅でいじけている。つまり、この場には俺の味方が居ない。

 

「・・・・・あ~ん」

 

渋々、本当に渋々とスコールが差し出してきた玉子焼きを食べる。

 

「ふふ・・・・・(即席の作戦にしては上手くいったわね。間接キス・・・・・成功しちゃったわ)」

 

何故かスコールが小さく笑っている。

 

「次は何が良い?」

 

え?まだ続くの?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

デュノアが転校してきて5日が経った。お兄ちゃんは部屋で本を読んでいる。私は1人で第3アリーナの更衣室に向かっている。理由は簡単。デュノアに釘を刺しておく為だ。織斑の専用機のデータを盗もうが構わない。むしろ盗め。でも、ウィザードのデータを盗むのは絶対に許さない。

 

「・・・・・・・・・・」

 

私は太股に着けているホルスターから亡国機業時代から護身用として持たされているハンドガン、M1911A1カスタムを取り出す。

 

「一夏、先に帰っておいてくれないかな?」

 

「えぇ?そんなこと結わずに一緒に帰ろうぜ!」

 

更衣室から織斑とデュノアが出てきた。織斑はしつこくデュノアに一緒に帰ろうと迫っている。ホモだ。完全なホモだ。

 

「チッ・・・・・」

 

早く何処かに行け。いっそのこと威嚇射撃でもしてやろうか。しばらくすると、織斑は諦めたのか先に帰っていった。

 

「ふぅ・・・・・」

 

デュノアは溜め息を吐き、更衣室の方に戻っていった。私はデュノアの後を追いながら、弾をリロードしてセーフティを解除する。デュノアが更衣室に入った瞬間にデュノアの右腕をつかんで、足を引っ掻けて倒し、関節を決める。

 

「うぐっ!」

 

デュノアが呻き声を上げる。

 

「動くな。少しでも動いたら・・・・・」

 

私はデュノアの後頭部に銃を押し付ける。

 

「殺すぞ?」

 

割りと本気の殺気をデュノアに当てる。デュノアは震えている。

 

「今から私が質問する答えだけに頷け。良いな?」

 

デュノアは震えながら頷いた。

 

「1つ目。お前はシャルロット・デュノアで間違いないな?」

 

デュノアは頷く。

 

「2つ目。お前はデュノア社のスパイ。間違いないな?」

 

デュノアは頷く。

 

「3つ目。お前の目的は 白式とウィザードのデータを盗みに来た。間違いないな?」

 

デュノアは頷く。

 

「そうか。ここで起こったことは全部忘れろ。そして、何事も無かったように振る舞って部屋に戻れ。もし、変な行動してみろ・・・・・」

 

私はデュノアの耳元に顔を近づける。

 

「ーーーーーお前を母親のもとに送ってやる」

 

あの人(お兄ちゃん)を・・・・・私に光をくれた人は私が守る。それが、どれだけ汚れていたとしても。

 

「私はいつでもお前のことを見張っているからな」

 

デュノアの拘束を止めて、M1911A1カスタムをホルスターに戻す。

 

「じゃあな」

 

私は顔を見られる前に更衣室から出た。

 

「あ・・・・・ボイスチェンジャー使うの忘れてた」

 

ま、良いか。デュノアと会話すること何て無いし。

 

「お兄ちゃん居るかな~」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ただいま~」

 

部屋の扉を静かに開ける。部屋の電気は消えていた。寝てるのかな?

 

「お兄ちゃん?」

 

ベッドで横になっているお兄ちゃんの顔を覗き込むと、ぐっすり寝ていた。

 

「今のうちに・・・・・」

 

私はベッドの下からアタッシュケースを引っ張り出す。太股からホルスターを外して、アタッシュケースの中に戻していく。最後にマガジンを納めて、蓋を閉めてロックをかける。

 

「・・・・・・・・・・」

 

刀奈と簪の気配は無し・・・・・。私はお兄ちゃんのベッドに潜り込む・・・・・のを止めた。

 

「制服がシワになっちゃう」

 

私は制服を脱いで、私のベッドに投げ捨てて下着姿になる。下着は美由希姉に選んでもらった。

 

「おっ邪魔しまーす♪」

 

今度こそお兄ちゃんのベッドに潜り込む。

 

「ん~~~~~♪」

 

お兄ちゃんの体はとっても温かい。私の癒しだ。

 

「あれ?これ・・・・・何?」

 

寝返りをしたときに服が捲れたのか、お兄ちゃんの背中が見えていた。お兄ちゃんの背中には抉られたような痕(・・・・・・・・)があった。

 

「こんな怪我・・・・・私知らない」

 

お兄ちゃんのことで私が知らないこと何て無いのに・・・・・。




マドカちゃんはブラコンです。


用語説明

M1911A1カスタム

マドカが亡国機業時代から護身用として持っていた拳銃。改造によって連射速度と命中率を向上させている。普段はスコールに預けている。

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