我ら、性別反転組!!((殴   作:RaruFlag

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ショウ回です。

なかなかみんな揃いませんね。


花弁散り落ちる頃に(13)

俺は気づけば森の中にいた。

 

先程までナトと一緒にいたはずなのに……

 

正確には森の中の小屋にいた。

木で作られた床へ直に寝ていた。

背中に痛みがジンジンと感じられ、快い目覚めではなかった。

 

しかし、その時はまだ良かったのだ。

 

なんでかというと、俺は危機的状況にある。

 

山賊に邪魔をされているのである。

「おじょうちゃあ〜ん。

おとなしく身ぐるみ置いていきな!」

 

デブな輩が怒鳴り散らす。

まだ女の格好なのでなんとも言えないが

 

おじょうちゃんと言われるのはとても不快だった。

 

今は、短剣しか持っておらず太刀打ちできる気がしない。

喉元を引っ掻き続ければ可能だがそれができるという自信などなかった。

 

野球部だけれど、そこまで運動できる自信はない。

 

山賊は5人。

自分に仲間はいないからこちらは1人。

 

最悪である。

 

そんなことを目まぐるしく考え、短剣を取り出すと、山賊の1人が襲いかかってきた。

真っ正面から来たため、左に身をかわしながら喉元へと短剣を持っている右手を振り切る。

 

見事にクリーンヒット。

ザシュッと音を立て、喉元を掻っ切った。

 

あと4人。

お次は3人ほど同時にくる。

流石に短剣では太刀打ちできないと考えたが、短剣で戦うしか方法はない。

昔少しだけ習っていた空手も使えるかどうかというところである。

 

1人目は右手をこちらへと勢い良く伸ばしてきたため、その手を思い切り短剣で刺す。

すると鈍い声を出し後ろへと倒れ込んだ。

2人目と3人目は同時に来た、しかも3人目なんて大きな斧を持っている。

 

斧を大きく振りかぶるのを目安に動きを見極めながら、もう2人目も視界に入る位置へと動く。

 

斧が振り下ろされたと同時に後ろへと避ければ、その斧は抜けないものとなりただの木偶の坊となった。

 

しかし、そこでふと俺は気づく

 

4人目が…いないのだ

前の3人に気が取られていて全く眼中になかった。

 

困惑していると後ろから体当たりされたようで前に倒される。

 

ドサッっという音を立て俺の体は倒れ、組み敷かれた。

 

短剣を取られ、なすすべもなくもなくなった。

 

先程の斧が、今度こそ俺に振り下ろされる。

俺自身の頭目掛けて、思い切り振り下ろされる。

 

死ぬ。

そう直感的に感じ取った。

 

しかし、俺には何かが見えた。

こんな危機的状況で、宙を舞っている花びらを見つけたのだ。

 

周りがスローモーションとなり、時がゆったりと進む。

しかし、その花びらだけはふわりふわりと舞い落ちてきた。

1つだけではなく、大量の青い花びらが降り注いできていた。

 

呆然とそれを見ていると、それは地へと落ちた。

 

 

その刹那

 

 

ズボッ、と言う音と共に何かが何かを貫いた。

貫いたものとは、大きく、刺が大量に生えているツタだった。

それが、俺を組み敷いていた山賊の胸を貫いたのだった。

 

解放された、と理解した俺はその死んだであろう物体を身体の上からどかし起き上がった。

 

他の山賊共は漠然としていた。

そして、我に帰ると生きている3人で俺に襲いかかってきた。

「グオオァアアァアッッ!!!!」と、雄叫びをあげながら。

 

しかし、落ちてきた花びらが地面に着く度にそのツタが生えてきて心臓や喉元、更には顔面までをも貫いたのだ。

 

目の前には血が散乱する。

その血から守るかのように、ツタは俺の前に伸びてきた。

 

ツタがどけて視界が開けたときにはもう、山賊の息の根などとっくのとうに無くなっていた。

 

 

…あの花びらはなんだったのだろうか。

俺を守ってくれたのは事実だ。

 

敵ではない?

味方なのか?

 

俺の脳内の問いに答えかけるものなんて誰一人いなかった。




彼女の落とした花びらが彼を救ったお話でした。


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