僕と許嫁と学園生活   作:風澄龍

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バカテスト 日本史
問題 今川氏親が制定し、子の義元の時に補足された分国法の名前を答えなさい。

吉井 明久、霧島 翔子、木下 優子、織斑 一夏、シャルロット・デュノア、田村 速和、田村 沙織、坂本 雄二の答え
「今川仮名目録」

教師のコメント
正解です。坂本君もここ最近メキメキと成績を上げて先生は嬉しいです。

須川 亮、横溝 浩二の答え
「異端審問会会則」

教師のコメント
後で西村先生の補習を受けて下さい。


第28話

明久side

僕が女体化してようやく3日が過ぎた。

昨日は雄二達に状況を説明して手助けの約束をこじつけた。そして翌日朝起きたら母さんがいなくて、元兄のところに行って来るという置手紙がリビングに置いてあった。そういうわけで母さんは朝から出かけていて家には1人だ。それで朝食を済ませ、家事と洗濯を終わらせた今、暇になってしまい和室の縁側に座って庭師の笹田さんの作業をぼーっと眺めながら時間が過ぎるのを待つことにしているが、暇で仕方ない。

さて………どうやって暇を潰そう?

 

選択肢

①作業を手伝う

②親戚の家に行く

③買い物に出掛ける

…………?なんだろ、頭に選択肢が出てきた。

うーん、どうしようかな。こんな暇なら家の近くの本屋で恋愛小説でも買ってこようかな?なので③っと

「よしっそれじゃあ出掛けるか。笹田さーん」

「はい、何でしょう明久坊ちゃん」

笹田さんを呼ぶと庭仕事を丁度終えたのか縁側に近づいてくる。

それに僕がこんな姿になろうとずっと坊ちゃんと言った男として扱ってくれる笹田さんはとても優しい。仕事とはいえ、ここまでしてくれるのは素直に嬉しい。

「少し出かけてくるよ。だから家の留守をお願いしてもいいかな?」

「承知致しました。お気を付けて行ってらっしゃいませ」

そう言ってお辞儀してくる。この家にはハウスキーパーも雇ってるから家は彼女とかに任せる時もある。彼女は庭師の笹田さんの家内でもあるらしい。世界は広いと言えどもこうも偶然同じ場所で働いてるとは運命と言うものだろう。

そんなことを考えながら母さんが選んできた服(ネットで調べたらインナーとシンプルベーシックカーディガンを羽織にして、下はにパンツというものだった。)を着て茶色の革の財布を母さんの貸してくれたカバンに入れて部屋を出てそのまま家から近くのモールまで電車に乗って出かける。

見た目が大学生に見えるのでなんら問題ない。そもそも靴下や靴を女子大学生が履くようなものにしか渡してくれていないため必然的にそうなってしまった。

 

 

電車に乗って席に座ってから視線をずっと受ける。ただ座ってるだけなのにみんなこっちをチラチラ見てくるからそっちを向くと男も女も皆そっぽを向くし、なんなんだろ?。

そんなことを考えながら視線を合わせる機を待ち、1人の人がこちらを見た瞬間目をそちらに向ける。

目のあったその男性は顔を真っ赤にして固まった。他の人も同じようにしている。そんなことがあると目的の駅に着いたので下車してモールに向かう。

 

 

 

 

 

モールに着いた僕は本屋を目指していた。そこならいろんな本があるだろうという考えだ。

く〜

「………お腹減ったし、少し早いけどお昼にしようかな?」

でもそんなことを考えてたらお腹がくーっと鳴ったから近くの飲食店を探す。

「あっハンバーガー屋さんが有るわね」

女の子なのでなるべく女の子らしさを出してお店に入る。お店に入ると制服を着た男の子と女の子が注文のためにカウンターに立っていて男の子の手には荷物が抱えられている。

(注:マ◯ドです。)

「ハンバーガーセットピクルストマト抜きでケチャップ増量でお願い。直枝は?」

「僕もハンバーガーセットで」

なんというか注文の多い女子だ。男子の方も苦笑してるし。

っと僕も注文しないと。えっ〜とどんなのあるのかな?

メニューに目を通すと一番最初に目に留まったのはベーコンレタスバーガーなるものだった。

「すいませんベーコンレタスバーガーセット下さい」

「畏まりました。お飲み物如何なさいますか?」

店員さんに注文を言うと飲み物について尋ねられる。

「えっとアイスコーヒーで」

そう言った後レジの場所から少し横にずれて注文の品を待つ。

「ベーコンレタスバーガーとフライドポテト、アイスコーヒーのお客様ー?」

呼ばれたので受け取りに行く。

「あっはい」

「ではごゆっくり」

そう言って店員さんは厨房に戻って行ったのを見送ると席を確保してそこに座る。

ここは二人掛けの席でその隣には四人掛けの席があり、そこには先程の男の子と女の子がいた。

男の子は茶色い髪でどこか女の子のような感じを漂わせていた。女の子の方はピンク色に近い紫色の髪をロングにして髪の一部をピンクの髪飾りで留めている。

その制服から近くにある全寮制で有名で文月学園の姉妹校であるということが分かった。知っているのは母さんから聞いたことがあるからだ。

そんなことを考えながら彼らを観察したりして昼食を食べる。

ブビュルッ‼︎

女の子の食べたハンバーガーからケチャップが飛び散り頬がケチャップ塗れになる。なんか可愛らしい。

「………何よ直枝?」

「なんでもないよ。ただ佳奈多さんが可愛いなあと思ってさ」

女の子が睨むと男の子ー直枝君は苦笑した後、そう呟くと佳奈多と呼ばれた子は顔を赤くする。

そして必死にポケットからテイッシュを取り出し拭こうとするのを直枝君が止める。

そして顔を近づけー

ペロッ

彼女の頬に付いたケチャップを舐めとった。

「〜〜〜〜ッ⁉︎」

ボンッ‼︎という音が聞こえそうなほど顔を真っ赤にして俯いてしまう。

そっか皆が僕と優子が一緒にいてああいうことしてるの見てこんな感情を抱いてるのか。なんか腹立たしい。

僕は食べ終えたトレイやらを返却した後、彼らの近くを通り過ぎー

「見つけましたよお姉ちゃんっ!」

ーれなかった。急にやってきた男女の集団によって通路が塞がれ道が無かった。

どうしよ?話聞いてくれそうにないな。困っている僕を放って置いて集団は直枝君と佳奈多さんの周りに集い話し始める。

「やい二木!おめえ、なんで俺の理樹とこんな所でデートしてやがる!」

その中の1人の大きな図体をして赤いシャツに学ラン、赤いハチマキという出で立ちの男子が詰め寄る。

ていうか俺の理樹って何?彼ホモなの?

そしてその後ろに居る青い髪で赤いカチューシャした子がボソッと呟いた「直枝×井ノ原………美しくありません」という言葉を僕は聞き逃さなかった。

「あら井ノ原。これは単なる買い出しのついでよ?寮会に必要なものがあってそれを買ったついでにここで食事しようと直枝が誘ったのよ。ねえ直枝?」

成る程、彼女が脱税とかの容疑で捕まった二木家の証人である二木佳奈多さんか。

そんなことを納得しながら見ていると井ノ原と呼ばれた大きな体の生徒に詰め寄られても一切動じない佳奈多さん。中々出来るね。

そういえば1人だけなんで胴着にジャンパーっていう出で立ちなんだろ?しかもご丁寧にLittle Bustersと胸の所に猫の刺繍入りで縫われている。

「いや、僕は…………」

「本当なんですか理樹君⁉︎」

佳奈多さんによく似た女の子が物凄い形相で睨む。よく見ると他の女子の子も真剣に見ている。

「まあ、待てお前ら」

その中で年長者らしい男子が手を叩いて注目を集める。

「止めるな馬鹿兄貴」

「そうだぞ恭介氏。これは由々しき事態だ」

それに反論するのは年長者の男子の妹らしいポニーテールの子と黒い髪に中々スタイルのいい女子の2人

どうやら年長者は恭介という名前のようだ。妹さんは随分と男勝りな口調でいうのも納得だ。

「来ヶ谷も鈴も落ち着け。ここは店内だし、なにより通行の邪魔だ」

そう言って恭介と呼ばれた青年は僕を見ると、それに釣られて全員の視線が僕に集まる。

なんか照れ臭い。

「ご、ご、ごめんなさあい⁉︎」

星型の髪留めをしたショートボブにクリーム色のセーターを着た子が錯乱したように謝る。どう対応したらいいの?

「ええっと、あなた名前は?」

僕は落ち着かせる為に初歩的なことを聞く。

「ふえ?私は神北小毬です」

僕が問いかけるとその子はキョトンとした後、自分の名前を笑顔で名乗る。うん笑顔の方が似合う子だ。

「私は雨宮青空。今度、文月学園に転入するために来たの」

取り敢えず誤魔化しとく。

「そうかお前、俺らの学校の姉妹校に転入するのか。俺は棗恭介」

そこからは全員で自己紹介し合う。

まず、男性陣で話題の中心である男子がリトルバスターズ唯一の常識人らしい直枝理樹君。次に先程の棗恭介さん、彼はみんなの中で唯一年上の高校三年生で絶賛就職活動中らしい。お次は先程のホモ発言をした男子、井ノ原真人君。彼は憎めない筋肉馬鹿一直線という渾名があるらしい。何でもかんでも筋肉に結び付ける性格だそうだ。

最後が剣道着姿の上にジャンパーを羽織った宮沢謙吾君。剣道でそれなり頑張っていたがある人物を助ける為先生に手を挙げた為に1学期の間部活動禁止を言い渡されたそうだ。そこからはずっと馬鹿さ加減が上がっているのだという。

次に女性陣

リトルバスターズ初期メンバーの紅一点が恭介さんの妹の棗鈴さんだ。

頭に猫を乗せてるってことは相当の猫好きなのだろう。今度、モンペチを贈ろうと思った。

そしてさっきの神北小毬さん。よくボランティアや老人ホームを訪れているらしい。

彼女の信条は幸せスパイラル理論というらしい。相手が幸せなら自分も幸せというのは共感出来る気がした。

お次は佳奈多さんが髪の毛を二つのピンクの髪飾りで特徴的な形で留めて目が青色の子が三枝葉留佳さん。

学校一の問題児でよく悪さをして風紀委員から毎日のように追われているらしい。昔の僕みたいなものだ。

次にスタイルの良い黒髪のストレートヘアの来ヶ谷唯湖さん。

彼女は下の名前で呼ぼうとしたらとてつもない殺気を浴びせられたので速攻で謝っておいた。

だってブチ殺すぞ小娘なんて低い声で言われら、ねえ?まあ怖いかって言ったら全然怖くないけどさ。

お次は能美クドリャフカさん。彼女は可愛くてつい、抱き締めしまった。そしたら来ヶ谷さんが指をサムズアップしてきた。何さその指?えっ?グッジョブ?舐めてるの?

ついで言うならさっきのBL発言をした女子は西園美魚さん。

本が凄く好きらしく、僕自身もその本のタイトルを聞いて今度借りようかと思った。

残りの3人はそれぞれ、笹瀬川佐々美さん、朱鷺戸沙耶さんそして二木佳奈多さん。

笹瀬川さんの名前をフルネームで普通に読んでしまい彼女には好印象だったようだ。

朱鷺戸さんはズッコケたのを立たせて挙げて慰めるといきなりこんなことを言い出した。

「ええ、そうよ!滑ったのよ。フキンがあるとも知らずに思いっきり踏んづけてすっ転んだのよ。滑稽でしょ?笑えるでしょ?笑っちゃいなさいよ!あっははは‼︎」

何、この自虐パフォーマンス………?

「沙耶さん、彼女ポカンとしてるから」

理樹君がツッコミを入れる。

オッケーこのグループは彼がいないとボケが溢れ返るね。

「それにしても雨宮青空………もしやと思うが、君はかつて全国模試で全教科一位で総合一位を獲得してないかね?」

そういや口から急に出たから忘れてたけどこの名前で一回だけ模試受けたっけ?それで一位取ったんだった。

「え、ええ確かに取ってるわ。ほんの数ヶ月前にだけど」

「ふむ、成る程コイツがこんな昼間からここにいる理由も頷けるな」

謙吾君が頷きながら言う。

「どいうことですか?宮沢さん」

クドと呼ばしてもらっているこれは本人からの頼まれた。そんな彼女が質問する。

「全国模試一位ということは学業でも少しぐらいサボったところでなんら影響は出んということだ」

「わふー、すごいのですか?」

噛み砕いて説明すると目をキラキラさせてこちらを見る。

「ええっと、つまり?」

「サボったって平気なぐらい学力高いってことですか?」

真人君が話しに着いて行けてないようで頭を抱えていると、隣で理解したらしい葉留佳さんがそう伝える。

「まっそういうこった」

恭介さんが肯定する。

「つまりどいうことなんだ?」

鈴さんのその言葉に僕は危うくズッコケそうになった。

「要するに来ヶ谷さんよりも学力が優秀だから授業に参加しないで良いってことだよ」

理樹君が補足説明する。

「すっごく賢いんだねえ〜」

小毬さんがまったりとした雰囲気で喋ってくる。

「ところで直枝さん」

不意に西園さんが理樹君に問いかける。

「えっと何かな?」

「先程の問いの答えを教えて下さい」

それによって空気が凍りついた。

明久side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理樹side

「先程の問いの答えを教えて下さい」

西園さんが口にした一言によって場の空気が凍る。

あ〜あのまま忘れて欲しかったんだけどな。

「そうですよ!どうなんですか?理樹君⁉︎」

葉留佳さんが詰め寄る。全員の視線が一斉に集まる。

よく見たら青空さんがソロソロと逃げようとしていたのが見えた。

「おっと逃がさんよ」

来ヶ谷さんがそれに気付き捕縛する。

「Y se suelta la mano!」

急に青空さんが日本語でない言語を話した。何語なんだろ?

「わかる言葉で話してくれないか?」

来ヶ谷さんも分からないらしい。

「手を離してってスペイン語で言ったんですよ!」

そう言って手を解く。

「凄いな外国語もペラペラなのか?」

恭介が物珍しそうに近づく。

「親の仕事で仕方なくです。それにそろそろ帰ろうと思うんですが、帰らせてくれませんか?」

彼女はそう言うとカバンを手に持ってこの場を去ろうとする。

「まあそう言わずに座りたまえ。それとも何か不都合な事でもあるのか?」

来ヶ谷さんが後ろから抱き抱える。

「⁉︎」

驚いたのか青空さんは固まる。でも次の瞬間僕は目を疑った。

来ヶ谷さんが青空さんによって投げ飛ばされたのだ。

受身を取ったから怪我は無かったけど、その投げ方は素人じゃ無かった。

「ふむ、身体能力も問題なしだな。おい雨宮」

そう呟いて頷くと雨宮さんを恭介が呼ぶ。

「何ですか?」

彼女は相変わらず笑顔を貼り付けていてその表情はからは心情は読み取れないけど楽しんでいるのは確かだ。

「うちの学校の敷地内でバトルをしよう。無論勝てたらこのまま帰って貰って構わない。だが、負けたら俺達と遊んでもらう。これでどうだ?」

恭介のその提案に少し考え込む青空さん。

どうやら彼女もこのまま帰りたいというわけではないらしい。

「分かりました。その申し出受けて立ちましょう」

そして頷いた。

 

 

 

 

 

ここは学校のグラウンド、今は放課後のため誰にも迷惑がかからないかと言えばそうでもない。ソフトボール部が居るのだが笹瀬川さんの一喝で場所はすぐに確保された。

そして恭介が野次馬を呼ぶ。それによって放課後になったというのに生徒達がゾロゾロ集まってくる。その中にやはり私服姿の生徒もいる。

「おい誰だよあの子?」

「知らねえよ。なあ棗、あの子誰なんだ?」

やっぱり青空さんの事を疑問に持つ野次馬が後を絶たない。

「それについては俺から説明する。彼女は雨宮青空、来ヶ谷と互角に渡り合える女子だ。今日の昼に理樹が二木と買い出しに行っているのを見守っていたら現れた凄い奴だ。なんとあの来ヶ谷より頭脳は明晰なんだぜ?」

恭介の説明に野次馬が騒めき出す。それも当然だと思う。全国模試で一桁の順位を取った来ヶ谷さんより賢いのだ。驚かない筈がない。

「それで今回のバトルだが各々には自分の最も強い武器で戦う事」

そう言うとどこにしまっていたのか来ヶ谷さんが日本刀の模造刀とマシンガンを取り出す。

対する青空さんはこちらもどこから出したのか腰に日本刀(恐らく模造刀)を3本と二丁の大型拳銃という装備。

「バトルスタート!」

恭介の掛け声と共に2人は同時に動き出す。

先に攻撃したのは来ヶ谷さん。模造刀を素早く振るい目にも留まらぬ剣撃を繰り出す。それを青空さんは一太刀の元に受け止めた。その瞬間もう片方の手でもう一本模造刀を抜刀する。それをギリギリ躱す来ヶ谷さん。

そのまま青空さんは接近して片方の模造刀で鋭い突きを放つ。

来ヶ谷さんは体を捻って躱すとそこから高速に連続突きを繰り出す。その速度は片方の手が6本生えてるかのように見える程だった。このバトル光景に野次馬は皆沈黙したまま見続ける。普段なら何かしらのコメントを発するのにそれすらしないで見続けているのだから途轍も無い戦闘だという事を暗に示していた。

理樹side end

 

 

 

 

 

 

 

 

恭介side

俺はバトルを始めの合図をしてから動く2人の姿を追うのに苦労していた。来ヶ谷自身がよく野球なのでやる残像を使う程の手馴れである雨宮の動きは何一つ無駄が無かった。相手の意表を突き空きあらば鋭い斬撃を放つ。それに何より来ヶ谷のその速度に追いついている、いや追い越す速度だった。

相手を間接的とはいえ、誘導し華麗でいて何処か謙吾の姿を重ねる。

あれは道場剣術と実戦剣術を織り交ぜた独特なものだ。謙吾から色々と聞いているので知っているが、あれは柳生新陰流なのだそうだ。

だが、それだけじゃ無い。あれには相手の手首や目を狙うと言った戦国の世での剣術があるらしい。

そんなもん使うとは恐ろしい奴だぜ。

「なあ恭介?」

不意に真人が話し掛けてくる。

「どうした真人」

「アイツの動きおかしく無いか?消えたりするの来ヶ谷の姉御より速えぜ?」

真人もそのことに疑問を抱いているらしい。

「さあな、ただ言えることはこれはどっちが勝つか分からねえな」

俺はそう答えるしか無かった。

恭介side end

 

 

 

 

 

 

来ヶ谷side

驚いたな、この私がここまで押されるとはな。けれど彼女から感じる戦闘仕方は推し量っているような気がした。

私は相手に近づいて切り抜けるその一撃は防がれる距離を離し振り向きざまにマシンガンを連射した。だが、それは空を切っていた。そこには彼女は立っていなかった。私は辺りを見回したが先程までの戦闘でグラウンドは土煙が上がってしまい視界が悪い。だが、この程度彼女はなんとも無いのだろう。今までの動きから見るに彼女はこの煙幕の中でも視界は良好だ。条件はあちらが有利でこちらが不利だ。フフッだからこそ燃えるのだよ。

私は耳を澄ました。

背後から近づいて来る足音があるがこれはダミー、本命はー

ガキイン‼︎

「⁉︎」

ー側面だということだ。

私とて伊達にリトルバスターズの理樹君のバッティングと守備の練習をしているわけでは無い。

だが、彼女はニヤッと笑った。

私はその意図が分からなかった、けれどすぐにその意味を理解する羽目になった。

真の本命はその反対側だったのだから(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

その一撃に反応できなかった私は右からやって来た模造刀の一撃で吹き飛ばされた。

来ヶ谷side end

 

 

 

 

 

 

 

 

佳奈多side

私達は棗先輩主催の来ヶ谷さん対雨宮さんのバトルを観ていた。その様は正に嵐と呼んでもいいのではないかと思える程苛烈なものだった。鳴り響くのは剣戟、銃声そして地を蹴るダンッ‼︎という足音のみだ。視界は既に濃い土煙によって遮られている。そんな時来ヶ谷さんが土煙の中から吹き飛ばされて来た。

吹き飛ばされた来ヶ谷さんは直ぐさま模造刀を突き立てて勢いを殺して態勢を立て直す。けれどさっきの一撃が余程効いたのかその表情に余裕は見受けられ無い。

「まさか姉御をあそこまで追い詰めるなんて、凄いですね青空ちゃん」

葉留佳の言う通りだ。井ノ原や宮沢に劣るものの来ヶ谷さんの戦闘力は女子の中ではズバ抜けて高い。それがあそこまで追い詰めることが出来るのだから雨宮さんの戦闘力は井ノ原や宮沢並にあるということだ。

土煙が晴れ、中から雨宮さんの姿が現れる。彼女は汗一つ掻いてい無い。澄ました顔をして模造刀を一振りした後納刀する。彼女の手には開始時に握られていた大型拳銃が一つ握ってある。

「そろそろ終わりにしませんか?あなたの体力も限界の様ですし」

彼女の言葉も最もだ。来ヶ谷さんは息が荒い上に顔を顰めている。どうやら痛む様だ。よく見ると左肩に少しだが血が滲んでいる。それ程までに彼女の一撃は重いということだ。

「無論、望むところだ」

そう言うとマシンガンを握っていた手を開きマシンガンを捨て模造刀を両手で握る。その意図を察したのか雨宮さんは2本の模造刀と2丁の大型拳銃をその場に下ろして立て、抜刀の構えを取った。

場を沈黙が包む。

一陣の風が吹き、彼女が立てた2丁が倒れた瞬間2人は飛び出しすれ違いざまに抜刀した。その速度は異常なまでに速く私達全員には捉えられ無かった。2人は模造刀を振り抜いた状態で止まっていた。その瞬間は一瞬だったろう。けれど私にはそれは長い時間の様に感じられた。

だが、来ヶ谷さんが倒れこむのを見て終わったのだと理解した。

「見事だな、私の、負けだよ」

そう言っている来ヶ谷さんは負けはしたが、とても良い笑顔だった。

「良い戦いができました。エリザベス」

そう言って彼女は手を差し伸べる。その手を来ヶ谷さんが握るのを確認すると引き上げて肩を貸した。

パチパチパチパチパチパチ

野次馬たちから賞賛の拍手の嵐が起こる。

「お前の勝ちだな雨宮。望み通り帰っても良いぜ。来ヶ谷は俺たちに任せろきっちり治療する」

そう言って棗先輩が締める。

「ええ、ありがとう恭介さん。私はあなた達みたいな友達(・・)に会えて光栄よ」

そう言って空いている方の手を差し伸べる。それを見た棗先輩は一瞬キョトンとするも理解したのか微笑を浮かべるとその手を取って握手をした。

佳奈多side end




友情出演、keyのリトルバスターズ!です。途中から戦闘描写になってしまい、前後編に分けることになりました。

後は言えることは他の作品も亀更新ですが更新しようと思ったことです。やはりこういう作品は沢山書いた方が楽しいですからね。
そして長くなりそうなので2つに分けます。

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