比企谷八幡が海浜高校で生徒会長をしたら   作:時雨煉

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冬休みはもっと書けたらいいな(希望)
なろうとかでも書きたいと思ってるので交互になるかもです。
新人賞にちょっと書いてたりする。
これは、趣味って感じで書いてます。


23話

 クリスマスの次の日だって言うのに、学校に行かなくてはならない。

 冬休みがまだと言うわけでもなく、ただ単に生徒会のお仕事と言うわけだ。

 とにかく、休みたい。

 冬休みは、休むためにあって、仕事をするためではない。

 俺には、休むと言う重要な仕事があるのだ。

 休むためには、休むと言う仕事をしなくては、ならなくて、休みには、仕事はしてはいけなくて……。

 端的にいうと、学校に行きたくない、だ。

 ただでさえ、仕事がめんどうなのに、折本と会うのが、なんだが、気まずい。

 昨日、葉山に言われたことが少し引っかかる。

 

『君はどちらを選ぶんだい? それとも、どっちも選ばないのか……』

 

 選ぶとか選ばないとか、わけがわからない。

 選ぶとは、一体何を? 選ばないとは、一体何を?

 ……分かってる。

 本当は、分かっている。でも、分かりたくない。

 俺は、誰からも好まれず、嫌われているのが当たり前なんだ。

 一色だって、生徒会長としての務めを果たしているだけで、折本だって、同じ生徒会だからだ。

 特別な感情なんて、一つもない。

 仮に抱いたとしても、それは間違いだ。

 見せかけで、虚像で、偽物だ。

 全ての感情は、偽物だ。

 本物なんて、ありはしない。

 何故、そんな感情を抱くのか? それは、簡単な話だ。

 だって、人間だもの。

 みつを君が言っている通り、人間は間違いを起こす。

 俺だって、人間だし、折本達だって、人間だ。

 だから、こうして、間違いを起こす。

 それが分かっている俺だからこそ、踏みとどまらなくてはいけない。

 人の幸せは、平等にあるべきだ。

 それを俺が奪ってはいけない。

 

「お兄ちゃん! 何ぼうっとしてるの? 遅れるよ?」

「あ、ああ」

 

 小町の怒号でふと現実に戻された。

 小町は、俺の顔を除きこんだ。

 

「大丈夫?」

「ああ……行ってくるよ」

 

 小町は、大丈夫と心配してきたが、大丈夫と言って、そのまま、学校に向かった。

 小町を心配させるわけにもいかないし、行くという選択肢しかなかった。

 選択肢、一つとかどんなクソゲーと思ったが、今までだって選択肢は一つだった気がする。

 神様は、きっと、俺の設定をミスったんだ。

 選択肢の二つや三つぐらい用意して欲しいものだ。

 

 非常に行きたくなかった学校も、行ってみると、案外、早く着く。

 自転車を駐輪場に置き、自動販売機へと向かう。

 もちろん、買うのは、MAXコーヒだ。

 糖分は、疲れた頭を回復させてくれること間違いなし。

 なんなら、ベホイミ以上の回復力だ。

 ベホマには、勝てないけどな。

 

「ん……?」

「あ、比企谷おはよー」

「げっ……」

 

 やはり、神様は、俺の設定をミスっている。

 俺のラックどうにかなりませんかね? 俺を二体合成すると上がるとか……。

 ……むしろ、下がりそうだな。

 そんな、俺の心中を知らない折本は、笑顔で駆け寄ってくる。

 

「比企谷、早いねー」

「そ、そうか? 時間通りだと思ったんだが……」

「三十分ぐらい早いよ?」

「時計ずれてやがる……」

 

 腕時計を確認すると、集合時間になっていたが、本当は、三十分ぐらい早いらしい。

 くそ、神様の馬鹿!

 ラック上げるシステム、早く実装してくれよ。

 そんなものがあったら、いくらでも買うね。

 でも、そんなものはないため、こうして、折本と出会ってしまった。

 

「これ、買っといたよ」

 

 投げるように渡されたのは、MAXコーヒだった。

 

「お、おう……ありがとな」

「……どうしたの?」

「いや、何でもねぇよ」

「そう?」

「ああ、だから、行くぞ」

 

 何でもない。本当に何でもない。

 何かがあるはずがない。

 そう、心の中で呟きながら、生徒会室に向かった。

 

 

   ****

 

 

 生徒会には、生徒会のメンバーはすでに揃っていた。

 何が早いだ。他の奴らの方がはやいじゃねぇか。

 あとは、風紀委員のメンバーだけか……。

 今日は、風紀委員と会議をすることになっている。

 来週ということだったが、少し早めることになった。

 平塚先生の都合らしい。

 わ、横暴……。

 

「お、集まってるな、感心感心」

 

 平塚先生が生徒会室に入って来た。

 

「風紀委員のメンバーを呼んでこよう。君達は、待っていたまえ」

 

 急に来て、急に出ていったなあの人……。

 まあ、また来るわけだが……。

 えっと、会議内容は、風紀が乱れてるとかなんとかだったな。

 スカートが短すぎるとか、不順異性交遊とかだろう。

 まあ、適当に玉縄の話に合わしておけばいいだろう。

 変な方向に行った場合は、止めるが……。

 

「比企谷君、おはよう」

「ああ、玉縄か」

「今日は、フレキシブルにセンセーションをあおりたてるような有意義な会議をしよう」

「おう、任せとけ」

 

 玉縄は、嬉しそうに笑った。

 半分以上何言ってるのか分からなかったけど、大丈夫だ。

 会議中では、あれが見られることを祈ろう。

 ちょっとだけ、面白いからな。

 玉縄の後ろには、意識高い系の奴らが何人もいた。

 折本の空気を読まない感じを大事にすれば、うまく会議は回る。

 

「では、会議を始めようか」

 

 平塚先生がそう言うと、皆席に着いた。

 話は、玉縄から切り出した。

 

「前にも言った話だけど、校内の風紀が乱れてる」

「それある!」

 

 玉縄は、うんうんと頷いた。

 やっぱ、駄目だわ。折本使い物にならない。

 

「問題は色々とあるけど、まずは衣服の乱れから直していこう」

 

 まあ、予想通りだな。

 俺達で出来ることと言っても限られているし、何かキャンペーン活動をすることぐらいだろう。

 制服見直し週間とか必要あんの? みたいなやつをやればいいだけだ。

 でも、この会議は普通には進まない。

 

「まず、皆の意見を聞こうか」

 

 風紀委員の一人が手を挙げた。

 あ、やべ、出遅れた。

 

「いっそのこと、私服にするって言うのはどうかな?」

『……』

 

 場が静まった。

 さすがに、皆分かってくれたか……。

 でも、イレギュラーである、玉縄と折本が声を上げた。

 

「それある!」

「いいね、それ。アグレッシブっていうか、斬新な発想だよ」

「確かに……」

「いいかもしれない」

 

 風紀委員のメンバーと折本がこの意見を肯定し始めた。

 ダメかー……。

 平塚先生は、立ちながら寝ているし……ダメ教師と言わざるを得なかった。

 仕方ない……ここは、俺が、

 

「でも、校則を変えるには時間が必要だ。先にそれ以外で考えた方がいいんじゃないか?」

「それある!」

「仕方ない……その方が現実的ではあるね」

「それと、並行して、進めていくのはどうだろう?」

「それある!」

 

 折本に助けられ、一応、まともな方向に進んだ。

 そのまま、特に問題なく、会議は終わった。


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