るろうに使い魔‐ハルケギニア剣客浪漫譚‐   作:お団子

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第五幕『微熱のキュルケ』

「しかし、まさかこんな結末になるとは……」

「本当、そうですよね…」

 ここはトリステイン学院校長室。

 その部屋で、この学院の長でもあるオールド・オスマンが、深刻な顔つきで顎髭を撫でていた。隣にはルイズ達のサモン・サーヴァントを務めたコルベールが、これまた愕然とした表情をしている。

「お主は見えたかの、あの動き」

「いえ全く。正直言って、私があの場でも反応できたかどうか…」

 二人が話し合っているのは、先程のギーシュと剣心との決闘の件だった。

 

 

 

 数分程前、秘書のミス・ロングビルが、慌てた様子で扉を叩いてきたのだ。

 何でも、生徒達が決闘と騒ぎ立てており、どうにも止められる状況では無いらしい。そのため、『眠りの鐘』の使用許可を求めてのことだったが、それをオスマンは制止した。

 ただ単に、そんなことのために秘宝を引っ張り出すのが、面倒臭いだけだったのだが。

「全く暇を持て余した貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。それで、誰と誰じゃ?」

 一人は、ギーシュ・ド・グラモン。数々な武功を重ねてきた由緒ある家系で、親子諸共無類の女好きで通ってきた。今回も女絡みでの決闘だろうと、オスマンはあたりをつけた。

 対するは、『ゼロ』で名が知られるミス・ヴァリエールの使い魔、あの平民の人間だった。それを聞いて、コルベールはハッとする。

「オールド・オスマン。危険なのでは? 止めさせたほうが…」

「まあまあ、ミスタ・コルベール。時には落ち着くことも重要じゃて」

 そう言って、ロングビルを下がらせ、懐から杖を取り出すとそれを振った。すると壁にかかった鏡に、ヴェストリ広場で決闘を宣言するギーシュ達の姿が映った。

「とりあえずあの男がお主の言う伝説の使い魔なのか、これで見極めようじゃないか」

 オスマンはそう言ってしばらく楽しげに鏡を眺めていたのだが、その後起こった出来事にコルベールと一緒に呆然として口を開いた。

 

 

 

 そして、今に至るというわけである。

 正直単なる様子見程度で特に何かしらの期待はしていなかったが、実際に見せられたあの闘いは、その予想を遥かに上回ったものだった。

 魔法を操るメイジが平民に負けた。しかも殆ど一方的で。相手はまだ実力の半分? いや四分の一? も出していない。

 あの平民からすれば、闘ったという気概すら持ってはいないだろう。

 ギーシュが一番レベルの低いドットクラスのメイジだったことを差し置いても、この結果には流石のオスマンも驚きで声を唸らせた。

「ううむ、もしかすると…これは本当に…」

「だから言ったではありませんか、やはり彼は伝説の使い魔『ガンダールヴ』なんですよ!」

 コルベールが嬉しそうな調子でそうオスマンにまくし立てた。彼がこんなにも興奮しているのには理由がある。

 あの日、ルイズが平民を召喚した時左手に現れたルーンは、普通の文献には載っていない、全く見たことのないルーンだった。

 それからコルベールは事あるごとに図書室へ赴き、古いものから最新のものまで本を隅々と読んで調べまわっていた。

 その内、ルーンに関する一冊の文献が見つかった。

 それが、かつて始祖ブリミルが使役したとされる伝説の戦士『ガンダールヴ』。

 主人の長い詠唱の間を守るため、あらゆる外敵を寄せ付けないその強さを持った使い魔は、一説によれば千人もの軍隊を蹴散らし、並みのメイジでは歯が立たなかったと言われる程だったとか。

 コルベールは熱く語りながらも考える。あの平民には『ディテクト・マジック』を使ってまで調べたが、やはり普通の人間だった。それは間違いない。

 しかし、あの体捌きは絶対に普通じゃない。あれは相当の修羅場をくぐり抜けてきた人間だからこそ出来る芸当だ。

 加えて、あの剣閃と、最後にギーシュの杖を奪った、神速とも言える移動術。

 もしさっきの技が、彼の実力の片鱗だったとしたら……あれを見切れるメイジは滅多にいないだろう――そう思うとコルベールは身震いをした。

「やはり、このことは王宮に報告した方が――」

「それはならんぞ、ミスタ・コルベール」

 制するようにオスマンが、重々しく口を開いた。

 確かに、ルーンのことや決闘の件から、『ガンダールヴ』なのか、そうでなくても高い実力を備えた強者であることは事実だ。

 ならばこれを王宮に報告したらどうなることか。

 今のご時世、腕っ節の強いものは戦場で活躍される時代だ。この件が知れたら主人諸共戦に利用されかねない。そうオスマンは危惧したのだ。

「この件は私が預かる。他言は無用じゃぞミスタ・コルベール」

「は、はい! かしこまりました!」

 それからオスマンは、腰を上げて後ろの窓を物思いに吹けるように眺めていた。

 あの神速の動き。あれには驚かされたが、同時にどこかで見た覚えがあったような…。

「まさか、あの時の―――――だが確かにそっくりだったのう……」

 

 

 

 

 

第五幕『微熱のキュルケ』

             

 

 

 

 

「さあ、思う存分食ってくれ。『我らが剣』よ!!」

 太陽が地へと降りていく夕暮れ時。

 シエスタに再び厨房へと誘われた剣心は、そこでマルトーといった料理長に豪勢な食事を振舞われていた。何故彼がこんなにも気前がいいのか、それは当然のことながらギーシュとの決闘のことが関係していた。

 平民が貴族を打ち負かした。という噂はもはや学院中で広まっており、同じ平民で日頃から貴族に対する鬱憤を溜めていたマルトー達からしてみれば、何とも胸の内が晴れるようなニュースだったのだ。

「しかしお前さん、どうしてそんなに強いんだい? ちょっと教えてくれよ」

「何、大したことはしてないでござるよ」

「ハハッ、謙虚だな! いいねえいいねえ、威張り散らしてるあいつらとは格が違うぜ!」

 マルトーは笑いながら、剣心の背中をバンバンと叩いた。どうやら相当気に入られたようだ。

 シエスタも、驚きと興奮が入り交じった声で話す。

「でも本当に凄かったんですよ!! 囲まれた時はどうしようと思っていたんですけど、あの時凄く格好よかったです」

 シエスタが少し頬を赤く染めあげる。それを見てマルトーは「お似合いさんだぜ、お二方!」とはやし立てた。それにシエスタは顔を更に赤くするが、今度は少しバツが悪そうにして言った。

「御免なさい。あの時急に逃げ出してしまって…その…私…」

「大丈夫、気にしてないでござるよ」

 相変わらず屈託の無い微笑みを浮かべる剣心を見て、本当に気にもとめてないとわかると、シエスタもつられてニッコリと笑った。

 ――でも、と今度は別のことでシエスタは首をかしげる。

「急に呼びだしちゃって、何だかミス・ヴァリエールには悪い気もしますが…大丈夫ですか?」

 

 

 

 あの決闘の後、ルイズは剣心の後を追っかけながら、それはもうアレコレ聞いてきた。

 なんでそんなに強いのかとか、どこまで本気だったのかとか、さっきのあれは魔法だったのかとか。

 まくし立てるように聞いてくるので、剣心も当たり障りしない位には教えた。

「まあ、さっきの童は素質はあるけど、まだまだ発展途上って感じでござったな。あと最後のはお主の言う魔法とかの類ではござらん。ただ走っただけでござる」

「はぁ? ただ走っただけで姿が消えるわけ無いじゃない、隠さずにちゃんと教えなさい!!」

 どんなに説明してもルイズは納得しなさそうだったので、剣心はやれやれとその話を打ち切った。実は先程の決闘については、剣心にとっても不思議に思うことがあったのだ。

 あの時、ギーシュの最後のワルキューレを粉砕しようと、剣心は使い慣らした愛刀に手をかけたその瞬間、急に体が軽くなったのだ。

 今になって思えば、あれは間違いなく自分が『本気で』跳んだ時と同じ感覚。つまり、ちょっと力を入れただけで自身の限界までの高さと速さを、容易に叩き出していたのだ。

 今はもうその力は感じないが、もしあの時本気で跳んだらどうなっていたか…。

 このことについてはルイズには言わなかった。自分でも分らない事を話したって意味がないし、余計な言葉でこれ以上混乱させたくもなかった。

 そのルイズはしばらくの間でもまだブツブツ何かを呟いていたが、今度は急に静まり返ったかと思うと、今度はどこか緊張したような声で呼んだ。

「ねえ、あのさ……」

 再び剣心は振り返る。ルイズはどこかモジモジした感じで俯いていた。顔も真っ赤だ。やがて搾り出したかのような小さな声で、ルイズは言った。

「あ、あれさ…ホラ、わたし…何も言わず行っちゃったじゃん…だからさ…ごめん…それで…ありがと……」

 湯気が出そうなほど真っ赤にしたルイズは、今度は思いっきり顔を上げて剣心を指差した。

「か、勘違いしないでよね!! 今言っとかないと、わたしがずっと後悔すると思っただけなんだから! あーあ、心配して損したと思ったら、お腹が減って来ちゃったわ!!」

 一気にそれだけの事を言うと、そのまま剣心の前を通り越してズカズカと歩き去っていった。

 まだ教室の件で怒っているのかな、などとまたもやズレた考えをしていた剣心の所へ、今度はシエスタがやってきたというわけだ。

 

 

 

「そう言えば、ずっと気になっていたんですけど…」

 と、シエスタは不思議そうに腰の剣をまじまじと見つめる。ギーシュの時に一瞬だけ使ったあの武器だ。

「それは何ですか? 形からして剣のようですけど、あの時見えませんでしたから……」

 マルトーや他の皆も気になるのか、視線がいっぺんに腰の武器へと注がれる。

 せっかくだから、ということで剣心は腰に差した得物を鞘ごと取り出して、シエスタ達に見えるように前に出しそして刀身を抜いた。

「これは―――……?」

 それを見て、シエスタ達は疑問符を浮かべる。

 

 確かにそれは、剣のようだった。刀身を反らし峰を持つ、片刃の剣。

 

 しかし、振り回すと思われる部分の方に、何故か峰があってその反対に刃がついていた。簡単にいえば、本来あるべき刃と峰の位置が、逆になっているのだ。

「あの……斬りにくくないですか、これ?」

 シエスタは実際に手に取って、改めて刀をよく見やった。

 ずっしりとした重量感に使い慣らされた柄。しかし刀身は殆ど新品同様に綺麗で美しく、血一つこびり付いていない。

 シエスタも内心「こういうのを芸術品って言うんだろうなぁ」と感心するほどだった。

 しかしこの刀、実用性はあるのだろうか? どう見たって普通に振っても、人どころか木も斬り辛そうだ。

 感想より先に疑問を口に出してしまったシエスタだったが、それに剣心は優しく答えた。

「それは『逆刃刀』。拙者の魂を預けるに等しい、自慢の愛刀でござるよ」

「へぇ~、そうなんですか」

 と、一通り眺めたシエスタはその逆刃刀を剣心に返すと、今度はマルトーが大きく笑いかける。

「まあ、また飯が食いたくなったらいつでも来てくれ! 俺の目が黒い内は間違ってもお前さんを空腹にさせたりしないからよ!」

「私も、今度は逃げずに最後までお手伝いします。思うんです…私ケンシンさんと一緒なら、なんだって出来るんだって…」

 と、顔を赤らめながらも強く詰め寄るシエスタに対し、周りはヒューヒューと冷やかす。

 それからしばらくは楽しく雑談をしながらも、これ以上は帰らないとマズイからと、剣心は厨房を後にした。

 

 

 

 朝通って来た道を辿りながらルイズの住む寮の前まで来ると、その隣にはフレイムが待っていた。

「おろ、どうしたでござる?」

 剣心はフレイムの頭を優しく撫でた。対するフレイムは、何か言いたそうに剣心を見つめていると、藪から棒に袖を口で咥えて引っ張り始めた。どうやら付いてきて欲しいらしい。

「おいおい、どこへ連れてく気でござるか?」

 しかしフレイムは何も言わず、ただ剣心を引っ張り続けると、やがて一つの開け放れた扉の前で止まった。

 剣心はそのままフレイムと一緒に扉をくぐると、真っ暗闇の中から声が聞こえた。

「扉を閉めてくださる?」

 言われるがまま、取り敢えず剣心は扉を閉める。

 しばらく目の前は暗闇が覆っていたが、パチンと指を弾くような音が聞こえると、ロウソクが灯り点々と光の道を作っていった。

 その終着点にはキュルケがいた。ベッドに腰掛け、艶かしい肌と豊満な胸を見せつけながら……。

 現代の健全な青少年なら、このまま押し倒しても不思議ではないほどの、妖しい魅力を持っているキュルケだったが、幕末時代の堅苦しい倫理観を持つ剣心からすれば、その姿は「はしたない、みっともない」以外に感想が出てこなかった。

 

 

「貴方は、あたしをはしたない女だと思うでしょうね」

「お主もそう思うなら、まず服を着るでござるよ」

 キュルケは今制服すら着ていない、殆ど下着同然の格好でいる。男を悩殺するための勝負服なのだろうが、剣心には通用しない。

「思われても、仕方がないの。わかる? あたしの二つ名は『微熱』」

 キュルケもキュルケでそんな剣心の態度を意に返さず、すり寄るように近づいてくる。

「あたしはね、松明みたいに燃え上がりやすいの。だからいきなりこんな風にお呼び出てしたりしてしまうの。わかってる。いけないことよ」

「じゃあしなきゃいい話でござ――」

「でもね、貴方はきっとお許し下さると思うわ」

 剣心の言葉を遮りながらすっと手を握りつつ、指でなぞり始める。そして急に顔を上げると、その妖艶な表情で剣心を見つめた。

「恋してるのよ。あたし、貴方に。全く恋は突然ね――」

「キュルケ! 待ち合わせの時間に来ないと思えば……その男は誰だい!?」

 窓の外から、不意に声が聞こえた。

貴族の男子生徒が一人、恨めしそうな顔でこちらを見ていたのだ。

「ベリッソン! ええと、二時間後に」

「話が違―――」

 皆まで言わせず、キュルケはスッと胸の谷間から杖を取り出すと、何の躊躇いも見せずに男に向かって振った。

 ボン! と火が燃え上がるような音と悲鳴と共に、男は窓の外へ消えた。

「全く、無粋なフクロウね」

「…どう見ても人でござったな」

「いやぁね、見間違いよ。ダーリン」

 ジト目で睨む剣心だったが、キュルケは特に気にせず、剣心に抱きつこうと両腕を回そうとした――その時再び窓から声が怒号が飛ぶ。

「キュルケ! 今夜は僕と過ごすんじゃなかったのか!」

「スティックス! ええと、四時間後に」

 どうやらさっきのとは別の男らしい。強引に入ってくるその男に向かって、キュルケはまた杖を振り上げた。

 再びボン! と勢いよい音が爆ぜると悲鳴と落下音の後、ドスンと大きな音を立てた。

 もはやジト目を通り越して、得体の知れないようなモノを見つめるような目で、剣心は言った。

「……お主はそうやって、いつも男を手篭にしてるでござるか?」

「勘違いしないで、彼は友達というより知り合いね。あたしが本当に好きなのは、ア・ナ・タ―――」

「「「キュルケ! そいつは誰なんだ! 恋人はいないって言ってたじゃないか!」」」

 またもや窓際から、妙にシンクロがかった声で部屋に響き渡る。今度は三人の男が、押し合いながらこちらを睨みつけていた。

「マニカン! エイジャックス! ギムリ! ええと、六時間後に」

「「「朝だよ!」」」

 仲良く唱和する三人に向かって、三度杖を振り上げようとして――今度はその腕を剣心に掴まれた。

「もう、止すでござるよ」

「……フレイム!」

 その声で、部屋の隅で寝ていたフレイムが起き上がると、未だに揉み合っている三人に向かって炎を吐いた。

 またまたボン! という音と共に―――以下割愛。

「ふう、これで邪魔は居なくなったわね。ケンシ――」

 キュルケが振り向けば、既に剣心は出口のドアに手をかけていた。これには、流石のキュルケも慌てた様子を見せた。

「ちょっと待ってよ! まだ夜は始まったばかりよ! これから――」

「そういう言葉は、もっと歳月を重ねて落ち着いてから、言うものでござブッ!!!」

 そう言い切る前に、ドアが物凄い勢いで開かれた。そしてそこからルイズが鬼のような形相で見つめていた。

 ちなみに剣心は扉の目の前に立っていたためその余波をモロにくらい、目を回して吹っ飛び、そのまま倒れ込んでしまった。

「ツェルプストー! 誰の使い魔に手を出してんのよ!」

「仕方ないじゃない。好きになっちゃったんだもん」

 そう言って、キュルケはここぞとばかりに目を回す剣心を優しく抱き寄せながら、吐息がかかるような声で耳元に囁いた。

「こ~んな乱暴でガサツなご主人様より、あたしの方がよっぽど彼を幸せに出来るわ。ねえダーリン」

 ルイズはそれを聞いて、とにかくびっくりした表情を作った。そしてみるみる内に顔を真っ赤にすると、乱暴に剣心をキュルケの手からひったくり、ズカズカと引っ張りながら部屋を後にした。

「ねえルイズ、恋と炎はフォン・ツェルプストーの宿命なのよ。身を焦がす宿命よ。恋の業火で焼かれるなら、あたしの家系は本望なのよ。貴方が一番ご存知でしょう?」

 オーッホッホッホ。と笑うキュルケの声を振り切りながら、ルイズはとにかく自分の部屋へと逃れるように入った。

 

 

 

「さぁ~~て、それじゃ早速説明してもらおうじゃないかしら……」

 剣心が目を覚ますと、そこにはもう明王が憑依したかのような状態のルイズが目の前で仁王立ちしていた。

 手にムチを持ち、眉をピクピクと釣り上げている所から、相当お怒りのご様子だ。

「いやいや、誤解でござるよ、拙者何もしてな――」

 バァンと、激しい音が目の前に叩きつけられた。剣心はドギマギした。神谷道場に最初に恵を連れ込んだ時の薫と、全く同じ表情をルイズはしていた。

「そんな常套句はいらないわ……何でキュルケなのよ」

 ルイズの怒りが、体全体から伝わってくるのがわかる。正直、いつ噴火してもおかしくない状態だ。

「ちょっとカッコイイなとか…一瞬でも思ったわたしが馬鹿だったわ…なんであの女なのよ」

 わなわなと、声まで震わせながら呟く。同時にトーンは段々と落ちて小さくなっていた。次だな……と剣心の予想を裏切らず、とうとうルイズは爆発した。

「何であの女なのよ!! この、バカ犬―――――――――ッ!!!」

「おわっ! 危っ! 危なっ! 危ないでござるよ、ルイズ殿!!」

 やたらめったらムチを振り回すルイズに対し、剣心は何とかひょいひょい躱すが、表情は冷や汗でダラダラだ。

 その後もルイズは数十分は暴れ続け、やっと息切れして止めたと思ったら、今度は剣心に正座させ、キュルケの家柄は自分の家系の、祖先の恋人を奪っただの、戦争の度に殺しあっただの、どれだけツェルプストー家が憎たらしい存在かを夜遅くまで語り始めたのだった。

 


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