ドラゴンボールFG 〜転生少女達と戦闘民族は仲間だった⁉︎〜   作:竜華

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第14話 急展開

「『カカロット』だと?」

 

「あぁ、俺の生き別れた弟なんだ。戦闘力は2と最底辺で、辺境の『地球』とかいう星にとばされた屑だが、多少の戦力にはなるはずだぜ」

 

「……ふぅーん……弟いたんですね。ラディッツに」

 

 知ってるけど、と思いながら僕、アボカはハリ星のみに存在する林檎のような果実を口に運ぶ。シャリッという音と共に、林檎とはまた違う甘酸っぱさが爽やかに広がった。うん、リサーチ通り、これは美味しい。持って帰ろ。

 

「というか、アボカ……貴様は肉食わんのか?」

 

 岩にどっかりと座り、死体の足をむっちゃむっちゃと食べ進める王子が、持っていたハリ星人の腕をこちらに差し出して言う。

 

「……すいません。殺した奴らを食うのは、ちょっと……ね」

 

 そう返して、たはは、と笑うと

 

「……そうか」

 

 王子は静かに呟いて、再び足を食しにかかった。

 

 僕、また3日位肉系食べれなくなりそう。キャッツべ以外の皆が人肉を貪る姿は、正に地獄絵図だ。元一般市民の女の僕には、かなりキツい光景となっている。あー早く終われー。

 

「でもさー、結局殆ど殺っちゃったやんか。ギリギリこいつらはとっ捕まえたけど」

 

 そう言って、キャッツべが背後の科学者4人を親指で指す。彼らは、身体を気で作ったロープで1つに縛り付けられていた。ロープの内側では、科学者達が「離せ‼︎」だのなんだの喚いている。ちなみに、無理に中から引きちぎろうとすると、身体が切れる仕組みになっている。この技の考案者は言わずもなが王子である。

 

「……まぁ、全員殺っちまうよりはかなりマシだろうぜ」

 

 そう言って、王子はギロリと科学者達を睨みつける。科学者達は、「ヒイッ⁉︎」と短い悲鳴を上げ、ふるふると震え出した。うん、同情するよ。

 

「……しかも戦闘員に関しては候補全員殺しちゃってますし……ねぇ?」

 

「しゃあねぇだろ。見分けがつかなかったんだよ」

 

 ナッパが苦し紛れな言い訳をするが、違うことぐらい知っている。この脳筋は戦闘員の候補達と全力で戦って、力の加減を誤って殺ってしまった、という所か。やっぱり間抜けな奴だ。

 

「……では、急いで帰りましょう。流石に、無断で遠征に行くのはマズイですしね」

 

「……そうだな」

 

 ラディッツが本当に地球に行くのなら、今はサイヤ人襲来編前か。もう少し。もう少しで、僕達は救われる。

 

「……宴はここまで、というわけか。そうと決まれば、さっさと帰って、遠征の許可を取るぞ。急げ‼︎」

 

 鶴の一声ならぬ王子の一言で、僕達はアタックボールに向かった。

 

 

 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

 

 

 

「……ラディッツさん単体の遠征の許可がほしい、と?」

 

「……はい」

 

 只今ラディッツが帝王フリーザに直談判中。僕達はただの付き添いである。ラディッツ凄い震えてるじゃん。大丈夫なの?

 

「理由は、一体なんなのでしょう?」

 

「…。辺境の『地球』という星に飛ばされた弟を迎えに…」

 

「……その弟さんは、強いのですか?」

 

「分かりませんが、それなりの戦力にはなると思われます」

 

 沈黙が不気味に流れる。怖いなー。

 

「……いいでしょう。丁度、地球に目をつけていたので、一緒に侵略も宜しくお願いしますよ」

 

「……は、はい‼︎」

 

 こうして、ラディッツは弟の送り込まれた『地球』に向かうことになったのだった。

 

 

 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

 

 

「べ、ベジータ様‼︎皆様‼︎」

 

「…?なんだ?」

 

「どうしたんですか?そんなに慌てて」

 

 管制員が僕達を呼び止めたのは、ラディッツの出陣から約10ヶ月後のことだった。管制員は、激しい動揺を隠し切れていない。

 

「……ラ、ラディッツさんの…。ラディッツさんのさんの生命反応が、消えました……‼︎」

 

「‼︎」

 

 ラディッツの生命反応が消えた。それは、ラディッツの死を意味している。そうか、カカさんとピッコロさんに殺られたのか。また1つ、物語が進んだ。もし、原作通りに進むなら、次は王子が行くはず。

 

「…ほう、雑魚だかサイヤ人の端くれのラディッツを殺せる奴がいたのか。殺した奴の名は分かるか?」

 

「……そ、そこまでは……」

 

 管制員の声が震えている。王子が怖いのかー。僕も怖いけどね。

 

「……ふっ……面白い。見てやろうじゃないか、ラディッツを殺した奴の顔を」

 

「……行くんですね、地球に」

 

「……あぁ。貴様ら、今すぐ出発の準備をしろ」

 

「えっ、無断でですかい⁉︎」

 

 ナッパが、心底驚いたような声を上げる。それに対して、澄華がふふんと嘲笑いながら言った。

 

「……なんだ、ナッパ……お前怖いんかいな?」

 

「はっ⁉︎んなわけねぇだろっ⁉︎俺は、お前らが殺られねぇか心配なだけだ‼︎」

 

「……へぇ……」

 

 意味深な笑顔を浮かべて、ナッパを見上げるキャッツべ。

 

「辞めよう。ナッパいびりは辞めよう」

 

「え?事実を述べただけだけど?」

 

 ……ダメだこいつ……早くどうにかしないと。一瞬、そんなことを思ってしまった。

 

 でも、今はそれどころではない。急いで準備をしなくては。そう思って、走って自室へ戻った。

 

「……これが、ドラゴンボールの世界の正しい歴史なんやろか」

 

「うん」

 

「そうか……」

 

 2人きりで、少し喋りながら準備を進める。とは言っても、携帯食(クッキー)やスカウターなど、持ち物の確認するだけだけどね。

 

「……今回は、ないといいんやけど……『凶悪化』」

 

「そうだね……」

 

「そもそも、あの『凶悪化』って、誰かが操ってるんやろ?誰だか分かるのか?」

 

「……うん。全クリしないまま転生したから、合ってる確証はないけど、あれは確か、『ミラ』と『トワ』って奴らが歴史を弄ろうとしてる結果みたいな感じなのさ。トワは、未来から来た暗黒魔界っていう別世界の王の妹で、ミラはそいつが創った人造人間って所かな。で、ミラを最強にする為に、歴史を捻じ曲げるんだよね。新たな王をたてるとかなんとかで」

 

「……随分と面倒くさい奴らやな……」

 

「まぁ、それがドラゴンボールの悪役達の考えだからね、仕方が無いよ」

 

 そう、この世界の住人は『強さ』に執着する習性がある。強い者が生き残り、弱い者が死ぬような世界。前世では、話し合いを主に好むのに対して、こっちは話し合いを好まず、拳で全て解決しようとする。不思議な世界だ。

 

「…まぁ、『凶悪化』のような歴史の改変が起こらないように注意しておこうか」

 

「おう、分かったで」

 

「…よし、荷造りも終わったし、飛行場に行こうか」

 

「ん…了解」

 

 携帯食とスカウター入りナップザックを背中に背負った。

 

「…ようやく、物語が1章進んだんだ。急がなきゃ、乗り遅れるよ‼︎」

 

「…分かってるで‼︎」

 

 顔を見合わせて静かに笑うと、部屋の戸を勢い良く開けるのだった。

 

 




ここで補足

菜実はゼノバースを全クリしていません。丁度、ミラを肉片にした所までで終わってます。故に、ドミグラの存在や、『神と神』のことなどを知りません。

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