とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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アレクシア第1形態の即死攻撃には注意

 月 日

数多の組織が襲撃を受けて壊滅させられているようだ。武装した組織の構成員達の死体には槍で貫かれたかの様な刺創、剣で切り裂かれたかの様な切創が残されていた。BOWの仕業だとすればリーパーの可能性が高いが、もしかすると本当に槍や剣で殺されていたのかもしれない。銃器で武装した集団を相手に、それができそうな奴を1人知っている。tーVeronicaウィルスに適合したアレクシアならば可能だろうな。何故原始的な武器を用いているのかは解らないが、tーVeronicaウィルスによって強化された腕力で振るわれる槍と剣は人間が喰らえば致命的な一撃となる。ただ力任せに振り回されるだけでも十分厄介だが、扱いに習熟して技を身に付けていたとしたら、それは脅威としか言い様がない。

 

リーパーの仕業である事を願いたいが死体の損壊具合から見て、的確に急所を捉えているように見受けられる。明らかに人間の急所を狙える知性が有る存在によるものだ。アレクシアの仕業である可能性が非常に高い。数多の組織に襲撃をかけている理由は槍と剣の練習の為なんじゃあないか。熟練したそれは私を殺す為に振るわれるのかもしれないな。どうしても彼女は私を殺したいらしい。

 

憎まれている訳ではないのが恐ろしいな。彼女と相対する時はいつも歪んだ感情を感じている。彼女が執拗なまでに私へ執着している理由は理解したくない。彼女は彼女なりの善意で私を殺そうと考えている。

 

私は望んではいないんだがね。

 

 月 日

とある動物園でtウィルスによるバイオテロが発生したらしく。ウィルス感染した動物達が動物園を脱走したそうだ。BSAAも対処が仕切れていないようで私の方へとtウィルスに感染した牡ライオンがやってきたのでアンプルシューターに装填した「デイライト」で始末する。何を考えて動物園でバイオテロなど起こしたのだろうかと考えている内に感染したゾウが此方へ走ってやってきたのでL・ホークの連射でゾウの足を止めてから「デイライト」をアンプルシューターで強制的に投与してやり息の根を止めてやる。人々に襲いかかろうとするtウィルスに感染したハイエナやホーンビルをL・ホークで撃ち抜いていると、漸く到着したBSAAが掃討を開始した。私の出番はこれで終わりだな。

 

銃の扱いを誉められて若いのに良い腕をしていると言われ、BSAAに勧誘されたが勿論断った。BSAAに協力はするが所属まではしない。

 

 月 日

またtウィルスによるバイオテロが引き起こされた。この前の動物園と同一犯によるものだろうな。何が目的かは知らないが私にとっては非常に迷惑だ。今度はtウィルスの影響で巨大化したノミが大量発生し人々を襲おうとしていたので跳び跳ねる巨大なノミをL・ホークで撃ち落としながら進み。巨大なノミを生み出していた更に一回りは巨大なノミを発見した。人を抱えて拐おうとするそのノミの脚をL・ホークの連射で撃ち落としてやり、拐われそうになっていた人に「デイライト」を投与しながら空いている片手に持ったL・ホークで一回り巨大なノミを処理する。BSAAが現れたのはその後だった。BSAAに保護した人を渡して私はその場を後にする。

 

バイオテロを引き起こしている人物をBSAAも未だ掴めていないようだ。バイオテロにtウィルスを使う理由は解らないが。家族連れの多い動物園でバイオテロを引き起こす様な奴だ。他者の幸せに激しい憎悪を抱く様な人物の可能性が高い。胸の内に収められない憎悪を撒き散らしたいと思ったのがバイオテロを引き起こした理由なんじゃあないだろうか。

 

恐らくこいつはまだやるつもりだ。まだ捕まっていないからな。個人的に気に食わないので私なりに少し調べてみるとしよう。

 

 月 日

近日中にtウィルスを大量に購入していた男を突き止めた。間違いなくこの男がバイオテロを引き起こしていた下手人だ。次のバイオテロを引き起こす前に消えてもらうとしよう。男が住む一軒家の鍵をキーピックで抉じ開け、屋内に侵入する。消音器付きの拳銃を構えて音を立てず静かに進む。品の無い笑い声と「次は何処で引き起こしてやろうか」という声が聞こえてくる方へ歩み寄る。音も無くドアを開けてtウィルスの詰まった容器を片手に持った男の背後から忍び寄り。自慢気に「誰にも俺の事は止められない」と言う男の後頭部に照準を合わせて引き金を弾く。力が抜けて男の手から滑り落ちたtウィルスの詰まった容器を受け止める。

 

血に染まった街の地図とバイオテロの計画表が男の机の上に拡がっていた。この男がtウィルスによるバイオテロを引き起こしていた事は間違いない。これでまた1人馬鹿が減ったな、良い仕事をした。後は残された大量のtウィルスと死体を処分するだけだな。バイオテロの犯人を探すBSAAには悪いが勝手に決着はつけさせてもらった。後手に回っていては被害が拡大するだけだと思ったのでな。

 

 月 日

何事も無い日々の素晴らしさを実感している。お気に入りの店に行き朝食のボリューム満点のサンドウィッチを食べてコーヒーを飲む一時に安らぎを覚えた。腹ごなしに軽い散歩をして十分に日光を浴びたら拠点に帰り昼寝をする。起きたところで昼食を食べに出かけて、少し遠出をしてタロウ・ヨシハラ氏がオーナーを務めているレストランに入ってみた。ヨシハラ氏がオーナーを務めているだけあって料理はどれも美味なものばかりだ。満たされた気持ちでレストランを後にした私は、拠点へと帰路につく。拠点内で少々ハードなトレーニングをして軽く汗を流した後はシャワーを浴びて汗を洗い流した。

 

顔を特殊メイクで変えて実年齢相応にしたら料理が美味いと評判の酒場へ出かけて酒と料理を注文する。味付けは少し濃い目だが確かに料理は美味しい。酒をお代わりして料理もお代わりするくらいには気に入った。満足感に溢れた気持ちで酒場を後にする。歯をハーブ配合の歯みがき粉を付けた歯ブラシで磨き、磨き終えたら口を水でゆすぐ。銃器や武器の点検を確りと行い、調子を確かめておく。全ての装備の点検を終えたらベッドに横になり、今日の出来事を日記に書き終えたら明かりを消して就寝だ。

 

明日もこんな日がおくれると良いんだがな。

 

 月 日

どうやら今日は緩やかな日々を過ごす事は出来ないらしい。何故ならアレクシアとモーフィアス

 

この先は血で汚れていて読めない。

 

槍と剣で武装したアレクシアと胸に紅い宝石の様な装置を取り付けられたモーフィアス・D・デュバルが私の前へと現れた。あの紅い宝石の様な装置には見覚えがある。確かジル・バレンタインがウェスカーに取り付けられていた強化薬物P30を継続的に投与する為の装置だった筈だ。P30とは始祖ウィルス研究の副産物として生まれたもので、被験体は精神を支配されるのと同時に、超人的な力を身に付ける事が出来る。意識はとどめているものの、意思は完全に奪われた状態なので被験者は指令通りに行動する。t+Gウィルスと適合したモーフィアスにも効果があるように調整がされているらしい。

 

「今日は貴方の部下にも手伝ってもらおうと思うの。孤島で美術品と貴方の写真を愛でているばかりだった彼女にもそろそろ働いてもらう時がきたわね」

 

状況は最悪だ。2対1、しかも相手はウィルス適合者。人間以上の身体能力を持つ者が2体。しかも1体は槍と剣で武装している。武装している分だけ間合いが広い。そして槍と剣の扱いには完璧に慣れている。背を向けて逃げるには遅すぎた。絶望的でも戦うしかない。

 

「今日こそ、殺してあげるわジョン」

 

「そう簡単にはいかないさ」

 

懐のホルスターから引き抜いたL・ホークを構える私に右手に持つ大剣で斬りかかってきたアレクシア。真正面から振り下ろされる刃を半身になり躱して反撃の銃撃を叩き込もうとしたが、剣を盾に弾かれる。続いて繰り出された左手に持つ槍の一突き、眉間を狙ったそれをしゃがんで回避して その体勢のまま左腕義手内蔵兵器の荷電粒子ライフルを発射するが天高く跳躍されて避けられた。動き出すのはアレクシアだけではない。P30で操られたモーフィアスも右腕の爪を突き出して襲いくる。強化薬物P30で強化された瞬発力と反射神経を発揮して凄まじい速度と角度で放たれる爪撃。それを避けながら紅い宝石の様な装置を狙いL・ホークを発砲するも電磁バリアで弾かれる。

 

「その左腕の荷電粒子ライフルなら通用するでしょうけど、それは彼女を殺す事に通じるわ。貴方は部下を決して見捨てない人。だから彼女を倒す方法はひとつだけ、胸の装置を引き剥がすこと。それをわたしがさせると思うかしら」

 

「きみを倒せば、時間は十分にあるさ」

 

圧倒的な性能差を勘と経験で埋めていく。繰り出された斬撃を紙一重で躱し、放たれる槍の連続突きを咄嗟に回避しながら荷電粒子ライフルを発射するも横に跳び退いて避けられたが回避地点を予測してL・ホークを撃っておく。アレクシアの顔面に直撃する50口径の弾丸。植物性の皮膚で覆われていない顔半分に命中。軽く仰け反ったアレクシアに追撃の銃撃を喰らわせようとするも大剣で顔を隠されてしまう。L・ホークは顔以外には撃っても効果はないだろうが、荷電粒子ライフルなら話は別だ。左腕義手を構えて荷電粒子ライフルを撃ち出そうとしたところでモーフィアスがアレクシアの盾になった。これでは撃てない。

 

「盾は確りと機能しているみたいね。役に立っているようで何より」

 

「趣味が悪いぞ」

 

「そうかしら、有効な手段を選んでいるだけよ」

 

「確かに有効である事は認めよう、なら容赦は要らんな」

 

連携して襲いくるアレクシアとモーフィアス。斬り上げる斬撃、振り下ろされる爪撃、突き入れられる槍の一撃、横に回転しながら繰り出された爪の一撃。放たれた全ての攻撃を寸分で見切り躱していく。左腕義手内蔵兵器を追尾式の時限炸薬弾を発射するマインスロアーに切り替え、追尾対象をアレクシアへ決めて左腕義手から伸びた銃口をアレクシアの後方へと向けて連続で発砲する。回り込んだ時限炸薬弾がアレクシアの背面から着弾し、起爆していく。撒き散らされた発火する血液が地を燃やす。

 

「痛いじゃない、酷いわジョン」

 

「この状況下で、良くそんな事が言えるな」

 

続けて放った時限炸薬弾がアレクシアの左手に持つ槍で全て叩き落とされた。そしてアレクシアは右手に持つ大剣で鋭い突きを放ってくる。それを何とか躱したところでモーフィアスが掴みかかってきた。攻撃とは程遠いが凄まじく速く捕まってしまう。モーフィアスに動きを止められたところを狙って繰り出された尋常ではない槍の一撃を左腕義手で受け止めたが、義手が破壊されてしまった。壊れた義手の破片が散らばる。次の一撃を止める手段はもう無い。満面の笑みを浮かべたアレクシアが大剣を構える。

 

「漸く、この時がきたわね」

 

「私の死体は焼いておいてくれると助かる」

 

「嫌よ、そんな願いは聞かないわ」

 

「後悔するなよ」

 

次の瞬間、心臓を狙い放たれた大剣の突きが私の胸を穿っていた。

 

槍と剣を放り捨て、瞼を閉じて倒れ込んだジョンを抱えてアレクシアは歌う。

 

「心優しく、無垢な王がいた。王は大変意地の悪い王妃と結婚した。王は愛されたが、王妃は恐れられた。ところがある日、中庭を散歩中。一本の矢が親切な王の心臓を貫いた。王は命を失い、最愛の女性も失った。」

 

子守歌を歌い終えたアレクシアはジョンを包み込む様に優しく抱きしめる。

 

 

「ジョン」

 

心臓を破壊されて鼓動が止まった身体が脈打つ。破壊された部位が瞬時に塞がる。進化を待ち望んでいた身体が歓喜する。体内の細胞組織の根本から組み換えられていく。老いを否定し病を否定し遂には死すらも否定する肉体は完全に人の域を越えていく。しかし自我を失う事はなく、人の姿も保っている。完成されたBOW以上の身体能力を得たジョンの瞼が開いた。

 

「焼いておけと言っただろう」

 

「嫌よ、と言ったでしょう」

 

「後悔するなよ、と言ったぞ」

 

「良いものが見れたもの、後悔なんてしないわ」

 

「そうかね、それはそうと、いつまで抱きしめているつもりだ!」

 

tーVeronicaに適合したアレクシアの人間離れした腕力を力任せに振りほどいた私は、アレクシアの背後に控えていたモーフィアスの胸元に取り付けられた紅い宝石の様な装置を瞬時に引き剥がした。

 

「これで2対1だ」

 

「よくもこのワタシにジョンを殺す手伝いをさせたなアレクシアァァァァァァ!」

 

「あらあら、とても元気ね」

 

激昂したモーフィアスがアレクシアへと突撃する。アレクシアは槍と剣を拾い上げて応戦した。未だ本調子ではないのに無理をして身体を動かすモーフィアスを一度強制的に下がらせて、格段に向上した身体能力と反射神経で振るわれる槍と剣を完全に見切り、特殊な合金製の槍を奪い取る事に成功した。アレクシアが両手で振り下ろしてきた大剣を片手の槍で振り払えるあたり、腕力は今の私の方が上らしい。

 

「今日は、これまでかしらね」

 

「逃がすと思うか」

 

「ワタシの怒りを受けて死ね」

 

「エヴリン、出番よ」

 

アレクシアがそう言った瞬間。モーフィアスが体勢を崩して倒れ込んだ。どうやら特異菌をモーフィアスに植え付けていたらしい。特異菌の血清と同様の効果がある薬品は持っているが、左腕義手が壊れているので槍を手放す必要がある。仕方なく槍を手放して薬品をモーフィアスに投与した時には、既に肥満体のモールデッドの群れが私達の周囲を囲っていた。

 

「また会いましょう、ジョン」

 

そう言って身を翻したアレクシアは高速で駆け抜けて行った。今の私ならば追いかける事が出来たかもしれんが、特異菌に耐性の無いモーフィアスを置いては行けない。肥満体のモールデッド達を打ち倒して囲いを抜けると様々なモールデッド達が現れた。対特異菌用特殊強装弾で全てのモールデッドを排除して、モーフィアスの体調を確認しておく。モーフィアスの体内に植え付けられていた特異菌は完全に石灰化しているようだ。薬品が効いたようで何より。特に体調には問題が無さそうだ。しかしアレクシアを逃してしまったのは痛い。次はどんな手でくるか解らんぞ。

 




ネタバレ注意
バイオハザード5に登場するクリーチャー
リーパー
昆虫などの小型節足動物の一種が、漏出したウロボロス・ウィルスに汚染され、急激な変異を繰り返して人間以上のサイズにまで巨大化した怪生物
外皮は銃弾を寄せ付けぬほどに硬質化しており、呼称のもととなった死神の大鎌の様な捕食肢は、重武装で固めた兵士の胴体を容易に引き裂く恐るべき鋭さを持つ
また、生物の視神経に作用する強力な化学物質を体内で生成し、獲物への接近時に腹部から放出して目眩ましに使う狡猾さも有している

バイオハザードアウトブレイクファイル2に登場するクリーチャー
ゾンビライオン(オス)
「咆哮」のボスクリーチャー
メスよりも攻撃力が高くてタフであることに加え、tウィルスの影響により一層凶暴化している
ただし、ボスにゾンビエレファントが選択された場合には遭遇することはない

ゾンビエレファント
「咆哮」にのみ出現
かつては気のいい動物園のスターだったが、ウィルスによって凶暴化し、獲物を求めて園内を徘徊している
動物園から脱出した時の条件に応じて、ボスとして出現する場合もある

ゾンビハイエナ
俊敏なハイエナがゾンビ化したもので、生来の習性通りに、群れをなして獲物に襲いかかるという傾向がある

ホーンビル
和名ではサイチョウという鳥がtウィルスによって凶暴化したもの
見た目はユニークだが、アンバランスなほど大きい嘴による攻撃は脅威

メガバイト
ギガバイトから生み出されるクリーチャーで、ラクーン市の地下鉄構内に多数棲息する
人間の血液を好み、血を吸って巨大化するものもいる
一部のメガバイト(紫色の個体)は毒も持っている
「異界」にのみ出現

ギガバイト
「異界」のボス
tウィルスの影響によって巨大化したノミのクリーチャーで、ラクーン市の地下鉄構内に潜み、メガバイトを増殖させている
人間の血液を好むため、地下鉄車両を襲撃して人間を捕獲する事もある

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