暫く更新をサボってましたゴメンなさい!!
しかも今回字数の割には内容が薄いです。
まあ久しぶりに書いたんで妥協していただけると助かります( ̄▽ ̄;)
では13話です。
20区の繁華街、今日は休日であり多くの人々が行き交っている。
そんな中に辺りの目を引く男女がいた。
と言っても、男の方は特に特筆することない青年である。人々の目を引いているのはその青年の隣を歩く少女の方だ。少し癖のある長く明るい色の金髪に、端正に整った顔立ちをしている正に美少女。
すれ違う男たちは皆妬みの目で青年の方を睨み付けている。
しかし、それは間違いである。
彼らはカップルなどという関係ではない。
「ねえ、これからどこ行くわけ?」
「20区を締めてる人たちに会いに行く。」
金髪の少女、愛妃は智樹の返答に少し顔を強ばらせる。
「・・・・・・・20区のボスってどんな人?」
「俺もよくは知らねえけど優しい人だよ。ま、会ってみりゃ分かる。」
「ふうん・・・・・じゃ、取り合えず今日はデートってことでいいよね♪」
「ハア、勘違いされるようなことは止めろ。」
笑顔で腕に抱きついてきた愛妃に、智樹はため息をつきながらも満更でもなさそうだ。
そしてすれ違う男達の妬みの視線が強くなったのは言うまでもない。
「ここだ。」
歩くこと数分、二人は落ち着いた雰囲気の喫茶店にたどり着いた。
ドアには『close』の札が掛かっており、営業前のようである。
「『あんていく』?どういう意味?」
「そう言やそうだな・・・・・何だろ?」
二人は店名について暫し考えていたが、直ぐに諦めて店内に入ることにした。
そして入って直ぐのところで茶色い髪の女の子がテーブルを拭いているのが目に入った。
「あ、ごめんなさいまだ準備中でして・・・・・・」
「俺だよ、ヒナミちゃん。」
「え?智樹お兄ちゃん!?」
ヒナミは来客が智樹であることに気付き、笑顔で駆け寄ってきた。
「どうしたの智樹お兄ちゃん?お店はまだだよ?」
「うん。ちょっと芳村さんに話があるんだけど・・・・・・あれ?もしかしていない?」
「うん。コーヒー豆を買ってくるって言ってたよ。お店開くまでには帰って来ると思う。」
「じゃあそれまで待つよ。ところでヒナミちゃん、店の手伝いするようになったの?」
「うん。私も皆の役に立ちたいから!」
「そっか。偉いね。」
そう言い、智樹はヒナミの頭を撫でた。
「エヘヘ♪」
智樹に頭を撫でられ、ヒナミは凄く笑顔を輝かせていた。そんなヒナミを智樹も温かく見つめている。
しかし、
「智樹君の妹さん?」
「え?」
智樹の背後からヒョッコリと顔を出した愛妃を見てヒナミが固まった。
「ああ、紹介しないとな。コイツは小坂愛妃。俺の「お姉ちゃん大変!!智樹お兄ちゃんが彼女さん連れてきた!!」ちょっとヒナミちゃん!?」
カウンターの奥へ大声で叫ぶヒナミに、智樹は誤解であることを伝えようとするが、
『ガンガラガッシャン』『パリーン』『ドサーン』『ガンゴンガン』『チュドーン』『トーカちゃアアアアアん!?』
ヤバめの破壊音と金木の悲鳴が聞こえてきた。
「いや・・・・・え?大丈夫?」
流石の愛妃も店の奥の惨状を想像したのか軽く引いている。
そして物凄い足音ともに何かいろんな物の破片を服に刺し顔を真っ赤にしたトーカが店の奥から出てきた。
「く、工藤!!そそ、その女がか、か・・・・・彼女!?」
「落ち着けトーカ。あれはヒナミちゃんの早とちりで・・・・・」
今にも赫眼開眼しそうなほど興奮しているトーカに智樹はなんとか説明を試みる。
しかし、愛妃はいち早く状況を理解し、ニヤリと悪戯気に笑みを浮かべ、
「始めまして~。小坂愛妃って言います♪“私”の智樹君がお世話になってま~す♪」
智樹の腕に抱きついた。
「アイヒさん!?これ以上場を乱さないで!!」
「工藤オオオオオッ!!死ぬ覚悟はあるかアアアアアッ!?」
「何でお前はそんなバーサークしてんだ!?あ、ちょっとカネキさん助けて!いや、そんな「僕関係ないし」、て顔しないで!!」
カネキは初めて見た男女の修羅場に見て見ぬふりを決め込み、ヒナミは陰からトーカを応援している。
そして、
「ただいま。皆留守番ご苦労様・・・・・・・」
「何だこれ・・・・・・」
芳村と眼鏡をかけた青年、西尾錦が買い出しから帰ってきた。
そしてドアを開けた瞬間目に入ってきたのは・・・・・・今にも赫子を使わんとしているトーカとそれを宥める智樹。そして智樹の後ろで腹を抱えて笑っている見知らぬ金髪の少女。
カオスな店内の光景であった。
「ヤレヤレ、取り合えず説明してくれないかな?」
バーサークトーカを芳村が宥め、一同はあんていくの二階に集まっていた。
「さて、ではまずその子が何者なのか教えてくれるかな?」
「勿論。そのつもりでここに来ましたから。」
芳村の質問に答えた智樹は、目配せで愛妃に自己紹介を促した。
「初めまして、私は小坂愛妃。喰種集団『ホーネット』のリーダーやってます。」
『ホーネット!?』
芳村以外のその場の全員が驚きの声をあげた。
「ホーネットって・・・・・・確かニュースでよく報道されてる捜査官殺しの・・・・」
「ああ、おまけに共食いもやってやがるぜ・・・・・・」
「リーダーってことは・・・・・SSレートの『女王蜂』かよ!?んな危ねえやつアッサリ引き込んでんじゃねえよ!!」
カネキとニシキとトーカは愛妃の存在に一層警戒を強める。
が、
「そうか、やはりホーネットと組むことにしたのか。」
「分かってたんですか?」
芳村だけはこの事を予期していたようだ。
「ホーネットは捜査官殺しで有名になっているが一般人の被害が出たと言う話を聞いたことがない。君の理念に共感してくれる協力者としては妥当だろう。」
「何でもお見通しですね。」
智樹は苦笑を浮かべた。
「それで?態々それを伝えに来たのかい?」
「ええ、まあ目的の一つですね。拠点を20区に置こうと思ってますんで一応把握しておいてもらった方が良いかと。狩場は各区に散らすつもりですから20区で狩るときだけ事前にお伝えします。」
そこまで話した智樹は「もう一つ」と言葉を紡いだ。
「むしろこちらが本題なのですが・・・・・・・人の肉の保存方法を教えて頂けませんか?」
「フム、別にそれで商売をしているわけではないから構わないが・・・・・・前にも言ったように、ここで働いてくれるのなら食糧の提供はしてあげられるが?」
「前にも答えましたが、俺には俺通すべき筋がありますから。それに今俺たちは十数人の組織になってるんですよ?流石にそんな大勢の食糧を提供してもらう訳にはいきません。」
「それもそうだね。では食糧庫まで着いてきなさい。保存方法を教えよう。」
「有り難うございます!あ、愛妃はここで皆に色々説明しといて。」
そう言い残し、二人は部屋を出ていった。
そして残されたメンバーは・・・・
『・・・・・・・・・・・』
何を喋れば良いのか分からず沈黙していた。
(おい!誰か何か話せよ!クソニシキ!)
(ふざけんな!SSレートの喰種だぜ!?下手なこと言や喰われるかもしんねえだろ!)
(でもこのまま何も話さないのは気まずいですよ!)
トーカ、ニシキ、カネキの3人は小声で作戦会議を行っていた。
その時、
「小坂さんは智樹お兄ちゃんの彼女じゃないんですか?」
(((!?)))
先陣を切ったのはまさかのヒナミであった。
「アハハハハ!ゴメンゴメン。さっきのは冗談。そこの・・・・・トーカちゃん?の反応が面白かったからついね♪」
「テメエ初対面の人間で遊んでたのか!?」
「だからゴメンって。」
「ふざけんな!!ぶち殺す!!」
「落ち着いてトーカちゃん!」
拳を握り締めたトーカをカネキが宥める。
「フフフ♪ホントに智樹くんのこと好きなんだね。」
「な!?なななななな、何言ってんだテメエは!!」
「え~?赤くなってるよ~?」
「っのテメエ絶対に殺す!!」
「トーカちゃんお願いだから部屋は壊さないで!」
真っ赤な顔で暴れるトーカを煽る愛妃に止めるカネキ。
「これってもしかして・・・・・・・『修羅場』っていうやつ?」
「ま、大体合ってるわな。」
ヒナミは『修羅場』という単語の使いどころを覚え、ニシキは関わるまいと遠巻きから見守っていた。
「上ドタバタしてますけど大丈夫ですか?」
「皆いい子達だから問題ないよ。」
智樹と芳村は店の食糧庫に来ていた二人は二階の騒ぎに気づいたが、芳村はあまり気にしていないようだ。
「そう言えばあの眼鏡の店員さん初めて見ましたね。」
「そうだったね。彼は西尾錦君。話せば長くなるんだが・・・・・・」
そこから、芳村はニシキがあんていくに来た理由、つまりは“美食家”の一件についての話をした。
「美食家を倒した!?トーカ達が!?」
「もしかして君のターゲットの中に入っていたのかい?」
「ええまあ、補食の異常性で言えば群を抜いてたんで。探してはいたんですけど見つからなかったんですよ。」
「そうか。まあニシキ君に関しては心配しなくてもいい。それよりも・・・・・・・」
不意に言葉を切った芳村に、智樹はくびを傾げた。
「ああいや、素朴な疑問なのだが・・・・・・君たちは今後何と名乗って行動するつもりだい?君がリーダーなら『ホーネット』を名乗る訳にもいかないだろう?」
「組織名ですか?決めてませんよそんなの。何か恥ずかしいじゃないないですか。」
「だが君の目的のためには君達という存在を世に知らしめる必要がある。そのための旗印として組織の名前は重要だと思うがね?」
芳村のアドバイスに智樹は「成る程」と呟き、顎に手を当てた。
「確かに一理ありますが・・・・・・組織名か・・・・・何も考えてなかったな・・・・どうしよ。やっぱ分かりやすいのがいいよな。あんまり凝りすぎると痛い名前になりそうだし・・・・・・・・」
そのまま、智樹は暫く思考に耽った。
すると、
「智樹お兄ちゃん、愛妃お姉ちゃんが呼んでるよ。」
上から下りてきたヒナミが声をかけた。
「ん?ああ、すぐ行くって伝えて。・・・・・・・・・あ、ちょっと待って。」
「うん?」
「実は俺と愛妃のチーム名を考えてたんだけどいいのが浮かばなくてさ。何か思い付くものとかない?一応リーダーは俺なんだけど・・・・・」
智樹は子供の豊かな発想力を当てにしてみた。
「う~んと・・・・・・・智樹お兄ちゃんが蜘蛛で愛妃お姉ちゃんが蜂だけどリーダーはお兄ちゃんだから・・・・・・・・」
ヒナミは思ったよりも本気で名前を考えているようだ。
そして数分ほど顔を俯かせて考えていたヒナミであったが、パッと笑顔で顔をあげた。
「『蜘蛛の糸』!」
「蜘蛛の糸!?ヒナミちゃんその話知ってるの?」
「まだ読んだことはないけど、神様が皆を地獄から蜘蛛の糸で引っ張り上げてくれた話でしょ?前にお兄ちゃんが話してくれたよ。」
満面の笑みでそう話したヒナミであったが、おそらく彼女はその話の結末までは知らないようだ。
「ヒナミちゃん。そのお話しでは最後に蜘蛛の糸が切れてしまうんだよ。」
物語の結末を芳村が説明する。
「ええ!?ご、ごめんなさいお兄ちゃん!私知らなくて「蜘蛛の糸か・・・・・」・・・・お兄ちゃん?」
申し訳なさそうな顔を浮かべたヒナミは、顎に手を当ててボゾボソと呟く智樹に首をかしげた。
「ありがとうヒナミちゃん。それに決めるよ。」
「え、でも・・・・・・」
「大丈夫。俺の糸は絶対に切れないから。全員まるごと地獄の底から救いだして見せるよ。」
そう言い、智樹はヒナミの頭を撫で、ヒナミも笑顔に戻った。
「芳村さん。これより俺達は喰種集団『蜘蛛の糸』を名乗り本格的に活動していきます。」
「うん。では私は君達の行く末を見守るとしよう。」
これから『蜘蛛の糸』が世界にどのような影響を及ぼすのか、それはまだ誰にも分からないことである。
という訳で組織名が決まりました。
あといくつか説明できていなかったことをここに書いておきます。
・『ホーネット』は女性のみで構成されています。これは愛妃が男をあまり信用していないだめです。
・智樹が愛妃、有馬と戦ってた時間=月山戦だと考えてください。