とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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後日談その1

 月 日

敵対勢力の一掃が完了したところで部下達にアレクシアとの結婚を報告する。祝いの言葉と驚きの声が混在する中で1人だけ違う反応があった。直接アレクシアに恨みがあるレディだけは複雑な感情を抱いていたようだ。画面越しに対話を行ってみたところ、最終的には怒りを呑み込んで「貴方の意思を尊重します」と言ってくれたが、無理をさせてしまっているような気がする。一度直接会って話をしてみた方が良さそうだ。その時は美術品を土産に持っていくとしよう。アフリカで手に入れた貴石のバングルや毒蛇の腕輪にアンティーク時計が良いだろうか。ハート形にカッティングされた大粒のサファイアとルビーもあるが、妻がいる身で女性に贈るものではないな。レディが気に入りそうなものはなかなか手に入るものではない。高額であろうと金塊をそのまま渡すのは好ましくはない筈だ。彼女にとっては美しいものこそが価値がある。美を基準とする王国が崩壊した今、美術品を愛でることが今の彼女の生き甲斐だ。その生き甲斐を邪魔してはいけない。部下の趣味ぐらいは把握している。貴石のバングルと毒蛇の腕輪にアンティーク時計はレディも間違いなく気に入るだろう。

 

 月 日

久しぶりに会ったジェイク君と恒例の組み手を行ったが、ジェイク君はまた少し強くなっていた。部下達ではもう相手にならないだろう。一度組み手を行ってから休憩をしている最中に私が数年前に結婚していることを話したがジェイク君は驚いて飲んでいたミネラルウォーターを吹き出してむせていたな。落ち着くまで背中を擦ってやり、激しく咳き込むのが止んでからジェイク君は矢継ぎ早に質問をしてきた。色々と聞かれたので答えられることには答えておいたが、ジェイク君はどうなんだという質問には固まっていたな。その後は休憩も終わり組み手を再開したが、ジェイク君は此方の攻撃を躱しながら拳や蹴りを此方に放ってくる余裕があるようだったので速度をどんどん上げていくことにした。最終的には加減した私の攻撃に被弾しながらも反撃を繰り出してくる根性を見せつけてくるジェイク君は素晴らしい。人が人のままでどれだけ強くなれるのかという可能性をジェイク君には感じる。これからもジェイク君とは欠かさず組み手を行うとしよう。

 

 月 日

家族を全員連れて出かけたが遠目で此方を見ていたエイダを見かけた。アレクシアとエヴリンもエイダには気付いていたようだ。エイダは直ぐに踵を返して立ち去ったが、何か用事があったのかもしれないな。私が家族連れだったから遠慮をしてくれたのだろうか。そうであるならエイダとはまた今度会うことになりそうだ。家族全員で出かけたのは初めてだが、皆楽しんでくれたようで何よりだった。息子が特にはしゃいでいたな。エヴリンは今日は大人しかったが、楽しんでいたので元気が無い訳ではなかった。アレクシアは今日も幸せそうに笑っていたな。今日は良い天気で青空が広がっていた。出かけるには最適な日だったが、特にバイオテロが巻き起こることも敵対組織が襲ってくることも何も問題もなく外出は成功。何事もなく無事に帰宅することもできた。私の予定が合えばまた全員で出かけることにしよう。

 

 月 日

元大統領令嬢アシュリー・グラハムが街中を歩いているのを見かけた。護衛が何人か隠れてついていっているようだが、彼女は一度誘拐されているから護衛達は随分と警戒しているみたいだ。彼女は確かロス・イルミナドス教団に拐われたんだったな。布教の方法がプラーガを植え付けることだった宗教団体に誘拐された彼女は確実にプラーガを植え付けられていた筈だ。流石に今現在も体内に残っている様子は無さそうなのでレオン・S・ケネディの活躍でプラーガは除去されたようだな。13年前の2004年に一目見かけたぐらいで彼女と言葉を交わしたことはないが、元気そうで何よりだ。彼女とレオンが村人達に追われていたところで村人達を足止めしたことぐらいしか手助けはできていなかったが、少しは役に立っていたのかもしれない。あの後何があったのかは知らないが、無事に生きていてくれて良かった。生存しているのは情報で知っていたが、再び彼女を見たのは今日が初めてなのであらためて安心したな。

 

 月 日

知能が低くて使い物にならないラーカーの知能を高めることに成功した研究者がいたようだが、製造にコストがかかるためより安価で十分な性能を持つ他の生物兵器を使った方が早いと切り捨てられてしまった。初期の生物兵器開発で作製されたラーカーに執着していた研究者はそれに激怒して知能が向上したラーカーを暴れさせたらしいが、直ぐに鎮圧されたみたいだ。知能が向上したとはいえラーカーではやはり限界があったようだな。研究者がそこまでラーカーに執着していた理由はいったい何だったんだろうか。両生類の中でカエルが一番好きだったからなんて理由では流石にない筈だ。他人にとっては下らない理由かもしれないが、研究者本人にとっては譲れない大事な理由があったんだろう。ラーカーの低い知能を向上させるにはかなりの時間が必要になる。しかし知能が向上したとはいえラーカーの身体能力まで向上させた訳ではない。ラーカーにそこまでの情熱を注ぐなら身体能力も向上させておく必要があったんじゃないか。そうすれば少しは見向きもされたのではないかな。

 

 月 日

以前アフリカで手に入れた財宝の1つである王家のネックレスを何処で換金しようかと思いながら眺めていたらアレクシアが「何を見ているのかしら」と話しかけてきた。赤い箱に入れられた王家のネックレスを見せると「とても綺麗ね」と言うのでアレクシアに王家のネックレスを着けてみる。アレクシアの金髪に白銀と宝石が光るネックレスが映えていた。アレクシアにとても良く似合っている。良ければ君にプレゼントすると言うとアレクシアはとても嬉しそうに微笑んだ。換金するつもりだったが、それは取り止めだな。アレクシアの笑顔が見られるなら安いものだ。赤い箱に同封されていたセットのイヤリングだけ売りに出すとしよう。綺麗な耳に穴をあける必要はないからな。このイヤリングは不要だろう。

 

 月 日

息子とエヴリンと並んで昼寝をしていたら、うなされていたエヴリンが飛び起きてきた。嫌な夢を見てしまったらしい。細胞劣化が治まることなく老化が止まらずに老いた身体で誰にも好かれることなく1人ぼっちで嫌われるだけの夢だったとのことだ。最後はイーサンという男にEネクロトキシンを注射されて対特異菌用の弾丸が詰まった拳銃でトドメを刺されたと語るエヴリンはあまりにも現実的な夢に怯えているようだった。震えているエヴリンを抱きしめながらパパもママもエヴリンのことが大好きだから安心しなさいと語りかけて落ち着かせる。エヴリンのことはパパが守るから心配しなくてもいいと言い聞かせた。エヴリンは泣きそうになりながらも頷くと「パパ、ありがとう」と言ってくる。どうやら落ち着いたようだ。それにしてもエヴリンが語った夢の内容はアレクシアや私と出会わなかったらあり得たかもしれない内容だったな。しかし私の目の届く範囲でエヴリンにそんなことをさせるつもりはない。エヴリンの夢の内容が現実となることは永遠にあり得ないだろう。愛する家族は絶対に守る。それが私にできることだ。

 

 月 日

創始者ベロニカに始まりアレクシアが8代目の当主となるアシュフォード家。残っているのは彼女だけでアシュフォード家に残されているものは何も存在しない。今は無きアレクサンダー・アシュフォードが望んだようにアシュフォード家の復興を望むことはないアレクシア。名家の名前だけが残されることになる。私とアレクシアは結婚したが互いに名前を変えることはしていない。お互いがそのままでいいと考えたからだ。だから私は今もジョンのままであり彼女はアレクシア・アシュフォードである。もしもエヴリンがアシュフォードの名を欲しがれば、エヴリン・アシュフォードということになるかな。息子が私の名かアレクシアの名のどちらを欲しがるかが問題となる。息子には好きな方を選ばせてやろう。

 

 月 日

とある組織から敵対組織の情報収集を依頼された私は独自の情報網から収集した情報を組織に提供した。処刑マジニを5体ほど内部に戦力として配置しているという情報に加えて構成員の装備している銃器の情報から始まり、内部の重要施設の位置、敵対組織の首領の部屋の場所、等々に細かな情報を加えたものを提供して報酬を受け取る。後は自分達の組織でどうにかすると言っていたが、それがうまくいくことを願っておく。相手の戦力は私からの情報で把握している筈だから、十分な装備を整えれば負けるようなことにはならないと思うが、物事に絶対はなく万が一ということもある。私は依頼された仕事は果たしただけなので、組織の仲間という訳ではないが、負けてもらうと情報を提供した此方にも被害がくる可能性が僅かにあるので、是非とも勝ってもらいたいところだ。

 

 月 日

唾が入らないようにマスクをして息子とハーブのことを語り合いながらハーブの調合を行った。小さな手で擂り粉木を握り、擂り鉢に入れたハーブを擂り潰していく息子の手付きは完全に手慣れたものだ。出来上がった調合したハーブを見比べても私が作ったものと遜色のない出来栄えだった。丁寧に調合ができている。次は調合したハーブをもとにメディカルセットと組み合わせて抗ウィルス剤を造り出していく。息子の手によってできあがった白いカプセル錠剤を調べてみると問題なく抗ウィルス効果があることが証明された。今度はハーブのみを使ったハーブタブレットを作製していく。息子の手で完成したタブレットを実際に食べてみて効果を確かめる。確りと効果があることを実感した。今日はこれぐらいにして終わりにするとしよう。私も息子もハーブのことならばいつまでも続けていられるが、残念ながらいつまでもハーブのことだけを考えている訳にはいかない。日々の生活とはそういうものだ。どこかで区切りをつけなければならない。ハーブの研究だけをしている訳にはいかないのだ。

 

 月 日

アレクシアが息子にtーVeronicaの力を解放するやり方を教えていた。アレクシアと同様に灰褐色の肌と植物性の皮膚で覆われた姿に身を変えた息子。この異形の姿になった時、息子の高い身体能力が更に向上している様子だった。将来的には息子に勝てる存在はいなくなるのではないだろうか。まあ、世界を支配したいだとか新世界の創造などには欠片も興味のない息子だ。ハーブの研究をやっている時が一番楽しそうな息子が世界に害をもたらすような存在にはならないだろう。私とアレクシアの教育に問題がなければ何も問題はない。とりあえず優しい子には育っているのでアレクシアのような子にはならないと思う。というか父親を実験体にして兄を焼き殺すような子にどうやったらなるんだろうか。私の妻になってだいぶ落ち着いたがアレクシアの今までの行いはかなり凄いな。

 




ネタバレ注意
バイオハザード5に登場するトレジャー
貴石のバングル
大きな石が中央に埋め込まれたバングル
左右にも石が使われている

毒蛇の腕輪
毒蛇をかたどった金の腕輪
細工は頭の部分だけではなく、全体に渡る

アンティーク時計
古めかしい置時計
振り子には透明感のある青い石が使用されている

王家のネックレス
赤い箱に収納された豪華なネックレス
耳飾りもセットになっている

バイオハザード4の登場人物
アシュリー・グラハム
合衆国大統領の1人娘
お嬢様育ちゆえのワガママさも見られるが、物怖じしない明るい性格の持ち主
マサチューセッツ州の大学からの帰宅途中に、クラウザーに誘拐される
彼女が連れ去られた先は、宗教団体ロス・イルミナドスの支配下にあるヨーロッパのとある地域
寄生体プラーガによって操られた人間達が暮らす狂気の村だった
レオンによって発見され、ガナードらの襲撃に耐えながら脱出を目指す

バイオハザード0に登場するBOW
ラーカー
初期のtウィルス研究で生まれたBOW
ベースは両生類のカエルとなっている
視覚系が退化する一方、捕食対象の接近を鋭敏に察知するための優れた感知能力が発達しており、舌は人間を突き刺すほどに増強されている
巨大化した身体には、人間を丸呑みできるほどの消化器官があり、その消化能力は捕食直後の生物を即死させるほどである
優れた攻撃性を持ちながらBOWとして実用化できなかった原因は、知能の低さにある
tウィルス投与後もラーカーは一向に脳の発達が見られず、兵器として制御するまでにはいたらなかった

バイオハザード7の主人公
イーサン・ウィンターズ
ロサンゼルス在住のシステムエンジニア
3年前に海難事故で妻のミアを亡くし、傷心から立ち直れない日々を過ごしていた
その彼女から突然迎えを乞うメールが届き、半信半疑ながらも指定されたルイジアナ州ダルヴェイへと向かう
ごく平凡な人生を送ってきており、スポーツに打ち込んだ経験もないが、人並み以上の体力に恵まれている
怪事件に巻き込まれる中で、適応力の高さも示していくことになる

バイオハザード5に登場するBOW
処刑マジニ
元々体格に秀でていた者がプラーガを植え付けられ、凄まじい怪力と耐久力を備えた特殊なマジニ
全身が分厚い脂肪と、寄生体の分泌する化学物質で強化された筋肉の層で包まれており、多少の銃弾を浴びても意に介さず戦い続けることができる

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