とにかく感動、とにかく鳥肌でした。是非見にいくことをお勧めします。
そして最後に………グレアムェ・・・
では、どうぞ。
Side シノン
「………つまり、此処はすでに滅んだと言われてる伝説の都市で、お前は魔法の使用をサポートするデバイスと呼ばれる機械で、数百年眠っていたと」
『その通りです。
本来、外部からこの世界に入るには虚数空間と呼ばれる空間内で指定座標を入力しなければいけないのですが、あなたは特殊な事例のようですね』
「だろうな………にしても、魔法か………」
カプセルに保管されていた銀色カードに色んな話を聞きながら、壁際に座り込むオレは静かに呟いた。
『やはり、すぐには信じられませんか?』
「いや、オレのいた世界にも魔法と呼ばれる力は存在していた。恐らく能力の仕組みは別物だろうが、単語そのものにはそれほど違和感を感じない」
それに、こちとら本当は死んでる身なんだ。
僕と契約して魔法少女に、な白い生物じゃないが、今なら魔法どころか奇跡も信じられるぞ、オレ。
「………しかし、何故この世界の人間達は滅んだんだ? 此処はお前の言う魔法技術の中でもオーバーテクノロジーの領域まで発展してたんだろ?」
『………残念ながら、それに関しては私のシステム凍結以前の記録にも情報がありません。どうやら、意図的に記録を消去したようです』
意図的に、か。本人が行ったのか、それとも他の誰かが行ったのか………少なくとも幸福な形で幕を閉じたわけではなさそうだ。
「それで? お前はこれからどうするんだ? 目覚めさせたオレが言うのも何だが、既に滅んだこの世界でやることなんて無いだろ」
『確かにそうですが………そう言うあなたはどうするのですか? 私は再び眠りに付けば問題ありませんが……自殺でもなさいますか?』
「オレか? 特に何も無い。この世界で適当に衣食住を確保して、しばらくはのんびりと静かに暮らすさ。これからどうするのかはその中で考えれば良い」
それに、個人的に自殺という行為は大嫌いだ。
ガキの頃から今に至るまで何度も死にかけたからか、それとも自分の出生の事実のせいか、何だか負けを認めた気がして気にくわない。
まあ、確かに話し相手は少なそうだが、オレ自身、この世界で暮らすのは決して大変ではないと思う。
個人的な感想だけど、狩りとか木こりって結構楽しいものだ。オレはリッドやプレセアから教えてもらった側だが。
「まあ、お前も暇なら話し相手くらいしてくれ」
『はぁ……まあ、構いませんが………おや?』
銀色カードが不思議そうな声を出すと、近くに設置されていた機械の1つが点滅し、小さなアラート音を鳴らした。
首を傾げると、銀色カードの宝玉部分が数回点滅し、他の機械が稼動して無数のデータがスラスラと流れていく。
「何かあったのか?」
『いえ、どうやら中規模の次元震が発生したようです。場所は97管理外世界“地球”、原因物質は、次元干渉型エネルギー結晶体、ジュエルシード』
「次元震? ジュエルシード?」
『次元震は、言ってみれば世界規模で起こる地震です。最悪の場合、複数の世界が消滅する危険が有ります。
ジュエルシードは、その次元震を発生させられる計21個の宝石状の物質です。昔にデータを収集したことがあります』
消滅とは、随分穏やかじゃないな。
それに、そんな核爆弾みたいな物が21個もあるって、聞くだけでもゾッとする。一体幾つの世界が消えることになるのか。
『………気になりますか?』
「……まあ、何処かの世界で21個の核爆弾がばら撒かれてるなんて聞かされればな」
『では、行ってみますか? 話を聞いた限り、あなたは元の世界でも相当荒事に腕が立つのでしょう?』
そんな街中を歩いて見つけた店に入らないか? みたいな感じで言われても、ことの大きさが大きさなんで即答は出来ない。
「確かにそうだが、魔法なんて未知のもの相手に素手でってのもな。というか、そもそも行けるのか?」
『ガタが来ていて一度しか使えませんが、次元転送ポートが有ります。それに、魔法に関しての戦力が不安ならば、私が付いて行きましょう』
「それは、つまり………お前がオレのデバイスになると?」
『はい。此処で眠っていてもどうせ退屈ですし、ジュエルシードの危険性を知ってる身として無視は出来ません。どうでしょう?』
銀色カードの言葉に数秒考え、オレはゆっくりと立ち上がってカプセルの前に立つ。
そして感覚の無い右手を握り締め、正拳突きでケースを粉砕する。
ガラスの破片が飛び散る中、銀色のカードは空中で静かに浮遊していた。
オレは無言で手を伸ばし、銀色のカードを手に取った。
「その話、乗った。オレはシノン・ガラード。よろしく、相棒」
『こちらこそ。よろしくお願いします、マイマスター。では、私の名前を決めていただけますか? 以後、それを機体名に登録します』
「名前か…………ヴェルフグリントってのはどうだ?」
『登録開始……完了。自機の名前を“ヴェルフグリントに設定。
今より私はあなたの命尽きるまであなたの剣であり、盾であり、何処までもあなたと共にあるデバイスです』
足元から白銀色の光が溢れ出し、中心に剣十字が描かれ、それを三角形が囲んでいるという形の魔法陣が展開された。
『マスター、続いて武装と騎士甲冑のイメージをお願いします』
「騎士甲冑? ……プレートアーマー等のことか?」
『いえ、魔力で生成した強化服なので形状は何でも構いません。武装にも復元不可能な形はありませんので、ご自由に」
そう聞いてオレはすぐにイメージを開始する。
服装、騎士甲冑は簡単に決まるが武器は………縮んだ体のリーチでイキナリ長刀をぶん回すのは危なそうだし、ここはちょっと傾向を変えるか。
光が弾け、オレの体を白い光が包む元々着ていた服が無くなり、新しい服がオレのイメージに基づいて構成される。
まず上半身に黒いインナーが現れ、その上に黒い皮製のコートを着る。続く下半身に灰色が混じり、両方のポケット辺りに一本のベルトが小さい山を作るように着けられた薄黒い長いズボン。
最後に靴底にかなり硬い鉄板が仕込んである茶色のブーツを装着。そしてヴェルフグリントの蒼い宝玉部分が輝き武器へと形を変える。
宝玉を中心に通常の日本刀よりも長く、厚みがある刀、大太刀とそれを収める黒塗りの鞘が現れた。
刃は月光のように輝く美しい銀色。柄は白く鍔は円形の形で黒塗り。
そしてヴェルフグリントの蒼い宝玉は大太刀の鍔本に埋め込まれている。
オレは右手で大太刀を、左手で鞘を手に取り、大太刀を左腰のベルトに差し込んで固定する。
大太刀の刀身はカチャン!と綺麗に音を立てて鞘に納まり、納まった瞬間オレの両手に指出しのグローブが装着された。
『いかがですか?』
「悪くないな。充分に動きやすい」
『それは何よりです。では、続いてこちらを………』
足元の床が開いて上に持ち上がってくる。持ち上がってきた床に置かれていたのは一つの黒いグリップ。
いや、よく見てみると上部に黒いスイッチが着いている。形もグリップと言うよりは何かの操縦スティックに近い。
「これは・・・・・デバイスか?」
『はい。名前の登録や機能の詳細は後ほど説明しますが、この先きっと役に立ちます。では、転送ポートに急ぎましょう………』
ヴェルフグリントの言葉に頷き、オレは黒いグリップを懐にしまって屋敷の外へと身を翻した。
やって来た部屋の中には転送装置のような物が置かれ、ヴェルフグリントが手を回したのか光を放っている。恐らくあれで移動するんだろう。
『準備はよろしいですか?』
「ああ、行こう。新生コンビの初陣だ」
言葉と同時に施設内を光が埋め尽くした。
不思議とその光は目に痛み無く、オレは目を閉じなかった。数秒間、景色の全てが真っ白になったが段々と晴れてくる。
光が晴れ、目前に広がっていたのは、果てまで届く程広く美しい海だった。
ご覧いただきありがとうございます。
主人公がデバイス持って原作の舞台に立ちましたが、介入時期は無印の中盤程です。
次回は戦闘に持っていけると思います。
では、また次回。