ドラゴンボールFG 〜転生少女達と戦闘民族は仲間だった⁉︎〜 作:竜華
僕達の間を乾いた風が通りすぎて、それぞれの髪を軽く揺らしていった。その風は、大地から砂を巻き上げながら、何処かへ向かっていく。まるで、向かい合う2人の放つ緊張から逃れようとしているかの様に。
まぁ、僕には関係ないけどね!!ハーッハッハッハッハッ(ry
どうも。シリアスシーンを脳内で破壊し尽くそうとしているアボカだよっ。え?KYだって?そんなの前世の頃から知ってる。今更直すつもりもない。これが僕だからね。
僕が脳内でドヤ顔を決めている間も、2人は互いに構えたまま睨み合っているだけで、動こうとしない。重い沈黙が続いていた。…うぅ…早くやってくれ。
その沈黙を破ったのは、僕の親友・キャッツべだった。
「……ほら、ターレスさんよぉ……。早くかかってきたらどうや?それとも、さっきまでの余裕は偽物かいな?」
「ハッ……そんな事言っていいのか?後で後悔しても知らないぜ?」
奴の挑発を鼻で笑いながらも腰を落として、飛び出す準備をするターレスさん。彼の顔からは、これから始まる戦いに対する興奮が溢れ出していた。キャッツべも、同じ様な表情を浮かべている。
「「……ハッ!!」」
2人の脚が地面を穿いた。岩が幾つも砕け散ったが、2人は気にも止めない。
「たぁっ!!」
ターレスさんの脚が、キャッツべの左横腹をめがけて繰り出された。彼女は、それを左腕で受け止める。鈍い音が乾いた大地に反響した。そして、
「ふんっ……お返しや!」
「がっ……!!」
自由な右手で、彼の右頬を殴りつけた。少しの間を置いて、キャッツべは彼から離れる。ターレスさんの口は、切れたのか、端から血が一筋流れていた。彼は、それに気付くと、親指でそれを拭い取り、ニヤリと一笑。
「……あぁ〜ぁ、なんか拍子抜けするなぁ……。もっと強いと思ったのに」
「へぇ……まだそんな事言ってられる暇があるのか……」
「しかも、殴られて笑ってるって……お前もしかしてドMか?」
「[どえむ]?なんだそれ?ていうか、そんな無駄口叩いてていいのか……」
瞬間、ターレスさんの姿が消えた。余裕の表情を浮かべていたの
「……よっ!!」
ドンッ……!!
「っがっ…!?」
キャッツべの身体がくの字に曲がった。よく見ると、彼女の腹に、ターレスさんの拳が深く、深くめり込んでいる。
「まだまだぁ!!」
「うっ………!?」
ドォォォ……ン
そう叫ぶと、拳を離して、その代わりに脚を勢いよく埋め込んだ。その勢いで、あいつの身体は、真っ直ぐ地面に落ちる。落下地点の周りには、砕かれた岩が宙を舞っていた。
「……だから言ったろ?『無駄口叩いてていいのか』って」
「……前言撤回させてもらうで。予想以上に強いな、あんた。これは、そう簡単に勝てそうもあらへんわ」
岩の隙間から抜け出したキャッツべは、右手で腹をおさえながら、ニヤッと笑い、左手で身体に付いた砂埃をはらう。
「でも……この勝負、俺が勝たせてもらうで!!」
ブゥゥゥ……ン
キャッツべの両手に、大きな2つの閃光が生まれた。そして、彼女が腕を振ると同時に球と化した。それらは、一気にターレスさんに襲いかかる。
「……ふんっ!!」
光弾を目で捕らえたターレスさんは、至って冷静に気弾を手に宿すと、的確に彼女の作り出した球に投げつける。それぞれの気弾は、互いに反発し合い、そして、
ボォォォォォ……ン……ッ
激しく爆発した。花火のような鮮やかな光が辺りを包む。とても、美しかった。
「……このっ、少しは当たらんかい!!」
「はぁっ!?ふざけんなっ!!」
「何を言ってるのさ、あいつは………誰が好き好んで攻撃を受けるんだよ」
ちょっと風流だな、とか思った矢先のこれかよ。マジなんなのあいつ。
少々コントに走ったこの戦いだったが、それもすぐに終わり、地上での肉弾戦が始まった。
キャッツべの拳がターレスさんの顔を殴り飛ばさんと唸りを上げた。ターレスさんは、それを腕で受け流すと、膝で彼女の腹を打つ。相手の身体が後ろへぐらり、と傾いた。そこを狙って、ターレスさんが両手で1つの拳を作り、腹に向かって振り下ろす。
「……っふっ!!」
「うぐっ……!?」
しかし、それが直撃する前に、地面をしっかり掴んだキャッツべの左脚が彼の腹に決まる。受け身になりきれなかったターレスさんは、それをもろに食らい、宙を舞った。当てた本人は、先程の勢いを殺すことなく飛び上がり、小さな身体で弧を描いて、ターレスさんの上に回ると、
「……ハッ!!」
ドォォォ……ン……!!
頭を掴み、そのまま下に叩き落とした。激しい音と共に、彼の顔が地面にめり込んでいく。辺りには、幾つもの岩が散乱していくが、それも巻き起こった砂煙によって隠された。
「……ハァッ、ハァッ……お、終わっ……た……?」
浅い呼吸を繰り返すキャッツべ。一撃一撃がどれだけ重かったのかを、彼女の身体にできた幾つもの傷が物語っていた。
「……終わった、な……。よし、帰るか」
くるり、と、こちらを向いて、キャッツべが歩き出した途端、
「……お……い……まだ、終わって、ねぇぞ……逃げ、んなぁ……っ」
「「!?」」
背後で苦しげな声がした。
「……ははっ、そう、やろなぁ……。こんな、終わり方、するわけ……あらへんか……」
ボロボロの親友が、小さく笑った。そして、後ろを振り向く。
そこには、
同じくボロボロのターレスさんが立っていた。 ー