ドラゴンボールFG 〜転生少女達と戦闘民族は仲間だった⁉︎〜   作:竜華

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第6話 乙女の誕生

 よぉ、少々、というかかなりバテてるキャッツべや‼︎くそぅ、さっき付けられた傷がまだ痛むなぁ……。おぉ、イタイイタイ。

 

 俺は、今何をしているのかというと、

 

「ジジイ、この餓鬼本当に助かるんだろうな」

 

「そんなに心配せずとも、このメディカルマシーンで治せるわ。まぁ、傷が深いからのぅ、多少傷跡が残ってしまうかもしれんが」

 

 メディカルマシーンとかいう変な機械の中に入れられたアボカの様子を見ている。青い液体の中で眠る奴の姿は、とても大怪我を負っているとは思えない程穏やかで、先程まで、あんなに苦しそうにしていたのがまるで夢の様だった。しかし、そんな思いも、バーダックというおじさんと変なジジイの会話で儚くかき消されていく。

 

「…だってよ、良かったな、クソ餓鬼…って、どうした、浮かない顔しやがって」

 

「……だって…俺が…‼︎何もぉ、でき……なかった……せ、いや……俺の……所為で………こんな……目に……ヒック……」

 

「うおっ⁉︎おい泣くな‼︎」

 

 少しずつ目が熱くなっていくと思ったら、視界がぐにゃりと歪んだ。そして、バーダックおじさんの声により、自分が泣いている事に気付く。

 

 泣くな、それでも誇り高いサイヤ人か。他人の前で泣き顔を晒して、恥ずかしくないのか。そう心に何度も言い聞かせてみても、自分の意思とは反対に、涙と泣き声はその勢いを増していく。

 

「うぁぁぁぁぁ……ん……ごめん……ごめんなぁ……ぁぁぁ……」

 

「お、落ち着け、キャッツべ‼︎」

 

「ムリッ……やでぇ……俺の所為で……アボカは……アボカはぁ……ぅうぁぁぁ……」

 

 ベジータが宥めてくれているのに、どうしてか落ち着く事ができない。止まってくれよ、俺の涙‼︎

 

「……おい、王子とジジイ、少しの間でいいから、外にいてくんねぇか?」

 

「しかし、それでは、メディカルマシーンの管理が…」

 

「すぐ終わるから大丈夫だろ。それに、万が一ぶっ壊れても、どうにかなる」

 

「そうは言ってものぅ……」

 

 バーダックおじさんが一気に畳み掛けるが、ジジイは中々承諾しない。その時、徐にベジータが口を開いた。

 

「……くそっ、さっさと終わらせろよ‼︎」

 

「……お、おぉ‼︎悪りぃな王子……というわけで、ジジイ、お前も出ろ」

 

「おい‼︎わしはまだ出るとは言っていないぞ‼︎」

 

 バーダックおじさんがジジイを無理矢理外に押し出した。ベジータもそれについて出て行く。そして、部屋には俺とバーダックおじさんの2人だけが残った。

 

「……おい、クソ餓鬼」

 

「……な、なんや」

 

 バーダックおじさんがゆっくりと近付いてくる。その顔は、何処か険しかった。

 

「……お前、さっき『何もできなかった』って言ったよな」

 

「あぁ、確かに言ったで。動きが見えんかったから……」

 

 それがどうしたというのか。大蛇の尻尾の動きが見えなかった。ただそれだけの事じゃないか。

 

「それは、お前の『力があいつに及ばなかった』って事だろ?」

 

「‼︎」

 

「つまり、お前はあいつより弱いんだ。下等生物にも勝てねぇくらい弱い」

 

 ……そうだ、俺は弱いんだ。誰かに助けてもわらないと、生きていけない『弱者』なんだ。なんだか、急にバーダックおじさんの顔が見れなくなって、下を向いてしまう。肩が少し震えた。

 

「……悔しいな。誰かに助けられてまで、生きていきたくない、なんて思ってたんやけど」

 

 無意識に呟いていた。再び、涙が溢れ出す。先程よりも大きくて、熱かった。

 

「……うぅ……くや、しいに……決まっとる、やん……ック‼︎悔しいぃぃ……‼︎」

 

「……だったら、その悔しさをバネに、強くなってみろよ‼︎下等生物はおろか、帝王フリーザにも勝てるくらいの力を手に入れてみろよ‼︎」

 

 バーダックおじさんが、俺の肩を掴み、顔を近付けて、そう怒鳴りつけてきた。

 

 瞬間、俺の中で何かが目覚めた。弱いなら、強くなればいい。なんだ、簡単な事じゃないか。

 

「……分かったなら、今日から頑張るんだな。親友を…守りたいんだろ?」

 

「……あぁ‼︎」

 

 俺の返事を聞いて、バーダックおじさんがニカッと笑った。とても爽やかな笑顔だった。

 

 ドキッ……‼︎

 

 俺の胸が大きく飛び跳ねた。息が苦しくなる。顔が熱い。何、なんだ、これ⁉︎こんな感じ前世でも現世でも初めてだ‼︎

 

「?どうした?まだなんかあんのか?」

 

「っ‼︎なんでもない‼︎ほ、ほらっ早よベジータのとこに行こう ‼︎」

 

「……お、おぅ、そうだな。……っと、腹減ったか?」

 

 バーダックおじさんの一言と同時に、

 

 グゥゥゥゥ……グルルルルッ‼︎

 

「⁉︎」

 

 俺の腹が盛大に鳴った。

 

「……プッ、ハハハハハハ‼︎すげー腹減ってんじゃねぇか‼︎ハハハハハハ‼︎」

 

「わっ、笑わんといてーな‼︎」

 

「……ヒィ……あぁ腹痛てぇ……まぁ、そうだよな。あんなに戦ってたんだからなぁ……よし、ベジータ連れて、飯でも食いに行くか‼︎」

 

 バーダックおじさんは、また笑って俺の腕を掴んだ。とても暖かい。人間らしい温もりを感じた。また顔が熱くなってきた。思わず下を向いてしまう。

 

「……?」

 

 バーダックおじさんは構わずにドアの方に向かった。腕は未だに掴まれたままだ。あぁ、恥ずかしい‼︎恥ずかしくて死んでしまいそうだ‼︎

 

 この時、惑星ベジータに恋する乙女が誕生した事を、本人以外、誰も知らない。

 

 

 


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