授業が終わり、今から昼休みだ。
「比企谷~、生徒会室行くよ~」
「……一緒にか?」
「そうだけど?」
クラスが少しざわつく。
今まで生徒会室に行く時に一緒に行くことなんかなかったのに、今日は行くということに驚いているようだ。
しかも、折本から誘っている。
どうゆう、気まぐれだ……。頭でも打ったのか……。
「ねぇー、早く行こうよー」
「はぁ……分かった」
俺と折本は生徒会室に向かう。
折本は弁当を二つ持ってきている。
「ちゃんと、作ってきたんだな」
「言ったんだから、作ってくるでしょ」
「そうなのか……?」
俺は弁当を作ってきてないのに弁当を持ってきていない俺を見て、「本気にしたの? ウケるwwww」とか言われる可能性も考慮に入れておいたんだけどな。折本はそこらへんはきちんとする子だったらしい。
「もしかして、自分で作って来ちゃった?」
「いや、今日は作ってきてない」
「良かった~」
ほんと、俺も良かった~だよ。作ってきてなかったら、昼飯どうしようかと思った。
「あ、でも、あんまり期待しないでね?」
「別に食えるもの入れておいてくれれば充分だよ」
「何それ」
さすがに炭とか入れられると困るからな。食べ物を炭にしようとしたらどれくらい焼けばいいんだろうか。
折本は料理も得意なようだし、まともな物が出てくるだろう。
「比企谷ってこんなやつなんだねー」
「何が?」
「中学時はさー、面白なくて、キモくて、変な奴だなーと思ってたんだけどさー」
「何? 俺の心、折りに来てるの?」
キモいとか酷いんだけど。
「そんなじゃないって」
「ダメージ喰らってるんだけど」
「まあいいじゃん、それぐらい」
「酷くない?」
ダメージ喰らい過ぎて、瀕死なんだけど、ポケモンセンター連れてってくれませんかね。
「でも、最近はキモくて、ちょっと面白くて、変な奴だなーって」
「あんまし変わってないじゃないか」
「あ、本当だ」
キモさと変は変わらないのかよ……。
「まあ、なんでもいいけどよ」
俺は生徒会室に入る。
続けて折本も入ってくる。
「もぉー、はい、お弁当」
「……サンキュ」
お弁当の中身は肉メインだった。唐揚げとかそんな感じのが多い。
俺としては肉メインなのは嬉しい。男は肉だな。
「あ!」
折本がニヤニヤしている。
嫌な予感しかしない……。
「ねぇー、比企谷ー」
「なんですかね、折本さん」
「あーん、してあげよっか?」
「なっ……」
危ない、危ない。心のATフィールド展開してなかったら、うっかり恋に落ちるところだった。
折本も若干恥ずかしそうにしながらも反応を見てニヤニヤしている。
「めっちゃ、照れてるじゃん、ウケる」
「うるせぇ……」
こんなことされて照れない方が可笑しい。
俺は折本に少し反撃する。
「お前だって、顔赤くなってんぞ? 恥ずかしかったんだろ?」
「まあ、ちょっとだけ……」
言われたことで更に折本の顔が赤くなる。
「私のことはいいから! 比企谷、ニヤニヤしててキモイ!」
「ニヤニヤしてたか俺?」
「うん、もう、通報しないといけないレベルで」
まじかよ、全然気づかなかった……。ってか、俺がニヤけたら通報されんの? マジで? 気を付けないとな……。
「そんなことより、あーん」
「冗談だろ……?」
「恥ずかしいんだから、早くして」
「お、おお」
恥ずかしいならするなよ……。顔、さっきより真っ赤だし。
「早く」
「あ、あーん」
その瞬間、扉が開かれた。
「比企谷、今日のことについてだが……」
「「「あ」」」
3人はそのままの姿勢で硬直する。
俺と折本があーんをしているのを平塚先生はじっと見つめている。
「わ、悪い、邪魔したな」
「あ、ちょっと!」
平塚先生がすごい勢いで出ていった。
「ああ! 結婚したい!」
「平塚先生……」
叫びながら、廊下を走っていった。
「「……」」
二人の間に沈黙が生まれる。
「普通に食べよっか……」
「そうだな……」
そのあと、平塚先生は廊下を走っているところを見られて怒られるのであった。