ハターン・モンスータの狩りと愛の日々 作:ヨイヤサ・リングマスター
「この『新生キリン娘愛好会』の警備員をやらせているモンスターどもを倒すことができるのならギルドナイトにでも死刑台にでも自分から行ってやるわい!
こいつらは特殊な薬で小さい頃から調教してきたからワシには絶対服従じゃしこの頑強な甲殻に傷をつけるなんて生半可な攻撃では不可能だろうがなぁ、ふぁーははははは!」
どうやらアクトは自分の育て上げたモンスターに絶対の自信を持っているようだな。
だが、そんな事でこの俺が諦める訳がないだろうに。
「よーし、四人は見てろ!
ここは俺が一人で殺ってやる」
俺が俺のために作った『キリン娘愛好会』がこんな俗物根性の染みついたアホの手に渡ってしまうなんて俺のミスでもあるな。
未来あるうら若き女の子たちを無理矢理従わせるような腐っちまった組織の存在なんて断じて認めねぇ!
俺の手で、初代会長としてぶっ潰してやる。
「さぁてイトラ、この異常で無敵な俺が不本意ながら『最強』と呼ばれる由縁をとくと見せてやろう」
俺が手を振ると次の瞬間俺の手には数多くの種類のの武器が握られていた。
ディオシキの暗器の技術は俺が教えたのだから当然俺にも出来るし、その異常性はディオシキ以上なのだ。
「はっはー!
俺の体は武器で出来ている……
てめェら皆殺しだァー♪」
この状態になると俺も自分を抑えられなくなってしまうから寡黙で渋いハードボイルドな男を目指す俺としては使いたくない手ではあるのだが出し惜しみはしない。
普段使っている大剣にこだわらず、あらゆる武器を千や万の数を取り出すと同時に投げつける。
何頭かはその武器の雨で死に、生き残ったモンスターも翼や胴体を地面に縫い付けられ、身動きを封じられる。
「うりゃ、モンスター手裏剣!」
そうして動きの封じられたリオレウスなどの巨体を誇るモンスターを掴んでは投げ、掴んでは投げ、目に映るモンスターを全て殺戮してようやく止まることが出来た。
ふぅ、さすがにこの殺戮状態はあまりカッコよくないからな。
「くくくぅぅぅぅ、よくもワシの自慢のモンスターたちを……
おい、子分A!
例のモンスターを連れて来い!!」
「しかし会長!
あのモンスターはまだ調教が済んでいませんので危険です!」
モンスターを全て殺されたアクトは側に控えていた男に切り札らしいモンスターを出すように言うが子分の男は反対しているようだ。
「ワシの言うとおりにできんのなら死ね!」
アクトは控えていた男をナイフで殺し、建物の奥へと走って行った。
「こら、待ちやがれ!」
「あ、ハターン会長。
深追いは危険ッス。
さっきギルドの応援が来るという連絡が来たッスからここにいる連中が捕まるのは時間の問題ですし、ここは応援が来るのを待って慎重な行動をするべきッス」
「僕様ちゃんもルナちゃんに賛成よ。
あいつはまだ何か奥の手を持ってるみたいだしここで無理に攻める必要はないと思うの」
ルナとディオシキは慎重だな。
だが、俺の作った『キリン娘愛好会』をここまで潰してくれちゃった張本人を人任せになんてできないし、即効でブチっ殺してやりたい衝動を抑えられないんだよ!
「あたしはハターンに賛成だ。
ハターンの大切なものを踏みにじった外道を潰さずして真の平穏はないと思うぞ」
「私はハターン師匠のためだけに生きているので常にハターン師匠に従います。
このまま一気に潰しましょう!」
おう、サラとイトラの二人はわかってるじゃないか。
そうだよな、ここで引き下がったら俺が俺じゃなくなっちまうもんな。
ルナとディオシキを無視してそのまま奥へと進む。
アクトは奥の部屋に隠れること無く堂々とした態度でそこに立っていた。
「はーっはっはっは!
『最強』のハターンもこれで終わりだ。
『キリン娘愛好会』の予算のほとんどを使って捕獲してきたこの最強の化物にお前らはなすすべもなく殺されるのだー!」
アクトが最後の切り札として出したのは雪山の主としても知られるとにかく巨大なモンスター、ウカムルバスだった。
「グゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォー!」
だが大きさが俺の知っているウカムルバスの比ではない。
この大きさと迫力、さてはこいつ何か改造されてるな。
「ふっふっふ、さすがにハターン殿は気づいたようだな。
こいつは子どもの時に攫ってきて外科手術で脳を直接いじることで成長ホルモンを過剰分泌させ、通常のウカムルバスの倍の大きさと凶暴性を得ることに成功したスーパーウカムルバスだ!
こいつならいくらお前さんが『最強』でも倒すことはできまい」
アクトの声に呼応するかのようにスーパーウカムルバスは建物全体に響くような鳴き声を発する。
「うぅむ、すばらしい。
実にすばらしい化物だ♪
さぁ、スーパーウカムルバスよ、このワシに楯突く愚か者共を殺すのだ!」
だがその一言がスーパーウカムルバスとやら気に障ったのか、アクトはウカムルバスに呑み込まれてしまった。
何をやってんだろうな。
だが、さすがにこれほどの大物相手だと実力的にまだ未熟なイトラにまで気をつかってやれないからヤバいかもしれないな。
俺が囮になっている間にイトラを退かせてサラとディオシキとルナの三人を攻撃の主軸に据えるのがいいかもしれん。
「よし、俺が囮をするからイトラは下がってサラ、ディオシキ、ルナが遊撃をしろ!」
「「「「嫌です!」」」」
うぉう、こいつら即効で俺の作戦を拒否しやがった。
「ハターン師匠、その考えを否定させてもらいます。
私ももう一人のハンターとして戦えますし、さっきのハターン師匠の戦い方もすでに完璧に記憶しましたので安心して背中を任せてください!」
イトラはさっき俺の動きをもう覚えたのか……他の三人はイトラの意思を尊重する気なんだろうな。
しゃーない、俺が師匠として、会長としてカッコいいところを見せてやるとするか。
「よォ~っし、てめェら!
しっかりと俺についてこいよ!
この俺の脅威の大宇宙パゥワーを見せてやる!」
さぁ、潰してやるぜウカムルバス。