るろうに使い魔‐ハルケギニア剣客浪漫譚‐   作:お団子

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第十二幕『密約』

 「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおな~~~り~~!」

 その声と共に、門が開かれて歓声が巻き起こった。

 敷かれた絨毯の上を、優雅に歩きながら、アンリエッタはその声に応える。手を振って返せば、ただでさえ大きな歓声が、より大きく響きわたった。

 すごい人気だな……と思う剣心は、ふと隣のルイズを見た。

 相変わらず、気の抜けた顔でボーっと、王女を見つめるように立っていた。

「―――ん?」

 と、ふと剣心の先に、アンリエッタの側を護衛する一人の男に目が行った。

 見事な羽帽子と、逞しい顔つきの壮年の貴族。鷲の頭と獅子の体を合わせた、見たこともない野獣に跨り、隣を付いていく。

(ルイズ殿が見ているのは、あの男でござるか…?)

 結局、姫が学院に招き入れられる、その始終まで、ルイズは惚けた表情のままだった。

 

 

 

 

               第十二幕『密約』

 

 

 

 

 その日の夜。

 あの後も変わらずネジが三本ほど外れたような表情をしているルイズは、そのままベッドの上で只ボーッとしていた。

 何か話しかけてみても、何をやっても返事すら返さない有様。

 やはり昼間の男性と関係があるのだろうか、とか思いながら剣心は暇潰しにデルフを磨いていた。

「なあ相棒……」

「何でござる?」

 錆び付いた部分を落としながら、剣心は答える。するとデルフは不服そうな声を漏らした。

「そりゃあ、今の俺は相棒の立派な武器と比べれば、チンケなもんさ。でもな、そうやって磨いてくれると、期待っていうの? しちまうんだよな。俺が言いたいことわかるか?」

「………」

 剣心は何も言わずに錆を落とす。そんな様子に構わず、デルフは続ける。

「武器ってのはな、使ってナンボなもんだろ。磨いてくれるのは嬉しいよ。ああ嬉しい。けどな、俺みたいなものを芸術品に仕立てあげようってんならまず無理だし、俺自身もそんな道お断りだ。俺が言いたいこと、分かってくれるな?」

「…………」

 やはり剣心はだんまりを決め込む。そんな空気に耐えられずに遂にデルフが叫んだ。

「何とか言ってくれよ相棒!! ここんとこずっと磨いてばっかじゃねえか!! たまには俺も活躍してぇんだよ!! その刀と同じように俺も振るってくれよ!!」

「それが本音でござるか…」

 はぁ、とため息付く剣心に対し悪いかよ、とデルフは開き直る。

「じゃあ次! 次だけでもいいから使ってくれ。なあそれくらい、いいだろ相棒!」

「分った分ったから、暴れないで欲しいでござるよ」

「ようし約束だかんな!! 次は絶対俺だかんな!」

 子供の様な取り決めを交わされて、苦笑する剣心の耳に、ふと小さな音が聞こえた。コツコツと、段々と大きく聞こえる足音。誰かがこっちにやって来ているのは明白だった。

 こんな夜更けに、一体誰だろうか…? 剣心はすっと立ち上がると、デルフを降ろし、腰の逆刃刀の柄に手をかける。その瞬間、構わずデルフが泣き出した。

「ひでえよ相棒! さっきの約束もう反故にしちまってよ!! そんなに俺よりそっちの方がいいのかチクショー!!!」

 もう警戒もへったくれもない。呆れたようにガックリとする剣心をよそに、トントンとドアを叩く音がした。それを聞いて、止まった時が動き出したかのようにルイズが跳ね上がると、慎重な顔つきで扉を開けた。

「………?」

 入ってきたのは、黒いフードを被った人物だった。そそくさと部屋に入り、ゆっくりとドアを閉めると、杖を取り出し何事かを唱え始めた。すると辺り一面、光の粉が宙を舞い始める。

「ディテクトマジック?」

「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」

 そのまましばらくの間注意深く周囲を探っていたが、やがて何もないと分かると、新たにやってきたその人物はフードを取った。

 その顔を見て、ルイズと剣心は驚きの表情をした。

「姫殿下!!」

「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」

 それは、昼間に生徒達からの歓声を受けながら歩いていた、アンリエッタ姫そのものだった。

「ああ、ルイズ、懐かしいルイズ!」

「姫殿下、いけませんわ。こんな下賎な場所に……」

 嬉しそうにルイズに歩み寄るアンリエッタに対し、ルイズは畏まったように膝を付く。それを見て、悲しそうな表情でアンリエッタは言った。

「ああ、ルイズ! そんな堅苦しい行儀はやめて頂戴。ここには枢機卿も、母上も、あの友達面をして寄ってくる欲の皮の突っ張った宮廷貴族達もいないのですよ! ああ、もうわたくしには心を許せるおともだちはいないのかしら。貴方にまで、そんなよそよそしい態度を取られたら、わたくし死んでしまうわ!」

 一気にそうまくし立てると、もったいないお言葉とばかりに、ルイズも顔を上げた。そして、楽しそうに昔の話に花を咲かせ始めた。

「幼い頃、一緒になって宮廷の中庭で蝶を追いかけたじゃないの。泥だらけになって!」

「ええ、お召し物を汚してしまって、侍従のラ・ポルトさまに叱られました」

「そうそう。あとふわふわのクリーム菓子を取り合って、つかみ合いになったこともあるわ! 喧嘩になると、いつもわたくしが負かされたわね」

「いえ、姫さまが勝利をお収めになったことも、一度ならずございました」

「他にもほら! 覚えているかしら? わたくし達がほら、アミアンの包囲戦と呼んでいるあの一戦のこと!」

 と、時間も忘れてしばらく二人は、あの頃への小さな記憶を思い出しては、それを幸せそうに語って、過去に浸っていた。

 やがて、話すことを話し終えると、正気に戻ったように辺りを見回した。

「ああ、嫌だわ。すっかり話し込んだりして…そう言えば、あなたの使い魔はどこかしら?」

「はい、ええと……あれ?」

 ルイズは、さっきまで己の使い魔がいた場所を振り返る。しかしそこに彼の姿はない。

 いつの間にか、剣心は何も言わずにスッと消えていたのだった。

 

 

 

「あれっ、急に出てきてどうしたんだい?」

「おろ?」

 その少し前のこと。

 二人の邪魔をしないようにと、そそくさと部屋を出た剣心は、その行きあたりでギーシュとすれ違った。

 あまりに急なことだったので驚きの声を上げるギーシュに対し、剣心は尋ねる。

「お主こそ、ここは女子寮でござるよ。何をしにここまで?」

「いや何、麗しきアンリエッタ姫の姿が見えたのでね、お姿だけでもと思って――」

 相変わらず、気障ったらしく振舞うギーシュに、剣心は呆れたような表情をすると、そのままギーシュを連れてその場を離れた。

「ちょ、何をするんだい!?」

「今は大事な話の途中でござる。割り込みは野暮ってものでござるよ」

 少なくとも、彼女たちの楽しいひとときは邪魔はさせない。剣心はそう意を決めて、暴れるギーシュを引きずるように歩いた。

 

 

 

 そのままギーシュを女子寮の前まで引っ張って来ると、しばらく待っていようと剣心は壁に背をあずけた。ギーシュもまた、不服そうな顔をしながらも同じように佇んだ。ここにいれば、最後の最後に姫に会えるから、おそらくそう考えてのことだろう。

 ふと、剣心はギーシュの方を向いた。

「あの時の約束、覚えているでござるか?」

 あの時…ヴァストリ広場での決闘――を思い出し、少し身震いしながらも、ギーシュは憮然と言い張った。

「大丈夫さ、彼女を馬鹿になんて、君がいる以上もう出来ないし、ちゃんとケティとモンモランシーにも手厚く謝罪したさ」

 最後に、はぁ…。とギーシュはため息をこぼした。謝ったのは事実だろうが、彼の表情から察するに、あれから上手く関係を取り持ててはいないようだ。

 しかし、ギーシュは特に恨みを持っているような様子はなく、気さくな感じで剣心に話しかけた。

「しかし聞いたよ、君がフーケを捕まえたんだって? あの神出鬼没の怪盗をね…流石だという他ないね」

「拙者一人の力ではござらんよ。皆の力があってこそでござる」

「そうは言うけどね、キュルケが嬉々として語ってくれたよ、その時の様子を」

 と、ギーシュはキュルケが話した内容のことを説明しだした。小屋の奇襲やゴーレム退治、鋭い観察眼で正体を暴き、なおかつ人質を取られても動じず反撃したことまで。

 そして、昼間に見せた、メイジの起こす風をいとも簡単に防いだあの剣腕。

「他の生徒達は、まだ君の力を疑問視する声も大きい。当然さ、メイジに勝てる平民なんて、いるはずないと…僕もそうだったさ、でも今は違う」

 羨ましそうに語りながら、自然とギーシュの言葉に熱がこもり始める。

「飛天御剣流といったね、あれはまだ僕達の想像を、遥かに上回る力を持っているんだろう? 隠さなくてもいい、僕には分るさ」

 確信めいた口調でギーシュは言った。一度剣心と決闘したこともあってか、ある意味ではギーシュが一番、剣心の実力を間近で垣間見ていた。だから疑いの余地がないように強く言葉に表せるのだった。

「……何が言いたいでござるか」

 どうも何か引っかかるような彼の口調に、剣心は改めて質問する。

 すると、気障ったらしい格好を改め、急に畏まった態度をとると、ギーシュは言った。

 

 

「差し支えなければ…どうか僕に、飛天御剣流を教えて欲しい」

 

 

 長い沈黙の後、剣心は答えた。

「ダメでござる」

「どっ…どうしてだい!?」

 こんなにばっさりと断られるとは、思っていなかったのだろう。慌てた様子で詰め寄るギーシュに、剣心は冷静に返す。

「飛天御剣流は、人に教え広めるものではござらん。後世に残す気も、誰かに伝える気も、拙者はこれっぽっちもござらんよ」

「そ、そんな! だってあんなに強いのに!?」

 納得できなさそうに、ギーシュは語気を強める。今の時勢、国力の小さいトリステインは、来るべき戦争に備え、一人でも優秀なメイジを見つけ出そうと躍起になっている。

 愛しい姫を守るため、そしてグラモン家の名に恥じぬため、少しでも強く有りたいギーシュにとって、彼のその強さ…飛天御剣流は、まさに理想だった。

 まだ会って何日も経ってはいないが、不思議と『手柄を立てる理想の自分』というと、彼の姿を思い起こさせる程、剣心には強烈な魅力を持っているのだ。

 だから、断られたこのショックは、ギーシュにとってもかなり大きかった。

「僕には、守りたいものを守るという動機と、戦で名を上げたいという気概もある! その他に、どんなことが必要だと言うんだい!?」

 ここだけは譲るまいと、胸を張って声高に叫ぶギーシュを見て――一度だけ、昔の自分を思い出して――剣心は少し黙り込んだ。

 やがて、小さく、だけどギーシュの耳にもはっきり聞こえるような声で、剣心は口を開いた。

 

 

 

   「剣は凶器、剣術は殺人術。どんな綺麗事やお題目を口にしてもそれが真実」

 

 

 

 決闘の時に見せた、あの鋭い眼でギーシュを見据えて、剣心はさらにこう続けた。

「『守るもの』といったが、それは見方によっては色々と変わってくるし、『名を上げる』というのも、力を誇示したいのか、上から言われるがままに戦うのかで意味が違ってくる」

 言葉に詰まるギーシュを見据え、最後にこう告げた。

「お主は、一体『何』になりたいでござるか?」

 何に…と言われて、ギーシュは一瞬、頭が真っ白になった。何になりたい…さっきも言ったとおりだ、戦で名を挙げて…姫様をお守りして…それが全てだ。

 じゃあそうするにはどうすればいいか…簡単だ、戦で活躍すればいい。それだけじゃ足りないのか…?

 分からない。ただ、さっき剣心が言ったあの言葉。――剣は凶器、剣術は殺人術。この言葉が、頭にこびりついて離れない。

(何に…僕は何になりたいんだ…?)

 頭を抱えて考え込むギーシュを見かねてか、剣心は優しい笑みに戻ってフォローした。

「要は、拙者の飛天御剣流は、お主の理想を叶えるにはあまりにも手に余る代物でござる。お主は、自分の魔法で強くなった方が得策ってことでござるよ」

「いや…でも、しかし…」

「もし、それでも納得いかないようなら、さっきの拙者の言葉、もう一度よく考えて欲しいでござるよ」

 この言葉に、ギーシュは最後に思いっきり考え込んでいると、しばらくしてようやく落ち着いたのか、不服ながらも頷いた。

「う~~~ん……分った―――ん?」

 不意に、コツコツとこちらに向かって来る足音が聞こえてきた。その音は段々と大きくなり、やがてフードを被った人物が姿を表した。

 その人物は、一瞬剣心とギーシュを見て、驚いたような声を上げたが、その一人がルイズの部屋で見た人間と、もう一人がこの学院の生徒だということがわかると、安心したようにホッと胸をなでおろした。

「驚きました…もしかして夜中に抜け出したのが、バレたのかと思いましたよ」

 そう言って、フードの中から剣心の方を覗き込んだ。フードの中身はアンリエッタその人だった。彼女を見て、ギーシュは恭しく膝をついた。

 アンリエッタは、そんな彼を見かねて立つよう促すと、剣心をまじまじと見つめた。

「あの、貴方がルイズの使い魔さんなんですよね」

「まあ、そういうことになっているでござるな」

 そう答える剣心をよそに、アンリエッタはなおも不思議そうな視線を送っていると(その隣でギーシュが羨ましそうに見ていた)、ふと耳打ちするようにこう囁いた。

「貴方でしたら、もうわたくしたちの会話は全部聞こえているのでしょうけど」

「おろ?」

 アンリエッタの言っていることは、要は使い魔としての誓約の一つだ。『主人と使い魔は目と耳を共有する』。その理論で行けば、剣心はずっとルイズ達の会話を聞いていたことになる。

 しかし、未だにそんな現象どころか兆候すら起きていない剣心からすれば、何のことだかさっぱり分からないのだが。

 ともあれ、首をかしげる剣心をよそに、アンリエッタは頭を下げる。

「どうぞ、ルイズのこと、よろしくお願いしますね」

 そう言って去っていこうとしたとき、ギーシュがそれを止めた。

「お待ちください姫殿下!! 事情は飲み込めませんが、何やらただならぬ様子とお見受けいたしました。その任、このギーシュ・ド・グラモンにも是非参加のお許しをいただきたい!!」

 その言葉に、アンリエッタは足を止めると、くるりとギーシュの方を向いた。

「グラモン?…あの、グラモン元帥の?」

「息子でございます。姫殿下」

 やっと僕を見てくれた、と嬉しそうな表情を隠そうともせず、ギーシュはキリッと背筋を伸ばして杖を掲げる。

「任務の一員に加えてくださるなら、これはもう、望外の幸せにございます」

 その言葉を聞いて、アンリエッタは嬉しそうに微笑みを浮かべた。

「ありがとう。お父様も立派で勇敢な貴族ですが、貴方もその血を受け継いでいるようね。では、お願いしますわ。この不幸な姫をお助けください、ギーシュさん」

 その瞬間、イヤッホウと両手を上げてギーシュは、ガッツポーズした。よほど感動したのか、嬉々として後ろにのけぞってそのまま失神する始末。

 やれやれ、と倒れそうになる彼を支える剣心を見て、アンリエッタはもう一度深く頭を下げた。

「本当に…よろしくお願いします…」

 膝のドレスをギュッと掴んで、どこか震えているような手で、搾り出すようにそう言うと、今度こそ足早でその場を去っていった。

 その背中は、どこか儚げな雰囲気を纏わせていた。

(取り敢えず、ルイズ殿から話を聞かなくてはな…)

 剣心は、なおも気絶しているギーシュを、一旦起こすと、その足でルイズの部屋へと戻った。

 

 

 

「全くもう! 急にどっかいなくなんないでよ、恥かいちゃったじゃない!!」

 ドアを開けると、それはもうカンカンなご様子の、ルイズが仁王立ちしていた。

 ご立腹の彼女を数分費やして何とか宥め、ギーシュについても一通り説明すると、今度は剣心が、一体何があったのかをルイズに聞いた。

「手紙を探しにニューカッスルへ行くわ。出発は明日。今のうちに準備なさい」

「ちょっとちょっと! だからどうしてそうなったのか説明してくれよ!!」

 それだけじゃ分からんだろと、ギーシュが憤慨した様子で言った。

 どうやら彼も、愛しき姫の任務ということですっかり舞い上がっているようだった。横で頷く剣心と一緒に見て、ルイズは仕方なさそうに事の顛末を話し始めた。

 

 

 トリステインの親戚にあたる国。『アルビオン』。始祖ブリミルが授けた三本の王権の一つであるその国が今、『反乱』を起こしていた。

 反乱軍は『革命』と名乗り、アルビオン打倒を切っ掛けに、このハルケギニアを統一せんと戦争を引き起こしていたのだ。

 いずれ反乱軍が勝利するのも時間の問題。そしたら今度は、このトリステインに攻め行ってくるかもしれない。そうならない内に、トリステインはゲルマニアと同盟を結んで戦力を強化する手段に出たという。

 

 

「姫殿下が……結婚……そんな…」

 同盟の代わりにアンリエッタが嫁ぐ。と聞いたとき、ギーシュは悲しみの余り暫く放心状態だった。ルイズもこれには思うところがあるのか、少ししんみりとした顔だった。

 しかし、それに悲しんでいる場合ではない。納得がいかないのは、向こうだって同じなのだ。

 反乱軍の連中は、何か同盟の妨げになるものは無いかを必死に探していた。そして、案の定それは存在した。

「それが、手紙と?」

 剣心の問いに、ルイズはコクリと頷く。内容は詳しくは知らされてはいないようだが、少なくともそれが反乱軍の手に渡れば、ゲルマニアとの同盟を破棄させるほどのものらしい。

 そしてその手紙は、今にも潰えそうな現アルビオン王家の元にあるという。そこで極秘裏に、ルイズ達に手紙を回収して欲しいとのことだった。

(ふむ――――手紙か…)

 それを聞いて、剣心は不思議に思った。そういったのは私兵を極秘裏に送れば済む話なのに、なぜわざわざルイズに頼んだのか、その理由を考えた。

 余程バレたくない内容なのか、至極個人的な情報なのか…。そして、最後に会ったアンリエッタの表情と仕草、――『誰か』を心配しているような様子――それらを加味すると、その中身に何となくだが辿り着く。

(何だろう…恋文か何かか…?)

 それなら、アンリエッタのあの言葉の本当の意味も、それとなくだが理解できる…。というより、そっちの方が剣心にとってもしっくりきた。

「ケンシン、一緒に来てくれるわよね?」

 ルイズが、剣心の目を見つめて言った。

 彼女はもう行く気満々だ。余り乗り気はしないが、アンリエッタにああも頼まれたとあっては仕方がない。

 それに答えるように、剣心も頷いた。

「承知したござる。拙者もその任、引き受けるでござるよ」

 


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