気に入っていただければ幸いです。♪ヽ(´▽`)/
「ハァッハァッハァッ!」
真夜中の路地裏を一人の少女が息を切らしながらも懸命に走っていた。
少女の体力はもう限界に近かったが、それでも足を止めることはしない。
あの化け物から逃げ切れる気はしないが、止まることはできない。
しかし、少女はついに袋小路に入ってしまった。
「追いかけっこは終わりかな?」
「ッ!!」
その声に振り返ると、そこには自分を追ってきた男がいた。
男は不良や犯罪者ではない。
だが、人間でもない。
その男は人間にあるまじき赤い瞳で少女を見る。
「それではそろそろ頂こうか。」
この男は人間を喰らう化け物、『喰種』である。
「いや!来ないで!」
少女は泣きながら叫ぶが、男はそれを見て笑みを浮かべ、少女に近寄っていく。
「いいねぇ、いい顔だ。久々にいい食事ができそうだ。」
少女はもうほとんど諦めていた。
「お願い、誰でもいいから、助けてよ。」
こんな場所に人が来るはずもないし、来たところで人間では喰種をどうすることもできないが、少女には願うしかできなかった。
「こんな場所誰にはだれも来ないよ。」
「いやいや、そうとは限らないよ。」
「「!?」」
いきなりの第三者の声に二人とも反応し、声の発生元に目を向ける。
そして、いつの間にか男の後ろに青年が立っていた。
その青年は赤い眼のようなものが複数着いている蜘蛛のようなマスクをしていた。
「・・・・何だね君は?」
男は謎の乱入者に尋ねる。
「どーも、女性の悲鳴を聞きつけてやって来たヒーローです」
「・・・・・」
さっきまで恐怖のあまり泣き叫んでいた少女だったが、あまりにも緊張感のない青年の言動に唖然としていた。
「それで、ヒーロー君」
しばしの沈黙のあと、口を開いたのは男だった。
「そのマスク、君も喰種なんだろ?」
「もちろん」
「え・・・・・・?」
再び少女の顔が絶望に染まる。
乱入してきた青年も喰種ということは、この青年も自分を狙っているのだろう。
つまり、この青年は少女を助けに来たのではなく喰いに来た。
少女はもう完全に諦めた。
もう自分は助からない、せめてあまり苦しまずに殺してほしい、とこんなことさえ思い始めていた。
「確かに俺も喰種だ。でも、俺はそこの女性の肉がほしい訳じゃないよ。俺が喰いたいのはオッサン、あんた一人だよ」
「え!?」
少女は青年の言葉に耳を疑った。喰種が人間の肉より喰種の肉を欲するなど聞いたことがなかったからだ。
「アハハハハハハハハ!」
青年の言葉に、男は大声で笑い始めた。
「面白いことを言うな。たが、君は私が何と呼ばれているか知っているかい?」
そう言い男はコートの懐から自分の代名詞とも言える、薄い緑色のカマキリを模したマスクを取り出した。
「やっと会えたな、Sレート喰種『蟷螂』!」
「!ほう、知っていたか」
「ああ、あんたを探してた。噂には聞いてたけど女性泣かして喜ぶなんて俺が一番嫌いなタイプだな」
「奇遇だね」
男はカマキリのマスクを着けながら叫ぶ。
「私も、食事の邪魔をされるのが一番嫌いなんだよぉ!」
そしてバシャッという音共に、男の背中から二本の触手が生える。
人を狩るために発達した喰種のみがもつ捕食器官『赫子』である。
そして蟷螂の赫子の先には通り名を体現するように鎌のような形状をしていた。
「死ぃねぇえええええ!」
その叫び声と同時に、その鎌は蜘蛛のマスクの青年へと降ろされる。
しかし、蜘蛛は不適に笑い避ける気配を見せない。
そして、ドガァアアンという轟音が鳴り響き、土煙が舞う。
「キャアアア!」
その衝撃は少女が軽く吹き飛ばされるほどだった。
避けられたはずがない。確実にその鎌は蜘蛛を捉えた。
「・・・・・馬鹿な・・・・」
しかしその手応えは敵を切り裂いた時のものではない。
何かとてつもなく固いものに当たった、そんな感覚。
そして次の瞬間、突如土煙の中から飛び出してきた何かに蟷螂は貫かれた。
「ガハッな、何が・・・・」
「こんなもんか」
そう言い土煙の中から出てきたのは蜘蛛の青年だった。
しかし、先ほどとは違い背中から虫の脚のような節がある黒い赫子を八本も生やしていた。
その姿は、正に『蜘蛛』だった。
その内一本は蟷螂の攻撃を防ぎ、別の一本は蟷螂の腹を貫いている。
「悪いけどSレートじゃ俺には勝てないよ。だって・・・・俺のレートはSSだもん」
「な!?」
「ああ、まだSSに成り立てだから知らないのも無理ないよ」
そう言い青年は残りの脚を全て蟷螂に向ける。
「!!ま、待て「うるせぇ」
蟷螂の言葉を待たず蜘蛛は止めにすべての赫子を突き刺した。
「さてと、ここにいると喰種捜査官が来そうだからもって帰るか」
そう言って蜘蛛は蟷螂を担いでその場を去ろうとするが、
「あの!」
「?」
先ほどの少女に呼び止められ立ち止まった。
「あなたが来てくれなかったら私は死んでました。
だから・・・・ありがとうございました!」
そう言って少女は頭下げた。
それに対して蜘蛛はマスクの下に笑みを浮かべ、
「別にいいよ。オレの目的は蟷螂を仕留めることだだったからさ。・・・・・・・あ、でももうこんな時間に人気のない場所に行かないようにしな」
「あ、はい」
「よし、それじゃ」
そう言い蜘蛛は猛スピードでその場を去っていった。
駄文ですが読んでくださってありがとうございます。
多分更新が遅いと思いますがよろしくお願いいたします。