ハターン・モンスータの狩りと愛の日々   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 本編と言えるかどうかはさておき、本編は終わっています。

 が、この番外編は完結一年とバレンタインデー記念ということで書いた話です。

 移転とはいえ、こんなクリスマスや正月の方が近い時期にバレンタインの話を移すのもどうかと思いますが、そういうことで良かったら読んでみてください^^



第終章:完結後の番外編
番外編:愛しの師匠、私を食べて♪


 俺の名はハターン・モンスータ。俺が誰か忘れている人もいると思うが、それは仕方がないことだろう。

 

 これでも大陸最強のハンターにしてハンター協会会長の一人息子であるって設定もあるが、基本的にそんなもの、実際に狩り場に出てしまえば塵芥にすぎないものだからな。

 

 それに俺ももう三十歳だ。世間一般ではおじさんと言われても仕方がないだろうし、弟子がすでに俺以上に目立っているからますます影が薄くなっちまったかもしれない。

 

 そして現在進行形で俺の上にまたがっているのが不本意ながら(内心は認めている)俺の弟子にして妻のイトラ・モンスータだ。

 

 なにが進行形なのかは考えたくないが、そういうつもりなんだろうな……。

 

 

「師匠♪ おはようございます♪」

 

 

「ああ、おはようイトラ。

 そして退いてくれないか?

 起き上がれないんだが」

 

 

「うん、それ無理♪

 だって私はいい加減師匠との間に子どもが欲しいんですから」

 

 

 だろうなぁ~、身長差が50センチ以上ある上に、これでもハンターとしてはゴツイ方である俺がまったく身動き出来ないように抑えつけているこの小さい弟子にして妻はどいてくれないんだよなぁ~。

 

 

「あのなぁ、イトラ。

 最初に言ったが、お前はようやく13歳になったばかりだろう。

 そんなお前に手を出すのは渋くてカッコイイハードボイルドな俺らしくないだろう?」

 

 

「別にいいじゃないですか師匠。

 すでに師匠がただのハードボイルドマニアなだけで、実際にハードボイルドじゃないことだなんて知れ渡ってるじゃないですか。

 それに作者の六作目では百合とは言え、もっと過激な描写を入れてるのに私たちだけ肌を重ね合わせないだなんてずるいです!」

 

 

「いやいや、あっちは百合だから大丈夫だったんだよ。

 俺はお前にとって夫であり師匠でもあるが、保護者でもあり父親でもあるんだから流石に駄目だろう。

 おーい、サラ、ディオシキ。どっちでもいいからイトラを止めてくれー」

 

 

 弟子に助けを求めることは別にカッコ悪いことではない。

 

 イトラが言うことを聞かないのだから、他の二人の弟子に助けを求めるってのは今の俺に出来る最良の手段だ。

 

 何故なら、俺は、子どもには、手を、出さん!!!

 

 だが俺の弟子は仲が良いのでチームワークの良さは俺でさえ手が出ないものがある。

 

 そして俺はイトラに寝込みを馬乗りされて身動きが取れない状況にある。

 

 

「ぎゃはははは♪ 見てみなよサラにゃん。

 ハタっちってば、まぁ~だイトラちゃんから逃れようとしてるよ♪」

 

 

「だよなー、いい加減ハターンも観念してイトラを食っちまえよ。

 全身を持久力と瞬発力を兼ね備えたピンク色の筋肉につくりかえたイトラなら小さくとも裂けること無くハターンのデカイもんをぶち込めるはずだぜ?」

 

 

 おまけにイトラは溶岩に直接触れるのも雪山に水着で行くのも、ティガレックスに噛みつかれても傷一つつかない耐熱耐寒に丈夫さまで兼ね備えている。

 

 

「お前たちは俺を裏切るのか!

 俺は子どもに手を出さんと言ったら出さん!

 身体的な問題ではなく年齢的な問題だ!」

 

 

「うーん、いつまで経っても師匠は頑固ですねぇ。

 そこが魅力的でもあるんですが、すでに私は女ですよ。

 身長こそ全然伸びていませんが、一生伸びないのだとしたら、今手を出すのも未来で手を出すのも変わらないでしょうに」

 

 

 と言いつつも、結局のところイトラは退いてくれた。

 

 何だかんだ言っても、このやりとりもいつものことであり、両者の同意がなければ手は出さないというのもイトラのイトラらしさでもあるのだ。

 

 

「それじゃ師匠、代わりにこれをあげます」

 

 

「ん? なんだ?

 ……あぁ、チョコレートか」

 

 

「ええ、チョコレートです。

 今回はバレンタイン企画ということで、たまたまバレンタイン当日が休日だったために、職場の若い子やパートのおばさんからすら義理チョコももらえなかった作者の代わりに師匠が受け取ってください」

 

 

 なるほどな、この物語が最終回を迎えてからも日常的に繰り広げられていたありふれた光景が描写されるのは意外だったが、バレンタイン企画として投稿されるのなら分からないでもない。

 

 弟子からのプレゼントだ。ありがたくいただくとしよう。

 

 

パクッ

 

 

「師匠! 食べましたね?

 どうです? 美味しいですか?」

 

 

「ああ、イトラの愛情がたっぷり詰まっていて美味いぞ。

 ところでサラとディオシキはないのか?」

 

 

 いつもならイトラの姉弟子でもある二人も騒ぎに首を突っ込むというのに、今回はえらく大人しい。

 

 それにプレゼントらしい包みを持っていないがどういうつもりなのだろうか?

 

 

「なぁ、ハターン。

 さっき子どもに手を出すつもりはないって言ったけど、あたしらは大人だろ?」

 

 

「……? 何を言ってるんだサラ。

 お前もだが、ディオシキもすでに大人だろう」

 

 

「ぎゃははははははははは♪

 ハタっちってばまだ状況が分かってないみたいだよサラにゃん♪

 これは行動で示した方が分かり易いんじゃないかな?」

 

 

 何を言っているんだこいつらは。

 

 まるで分らんが……何か企んでそうだな。

 

 ここは避難し……て……。

 

 

「ぐっ……何やら身体が熱く……」

 

 

「ふふふ、ようやく聞いてきましたね、師匠」

 

 

「ふっふっふっ、イトラの渡したチョコはあたしら三人の合作チョコなんだよ。

 そして合作ならではの細工をしてあるってわけさ」

 

 

「具体的には媚薬……だねぇ♪」

 

 

 そう言うと三人は服を脱ぐとその肌をあらわにする。

 

 その体にはチョコレートで女体盛りが如く盛られたチョコレートが!

 

 

「師匠、私は考えました。

 私は普段から積極的に迫ることはあっても、師匠が手を出す気がない限り最終的なところでは引きます。

 ですが、それは師匠が逃げ腰だからであって、私の意思ではないのです。

 だから、媚薬と魅惑のチョココーティングをした私たちの裸身を晒せば手を出すのでは? 作戦を決行したわけですよ♪

 不本意ながらサラさんとディオシキさんに手を出すついでみたいな感じで私にも手を出してもらおうってことです」

 

 

 ヤバイ……これは俺の男としての本能が……、我慢の限界を超えてしまう。

 

 かくなる上は……。

 

 

「全力で逃げる!」

 

 

 イトラがのいてくれていたことが幸いし、俺は勢いよく部屋から脱出することに成功した。

 

 しかし安心はできない。

 

 すでに六作目の最終話の影響で、狩り行為が全面禁止されたとはいえ、大陸各地を旅するために俺は今でも飛行船での生活を続けている。

 

 流石の俺も、高度9000メートルからのヒモなしバンジーは危険だろう……が、それでも俺は子どもには手を出さん!

 

 飛行船内に隠れていては見つかるかもしれんからな。

 

 見事にダイブしてやろうじゃないか。地上へ!(最高に決め顔で俺は言った)

 

 

「アイキャンフラーイ!」

 

 

「あ、師匠が逃げましたよ!」

 

 

「ったく、ハターンのやつ往生際が悪いなぁ~」

 

 

「でもここって、ラティオ活火山の付近だけど大丈夫かねん?」

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 すでに狩りは長い事していなが鍛え抜いた俺の体にとって9000メートルからのダイブは何の問題もなく成功した。

 

 

「着地成功。滞空中に媚薬成分の解毒も終了。

 そしてここは火山のようだが……」

 

 

「あ、ハターンさん♪

 もしかして、うちっちをお嫁さんにしてくれる気になったのかのう?」

 

 

 この声は……。

 

 

「バレンタインデーに空からやってきてくれるだなんて、なんという渋くてカッコイイハードボイルドな登場なのじゃ♪

 流石はハターンさんじゃのう♪」

 

 

「ラティオ活火山に住む少数部族のカーザン族族長の一人娘のヒノコ・カーザンかよ。

 説明口調になったが、俺は弟子に迫られて逃げるために飛行船からダイブしただけでお前のために落ちて来たわけではない。勘違いするな」

 

 

 だが内心は焦っている。

 

 出番がないと思っていた少女がまさかの2度目の登場をしたからではない。

 

 これでもハードボイルドを目指す俺としては女子供に手をあげることなど出来んからだ。

 

 が、かといって逃げるのも難しい相手だ。

 

 なにしろヒノコの奴、この間新聞に載っていたが俺に追いつくために時速120キロで24時間走り続けることが出来る脚力と体力を身につけたそうだしな。

 

 

「ふふふ、わかってると思うけど、うちっちはハターンさんを逃がすつもりはないぞ」

 

 

「だろうな、新聞でお前の脚力と鍛えた理由は知っている。

 だがそれでもまだ俺には遠く及ばないぞ」

 

 

「ふっふっふっふっふ、でも以前新聞に載った時よりも、うちっちはさらに鍛えてるから勝てないんじゃろ?

 今なら時速300キロは行けるはず」

 

 

「ちっちっちっ、だがモンハンの世界じゃあ二番目だ。

 俺の本気は時速53万キロだ(流石に嘘だが)」

 

 

 まぁ、それでも時速300キロくらいなら俺でもまだ勝てるのでその場は全力で逃げだすことで難を逃れた。

 

 ただあの調子だと、本気で時速53万キロまで鍛えそうだしどうしたものか……。

 

 せめてイトラが16歳になるまで、あと3年は無事でいれればいいのだがな。

 

 そうすれば俺もハンター協会の会長職を引き継いで、イトラとサラとディオシキの4人でのんびり暮らすだろう。

 

 しかしイトラは16まで待てないのだろうし、こうなれば王立学術院の学院長にして王立古生物書士隊の隊長を兼任するシャルラ・アーサーという少女にでも助けてもらうか?

 

 彼女は完璧なまでの百合らしいから俺に興味を持っていないようだし、しばらくは学院で教師として隠れるのも悪くはないのかもしれない。

 

 

「まぁこれが俺の愛の日々だな(狩り要素は完全に廃止されたが)」

 

 

 

イトラSIDE

 

 

「やっぱり根本的に年が問題なんですよね。

 薬とか忍法で、手足や胸を大きくするのは出来ますけど、それでも私の年は13歳のままですからね」

 

 

 こうなれば16歳になるまで待つしかないのかもです…………なーんてそんなことを考えるほど私は大人しくはありませんよ。

 

 媚薬自体は効いていたんですから、今度は逃げ出せない状況を作ってからにしましょう。

 

 流石にこれ以上の我慢は無理ですもの。

 

 覚悟してくださいよ、師匠。ふふふふふふふふふ♪

 




 ハターンたちに限りませんが、自分の作品の登場人物って結構好きですし、完結後も色々とアイデアが出たりするんですよね♪

 今後もこの作品で書くかは分かりませんが、番外編で時事ネタや季節ネタをするかもしれません。

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