ハターン・モンスータの狩りと愛の日々   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 他人の不幸は蜜の味と言いますが、私は自業自得の不幸以外は、あまり好きではありませんね。

 なのでこの物語での不幸と言っても軽くて笑えるものばかりだと思います。

 ちなみに自業自得の不幸は見ていてスカッとするので大好きです。

 時代劇とかの勧善懲悪って好きなんですよね♪

 それとまたもやトンデモ理論による説明を求められても困る現象を書いちゃいましたw





そして不幸は加速する

 自宅を元弟子のサラとディオシキの二人に壊された俺の名はハターン・モンスータ。

 

 なんとなくノリで酒場で夜を過ごそうとしていたんだが、知り合いにつかまっちまったわけなんだわ。

 

 その知り合いってのが、不幸すぎるが実力だけは本物という母さんの一番弟子にしてトイダーヴァの街の第三位のハンター、ロッド・キツサ。

 

 こいつの提案により、俺はこいつと二人で音楽を聴くために渓流の素材採取ツアーに出向いたのだった。

 

 

「と、説明口調で現在の状況を説明したわけだがこれからどうするんだロッド?」

 

 

 すでに狩り場に着いており、俺は月の光を眺めながらアイテムボックスの側にいたロッドに話しかける。

 

 

「ふふっ、あらかじめ予想していたけど僕が受けるクエストはたとえ採取ツアーだとしても支給品すら届いていないなんてもはや神がかっているね。

 ハターンさん、これはもう時間いっぱい使いきるまで街には帰れないしそんなに急いで何処に行こうとか決めなくてもいいよ」

 

 

 ロッドに言われてアイテムボックスを覗いてみると、確かに採取ツアーだというのに支給品ボックスの中は空っぽだった。

 

 俺の母さんは神様から愛されているとしか思えないくらい幸運な人なのにその弟子はとてつもなく不幸なんだな。

 

 

「でもこういうことも慣れっこさ。

 僕は風のまにまに漂う吟遊詩人。

 決して急ぐと言う事はしないんだよ」

 

 

 

「まぁいいさ。

 俺はこんな風に月がよく見える場所ならいくらいても飽きないしな。

 月は太陽と違って無遠慮に照らしつけないから好きだ」

 

 

 とりあえず採取ツアーだから支給品がない事は予想していたので必要ないとは思うが一応持ってきた荷物の確認をする。

 

 

「えーと、調味料、調理器具、愛用の枕と……」

 

 

「お菓子と、お弁当と、最愛の弟子と♪」

 

 

 ……いま何か幻聴が聞こえた気がするな。

 

 

「ハターンってばこんなに可愛い弟子を忘れて狩りに出ちまうなんてどういうつもりだよ」

 

 

 聞こえない聞こえない。

 

 

「ぎゃはは。

 ハタっちってばキリン娘関連書籍(狩り場用)まで持ち込んでるなんて今更だけど筋金入りじゃない♪」

 

 

 聞こえちゃ駄目だ、聞こえちゃ駄目だ、聞こえちゃ駄目だ!

 

 

「ほらほら師匠♪

 師匠の大好きなキリン娘三人衆がわざわざ来てあげたんだからもっと喜んだらどうです?」

 

 

 ようやく認識。

 

 俺の背後には弟子3人がいつものように来ていた。

 

 三人はどうやら今回もキリンシリーズを着てきたようだ。

 

 だが手は出さないぞ。

 

 

「……どうやってここまで来たんだお前ら?

 ここに来る馬車には御者を除けば俺とロッド以外に誰も乗ってなかったはずだが」

 

 

 馬車はハンター用にギルドが用意したものだから御者を含めて最大5人まで乗れるようになってはいるがロッド以外に人の気配はしなかったのだが。

 

 

「それは存在論ですか?

 それとも単純な意味での問いかけですか?」

 

 

「後者だ」

 

 

「うふふ、怒った師匠も可愛いですねぇ♪

 まぁ、説明しちゃいますと、私がサラさんとディオシキさんを暗器使いの技術で鎧の下に隠したあと、気配を完全に消して荷物の中にまぎれていたんです♪

 ほら、私ってば体が小さいですし♪」

 

 

「そんな馬鹿な。

 いくらイトラでも生きている限り気配を消すだなんてそんな事が出来る訳がないだろう」

 

 

 いや、でもイトラなら……

 

 しかし俺が気づけないなんて隠密スキルはもしや俺以上か!?

 

 

「私の戦闘力は数値化するなら大体1000万ほどありますけどそれは1000万しか力を発揮できないのではなく0から1000万まで数値を自由に操れるのです。

 だから戦闘力を0にすることで同じく気配も0になるから私の気配は木石程度しかなかったはずです」

 

 

 まさかそこまで自在に自分の力を操れているとはさすがだな。

 

 うーむ、しかしこれでは俺達の人数は5人。

 

 ギルドではハンターが組むパーティーの人数は最大4人までと決められているのだがどうするべきか……

 

 そんな事を考えていたのだがイトラにとってはそんな事はそんな事でしかなかったようで、勝手に解決策を話し始めた。

 

 

「二つのパーティーが同じクエストを受注したことにすればいいんですよ。

 だから私と師匠のラブラブチームとその他チームに別れて行動すれば無問題です♪」

 

 

 と言い、俺の手をとると猛烈な勢いで走り出すイトラ。

 

 俺の手を引っ張ってるというのにイトラってば俺より足速いんじゃないのか?

 

 

「こっちはあたしらに任せてイトラと仲良くやれよー」

 

 

「僕様ちゃん達はロッドたんと三人で楽しくやっとくよ♪」

 

 

 何やら白い布を口元に押し付けられて気絶したように見えるロッドの両腕を掴んだサラとディオシキはそのままズルズルと引きずりながら俺達とは反対方向に歩いて行った。

 

 

「さぁ師匠!

 ここは渓流なんですから虫の音もいいですけど私の喘ぎ声でも聞きたくないですか?」

 

 

 寡黙で渋くてカッコいいハードボイルドな男らしさを求めて音楽家ロッドの一人演奏会に参加するという軽い予定すら吹き飛ばされた俺は体格差を無視して俺を引っ張って走り続けるイトラを見ながらこの先の展開に頭を悩ませるのだった。

 

 ちょっと長い説明口調だな。

 

 それにしても異常なまでに不幸なロッドの不幸が俺にもうつったのだろうか……

 

 それとも元々俺自身も不幸だったのだろうか……




 まぁ、暗器使いの能力なんて四次元ポケットみたいなもんですからね。

 イトラの狩人パワーは1000万パワーですが、ハターンはそれ以上に強く、さらに背の高さ、回転、ジャンプ力などを加えれば倍の倍までどこまでも強くなれますので、今のイトラがハターンに勝つことは不可能です。


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