ハターン・モンスータの狩りと愛の日々 作:ヨイヤサ・リングマスター
昼、紙にメモを取る。
夜、執筆開始。紙にまとめたものを一気に書きあげる。時間にして大体15分で一話。
イトラside
師匠の弟子であるためにも勝たなくちゃ……
『グギャァァァァァァー!』
うぅ、でも怖い。
ミラボレアスは最初にブレスを仕掛けてきた。
私はそれを大きく避けたんだけど回避の仕方も知らないから膝をすりむいちゃった。
「あぅぅ」
でもそこで膝の痛みに動きを止めてしまったのは失敗だった。
ミラボレアスはブレスのあとすぐに這いずりながら私をその巨体で押しつぶそうとしてきたからだ。
『グルルゥゥアァァァー!』
「うわぁぁ!」
今度は回避も間に合わないと思って、持っていた小タル爆弾を起爆させてその爆風でなんとか避けれた。
おかげで軽い火傷しちゃったけどこれくらい我慢できるもん。
ミラボレアスは圧倒的なまでに強いから私は恐怖のあまり、回避するのも体が震えちゃって紙一重になっちゃうし、反撃が出来ない。
それに攻撃を避けていると言っても風圧だけで私の気力を一気に吹き飛ばすほど恐ろしいからだんだんと肌や鎧に浅い傷が増えていく。
あぁ、私は何でこんな所で自然災害にたとえられるほどの怪物を一人で相手にしてるんだろう……
もしかしたらここで次の攻撃を避けなかったら楽になれるかなぁ……
パパもママもみんな殺されちゃったし、ここで私が死んでも悲しんでくれる人なんていないかもなぁ……
そんな負の思考に囚われながら、ミラボレアスの攻撃を避けるのをやめそうになったところで思いだした。
自分が死んだらハターン師匠は悲しむんじゃないかと。
ようやく思考の渦から戻ってきた私はミラボレアスの懐深くに潜り込み、今度は震えることもなくそのブレスを、その爪を、尻尾を難なく回避できるようになってきた。
「くぅ、私はハターンさんに心を救われたのに何も恩返しできてない。
このまま死ぬわけにはいかない!」
今までの臆病なだけだった私は何かが吹っ切れたような気がした。
あれ?なんかこれって楽しいのかもしれない。
というか何で私はこんな大きいだけのトカゲなんかを怖がってたんだろう?
「あははははは~♪」
そこで私は初めて攻撃に転じることが出来た。
ハターンside
「お、これはイトラが何かを吹っ切れたようだな」
俺とサラは離れた場所から闘いの様子を見ていたのだが、最初は避けるだけで精一杯だったイトラの体から気迫を感じるようになり、先ほどまでの体の震えも止まったみたいだ。
「おいハターン。
これって本当にイトラがミラボレアスの討伐を成し遂げちまいそうだな」
同じく隣でこの様子を観戦していたサラが菓子をつまみながら話しかけてくる。
「当然だ。
俺は最初からあの子の中のハンターとしての素質を見抜いていたからな。
そうでもなければいくらギルドマスターの無茶だとしても弟子にしたりはしないさ」
俺はできると思ったからこそイトラに一人でミラボレアスの討伐をさせているのだ。
「闘いはそろそろ決着のようだぞ」
俺がそう言うとサラも再び視線をイトラに向ける。
吹っ切れたイトラの攻撃は最初はミラボレアスに一発も当たらなかったが、段々とコツを覚えたイトラはすぐにボウガンの命中精度を上げていく。
元々がミラボレアスの上位種のミラルーツの素材を使い、天才鍛冶屋のトン爺さんが改良しただけあって、『阿武祖龍弩・アハトアハト』はミラボレアスの硬い甲殻を削り飛ばしていく。
「あはははは~♪
うふふふふ~♪」
イトラは一見、乱射してるだけのようにも見えるがその弾は最初と違って全弾命中するようになり、ついにはミラボレアスの翼を根本から千切り飛ばし、その巨体を地にひれ伏させる。
「私はハターン・モンスータの弟子、イトラ・ウボンガ。
あなたはここで私に殺されてね♪」
イトラはそう言うと地面に落ちてもがいていたミラボレアスの頭部に連射した。
「ふぅ、ようやく終了か。
イトラも成長したことだしこれからが楽しみだな」
これであの弱気な性格も良くなっただろう。
だが、サラとは別の意味で厄介な性格になってしまったような気もするが本当に大丈夫なんだろうか?。
「あ~腹減ったー。
なんか久しぶりにギルドのメニュー全制覇したい気分だな♪」
サラはギルドへの狩猟終了の合図の信号弾を撃ち上げながらそう言ってきた。
もしかしてこいつは俺の料理が食いたいがために料理を一切覚えなかったんじゃないだろうか。
「そうだな。
イトラの初めての狩りの成功のお祝いにいい物食わしてやるか」
こちらに気づいて手を振ってくるイトラに向かって歩きながら俺はお祝いの料理は何にするか考えるのだった。
あっさり討伐♪
イトラの性格に関してはふだんは変わらず、変貌すると最強になります。
しかしもっと奇をてらうことはできないだろうか。