比企谷八幡が海浜高校で生徒会長をしたら   作:時雨煉

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一章
第1話


「なん…だと…」

 

 そこには俺の名前があった。

 どこにあったかって? それは……

 

「生徒会長候補……」

 

 当然ながら、ぼっちである俺が生徒会長に立候補するはずなどない。

 何故なんだ……。

 

「くっ……」

 

 クスクスと笑い声があちこちから聞こえる。

 その中心人物の中には折本かおりがいた。

 

「比企谷が生徒会長とかまじウケるんですけどwwww」

 

 ウケねぇよ、笑えねぇよ。

 恐らくは誰が俺の名前を語り投票したのだろう。投票するには30人以上の署名がいるはずだが、最近のいじめはレベルが高いな……。

 そんなことよりこのままでは俺が生徒会長になってしまう。生徒会長をやる物好きはなかなかいないだろう。

 

「こんなことならあの時……」

 

 俺は当初総武高に入るつもりだった。

 だが、インフルエンザにかかってしまい試験を受けることが出来なかった。

 そのせいで第二希望だった海浜高に入ることになってしまった。

 ここには数人同じ中学の奴がいるから来たくはなかった。折本もその一人だ。

 

「あっ! でも、比企谷が生徒会長なったら、会長権限でアニソンばっかり流しそう!」

「何それ」

「中学時さあ、比企谷に告られた子がいてさ」

「可哀想……」

 

 可哀想ってなんなのマジで。告った次の日にクラス中で噂になってんのそれで、「A子マジ可哀想……」って……なんなの俺に告られるのそんなにダメなの? その夜、涙でどれだけ枕を濡らしたことか。

 折本の話はまだ続く。

 

「その子、比企谷にアニソン集みたいなの渡されてんの」

「マジで」

「それをさ、放送部の子が昼休みに流してさ、クラス中、大盛り上がり」

「何それ、超おもしろーい」

 

 なんで、リア充共はこうゆう話が好きかね……。リア充爆発しろ!

 

「ほんで、その三ヶ月後ぐらいに私告られてさ」

「変わるの早すぎでしょ」

 

 中学の時、俺は折本のことは好きだった。

 今でも思う。なぜ、折本を好きになったのか。折本だけではない、他の奴も好きになったのか分からないことが多い。

 俺は人のことを本気で好きになったことが一度もないのだろう。

 

「比企谷はいるかね」

「……」

 

 入って来たのは平塚先生だった。

 今年から海浜高にきた若手(ここ重要)の先生だ。 

 前は俺の行くはずだった、総武高にいたらしい。

 このは俺が一番仲の良い先生であることは間違いないだろう。

 だが、苦手だ。無視しよう。衝撃のファーストブリットは喰らいたくないからな。

 

 あっ、見つかった。

 

「私を無視するとはいい度胸じゃないか」

「い、いや、けして、無視した訳ではなくてですね……」

「まあいい……それよりもきたまえ」

「はあ……」

 

 俺は会議室へと強制連行される。

 

「念の為に聞いておくが、君は生徒会長になりたいのか?」

「そう見えます?」

「君の目を見る限りそうは見えないよ」

 

 話とは生徒会選挙のことだったようだ。

 

「誰がやったか心当たりはあるかね?」

「まあ、折本とかその当たりでしょうね」

「折本かおりか……」

「けして、悪い生徒ではないのだがな」

 

 リア充共は楽しむためにしているだけだからな……。悪気がないから尚タチが悪い。

 

「君の生徒会長候補の件はこちらでなんとかしよう」

「そうすか……」

「では、後日また連絡しよう」

 

 生徒会長なんてごめんだからな、平塚先生には是非頑張って欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

「良い話と悪い話、どっちから聞きたい?」

「悪い話を聞かずに帰りたいです……」

「まあ、そう言うな」

 

 俺は平塚先生にまた、呼び出された。

 生徒会長候補の話を聞きに来たのだが、どうも良くない方に行きそうだ。

 

「まず、悪い話からだ」

「無視っすか」

「まず、君は生徒会長になることが確定した」

「はあ……はあ!?」

 

 無理だったのか? 生徒会長なんか出来ないぞ? 生徒会長はイケメンか美人がやるって決まっているんだ。俺には無理だ。

 

「続いて、良い話だ」

「早っ!」

「入って来たまえ」

「失礼します……」

「折本……!?」

 

 入って来たのは折本だった。

 良い話とは犯人を捕まえたと言うことだろうか?

 

「ちょうど、副会長の席が空いていてね」

「はあ……」

「折本には副会長をやってもらう」

「「はあ!?」」

「ちなみに君達には拒否権はないよ」

 

 職権乱用なんじゃないか? これ。

 折本も不服そうだ。

 

「まあ、安心したまえ。こちらで出来る限りのサポートはする」

「それに、国語の成績を少しあげてやろう」

「良いんですか? それ」

「良くはないよ」

「……」

 

 この人教師としてどうなんだろうか……。ダメだろうな……。

 

「それでは、よろしく頼むよ」

 

 平塚先生は部屋から出ていき、俺と折本だけが残された。

 

「比企谷と生徒会とかマジウケないわ……」

「そこはウケろよ」

 

 生徒会長、比企谷八幡と副会長、折本かおりの誕生の瞬間である。


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