ツッコミ所満載なのに……本当にありがとうございます。
これからも頑張っていきたいと思います。
『今回のお話注意点』
・エリアの帝具の性能がわかりずらい。
・エリアVSアカメ&タツミと言ったな……アレは嘘だ。(申し訳ないです)
・サブタイトルのネーミングセンスのなさ。
「敵って……どういうことだよッ!!」
「タツミ、わからないの? そのまんまの意味だよ」
「どうしてだよ……昼間のアレは全部嘘だったのかよッ!!!」
「嘘じゃないよ。私の友達はタツミ。初めての友達がタツミ……とっても嬉しかった」
「じゃあ、何で「タツミ、それくらいにしろ」
声を荒らげて質問するタツミをアカメは止めた。
月明かりが帝都の闇を照らす中、タツミは困惑していた。
目の前にいる少女の行動、性格、正体……全てがわからなかったからだ。
いや、名前と見た目だけはわかっていた。
彼女の名前はティーン。
茶髪の髪を腰まで伸ばし、フリルの服を着ているミニスカートの女の子で、タツミが帝都に来て初めて出来た友達であり、ザンクに殺されそうになっていた所を助けてくれた命の恩人であった。
しかし、彼女はザンクに首を斬られて死んだはずだった。
いや、その前に彼女は死んでいるはずなのだ。
数ヶ月前に起きた連続猟奇殺人事件。
エリア将軍の手によって犯人は殺され、解決したその事件の犯人の異名がブラッディ・ティーンであり、今もこうしてタツミたちと相対しているティーンがその人物であった。
「タツミ、私たちの任務はザンクの討伐と帝具の奪取だ」
「あぁ、そうだな。目的は達成したって言いたいんだろ? だけど、ティーンは……」
「冷静になれ、彼女の正体を暴くにしても不確定要素が多すぎる。ここは私が彼女を引き止めておく、お前はザンクの帝具を持って皆の集合場所までいけ!!」
アカメは帝具、一斬必殺『村雨』を構え直した。
今は沈黙を保ち、アカメをジッと見ているティーンだが、『君たちの敵』と言ったのだ、行動しだいでは直ぐにでも斬れるようにと思っての行動であった。
掠っただけでも相手を死に至らしめる帝具『村雨』を向けられているにも関わらず、顔色一つ変えないティーンは笑顔も相まって不気味であった。
いや、そもそも彼女の存在自体が不気味なのだ。
影がなく、殺されたはずの人間が目の前にいるなど、世の中の決まりとしてあってはならない事だった。
「一応言っておくぞ、ティーンの帝具はあの大鎌だ。影から影に移動できたり、影を集めて武器を形成できる」
「そうか、少しでも帝具の性能がわかれば対処できる……タツミ、どうした?」
「……あの大鎌と同じ物を持っている人がいる…………エリア将軍だ。あの人も大鎌を持っていた」
「馬鹿な、タツミの見間違えではないのか?」
「いや、そんなわけ無い」
タツミの言い方からして嘘ではないと悟ったアカメは、ここまでの情報を整理した結果、一つの結論にたどり着いた。
ティーンは、エリアの帝具によって操られている。
どういった性能かは未だはっきりしないが、おそらくティーンの影、または影を纏わせて彼女を操っていると結論づけたアカメは、操り主であるエリアを探すべく周囲に目を配らせるが、どこにも姿はなかった。
(私の思い違いか? それとも、エリア将軍は影の中に隠れて……どちらにしてもザンクとの戦いで消耗しているタツミをここから逃がさなければ)
アカメがチラッとタツミを見ると、ザンクから受けた傷は浅いようで血は止まっていたが、肩で息をしていた。
当たり前だ。
帝具持ちと一対一で戦ったのだ、少しの傷と疲労感だけで済んで良かったというものだ。
「タツミ、もう一度言うぞ。お前は皆の所に行け」
「でもよ、それじゃあアカメが……」
「大丈夫だ、絶対に戻るから」
「ッ!! ……そうかい! 絶対戻って来いよ」
アカメを一人で残したくはなかったが、今のタツミでは彼女の足を引っ張るだけだった。
唇を噛み締めて、タツミはアカメの言ったことを信じて……従うしかなかった。
(俺は助けられてばっかりだ……もっと強くならないと……)
自身の無力さを痛感したタツミは、ザンクが持っていた帝具『スペクテッド』を右手に持ち、レオーネたちとの待ち合わせ場所に向かって走り出した。
途中、ティーンの横を通り過ぎタツミであったが、彼女はタツミに目も呉れずに唯々アカメを見つめているだけであった。
(声、かけられなかったな……良かったけど、何だか寂しいぜ)
てっきり声をかけられると思っていたタツミは、少し残念そうにティーンを横目で見た。
昼間に出会った時と同じ服装、同じ髪型をしているティーンであったが、今の彼女からは明るさや元気さなど微塵も感じられず、まるでティーンの皮を被った化け物のようであった。
(あの時の笑顔は、話は全部嘘だったのか? ティーン……)
タツミは立ち止まり……振り返ることなく走り出した。
今はティーンよりも、一緒に帝都の闇と戦うと決意したアカメたちの方が、タツミにとって大切な存在だと感じたからだ。
傷の痛み、疲労感と戦いながら走るタツミを、止める者はいなかった。
「ブラッディ・ティーン……お前は一体何者だ!!」
「私は君たちの敵。タツミの友達……」
「違う、どうしてお前は生きているんだ?」
「私は影。影は死なない」
「それは一体どう言う意味だ……?」
「質問してばっかりね。ちょっとは自分で考えたらどうかな」
ティーンはそう言って時計塔の方を見た。
釣られてアカメも見てみたが、特に何かある様には見えなかった。
「はぁ、お喋りしても良いじゃない。私はきっちり殺したんだから」
突然、ティーンが喋りだした。
肩をすくめて呆れたティーンは、まるで誰かと会話をしている様子だったが、彼女が見ている方向には時計台しかなく、そこに誰かが居る気配はしなかった。
「帝具の奪取をしていない? それは貴女がやればいいじゃない。私はそろそろ影に戻るわ」
「ティーン、何を言っている……」
「……わかったわよ。ちゃんと命令通り動くから、私を消さないで…………ありがとう」
アカメには訳がわからなかった。
いや、むしろこの状況でわかる人物など……ティーンともう一人しかいなかった。
「さてと、私はもう消えるから」
「待てッ! 消えるというのはどういう意味だ。それにさっきまで話していたのは……」
「それは自分で考えてみたら? あんまり喋ると消されちゃうから、バイバイ」
二度三度手を振ったティーンは、黒いドロドロした物に変わり……闇へと溶けていった。
「何が……どうなっているんだ」
その様子を唯々見ているしかなかったアカメは、一人残された広場に呆然と立ち尽くしていた。
『……』
その様子を、帝都の街中で一番高い時計塔から見ている人物に気付くことなく……
☆ ☆ ☆
ふぅ……ティーンの勝手に振り回されるとは思いませんでした。
やっぱりあの子の『友達』に対する思いは強すぎたのかな……上手に動いてくれていたのに、途中から自我が強くなって勝手な行動をしだすなんて思いもしませんでした。
うーん、人の影を操るのは便利だけど……やっぱりその人の思いが影にも移っているから操るのは難しいんですよねぇ。
それが帝都でブラッディ・ティーンなんて呼ばれていた殺人鬼になれば尚更……かな。
私は、持っていた大鎌をひと振りすると黒いモヤモヤした物が一箇所に集まり、見る見る内に人の形を形成していく。
私の帝具は影を操ります。
ティーンが先程やっていたように、影から影に移動したり武器を形成したりと、色々な事に使えます。便利です。
でも、動物や人間の影は難しいですね。
本来、影とはその人と一生を共にするものです。言うなればもう一人の自分という奴です。
そんな影を強制的に切り離して使うなんて事は、いくら帝具と言えど出来るものではありません。
ですから私が使う影は建物等の自分の意思を持たない物です。
ただ、死んでいる人間や動物の影なら切り取って操る事ができます。
つまりですね。
散々アカメちゃんを悩ませて、私の意志とは関係なく勝手にタツミ君と友達になったティーンは、ティーンの影と言うことです。本体は原作開始前に私が殺しました。
しかし、切り取った影は太陽の光に弱く、切り取ったまま一定時間が経つと消滅してしまうので、何時もは私の影の中に入れているんですが……これが問題でした。
「ども~、ティーンちゃんです。どうしたんですか? 原作に登場しないエリアしょ~ぐん!」
『黙れ』
「お~怖い怖い……あ、いつも怖かった。ごめんね」
私がもう一度睨むと、ティーンの影が舌を出して謝ってきた。
ッチ。
ティーンにもこんな感じでからかわれた事があったので、ある程度は我慢できますが、私の支配下にある影にも言われると……ちょっとムカつきます。
まぁ、支配下といってもある程度の自由は与えていますので、優しい私は目を瞑ることにします。
少し話が逸れてしまいました。
問題点というのは……ティーン(影ですが)が原作知識を得てしまったことです。
どうしてそうなってしまったのかは、はっきりとわかりませんが、影の中に入れたせいで私の影とティーンの影が合わさり、一つの影になってしまった事により、私の知識がティーンにも流れてしまったんだと思います。
そんな事聞いていませんよッ!? と、思っても既に時遅し……仕方がないのである程度の自由を取引に黙っていて貰うことにしました。私が主なのに、チクショウ。
まぁ、私の影からティーンの影を帝具で切り離し、消してしまえばそれで万事OKなのですが、中々に便利な存在なので消さないようにしています。戦闘力も高いですしね。
勿論、勝手な行動をしたり約束を破ったら消しますよ。
所詮は帝具の力で自由を得た「影」。私の忠実な駒でしかありません。
今回はタツミと友達になってしまうという失態を犯しましたが、ザンクを殺したので良しとします。
まぁ……本当は、なるべく原作キャラと絡ませたくなかったのですが、流石に一人でザンクさんを探すのは骨が折れるので、ティーンの影に手伝って貰った私が悪いんですよね。
「それで、私を呼び出したのはどうしてかな?」
『もう一度だけ警告』
カキカキ
『今度勝手な真似したら』
「消す。でしょ? わかってるよ。」
わかっているのなら良いのですよ! わかっているのならね。
さてと……
私はティーンの横を通り過ぎて時計台の上からある通りを見る。
深夜&ザンクさんが出没するということで帝都の民は家に引き籠もり、通りには人がいません。
しかし、その中を一人の少年が駆け抜けています。
「ありゃ? エリアちゃんはタツミに用事が……そういえばザンクの帝具を持っていたね」
『そう。私の任務は』
カキカキ
『終わっていない』
「でも良いの? この時期にタツミがナイトレイドに入っているってバレるのは不味いんじゃないの?」
ティーンはそう言って私の隣に立ってタツミ君を見つめる。
うーん、そうなんですよね。
この時期にタツミ君がナイトレイドに所属しているとわかってしまい、手配書が出回れば原作を大きく変えてしまいます。
それだけは避けたいのですが…………私の任務は『ザンクの討伐と帝具の奪取』です。
幾ら原作を壊してしまう出来事だとしても、私も仕事なのできっちりこなしたいのです。
しかし……でも……うーん、困りました。
「エリアちゃんが何を考えているのか、影の私にはわからないけど。やめておけば?」
『何故?』
「だってここからタツミのいる場所まではかなりの距離があるよ。幾ら影から影に移動出来ても移動距離に限度があるし、タツミの所まで行く前に仲間に合流される。……そうでしょ?」
『そう』
「だったら無理に追ってナイトレイドのメンバーと戦うなんて馬鹿らしいよ。ナイトレイドと戦うのは正式な任務として受けてないんでしょ?」
『うむ』
「じゃあ、見逃してあげなよ……それとも、アレ使うの?」
『迷っている』
「確かにアレを使えばタツミの所まで直ぐに行けるけど……あの力は…………ううん、私は貴女の影。唯の駒に過ぎない存在だから……ガタガタ言ってもしょうがないよね。貴女が決めて、私はそれに従う」
……任務は『ザンクの討伐と帝具の奪取』です。
ザンクの討伐は出来ましたが……帝具がないとその証明ができない。
つまり、私がいくらザンクを殺したと言っても、ザンクの帝具を持っていなければ意味がない。
うーん。
決めました。
ザンク討伐の手柄……原作通りタツミ君たちナイトレイドに譲りましょう。
ザンク討伐のボーナスを貰えなくなるのが悔しいですが、ティーンが言った様に無理に追っても危険が増えるだけなので仕方ないです。
大臣には、『私が駆け付けるも既にザンクは殺され、帝具は奪われていた』と報告書に書けば良いのです。
『見逃す』
「そっか……ごめんなさい。影の私が色々言って」
『気にするな』
「ありがとう」
「バイバイ」と手を振ったティーンを、帝具の力を使って影の中に戻した私は深呼吸する。
ふぅ……これで、原作通り進むかな。
…………原作通り……か、私は……この世界で生きているんだよね。
誰かに敷かれたレールの上を、唯々歩くだけの、操り人形じゃないよね?
って、何しんみりしちゃってるんでしょうね。
さっさと帰って、大臣に残業代を請求するとしましょう。
☆ ☆ ☆
「ヌフフ、今日も良い仕事をしました。明日に備えて寝るとしましょう」
オネストが自室に戻ろうと無駄に長い廊下を歩いていると、前から少女がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
青紫色の髪をツインテールにし、ドレスアーマーを着た無表情な少女。
そんな格好で宮殿内を彷徨いている少女は、一人しかいなかった。
「おやおや、エリア将軍ではありませんか……こんな時間に……ッ!?」
オネストがエリアに声を掛けようとすると……いきなり彼女が走り出した。
人間というのは追われれば逃げるものである。
それはオネストにも言えることで。
「え……ちょっちょっと待って下さい! ひぃいいいい」
巨体に似合わず、全速力でエリアから逃げるように走り出した。
「はっはぁ……はぁ……」
僅か数十m走っただけで息が上がり始めたオネストは、チラっと後ろを振り向き……直ぐにまた前を向いた。
オネストの五十m程後ろから、無表情で追いかけてくるエリア将軍が見えたからだ。
追われている理由はわからない。
だが、何時も物静かで任務の時以外は温室に篭っているエリアが、走って自分を追いかけて来ているのだ。
間違いなく何かエリアの癇に障ることをしたに違いないと思ったオネストは。
「はぁ…はぁ…らっ羅刹四鬼!! ええ、えっエリア将軍を止めろ!!」
「「承知しました!」」
大臣の手駒である皇拳寺羅刹四鬼を呼び出した。
☆ ☆ ☆
えーと、時間外に働いたから残業代貰おうと思って請求書を書いたんですが、肝心のオネスト大臣が自室にいなかったので探していました。
ザンクさんの帝具は奪取できませんでしたけど……残業代は奪取します。必ず奪取します。絶対奪取します。
殺る時はきっちり殺る。貰う時は際限なく貰う。
それが私のポリシーですッ!!
タダ働き? そんなものは改心オーガさんにでも任せておけば良いんですよ。
帝都も広いですが、宮殿の中もかなり広いので探すのに苦労すると思っていましたが、すぐに見つけることができました。良かった。
早く貰って早く寝たかったので駆け足で大臣に近づいていくと……逃げました。
私の顔を見るなり走って逃げるなんて……あのデブ大臣が走って逃げるなんて……
そんなに残業代を払うのが嫌ですかぁあああああああああああああああああああ!!!
絶対に捕まえる。
そして残業代を請求してやるッ!!
私とデブの鬼ごっこが始まった。
「へっへっへ、エリア将軍、こっから先は」
「行かせられぬな」
数m走った所で……天井から何か降ってきました。
って、貴方たちは、皇拳寺羅刹四鬼のイバラさんにシュテンさんの、いやらしい目つき&ヒゲもじゃ筋肉オヤジの変態コンビじゃないですか。
そして……
私の真上と、横の柱から同時に出てくる人影。
まずは柱の裏から出てきた黒髪の女性、スズカさんに腹パンして動きを止めた所に、透かさず右手を持って……天井裏から襲ってきた褐色肌の女の子、メズちゃんに向かってぶん投げる。
「そんなっ!? 私たちの攻撃が見破られ……かはッ!?」
「っ……あぁ、やっぱりエリア様の拳は、とてもイイわぁ」
空中でぶつかった二人はそのまま地面に真っ逆さま、ドゴンという少し痛そうな音がして落ちました。
「いてて……やっぱりエリア様を止めるのなんて無理なんだよぉ~」
「はぁはぁ、そうね……でも今のプレイ、堪らなかったわ」
「うわっきもっ」と言ったメズさんは、同僚のスズカさんをまるでゴミを見るかの様な目で見た。
私も、今の発言にはドン引きしたのでスズカさんを睨みつけたいのですが、彼女はドMなので無視するのが一番です。触れたらダメ。
所で、気になったことがあるんですが……
『メズちゃん』
「はい、どうしたんですか?」
『私を止めるって』
カキカキ
『どういうこと?』
「あははっ……よくわかんないけど、オネスト大臣の命令……です」
ほぅ。
大臣、羅刹四鬼を出してまで私に残業代を払うのが嫌ですか。
流石は「自分の為なら手段を選ばない!」で有名な大臣です。
……そっちがその気なら。私にも考えがあります。
『メズちゃん』
「はっはい!!」
『私を止める?』
「い、いえ……どうぞ行ってください」
『うむ。命令違反は』
カキカキ
『私が何とかするから』
カキカキ
『気にしない様に』
カキカキ
『あと、スズカさんもね』
「は、はいッ!! ありがとうございます」
「少し残念だけど、ありがとうございますエリア様」
さてと、メズちゃんとスズカさんは無力化出来ましたが。
「へっへ、メズもスズカもダメじゃないかぁ。俺たちの上司は大臣、上司の命令は絶対だよぉ」
「うむ。そういうことだ」
目の前の男二人は引いてくれないみたいですね。
困りました。
このままだと、大臣に逃げられてしまいます。
あぁ~困った困った。
ってことで。
『少し本気でいくぞ』
「なっ!?」
一瞬で二人との距離を詰めた私は、そのままの勢いで右拳を前に突き出す。
思いっきり踏ん張ったせいで廊下に敷いてあったタイルが砕けましたが、気にしません。
「鍛え抜かれたこの身体ッ! 拳如きで崩れる程甘くはないぞッ!!」
「へっへ、シュテン任せたぜぇ」
「噴っっっ!!!!」
イバラさんはシュテンさんの巨体の後ろに隠れ、シュテンさんは私の拳を受け止める構えを取りましたか……流石は羅刹四鬼、しっかり反応してきましたね。
しかし、私を甘く見てもらっては困ります。
私が唯々、右ストレートを繰り出すとでも?
甘いですよ。私が出すのは衝撃波……そんなガード等無意味です。
この技はエスデス将軍と模擬戦をした際に使った技……当たれば確実に相手を戦闘不能にする程の威力があります。
喰らえッ!!
「グハッ!?」
シュテンさんに当たる寸前で拳を止め、後ろに隠れていたイバラさんをも倒すこの技の名は……『ちょっと本気!! 寸止め右ストレートッ!!』
ふふっ、我ながらわかりやすくてカッコイイ最高の技名です。
「ッ……へっへ、流石エリア様だぜ…………惚れちまいそうだよぉ」
それはどうもシュテンさん。
でも、私は貴方見たいな人はタイプじゃないので、告白してきてもお断りしますね。
あ、友達ならオッケーです。友達なら!!
『あとは任せた』
「はーい、頑張って下さいね」
シュテンさんとイバラさんの手当をメズちゃんたちに任せた私は、そのまま大臣の追跡を開始した。
「はぁ……はぁ……ぜぇぜっぇ……ちょっっと、だけ待って……下さい」
そう言いながらもフラフラと私の前を走って? 逃げるオネスト大臣。
何時もの偉そうに余裕ぶっている彼の姿はなく、まるで弱々しい豚の様です。
ははっ、どこへ行こうというのだね。
もう既に捕まえられる距離にいますが、こんな弱った大臣を見たことがないので、面白半分でかれこれ三十分程追いかけている私です。
ですが、それももう終わりのようですね。
『逃げないの?』
「ぜっはぁ……ぇはぁ……いっ行き止まりです……か」
追い詰められた豚……失礼、大臣は汗を滝の様に流し、絶望した表情で私の方を振り向く。
あれ?
私の方を見ていますが、何だか視線が上の「エリア将軍」
ッ!?!?
突然、私の後ろから声が聞こえ、物凄い覇気に当てられる。
宮殿の中でこんな覇気を出せる人は、私は一人しか知りません。
嫌な予感がします。
恐る恐る振り向くとそこには……仁王立ちしたブドー大将軍が……
ウソデショ。
「エリア、深夜にも関わらず騒ぎを起こし、陛下の宮殿を壊す等あってはならんことだ……覚悟はいいな」
そう言って右腕を振りかぶるブドー大将軍。
不味いッ!! 非常に不味いです!!
どうにか鉄拳を受けない言い訳を……
『ブドーさん』
「何だ」
『騒ぎの原因は』
カキカキ
『羅刹四鬼が襲ってきたから』
「そうか。アイツ等にもたった今、刑を執行してきた所だ」
あ……これ、詰んでますね。
『ブドーさん』
「まだ何かあるのか?」
『私、さっきまで働いてた』
カキカキ
『残業代。欲しい』
「そうか、ご苦労」
そう言って私の頭を撫でるブドー大将軍。
硬くてゴツゴツしている手ですが、何だか暖か……ッ。
「これが残業代だ」
ガツンという音と共に私の脳天に物凄い衝撃がして……その後の事を私は覚えていない。
目が覚めると、私はいつの間にか温室にいた。
どうやらブドー大将軍がここまで運んでくれたらしく、『昨日の騒ぎの件。陛下には私から説明しておく』という紙が置かれ、その隣には……金貨が数枚入った袋が置かれていた。
よくよく考えたらエリア=ティーンじゃないのかも、と思ってしまった。
でも、ティーンはエリアの影だからさ……影はもう一人の自分だからさ……
何だか、話数を重ねる毎に文字数が多くなっている気がするような……誤字脱字がないか確認していますが、もしも見つけたらご指摘頂けると幸いです。
宮殿でバカやってブドー大将軍に怒られる無表情主人公。
そして、意味なく走らされるオネスト大臣……これがやりたかった。
でも、深夜に無表情の少女が追いかけてくるとか……ホラーです(追いかけられたいかも)