女尊男卑の世界にて新人類は何を見る   作:一撃男

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久しぶりの戦闘描写!

わかりづらいとこあればご指摘、ご指導のほどよろしくお願い致します。


第八話

 

「さぁ踊りなさい!わたくしセシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲 (ワルツ) で!」

 

 

 

 

試合は開始直後から一方的な展開となった。

 

セシリアが攻撃し、徹が逃げ回るという構図だ。

 

セシリアに対して、徹は反撃の姿勢をとらずに、一定の距離を保ちながらアリーナ内を旋回している。

驚くべきは、徹が防戦一方なのにも関わらず、ジェガンのシールドエネルギーがほとんど減っていないことか。

 

ブルー・ティアーズのスターライトmk"IV"から放たれる銃撃の嵐。

そのほとんどを前世での戦場の勘で回避する。

避けきれない分はシールドでいなし、防ぐ。

 

「シールドなんて珍しいものを持っているだけはあってなかなか頑丈なようですわねッ!」

 

セシリアは高威力の攻撃を連発しても相手のシールドエネルギーがほとんど削れていないことにいらだちと焦りを感じていた。

素人目でみれば状況は明らかにセシリアが有利だろう。

しかし、攻撃をあれだけ加えても減らないシールドエネルギーは下手な反撃より恐ろしかった。

 

セシリアのレーザーライフル『スターライトmkIV』は英国が最近組み込んだミノフスキー粒子をつかった技術が使われている。

 

ミノフスキー粒子は誰が発見したのかが不明な粒子だ。

ミノフスキー粒子、及び同一人物が発見したといわれる全ての技術は数ヶ月前、IS業界に大きな波紋を呼んだ。

世界中がこの新たな技術の研究に尽力するようになったこの改革は『ミノフスキーショック』と呼ばれている。

その影響力の高さからミノフスキーショックの原因は束博士であるということが、現在もっとも有力である一般的な解釈だ。

(重ね重ねの説明になるが、ミノフスキー粒子の発見者が徹であることは機密情報で各国でも知る人間は少ない)

 

このミノフスキー粒子を使用する兵器はまだまだ試作段階ではあるが、従来のビーム兵器、レーザー兵器を遥かに上回る性能を発揮する。

まともに命中すればシールドエネルギーをごっそり削る恐ろしい武器である。

 

それゆえシールドなど一撃、二撃当てれば融解するものだと考えていた。

だが予想に反して徹のもつシールドは耐久値が高かった。

なんらかの技術でシールドエネルギーを消費しつつ身を守るなら理解できるが、徹のシールドエネルギーは大きな変化がない。

これにはセシリアも頭を悩ませた。

 

 

 

そもそもISは、シールドを装備する必要自体がない。

 

シールドバリアーが展開してあり、機体を守るからだ。

シールドバリアーはシールドエネルギーを消費するが敵の攻撃を完全に遮断する。

このエネルギーがなくなると敗北するためにエネルギー残量には気をつかなければならないが、無敵の盾を基本装備としながらさらに防御力を高めるというのは難しい。

 

"シールドエネルギーを消費せずに敵の攻撃を阻害する"

それがISにおけるシールドの存在意義である。

しかしこれもまた実用するとなると問題が多い。

実弾兵器やビーム兵器を防げるほどのシールドとなると、それなりの厚みになるだろう。

そうなると、どうしても量子化した際のデータ容量が大きくなってしまうのだ。

さらに機体の重量も上がってしまうだろう。

中途半端なシールドは機動力を下げるだけになりかねない。

 

その上、シールドは一回、一回の戦闘で融解してしまうために修理に資金がかかる。

毎度、毎度修理しようものならば、そのコストは馬鹿にならない。

 

以上の問題点からシールドを装備する機体は珍しい。

 

 

徹も無論その大きな問題点たちを理解していた。

確かにシールドなど、強固にしたところで実弾兵器なら数発.....ビーム兵器ともあれば一発しか防げないし、コストもかかる効率の悪い兵器だ。

倉田さんにもシールドはあまり破壊されないでくれと念を押されている。

 

(シールドは壊さないようにしていきたいが.....シールド重量による機動力の低下があるから全弾回避ともいくまい...)

 

ではなぜあえて機動力を下げてまでシールドを持つことにしたか?

もちろんオリジナルの宇宙世紀のジェガンならシールドを装備しているからという理由も少なからずある。

 

だがそれだけの理由でシールドを装備しているのではない。"徹"のシールドに限っては対セシリア戦で絶大な効果を発揮するからだ。

現にセシリアのレーザーライフルは徹のシールドに数発ほど阻まれている。

このシールドにはある宇宙世紀性の技術が使用されていた。

 

"耐ビームコーティング"

 

徹のシールドにはその塗料が使用されている。

これはビーム兵器の防御策の一つである。ISの装甲やシールドにこの塗料を「塗る」ことによって塗膜面に当たったビームの熱を塗膜の溶解によって吸収し無効化するものだ。

特殊なものではあるが所詮塗料なので安価であり、かつビームに対しての高い防御力を発揮する優れものだ。

これによりセシリアのビームをシールドエネルギーを消費することなく耐えることができている。

 

(クソッ.....思ったよりオルコットさんの射撃は正確だ.....これじゃあいつまでもつかわからんぞ....)

 

だが耐ビームコーティングはビームの熱を塗膜の溶解によって吸収し無効化するものなのだ。

一度ビームを受けた箇所は塗膜が融解し、剥がれ落ちている。

だから二度同じ箇所にビーム攻撃を食らえば攻撃を受けきることはできない。

徹も同じ場所にビームを食らわないように気をつけてはいるが、シールドにも限界はあるのだ。

 

(感覚はいまだ完全に一致していない.....。あわよくば攻撃を回避している時に隙でも見つけられればと思っていたんだけどな....)

 

徹が防戦に徹していたのには感覚を身体になじませる目的もあったが、攻撃の際に生じる隙を見つけることも目的だった。

動きながらでは当てることはできないが、一度足を止めれば正確な一撃を叩き込める。

その場で一瞬静止できるくらいの小さな隙を探っていたのだ。

 

しかし相手は代表候補生。小さな隙すらも見つからない。

 

隙を探る防戦の徹と、攻勢のセシリアで戦いは膠着状態になりつつあると思われた。

 

 

 

 

だがその均衡は破られる。

 

「ッ.......ビットか.....」

 

爆散するシールド。均衡を破ったのはセシリアによるBT兵器を利用したオールレンジ攻撃だった。

避けきれずに想定外のタイミングでのシールドの使用を余儀無くされ、破壊されてしまった。

 

「わたくし相手にここまで耐えた人物など、女性にすらほとんどいませんでした。

......たしかに男性にもマシな人間はいるようですね。

考え方を改める必要を感じます。

........だから降参なさいな?

盾を失ったあなたにもはや勝機はない。これ以上の戦いに意味などありません」

 

セシリアは本気で男性に対する認識を改めようと思っていた。

徹は一見、防戦一方でありながら常にこちらの隙を狙っていた。

そのことが分かるセシリアは戦いの早い段階で慢心を捨てざるをえなかった。

 

"隙を見せたら食われる"

 

あまり味わうことのなきこの感覚は、セシリアにとっても貴重な経験だった。

ゆえにとどめまではさしたくなかったのだ。

 

 

 

「.....再開してくれ、勝負を。

俺はまだ負けちゃいない」

 

それでも徹はまだ諦めていなかった。その目にはたしかに光が宿り、闘志に満ちていた。

 

「残念ですわ.....ブルーティアーズッ!」

 

その返事を皮切りに、再び四基のビットによる波状攻撃が再開される。

 

(きたっ!やるならここしかないッ!)

 

「瞬時加速 (イグニッションブースト)ッ!」

 

ここで徹は始めてセシリアの懐へと切り込む。

腰のハッチからビームサーベルを取り出し、装備する。

被弾を恐れない最短距離の接近。

 

徹はシールドを犠牲にやっと、隙を見つけた。

セシリアはビットを使用している際は、ビットの操作に集中するためにそれ以外の攻撃ができないようなのだ。

シールド破壊直後にレーザーライフルによる追撃がなかったことがそれを証明していた。

 

ビームライフルではシールドエネルギーを削りきることはできない。

 

その隙をつくならば接近戦だ。

接近戦ならばただでさえ強力なビーム兵器を近接武器とした"ビームサーベル"に勝る兵器はない。

 

「瞬時加速ッ⁉︎....やらせませんわッ!インターセプターッ!」

 

まったく予想していなかったIS初心者であるはずの徹の繰り出す瞬時加速。その速度はセシリアの予想していた動き全てを凌駕していた。

もはや距離を離すことは難しい。

 

(ならばここで迎え撃ちますわッ)

 

セシリアはビットの操作を放棄し、ショートブレードを呼び出す。

 

「遅いッ!」

 

セシリアが武器を展開し終えたときには徹はもうブルー・ティアーズの懐深くまで潜り込んでいた。

 

そのまま素早く一閃。

 

振り抜いたビームサーベルはセシリアのシールドエネルギーを大きく削った。

 

徹は自らの勝利を確信した。

ここまで接近すれば自分に敗北はない。

そう思った。

 

 

 

 

「...........こちらにも奥の手はありましてよ」

 

ゆえに気づくことができなかった。

超至近距離で放たれたブルーティアーズのミサイルに.....

 

 

激しい爆風と爆発は、お互いの機体を巻きこんだ。

その後、両者のシールドエネルギーが共に"0"になったことを表すブザーがアリーナ内に鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

千冬side

 

~試合開始直後~

 

「あの?織斑先生?

.......本当に徹くんはIS操縦時間は数時間なんでしょうか?」

 

「そのはず.....なのだがな.....」

 

正直に言って、あの操縦技術が一昼一夜で身につくものとは思えなかった。

....特に恐ろしいのは回避技術だ。

セシリアの猛攻を最低限のシールドの使用で回避していた。

 

(IS操縦初心者特有の動きのぎこちなさはたしかにある。なのになんだというのだ.....まるでどこに攻撃がくるかが分かっているような回避は?)

 

その動きは相手の動きを見ているというより"分かっている"ようであった。

そんなことはISを乗りこなした熟練者でも難しい。

 

(!......まさかあれは)

 

そして徹は驚くことに瞬時加速を使用したのだ。

瞬時加速使用後に起こりやすい立ちくらみのような現象もまったく感じさせなかった。

 

(天賦の才.....その一言で片付けるにはあまりにも強大な力だ....)

 

いったい空白の10年間。徹に何があったというのだろう。

 

(転生した....あの話は本当なのか?)

 

自分の知る徹が何か別の人物のように感じ、ゾッとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナの待機室にて徹を待っていたのは一夏だった。

 

「凄い!凄いぜ徹!

かっこよかった!いやー興奮したよ。ビデオカメラもってきとけばよかった......」

 

一次移行中にビデオカメラを構える気だったのだろうか?

とにかく一夏は興奮していた。

専用機vs専用機の戦いなどそう簡単に見られるものではない。

ISが大好きな一夏にとっては最高のプレゼントだった。

 

「うん.....引き分けだったけどね.....最後の油断がなければ....」

アノバメンデハフミキラズニハンポホドノヨユウヲ.....

 

あのミサイルの回避は可能だった。

あの慢心がなければ勝利できていたかもしれないと思うと今、この瞬間も悔しい。

 

「セシリアさんのISのエネルギーが補充完了次第、一夏くんとオルコットさんの模擬戦だってさ」

 

「なんか緊張してきた」

 

さて......と。

徹は、これからさっそく壊したシールドのことを倉田に報告する仕事ができていた。

 

「憂鬱だ.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




言ってませんが徹くんは普通にチート系主人公です。
成長型主人公は本家主人公一夏に任せます。

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これからも精進していきますので、次回も楽しみにしていただければ幸いです。





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