白銀の来訪者   作:月光花

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うーばー様から感想をいただきました。ありがとうございます。

今回で、なのはvsフェイトは決着です。

では、どうぞ。


第12話 始めるために…… 後編

  Side Out

 

 戦闘開始から30分ほど経過した現在、海鳴市の上空の戦闘は、先程までと大きく違った。

 

先程までの戦闘を弾幕の絶えない銃撃戦とするなら、今の戦闘は斬撃と刺突のせめぎ合いかもしれない。

 

高速飛行の機動力を生かして鎌状の魔力刃を振るうフェイトと新たに覚えた槍術とシノンが評価した『目』を駆使してそれに拮抗、あるいは上回ろうとするなのは。

 

フェイトがなのはの認識を改めてから、2人の距離は一度たりとも離れていない。

 

肩を狙って袈裟に斬り込んだフェイトの斬撃をなのはの刺突が弾き、関節や胸部を狙ったなのはの突きをフェイトがバルデッシュの持ち手で逸らす。

 

勝ち負けという結果に拘るなら、この2人には一旦距離を取って射撃魔法で敵を牽制、誘導するという戦い方もある。

 

だが、それを分かっていながら2人は一定以上の距離を取らず、近接戦闘を続ける。

 

まるで距離を取ることが敗北に繋がるかのように、勝ち負け以上に固執するものがそこにあるように、何処か譲れない意地のようなものを感じさせる。

 

フェイトは高速移動を続けるごとにスタミナを削られ、その攻撃を捕捉して弾く度に集中力を消費していく。

 

一応は拮抗状態なのだろうが、この拮抗はいつ崩れてもおかしいものではなかった。

 

『Flash Move.』

 

レイジングハートの声と共に踵部分に展開されたフライヤーフィンが輝き、急加速。その加速力を利用して刺突と共に突っ込む。

 

だが通常の機動力で勝るフェイトは空中を短くサイドステップで移動して突撃をやり過ごし、自分と同じタイミングで振り返ったなのはに斬撃を放つ。

 

なのはは長い持ち手部分で斬撃を受け止め、反動に逆らわず後ろへ飛ぶ。フェイトは空中を蹴って追撃し、右薙ぎに斬り込む。

 

なのはは後退しながら空中でくるりと体を右回転させて斬撃を回避、続くフェイトの袈裟、右逆袈裟の斬撃も持ち手部分で弾く。

 

なのはは再び加速によって突撃。急接近すると共に喉元、心臓、右脇腹を順に狙った3連続の刺突をすれ違い様に放つ。

 

フェイトは3発の内、喉元と心臓を狙った刺突をバルディッシュの持ち手部分で弾き、脇腹への攻撃を小さい障壁で防ぐ。

 

『Sonic Move.』

 

両者がすれ違った瞬間にフェイトの姿が掻き消え、なのはの背中目掛けて突っ込む。その際、バルディッシュが駆動音を立てて槍の形状をしたシーリングフォームに変形する。

 

だが、こちらはなのはの槍とは違い、破壊力の一点集中を狙った形状になっている。ジャンルで分けるなら、突撃槍だろう。

 

後ろを振り返ろうとしているなのはに加速魔法を発動させるまでの時間は無い。間違いなくピンチだ。だが、不思議となのはの心には余裕、いや落ち着きがあった。

 

このままではやられると分かっているのに、心の何処かが大丈夫だと告げている。そして、それを証明するかのようになのはの脳裏に閃きが走り、体が弾かれるように動いた。

 

両足が空中を強く蹴り、加速魔法にも匹敵する速度が発揮される。槍となったレイジングハートを右手だけで持ち、右腕を後ろに弓なりに引き絞る。

 

本人も半分驚きながら、なのはの進行方向には同じく突っ込んでくるフェイト。

 

そして、引き絞られたなのはの右腕が、閃いた言葉を力にするような気合の声と共に眼前へと突き出された。

 

「瞬迅槍!!」

 

今まで一度も耳にしたことのないはずの言葉を、なのはは一切の疑問も無く叫んだ。

 

そして、その声に答えるように、放たれた突きは凄まじい衝突音を響かせてバルディッシュの矛先と激突し、フェイトの突撃を完全に相殺した。

 

「なっ……!?」

 

自分の攻撃を真正面から破られ、バルディッシュを打ち上げられたフェイトは目の前の現実に驚きを隠せなかった。

 

その驚きのせいで気付けなかったが、実はなのは自身も刺突の威力に驚いて同じく呆然としていた。

 

突撃槍の形状をしたデバイスに加速魔法を加えた攻撃。命中すればなのはの障壁も正面からぶち抜ける威力があった。

 

だが、なのははそれを加速魔法すら使わず、強化魔法を施した肉体のみで正面から挑み、フェイトの攻撃を完全に相殺した。

 

その現実にフェイトは自身の目を疑うが、思考の中に残された冷静な部分が似たような現象をすでに目撃していることを思い出させる。

 

海の中に沈んでいた6つのジュエルシードを強制発動させた時、自分が手も足も出なかった6つの竜巻を相手に戦っていた銀髪の少年。

 

魔力を使用している気配が殆ど感じられなかったというのに、あの少年は斬撃1つで竜巻を吹き飛ばし、風や炎、果てには岩さえもを自在に操っていた。

 

魔導師の常識から逸脱したあの力と、今のなのはがやってみせた刺突の破壊力はよく似ている。

 

『Photon Lancer.』

 

「っ!……ファイアー!!」

 

驚愕で思考を止めた主を叱咤するように、バルディッシュが自己判断によってフェイトの周囲に3発の魔力弾を生成。ハッと我に返ったフェイトは慌てて集中力を練り直し、即座に全弾発射する。

 

『Protection.』

 

なのはの方も、レイジングハートが自己判断によって障壁を生成。魔力弾の爆発を材料にして主の意識を叩き起こす。

 

『マスター、しっかりしてください。今押しているのは私達ですよ?』

 

「ご、ごめん! それじゃあ、一気に畳み掛けよう!」

 

レイジングハートの静かな口調が叱咤の気配を増長させ、なのはは心の中で猛省しながらフェイトに向かって接近する。

 

「くっ……!」

 

だが、先程の突進を打ち破られ、勢いが増したなのはの気迫に怯んだフェイトはバルディッシュをデバイスフォームに変形させ、魔力弾を連射しながら距離を取った。

 

この瞬間、両者とも想像しない形だが、今までの拮抗は確かに崩壊した。

 

 

 

 

        *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 

 

 

 「……あのバカ、掴んだ勝機を一瞬で台無しにしやがって」

 

アースラのブリッジで戦況を見ていたシノンが重く溜め息を吐く。

 

ブリッジにいる人間全員の関心を引くような声だが、後ろでリンディに髪を弄られているので何処か締まらない。

 

しかも、ただ髪を整えるだけでは満足しなかったのか、リンディのもう片方の手にはスプレーまで握られている。

 

シノンの方もすでに諦めたのか、出来るだけ頭を動かさないようにしている。

 

(……まあ、予想以上の成長ではあったがな)

 

先程なのはが放った技。シノンの目に狂いがなければ、アレは間違い無く瞬迅槍だ。威力や精度はまだまだだが、これはシノンも予想していなかった。

 

「だが、今の攻防で均衡が崩れた。流れは今、なのはに傾いている」

 

クロノの言う通り、戦況は先程までと違う。

 

先程まで防戦一方だったなのはが今では後退するフェイトを槍と誘導弾を駆使して追い詰めている。そこには罠の気配も感じられない。

 

「今はな。だが、このまま決め切るのは正直難しいだろうな」

 

そう。なのはの方にもあまり余裕は無い。

 

体力面はともかく、フェイトの攻撃を防ぐ為にすでに集中力をかなり使っている。少しでも気を抜けば、隙を突かれて形勢が逆転してしまうだろう。

 

「……それに、フェイトだってこのまま素直にやられてくれるような奴じゃねぇだろ」

 

そう言ったシノンの言葉に答えるように、全員の視線が向けられたスクリーンの戦場では、状況が再び変化を始めていた。

 

 

 

 

        *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 

 

 

 「サンダー……!」

 

「っ!……ディバイン……!」

 

急旋回で振り返ったフェイトが雷光を迸らせた左手を突き出す。

 

それを見たなのはもレイジングハートを構え、魔力刃の矛先をフェイトに向ける。

 

その姿は別段おかしくはない。今のレイジングハートの形態はシューティングモード。つまり、元々は遠距離攻撃に最適化された姿なのだから。

 

「……スマッシャー!!」

 

「……バスター!!」

 

ほぼ同時に発射された2つの砲撃魔法。

 

直線状に放たれた金色と桜色の光が空中で激突し、数秒間の押し合いを繰り広げて盛大な爆発を巻き起こした。

 

爆煙はすぐに晴れ、互いにひどく消耗した2人は魔力弾の激しいドッグファイトを中断。肩で息をしながら睨み合いとなった。

 

だが、それも長くは続かなかった。

 

長引かせると不利になると判断したのか、一度深呼吸を行ったフェイトがバルデッシュを一閃して虚空を薙ぐ。

 

すると、フェイトの足元から巨大な魔法陣がスパークを撒き散らしながら展開された。それに続き、フェイトの周囲で無数の発光現象が起こる。

 

なのははすぐに回避行動を取らず、槍を構え直して防御の姿勢を取った。

 

だが……

 

「っ……!?」

 

槍の持ち手部分に添えようとした左手、続いて右手が金色に輝く半透明のキューブに拘束され、微塵も動かなくなった。設置型の拘束魔法、ライトニングバインドだ。

 

続いてフェイトの周囲で起こっていた光が姿を変え、合計38基のフォトンスフィアが横並びの密集陣形で形成された。

 

大技が来ると直感で理解し、なのはも表情を引き締める。

 

 

…………その時、レイジングハートのコアが僅かに光り、自分の足元と右腕に一瞬だけ桜色の光が生まれた事にフェイトは気付かない。

 

 

「ファランクスシフト……!」

 

フォトンスフィアの全てが電流を迸らせ、雷鳴と共に発射体勢を整える。

 

そして、振り上げられたフェイトの手が発射を知らせる号令として振り下ろされ……

 

「撃ち……砕けぇぇ!!!」

 

……38基のフォトンスフィアから、機関銃のような勢いでフォトンランサーが発射された。

 

この魔法、フォトンランサー・ファランクスシフトの攻撃時間は4秒。しかし、たかが4秒だけと侮ることなかれ。

 

スフィア1基の連射力は、1秒間につき7発。スフィアの数は38。つまり、一秒間だけでも266発もの高速連射を発揮する。

 

そして、それが4秒も続けば、フォトンランサーの発射弾数は合計1064発に達する。

 

バインドによって動けないなのはには防御しか選択肢は存在しない。

 

一発目が直撃した瞬間になのはの全身が爆煙に包まれ、他の誰からも姿が見えなくなる。

 

空爆を一箇所に絞り込めば実現出来そうな攻撃は、周囲に凄まじい爆音と閃光を撒き散らし続け、やがては黒煙だけが空中に漂う。

 

普通ならこれで決着だろう。

 

 

しかし、高町なのはという少女は、普通の枠には当てはまらなかった。

 

 

『行けますか? マスター』

 

デバイスのものと思われる声が爆煙の中から聞こえてきた。

 

そして爆煙が晴れると、そこにはバリアジャケットを所々ボロボロにしながらも、揺ぎ無い意思を宿した瞳で立つなのはがいた。

 

「うん。行けるよ、レイジングハート」

 

答えたなのははバインドが砕けて自由になった両手を動かし、レイジングハートを構える。

 

「ディバイン……!」

 

桜色の魔力が一点に集り、砲撃魔法のチャージが開始される。

 

「くっ……うあぁぁ!!」

 

自分の切り札を使っても仕留め切れなかったフェイトは唇を強く噛み締めるが、気合の声を上げて己の肉体を奮い立たせる。

 

しかし、動き出そうと力を込めた肉体は、突然凍りついたように動かなくなった。

 

視線を移すと、右腕と両足が桜色の光輪によって固定されていた。

 

「っ!……バインド!?」

 

レストリクトロック。なのはが飛行魔法や攻撃魔法よりも先に習得した魔法であり、他の魔法と比べても練度が高く、効果時間がかなり長い。

 

しかし、フェイトの驚愕はなのはがバインドを使えたことではなく、“いつ”バインドを仕掛けたのか分からないからだ。

 

(まさか……私のバインドで動けなかった時に……!)

 

確かにファランクスシフトを発射するまでの間、なのははその場から動けなかった。だが、それと同じく、発射準備を行っていたフェイトも動けなかった。

 

つまり、あの状況ではフェイトもバインドを回避することは出来なかったのだ。

 

「……バスタァァ!!!」

 

チャージが完了し、フルパワーで放たれた魔力砲撃がフェイトに迫る。

 

先程と立場が見事に逆転し、防御以外の選択肢を絶たれたフェイトは左手を突き出して障壁を展開する。

 

フェイトは魔導師としては回避型であり、防御は決して得意ではない。

 

(負けない……あの子だって、耐えたんだから!)

 

だが、フェイトは歯を食いしばり、バリアジャケットを凄まじい勢いで削られながらもなのはの砲撃を正面から耐え抜いた。

 

これで再び仕切り直しかと思われたが、ふと、フェイトは周囲に漂う無数の小さい光に気付いた。いや、よく見ると自分の周りだけではなく辺り一面、それこそ戦場一帯に溢れている。

 

(魔力? ……でも、これって大気に漂った残留魔力じゃ……)

 

小さな光の行き先を視線で追うと、その上空にあったのは巨大な魔力の塊。更に上には巨大な魔法陣しながらレイジングハートを振り上げたなのはがいる。

 

軽く見てもディバインバスターを遥かに上回る魔力が一点に集まっている。その大きさは現在進行形で増大しており、発揮される出力はまさに底無し。

 

『Starlight Breaker.』

 

「使い切れず、ばら撒いちゃった魔力をもう一度自分の所に集めて使う。コレが、レイジングハートと一緒に考えた、最後の切り札!」

 

「まさか……集束、砲撃……?」

 

驚愕で目を見開いたフェイトの口から、戦慄の呟きが零れる。

 

集束砲撃魔法。呼んで字の如く、集めた魔力を束ねて放つ砲撃魔法。

 

だが、これは通常の砲撃魔法とは違い、術者自らの魔力のみならず、周囲に散らばった魔力を集めて蓄積し、放つ魔法だ。

 

自分で放った砲撃魔法などを戻したり集めたりするのはフェイトも出来るが、なのはが行った技は“使用を終えて空中に拡散した魔力をもう一度実使用レベルで集める”というSランク以上の高等技術だ。

 

そして当然、発揮される魔法の威力は他と比較しても凄まじい。

 

「っ!……ウアアアアァァァァァァァ!!!」

 

だが、今だ動けないフェイトは膝を折らず、残った魔力を文字通り搾り出して6枚の障壁を展開した。それは、フェイトにとって本当の意味で最後の砦である。

 

 

「これが私の全力全開! スターライト……ブレイカァァァ!!!」

 

 

次の瞬間、放たれた桜色の極大砲撃は数秒の抵抗も虚しく、障壁ごとフェイトを飲み込んだ。

 

 

 

 

        *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 

 

 

  Side シノン

 

 「……おい、アレ誰が教えた。オレは友情面の常識があまり無いが、バインドで動けない敵に特大の砲撃ぶち込むとか、友達になりたい相手にやることか?」

 

「いや、友情の作り方は人それぞれだろうが、多分違う。それと、集束砲撃に関しては僕は関わってない。というか……コレを見た後では全力で阻止したいくらいだ」

 

オレの問いにクロノは微妙な表情で答える。その声には、何処か恐怖の気配がある。

 

「でも、これで決着だね」

 

確かにエイミィさんの言うとおり、勝敗は決まっただろう。

 

モニターを見ると、高町の放った砲撃は着弾点を中心に凄まじい破壊力を撒き散らし、半径数キロ圏内に無数に聳え立つレイアー建造物を“1つ残らず”消滅させた。

 

数キロクラスの隕石でも叩き落せばあんな感じになるだろうか? オレの目から見て、破壊力だけなら間違いなく秘奥義クラスに食い込むぞアレ。

 

とりあえず高町の奴は説教だな、うん。あのまま放置したら、アイツ人として何か大きく間違えそうな気がする。

 

「はい、出来た。それじゃあシノン君、今すぐ現場に向かってちょうだい」

 

後ろを振り向くと、満足げな顔で手を合わせたリンディさんが微笑んでいる。後頭部に手を回してみると、整えられたオレの後ろ髪が紐で一纏めになっている。

 

「分かりましたけど、行って何するんです? 高町に説教してくればいいんですか?」

 

「それはまた今度お願いするわ。今はあの2人を助けてちょうだい。私の読みが正しければ、恐らくこのタイミングで仕掛けてくる……」

 

そう言いながらリンディさんが見ているのは、モニターに映し出された結界内の空。

 

(ああ、なるほど……)

 

それを見て、リンディさんが危険視しているものが何なのか想像が付き、オレは内心で呟きながら転送ポートへと歩を進め、黙って転移を開始した。

 

 

 

 

 転移が完了し、視界にはなのはの砲撃によって建造物が無くなった広い海だけが映る。

 

『Accel Fin.』

 

両肩に白銀色のフィンが展開され、オレは高町とフェイトがいる場所まで直行する。

 

ふと上を見ると、上空の空が物凄い速度で黒雲に覆われていく。しかもその一点に、雷鳴を轟かせながら紫電が集まっていた。その照準は高町達のいる場所と、ジュエルシードの2箇所。

 

高町とフェイトも気付いているようだが、魔力も体力も共に限界寸前の2人にはどうする事も出来ない。

 

『シノン君! 何とかなのはちゃんとフェイトちゃんを安全圏まで運んで!』

 

通信から聞こえてきた声に答えず、オレは再び空を見上げた。発射されるまでの正確な時間は分からないが、あと10秒も無いだろう。

 

防ぐだけなら術技に心当たりがある。だあ、威力もよく分からない攻撃を防御するのは危険だし、指向性のある落雷を回避するのも得策ではない。もし照準を自在に変えられたり、連射されたら終わりだ。

 

(試してみるか……)

 

オレは心中で呟きながら、なのはとフェイトの元へと到着。雷雲の中で輝く紫電を見上げながら腰に差した大太刀を抜刀し、正眼に構える。

 

「お前ら、そこから下手に動くなよ」

 

視線を向けずに言葉を飛ばし、オレは大太刀の刀身に魔力を込める。今からやろうとしていることは単純、斬撃に魔力を上乗せして紫電を吹き飛ばす。

 

もし、ジュエルシードがオレの願いを本当に叶えたのなら、出来るはずだ。

 

手順は前と何も変わらない。ただ紫電を大太刀の刀身で斬り裂き、その後に魔力をぶつけて紫電を吹き飛ばすだけだ。

 

「……ハァッ!!」

 

一瞬の閃光。次の瞬間に紫電が降り注ぎ、短い声と共に大太刀を振り下ろす。感覚のある左手を通して手応えが伝わり、刀身から魔力を放出する。

 

すると、斬撃のコースに沿って刀身から膨大な魔力が放たれ、巨大な白銀色の斬撃となった。斬撃は紫電を見事真っ二つに両断し、そのまま空の雷雲を押し退けた。

 

やはり、オレの魔力の瞬間放出量は以前と比べ物にならないほど向上している。しかも、これだけのことをやっても体にまったく反動が無い。

 

(喜んでいいのか、それとも嘆くべきなのか……微妙なところだな)

 

大太刀を鞘に納め、もう1発の紫電が落ちた場所を見ると、フェイトが回収した9個のジュエルシード全てが無くなっていた。

 

高町が賭けた11個のジュエルシードはアースラの方で回収したのだろう。

 

「行くぞ高町、フェイト・テスタロッサをアースラに連れて行く。保護だろうと逮捕だろうと、まずはデバイス共々休ませてやる必要がある」

 

バリアジャケットが所々ボロボロとなったフェイトは、見るからにフラフラだ。なのはも同じくフラフラだが、あの特大砲撃を受けたフェイト程じゃないだろう。

 

「それと抵抗はやめておけ。鎮圧するのは簡単だが、それ以上デバイスをお前の無茶に付き合わせてやるべきじゃない」

 

視線を向けてみると、フェイトの手に握られたバルディッシュはコア以外の部分に無数の亀裂を走らせ、ボロボロの姿となっている。

 

「……わかった」

 

それを見たフェイトは短く呟いて頷き、バルディッシュの本体を収納する。

 

「行くぞ」

 

抵抗の意思が無い事を確認し、オレ達はアースラの転移魔法によって移動した。

 

 




ご覧いただきありがとうございます。

とりあえず、勝負の決着と母親のお叱りまでやって終わりました。

なのはに槍とか覚えさせましたが、とどめはやっぱりバインドからのSLBです。友達になりたいなら、これしかない。

そろそろ無印編も終盤です。

では、また次回。


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