ドラゴンボールFG 〜転生少女達と戦闘民族は仲間だった⁉︎〜 作:竜華
第13話 歪んだ自分
「…ここが、『惑星ハリ』か。中々良い星じゃないか」
「はい。この星は、豊富な地下資源を活用して発展した、銀河有数の科学惑星です。特に、彼らの宇宙船造船の技術は素晴らしく、ここの技術者や科学者を使えば、更に良質な宇宙船が使えるようになるかと」
どうも、皆さん。アボカです。え?会話が大人っぽくなってるって?当たり前だよ。だって、僕達もう28歳だもん。ある程度の会話はできるよ。まぁ、僕は身長154cmしかないから、まだ子供みたいな容姿だけど。童顔気味で、他の戦士達にも『可愛い系』とかなんとか言われるけどね。勿論、言った奴らは地獄に行ったよ?
「…本当、フリーザに渡してしまうのが惜しい位ですね」
「お、久しぶりに意見が合ったな。俺もそう思ったぜ」
「…おっさんと意見なんて合いたくないんですが」
「…でもさー、ここの先住民雑魚過ぎやろ。平均が25で、最大でも380とか」
「キャッツべ…お前強い奴と戦いたいのは分かるが、今は任務に専念してくれ」
隊員が各々勝手なことを言い出したので、王子に青筋が立ってきている。そして、
「良い加減にしやがれ‼︎このベジータ様に消されたいのか⁉︎」
やっぱり怒鳴った。
「「「「サーセン」」」」
実際、この5人 ー 僕、キャッツべ、王子、ラディッツ、ナッパ ー の中でも最強を誇っている王子。2番目に強い僕でも確か11000なのに、なんと王子は18000。7000も差があるのだ。そんな王子を本気でキレさせて、
「ぶっ殺してやる‼︎」
なんてなったら、それこそ洒落にならない。だから、それは、僕達4人の暗黙の了解となっていた。
「…で?今日の任務はなんだ?」
「えーと、惑星ハリの侵略と、戦闘員や科学者の調達…ですね」
王子の質問に返答して、ふと、辺りを見回してみた。薄い桃色の空と、深い緑を宿す木々。科学が発展しているとは思えないような情景が広がっている。前世の地球の姿が重なった。そして、そんな平和な光景も、今日、僕達が奪ってしまうのだ。
「ていうかさぁー、そんな俺達のお目にかかる強者が、こんな星にいるんかいな?」
「それは実際に戦ってみないと分からんだろうが」
「いたとしても、手下になるとは限らないですし」
僕達にとっては、侵略についての話や強者の話なんて他愛の無い話。こういう話に花を咲かせる僕達は戦闘中毒患者末期だね。うん、自覚してる。
「…あの、そろそろ行きません?あんまり時間かかると、またフリーザに何言われるか分かったものじゃないですから」
そう、フリーザは、異常な程サイヤ人をいびる。1日で侵略を終わらせても、
「私でしたら、半日で終わりますよ」
と、僕達を嘲笑するのだ。だから、なるべく早く侵略して、奴の鼻の穴を開かしたい。
「そうだな。よし、では、ナッパは南の方を、ラディッツは…西だな。アボカとキャッツべは北を攻めろ。俺は、東に行く」
「「「「了解‼︎」」」」
「では…健闘を祈る」
捨てるようにそう言った王子は、真っ直ぐに東へ飛んでいく。ナッパやラディッツもそれぞれの持ち場に向かっていった。残ったのは、僕達2人だけ。
「…いつから、こんな風に人を殺すようになったんやろか」
「…仕方が無いよ。これが、フリーザの戦闘員として生きるってことなんだから」
「自由になったら、人殺しなんかしなくて良くなるか?」
キャッツべの切ない心の声。何かが溢れてきそうになった。
「…そうなりたいんだったら、強くならなきゃね‼︎」
振り払うように、我武者羅に笑う。そして、早く行こうと相棒を急かして地を蹴り上げた。
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眼前には火の海と、黒い人の山と、崩れた建物が無残に残されていた。自分達がやった癖に、可哀想と思ってしまう。
自分達ガ殺シタ癖ニ、何ヲ言ッテイルンダロウネ?
「…うぅっ…」
毎度毎度僕を襲う嘔吐感。真っ赤に染まった手で口を覆う。鼻腔に、鉄によく似た悪臭が流れ込んできた。
「…大丈夫か?また気持ち悪くなったんかいな?」
「…平気だよ…少ししたら治まるし…」
「…そんなにキツイんやったら、ベジータに言って、宇宙船に残ってればいいやん。何で無理すんのや」
「…宇宙船に残ってたら、フリーザに怪しまれるもん。駄目だよ。今を生き抜く為だったら、僕は、鬼にだってなる」
「アボカ……」
悔しいけど、これが現実なんだ。誰かがフリーザを殺さない限り、僕達に自由は訪れない。苦しくても、人を殺さなきゃならない。弱者は、言い訳することすら許されない。
「…早く、カカさんに会って、助けてもらいたいなぁ…」
王子を、キャッツべを、そして、歪んでしまった自分を。太陽のような、彼に。
「…カカさんっ…助けてよぉっ…」
顔が歪んでいくのが分かる。視界も、グニャリと涙でぼやけた。
身体が、暖かい何かに包まれた。
「…泣くんやない。大丈夫や。きっとお前は、あの頃みたいに戻れる。だから、今は我慢しようや、な?」
今程、親友を愛しいと思った日はあっただろうか。
その時だけは、キャッツべの中で泣き崩れていたのだった。