読みづらいとは思いますがよろしくお願いします。( ̄▽ ̄;)
兎の一件の翌日、智樹はあんていくに来ていた。
だが、目的はコーヒーではなく、自分の中に芽生えた疑問に決着を着けるためだ。
(・・・・・・・・董香が『兎』だったとして、その時俺はどうすればいい・・・・兎は喰種捜査官を殺した。俺が人間の味方を気取るなら・・・・・兎は敵になる。)
そう、もしも董香が兎だった場合、智樹は董香と敵対することになる可能性が高い。
(・・・・まあ、何はともあれ確認しないことには始まらないな。)
「アンタまた来たの・・・」
智樹が覚悟を決めたとき、董香が不機嫌そうに注文を聞きに来た。
その顔は、微かに青い気がした。
「・・・・・客になんつー顔してんだよ!」
智樹は無理矢理いつものように明るく振る舞い、そして・・・・
董香の右肩を思いっきりバシッと叩く。
昨日抉った兎の腕と同じ右腕を。
「ッッッッ!?~~~痛ってえなクソヤロウ!」
董香は不自然なほどに痛がり、右腕を押さえながら「死ね!」と言い残し奥に入っていった。
そして、智樹は去っていく董香の右腕に滲む血を見逃さなかった。
(・・・・・・・・・・ビンゴかよ・・・・・クッソ。)
智樹は力なく椅子にもたれ込む。
すると、
「どうしたの?気分が悪そうだけど。」
金木が話しかけてきた。
「いえ、ちょっと考え事をしてただけです。」
「僕でよければ相談に乗るけど?」
「大丈夫ですよ。そんなに大したことじゃないんで。」
(・・・・・・・・・・董香は喰種なのか、何て聞いても答えれないだろうし。)
智樹が今本当に知りたいことを、金木が教えてくれるはずなどなかった。
結局、智樹は何も聞けぬまま、コーヒーを一杯だけ飲み、家に帰った。
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(・・・・・・・どうすりゃいいんだよ・・・・・・・・・)
智樹はその夜、布団の上で仰向けになりながら今日のことを振り替えっていた。
(董香が何で捜査官を殺したのかは分かる・・・・・・・・・多分、復讐だ。)
智樹は取り合えず自分の考えを纏めていく。
(董香とあの親子は知り合いだった。多分董香はあの女の子の代わりに復讐として捜査官を殺したんだ・・・・・・・・それがあの子が望んだことなのかは分からないけど。)
しかし、智樹が考えていたのはそんなことではない。
(董香は捜査官を殺した。どんな理由であれ、それをしてしまったなら・・・・・董香は人間の敵だ。なら・・・・俺が、『蜘蛛』が人間の味方であるためには・・・・・董香を殺さなきゃならない。
・・・・・・・・だけど・・・・だけどそれが正しい選択だとは思えない。)
智樹は暫くその葛藤に苛まれていたが、結論を出すことができないまま、やがて眠りに落ちていった。
しかし、決断の時は来てしまう。
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数日後のある晩、智樹は路地裏で喰種を補食していた。
(・・・・・・・・・・)
しかし、智樹の頭の中はまだあの葛藤で一杯であった。
(・・・・・・・もう、何も見なかった・・・何も知らなかった事にした方がいいのかもな。)
智樹は決断することができず、この事を無かったことにしたくなっていた。
すると、どこからか妙な音が聞こえてきた。
(!?何だこの音は?・・・・・・これは・・・戦闘音か!?)
智樹は音のした方へ走り出す。
(向こうの・・・・重原小学校の方だ!)
そして、智樹は小学校の近くの河にたどり着いた。
(も少し河上、橋の下辺りか!)
智樹は音の発信源に近づいていく。
そして・・・・ギョロ目の捜査官と交戦する董香、そしてそのそばには、あの母親の娘がいた。
智樹は思わず柱の影に隠れる。
(オイオイ!何なんだよこの状況は!?)
智樹は状況を把握しようとする。
そして、智樹はあることに気づき、目を見開く。
(あのクインケは!?まさかあの子のお母さんの・・・・!?)
智樹が最も避けたかった状況、母親の赫子が子に向けられる。最悪のシチュエーションだ。
(どうする?参戦して董香とあの子を助けるのか?でも、それだとあの捜査官を殺すことになる!)
智樹はまだ悩んでいた。
そして、董香の脇腹をクインケが貫き、柱に叩きつけ、
腹を貫かれた董香は悲鳴をあげる。
(董香!ッ!クソ、まだ迷ってんのかよ俺は!)
智樹の中での決意はほぼ固まっていたが、あと一歩が出ない。
すると、董香と捜査官が話しているのが聞こえてきた。
「フン・・・・・死肉を貪るハイエナ・・・・ゴミめ。一体なぜ貴様らは罪を犯してまで生き永らえようとする?」
その捜査官の台詞は何も間違っていない。
喰種が生きていくためには人を喰わねばならない。
人間からすれば考えられないことだろう。
智樹もその言葉を聞き、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
しかし、董香は脇腹を貫かれながらも口を開いた。
「・・・・・・っ・・・・て・・・・生きたい・・・って・・・思って・・・・・何が悪い・・・・・こ・・・んな・・・・・んでも・・・せっかく・・・・産んでくれたんだ・・・・育ててくれたんだ・・・・・ヒトしか喰えないならそうするしかねえだろ!!こんな身体で・・・どうやって正しく生きりゃいいんだよッ!!どうやって・・・・!」
「董香・・・・・」
智樹は董香の叫びに聞き入っている。
「テメエら何でも上からモノ言いやがって・・・・・!!テメエ、自分が喰種だったら同じこと言えんのかよッ!!・・・・・ムカツク・・・死ね・・・!死ね死ね死ね死ねッ!!クソ白鳩野郎みんな死んじまえッッ!!」
董香血を吐きながらも言葉を続ける。
「クソ・・・・が・・・畜生・・・ちくしょ・・・・・喰種だって・・・・
私だって・・・・・・アンタらみたいに生きたいよ・・・・!!」
董香は心の叫びを終えた。
そして、
「・・・・・それはそれは・・・・・聞くに耐えんよ。」
ギョロ目の捜査官、真戸はクインケを振りかざし、
「もう十分だ、死ねッ!!」
董香へと振り下ろす。
・・・・・・が、
「させませんよ。」
蜘蛛のマスクを着けた智樹が間に入り、蜘蛛の脚でクインケを受け止めた。
「な!?」
董香は目を見開く。
そして、智樹は赫子を振るいクインケを弾く。
「・・・・・・まったく、ことごとく邪魔をしてくれるなあ!蜘蛛!」
「ッ!!」
董香に刺さっていたクインケを抜きながら、真戸は智樹から少し距離を取る。
「・・・・・捜査官さん、貴方は何も間違ってない。多分正しいんだと思います。・・・・・だけど・・・・・だけどッ!この二人が殺されるなんてことは納得出来ない!確かに俺達は罪を犯しながら生きてる。でもッ!それでも、喰種だって生きてる!産まれてきた以上、生きていく資格があるはずだ!」
(この声!?)
董香は蜘蛛の声がいつも聞いている少年の声と被ったことに驚いた。
「ハッ!生きる資格だと?笑わせるなッ!ヒトを殺して生きていくなど、そのようなエゴが許されるものかッ!!」
「・・・・・・確かに貴方の言う通りだ。所詮は俺達喰種のエゴにすぎない。間違ってるのは俺達の方だろう。・・・・・それでも・・・それでも・・・・・俺はこの人たちを護りたい。・・・だから・・・・・誰のためでもない俺のエゴのために・・・・貴方を殺します。」
智樹は蜘蛛の脚を大きく広げる。
「救い用のないクズだな!!」
真戸が再度背骨のようなクインケを振るう。
その軌道は複雑で攻撃が予測しづらい。
しかし、智樹も八本の赫子を使い、巧みに捌いていく。
「クハハハッ!!いいぞ!さすがSSレートだ!そう来なくてはつまらんからな!」
そう叫び、真戸はもう片方の手に持ったクインケを使おうとするが、
「させるか!」
「ッ!!」
一瞬で智樹が肉薄してきたため、回避せざる終えなかった。
「調子に乗るなよ、このクズがッ!!」
真戸はもう一度クインケを智樹目掛けて振るうが、
(!?・・・・・クインケが・・・・無い?)
右手に持っていたはずのクインケが消えていた。
・・・・・・いや、実際はそうではない。
(消えたのは・・・・私の右手!?)
真戸は自身の右手が切断されていることに気が付いた。
「・・・・・・ヒナ?」
董香の目線の先には、二種類の赫子を展開した雛実の姿があった。
(まさかあの距離から捜査官の手を?)
智樹も予想外の攻撃に目を丸くしている。
「グスッ・・・・もうやめてよ・・・・・お母さんとお父さんをそんな風にしないでッ!!」
雛実は父親から受け継いだ赫子を振るう。
「ハハハハハハハッ!!」
真戸は歓喜の笑い声を上げながらその攻撃を回避していく。
そしてリョーコの赫子から作ったクインケを雛実に振るうが、
今度は母親から受け継いだ赫子で防御する。
「素晴らしい・・・・・すごいいッ!!!母親と父親の赫子の優れた部分だけが、見事に引き継がれている!!実に良質な赫子だ!欲しいッ!!」
そして真戸は左手にもっていたクインケを捨て、背骨のクインケを拾い、
「よこせえええええッ!!」
雛実目掛けて振るうが、
「させるかァアッ!!」
雛実の前に出てきた智樹の赫子に弾かれる。
・・・・そして、カウンターで突き出した一本の蜘蛛の脚が、真戸の胸を貫いた。
「ガッ!?ゴバァッ!」
「・・・・・・・終わりです。」
そして、智樹は赫子をしまい、董香の元へ歩み寄ろうとした。
しかし、
「ま・・・・だ・・・だ・・・・」」
「な!?嘘だろ!?」
真戸は倒れず、クインケをしっかりと持っていた。
そしてそれを智樹目掛けて振るう。
・・・・・しかし、
董香が最後の力を振り絞り、真戸の脚に羽赫を撃ち込み体制を崩した。
そのまま真戸は前のめりに倒れる。
しかし、それでもまだ真戸は這いずってでも智樹達の方へと向かっていく。
「貴・・・・様ら・・・喰種・・・・・を・・・・あの・・・・・『隻眼』を・・・この手で・・・葬る・・・までは・・・・・・」
そして、あと一歩で智樹に手が届くというところで、ついに力尽きた。
「・・・・・・・手袋何かしやがって、私らには触れるのも嫌かよッ!!」
董香が乱暴に真戸の手袋を取り去る。
しかし、その左手の薬指にはめられた指輪を見て思わず固まってしまった。
「・・・・・・・この人も誰かのために戦ってたんだろうな。」
そう言い、智樹はマスクを外しながら真戸の亡骸のそばに膝を突き、真戸の瞼を閉じさせ、川岸に上げた。
「・・・・・・・工藤、聞きたいことが有りすぎるんだけど・・・・」
「そうだな。俺も聞きたいことがかなり有るよ。」
智樹はいつものように董香に笑って見せる。
すると、
「おい、大丈夫か?」
「!四方さん・・・・・カネキ・・・・」
四方と金木が合流した。
「董香、そいつは誰だ?」
「あれ、智樹君!?何でこんなところに?」
四方は智樹の存在を警戒し、金木は智樹がいたことに驚いた。
「四方さん、取り合えず敵じゃないはず・・・・・だよな?」
董香は智樹に一応確認する。
「ああ、取り合えずこっちも色々聞きたいことがある。」
「!・・・・・なんにせよ誰かがこちらへ向かってきている。死体を運んでいる時間は無いようだ・・・ やむを得ん、行くぞ。」
そして四方は雛実を背負って歩き出し、全員それについて行く形となった。
「生きてて・・・・・いいのかな?」
「え?」
帰り道、雛実が唐突に口を開いた。
「わたし・・・・・生きてていいのかな・・・・」
金木も董香も直ぐに返事をすることができなかった。
そして、それに答えたのは智樹だった。
「ヒナミちゃん・・・だよね?・・・実は、君のお母さんから伝言を頼まれてたんだ。」
「・・・・・わたしに?」
「うん・・・・・『寂しい思いをさせてごめんね、でも、いつまでもお父さんと一緒に見守ってるからね』って。」
「・・・・・・・」
雛実は少し目を潤ませる。
「君のお母さんは・・・・最後の最後まで君のことを想ってた。君の幸せを願ってたんだよ・・・・・・生きていくのに、それ以上の理由なんて要らないんじゃない?」
智樹は雛実に優しく笑いかけた。
「・・・・・・うん。」
雛実は四方の背中で涙を流した。
真戸さんお疲れさまでした!
次回からオリキャラを登場させようと思っております。
ご覧いただきありがとうございました。