原作を大きく変えるつもりはありませんが、少しずついじって行こうと思っているのでお楽しみに。
では、9話です。
現在、あんていくの二階には従業員全員と四方に雛実、そして智樹が集まっていた。
店長の芳村に、ことの顛末と智樹が介入した経緯を話していたのだ。
「成る程・・・・・ともかく、皆無事で何よりだ。」
芳村は安心したように微笑んだ。
「さて・・・・・工藤君。」
「はい。」
芳村は本題に入る。
「君が危険な喰種でないことは分かった。たが、一応君の目的を聞いておきたいんだが?」
智樹は頷き、口を開く。
「目的・・・・・と言うよりは目標ですかね。・・・・・俺は、正義の味方に成りたいんです。」
『はあ!?』
芳村、四方以外の面子から驚きの声が漏れる。
「・・・・・・真面目に話してんのかよ?」
「と、トーカちゃん落ち着いて。」
青筋を立てた董香を金木がなだめる。
「董香ちゃん、取り合えず彼の話を聞こう。」
「・・・・・・ハイ。」
芳村に言われ、董香は取り合えず黙った。
「え~と・・・・・話続けますね。正義の味方とは言いましたが、要するに人間の味方でありたいっていうことです。そして、人間が持っている喰種に対するイメージを、少しでも改善したい。人を守る喰種がいると世間が認知すれば、全ての喰種が悪ではないのかも。いい喰種もいるのかもって、そう考えてくれる人も出てくるはずですから。」
智樹は真っ直ぐに吉村の目を見る。
「・・・・・成る程、その為に喰種と犯罪者のみを捕食しているのか。」
だが、と吉村は言葉を続ける。
「それは、些か現実味に欠けるんじゃないかね?とても君一人で変えられるようなことではない。」
吉村にハッキリと言い切られ、智樹は苦笑いを浮かべる。
「そうですね。確かに夢見がちな理想論です。それに、誰かを殺して生きてる時点で、正義何てものを語れるとは思ってません。・・・・・・でも・・・それでも、俺はやります。俺のやり方が間違っているのか、正しいのか何て、やり切ってみないと分かりませんから。」
智樹の返答を聞き、吉村は「そうか」と、短く返した。
そして、智樹に、ある提案をする。
「・・・・・・工藤君、あんていくで働く気はないかね?」
『え?』
吉村の言葉に、四方以外の全員が驚きの声を上げた。
「君の目標は理解した。・・・・・だが、それは酷く険しい・・・修羅の道だ。・・・・ウチで扱っている食糧については?」
「あ、董香からここに来るまでに聞きました。自殺した人間の肉を、自分で狩りのできない喰種に分け与えてるって。」
「それなら話が早い。・・・・もし、君がウチで働いてくれると言うのであれば、こちらはその食糧を分け与えよう。それならば・・・・・比較的喰種として罪を犯さず済む。・・・・・・今の君の生き方よりもずっと楽なはずだ。」
「・・・・・・・」
吉村の提案を聞き、智樹は少し考えているようだ。
すると、
「あ、あの。」
雛実が口を開いた。
「わたしは・・・・蜘蛛のお兄ちゃんがここにいてくれて、人を殺さなくてよくなるなら・・・・・そっちの方がいいと思う。」
雛実の言葉を聞き、智樹は軽く笑ってから、雛実の頭を優しく撫でる。
「ありがと、雛実ちゃん。」
そして、智樹は吉村の方を向き直す。
「吉村さん、お気遣い感謝します。・・・・・でも、お断りさせていただきます。」
「え!?」
雛実は驚きと悲しみが混ざったような目を智樹に向ける。
「確かに芳村さんの言う通りです。誰が考えてもここで働いた方が良いはずだ。俺にとってメリットしか有りませんから。・・・・・・・でも、それは出来ません。俺は自分の目標の為に沢山の命を奪ってきました。ここで止まってしまえば、俺が今まで殺してきた命が無駄になる。・・・・勝手な話ですが、俺は殺してきた命の為にもこの道を貫き通したい。・・・・・それが、俺の答えです。」
智樹の瞳には、ブレない決意が宿っていた。
「・・・・・そうか。そこまでの覚悟が有るのであれば、これ以上の勧誘は無用だね。」
芳村は智樹の意思を確認できたため、身を引いた。
「・・・・・工藤、アンタ本気なの?」
しかし、董香は納得していないようだ。
「ここまで言って冗談だったら殺されるだろ。」
智樹は笑ってこたえる。
「そりゃそうだけど・・・・・」
言葉を濁した董香は雛実の方に目を向ける。
「蜘蛛のお兄ちゃん・・・・・」
雛実は悲しげな瞳で智樹を見つめている。
「・・・・・ゴメン雛実ちゃん。客として来た時にまた顔を出すからさ。」
「・・・・・うん。」
雛実の返事を聞き、智樹はもう一度雛実の頭を撫で、席を立つ。
「それじゃあ、俺はそろそろ行きます。」
「出口まで送ろう。」
そうして、智樹と芳村は店の外に出る。
「工藤君、」
店の外に出たあと、芳村が智樹に話しかけてきた。
「君が先程言ったことは本当だろう。・・・・しかし、実はもっと単純な理由があるんじゃないのかね?」
芳村の言葉に、智樹はまたも苦笑いを浮かべた。
「そうですね。俺は結局・・・・・大切な人達を守りたいだけなのかも知れませんね。」
そう答え、智樹はあんていくを去っていった。
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ところ変わって、ここは16区のとある路地裏、そこには何かから逃げるように走る二人の喰種捜査官がいた。
「クソッ!まさかここまで統率された集団だったなんて!」
「とにかく!本部に報告だ!」
二人の男は路地裏を抜けるために走り回っている。
しかし、
「残念でした~。」
「「!?」」
突如、進路を塞ぐようにしてフードを被った、声からして若い女が現れる。
そして、その顔は蜂のマスクで隠されていた。
「ッ!大崎、俺がコイツを引き付ける!その間にお前は本部に報告をしろ!」
中年の捜査官、高木は部下の大崎に指示を飛ばすが、
「大崎ってのはコイツか?」
大崎の生首を手に持った、もう一人の蜂のマスクの女が現れた。
見ると、いつの間にか狭い路地裏に十数名程の蜂のマスクの集団が集まっていた。
「・・・・・・・クソッ!せめて一匹でもオオオ!」
クインケを構え、目の前の蜂のマスクに突っ込む高木だったが、次の瞬間には、鮮血を吹き上げ、首が宙を舞っていた。
「さて、アジトに持って帰ってゆっくり食べよう。」
おそらくリーダーであろう、少し他の蜂のものよりも装飾のついているマスクを着けた長い金髪の喰種を筆頭に、蜂の集団は路地裏から消えていった。
これが、喰種と喰種捜査官のみを襲う蜂のマスクの集団、『ホーネット』である。
ここから、『蜂』と『蜘蛛』の物語が始まる。
新キャラは次回ちゃんと出てきます。
また、オリキャラはあと数人出てきますが、多分そんなに増えることは有りません。
次回から活躍させて行きますので、お楽しみに。