ハターン・モンスータの狩りと愛の日々 作:ヨイヤサ・リングマスター
と言ってもネコ派というわけでもなく犬も大好きです。
というか動物は何でも大好きです!
ネコネコ農場
ザックザック
カキーンカキーン
「さて、こんなもんでいいだろう」
そこは倒れた朽木、崩れた岩壁、伸び放題の雑草、そういったものですっかりと見る影を失った場所。
「それにしてもあのあと一度も来てなかったがここまで壊滅的被害をそのまま放置しておくなんてうちのネコどもは一体何をしていたんだか……」
さて、現状を説明しますと俺はいま自分の保有する農場へと足を運んだわけなのだが前回来た時ディオシキが壊した設備や蹴り倒した樹木などの被害がそのまま残っていたのでその修繕作業をしているところなのだ。
「ご主人、こちらは無事に終わったのにゃ」
「おう、こっちも一通り片付いたし昼飯にするか」
「にゃっほるんるん♪」
そしていま俺に話しかけたのが俺の農場の管理を全て任せてある農場管理責任猫のワリサだ。
尻尾のない綺麗な銀色の毛並みのネコなんだが、俺に異常なまでにべた惚れしているところなんかはたまにうっとうしく感じることもあるがイトラに近いものがあり、なかなかに可愛いので結構長い付き合いでもある。
「はにゃ~、やっぱり農場をディオシキさんが壊したまま放置していたおかげでご主人と一緒に汗水流して農作業ができるにゃんて俺は幸せにゃ。 これからもご主人のためにゃらたとえ火の中水の中、ベッドの中やお風呂の中でもついて行く覚悟にゃ!」
「……そこはあえてスルーさせてもらおう。
決して突っ込まないぞ」
持ってきた握り飯(イトラの手作り)を口に入れ、よく噛んで飲み込む。
イトラもハンターとしての成長は目を見張るものがあるが料理に関してはそれ以上なのだ。
イトラは今日も俺と一緒に農場へ来たがっていたがサラに限定スィーツの発売日だ、と言って掻っ攫っていっちまったからな。
いつもサラと行動を共にしているディオシキはまだ寝てたからってのもあるけど。
そんな訳で珍しく俺は一人で行動しているのだ。
ワリサは除く。
「そういやワリサ、俺の新しい弟子のイトラを覚えているか?
今日の弁当もあいつが作ってくれたんだが料理に関しちゃ俺以上だろ」
そこで先ほどまで愛らしいアイルーらしい表情をしていたワリサは顔を曇らせて、
「俺はご主人の料理が一番好きにゃんだからこの程度でご主人を越えたとは到底思えにゃいにゃ」
この顔は俺が作ったものだと思って食べてたらそうではなかったと知り、俺が作るよりも旨く感じたことをごまかそうとしている顔だな。
正直に旨いと言えばいいのにこいつも素直じゃないな。
そういや俺はキリン娘が大好きだがネコにキリン装備を着せたことないな……
また今度ワリサにも着せてみるか。
「それにしてもこの農場えらく静かだな。
ディオシキに荒らされた農場を放置していたのは俺と一緒に農作業がしたかったからってのはわかるけどどうして農場にはお前しかいないんだ?
この農場は広いし20匹は待機しているネコがいるだろう」
先ほどから気になっていたのだがこの農場には常時20匹を越える農場ネコ部隊が配備されているはずなのだが今日に限ってワリサ以外にネコ達の姿を見ないのだ。
「……実はいまアイルーの村でネコの王を決める選挙が開かれてるからみんにゃそっちにいっちゃったんだにゃ。
もちろん俺はご主人一筋だからそんにゃ選挙に興味はにゃいにゃ!」
「選挙だなんてアイルーの村もずいぶんと発展してるんだな。
でもそれに参加しなかったら何か面倒なことになったりはしないのか?」
「参加しにゃかったら黒づくめのネコ達に攫われて洗脳されちゃうみたいだけど俺はそんにゃもん怖くにゃいにゃ。
たとえ生まれた日は違えども死ぬ時はご主人腕の中で安らかに生き絶えたいのにゃ」
なんとも忠猫なこった。
だがその時突然物陰から黒い影が飛び出し、ワリサに飛びかかった。
「にゃっ!?
にゃにをするにゃ!」
現れたのは黒づくめの衣装を身に纏い、生意気にもサングラスを掛けた猫たちでそれぞれにワリサの四肢を拘束し、あっという間に縄で縛りあげると地面に穴を掘って消えて行った。
「ご主人ヘルプミィィィー!」
だが地面に出来た穴は丁寧に塞がれあとを追うことも出来ない。
「……なんとまぁ、手際のいい連中だな。
とりあえず飯が終わったら助けにいってみるか」
その後空になった弁当箱を鞄にしまうとワリサを探すために一旦家に戻るのだった。
今回の出来事は面倒事につながるかもしれないが面白そうだしたまには自分から動いてみるのも悪くないかもな。