小池メンマのラーメン日誌   作:◯岳◯

60 / 141
3話 : 蹂躙

 

 

 

「風遁・風陣壁!」

 

雷光が見えた時点でメンマは印を組み始めていた。そうしなければ死ぬと、感じ取っていたからだ。性質変化の理からいうと、風は雷に勝る。周囲に風の壁を張り巡らせる。重なった雷光の帯は、俺の身体に届く前に、全て風の壁に弾かれて消え去った。

 

だが、向こうの攻勢はまだ終わっていない。風の壁の向こう、再び印を組み始めるペイン。その結の印は、虎だった。

 

(火遁………!)

 

性質変化の理の一つ―ー――火は風に勝る。

 

(まずい!)

 

風の壁を消し、メンマも印を組んだ。防ぐには水遁による迎撃か防御しかないが、メンマは水遁系統の術は扱えない。ならば避けるしかないと判断し、瞬身の術で樹上から地上へと移動した。

 

だが、敵手の方が一枚上手だった。メンマの動作を見切るや否や、先程の“土遁・土流槍”で隆起した岩に向かって、その龍の形をした火を放ったのだ。当然、炎は岩にぶつかった、が。

 

「なっ!?」

 

炎の豪龍は二つに砕かれながらも、その勢いに衰えを見せなかった。勢いのまま岩の周囲を沿うように走り、岩の後方にいたメンマに左右から迫る。

 

「ちっ!」

 

予想外のことで反応が遅れたメンマは、思った。

 

(避けられない――――ならば防ぐまで)

 

懐から起爆札が張られているクナイを四つ取り出し、左右に二つ、同時に投げる。それはメンマ匠の里の職人の合作、謹製の起爆札だ。普通の数倍の威力があるその起爆札は、炎に当たると同時に爆発し、相殺した。

 

(………しかし、何だ今の術は)

 

メンマは疑問符を浮かべた。豪龍火に見えた、いや火龍炎弾か。

 

(岩にぶつかっても、消えない? 柔らかい炎とでもいうのか?)

 

疑問符の嵐が頭の中を駆けめぐる。

 

(例えるならば岩炎の術と言った所か)

 

『って言ってる場合じゃないよ!』

 

(分かってるよ)

 

問題は、普通の豪龍火の術ならばこうは行かないという点だ。通常ならば岩に当たってそれで岩を砕くか、少し拡散して終わり。あのように広がり、そして統制を保ちながら標的に向かってくるなど有り得ない筈。

 

(いや、そもそもあれは豪龍火の術だったのか?)

 

それすらも定かではない。いったいどれだけの術を保持しているのか。限定された能力なれば対処する方法も浮かぶといものだが、相手が万能に近い能力を持っていた場合、どう対処すればいいのか。

 

メンマは戸惑った。最善の戦術が分からないというのは厄介だった。気が付けば落とし穴にはまってしまいそうで。メンマは知らず、口の中で舌打ちをしながら、ひとまず状況を整理することにした。

 

(………こっちが不利だな)

 

口寄せの術が使えない以上、忍具口寄せも使えない。起爆札付きクナイも、先程の4つで完売だ。忍具を口寄せに頼りきっていた事が仇となったか。舌打ちしても後悔しても状況を覆す材料にはならない。

 

(それは向こうも同じ事だ)

 

メンマはポジティブに考える事にした。他の六道を呼ばないということは、相手も口寄せを使えないのだろう。それでも時空間忍術を防ぐ結界内を張った。つまり奴は、それを補ってあまりある程の忍術を駆使できるのであろう。

 

火・水・土・風・雷………五行全ての忍術を。

 

(カカシは………五代目の方を優先するだろうな)

 

他の可能性として木の葉からの増援を事をメンマは考えたが、即座に切って捨てた。他力本願に縋っていい結果が出ることなどないと考えたからだ。少なくともあと数分はこちらにはこれないと考えていいだろう。それを前提に、戦術を組み立てた。

 

(カカシは火影護衛の方を優先するだろうし)

 

『里一番の忍び』というポジションにおける責任もあるし、それをほっぽってこちらに来る、なんて事はできないだろう。自来也も、比較的手薄である我愛羅の方の護衛に回っている。つまりは里の中心部で待機中。間に合わない。

 

(………ま、それでいいんだけどね)

 

正直こちらの方を助けて欲しいのだけれど、そうもいかない。それぞれの位置による役割があるのだから、仕方がない。

 

(と、いうことは………やるしかないか)

 

 

メンマあH横に唾を吐き、拳を握った。対する神様は相変わらずの無表情。ペイン………いやもう長門と呼ぼう。

 

(こいつは多分、ペインじゃない)

 

メンマは少し思い出していた。ペインの顔には何か黒い釘のようなものが刺さっていた筈だと。

 

(こいつは………長門かな?)

 

恐らく、としかいえないが、多分………間違いないかもしれないけど。

 

『………はっきりしないのう』

 

迂闊に断定するのは危険だから…………まあ、ここはイレギュラーってことで一つ。

 

『相手も、君の事をそう思っているだろうね』

 

(ああ、だから消すのか)

 

どうにも、短絡的だね。

 

『死人に口無しという所じゃの』

 

(キューちゃんそれちょっと使い方違う)

 

内にいる心強い味方の声を聞きながら、気を引き締める。

 

 

「………」

 

 

そして無表情なままの長門に向け、クナイを取り出す。

 

 

「………」

 

 

対する長門も、懐から千本を取り出す。

 

 

「「………」」

 

 

互いに構え、迂闊には動かない。そうしている内にでも風は流れ、空が曇っていく。

 

朝の空は青を示していたが、今はあいにくの黒模様。まるで現在の状況を現しているかのように。

 

 

(…………)

 

 

メンマの口の中に血の味が広がっていく。それは自身の命が脅かされているという、独特の感触を思わせるもの。修羅場が生み出す空気が原材料だ。その味が唾液と共に口の中に広がってゆく。

 

いつかの、雪の国での忍び(笑い)との戦闘とは明らかに違うそれは、本物の忍びと対峙する事によって生まれる、独特の緊張感。

 

殺気によって硬質化された大気が、肌を締め付ける。

 

それでも、並ではない両者は互いに動かない。

 

静寂が世界を支配していく。

 

そうして、風が吹き森がざわめいた瞬間だった。

 

「…………!」

 

まず、長門が動いた。

 

 

「あぐあっ!?」

 

苦悶の声を上げたのは、メンマ。動いたのは手ではなくその瞳だった。瞳孔に浮かぶ螺旋の紋様が見えたと同時だ。メンマは幻を見た。

 

『「……………っ!?」』

 

両手と両足に、まるで杭を打ち込まれたかのような激痛が走る。

 

『っ、幻術か!?』

 

『ちぃ!』

 

瞳術による幻術だ。メンマキューちゃんの様子を悟ったマダオが、すぐさまその幻術を解除した。しかし、と舌打ちを重ねた。随分と“深い”幻術だと。メンマも、まさかキューちゃんまで囚われるとは思っていなかった。

 

マダオがいなければ危なかっただろう。三人は幻術を解除した後、四肢を襲う激痛はすぐに消え去り、元の状態へと戻った事を確認。だが、痛みによる思考の停止と幻術特有の酩酊感が、一瞬だったが五感を鈍らせた。

 

その間、僅か2秒。だが隙は隙だった。幻術を解かれた事を悟った長門は、次の行動に移った。手に持っていた千本。そして懐から新たに取りだした手裏剣、千本を空に放り投げて、印を組んだ。

 

(なっ、速すぎる!?)

 

下忍レベルであれば目視もできないような速度で印を組む長門。複雑怪奇な印だったが、俺が元に戻って一歩踏み出すまでの時間、即ち僅か2秒で組み終わったのだろう。

 

結と思われる印を組んだ後、空中でボン、という音が多数、鳴り響く。

 

「これは………!」

 

上空を見上げたメンマはそこで、目を疑った。それぞれ一つだったはずのクナイ、千本、手裏剣が増殖していたのだ。その上、それらはチャクラで統制されているのか、空中に浮いたまま落ちてこない。

 

(無機物の影分身か!)

 

手裏剣影分身の術と同じ原理だろう。やがて長門は指揮者のように片手を上げた後。

 

「鉄雨の術」

 

深く静かな声で術の名前を告げた後、メンマに向けて上げた片手を振り下ろした。同時、宙に浮かんでいた凶器の群が、標的目掛けて降り注いでくる。千本、クナイは真っ直ぐ、手裏剣はメンマを包囲するように回り込む軌道で飛来する。

 

(出し惜しみすれば、轢殺される)

 

瞬時に判断したメンマは、天狐のチャクラを解放した。

 

(………命は惜しいけど!)

 

ここで死んでは意味がない。持てる全てで抗わなければここで終わってしまうだろう。

 

そう判断したメンマは、降り注ぐ鉄の雨を冷静に見据えた。そして十分に引きつけた後、チャクラで身体能力を強化。しゃがみ込み全身のバネを活かして、地面を蹴り、前方へと走り出す。

 

蹴った地面が、その勢いに押され爆発する。土が宙に舞い上がった。

 

メンマは低姿勢を保ちながらも更に加速した。目の前に僅かだがあった凶器群を、チャクラを篭めた掌打で弾く。背中にいくらか当たったが、防刃を施している服の御陰で、刺さるまではいかない。

 

痛みは感じていたメンマだが、守られていない腕と頬の部分をいくらか掠めでも気にせず直進した。障害を取り除いた俺は、立ちすくむ長門へと肉迫する。

 

(よし)

 

後方から、何かが地面に突き刺さる音がした。クナイ群だ。急加速した俺の動きを捉えきれなかったのだろう。そのままメンマは、間合いに入ると同時に右の掌底を放った。体重の載っていない軽い一撃だ。当然、それは片手で弾かれてしまう。

 

(かかった)

 

弾かれた手、狼狽えずにすぐさま引き戻すと同時、逆手、左手でで返しの掌打を放つ。

狙いは腹部だ。だが、それも片手で弾かれてしまう。

 

『………其処じゃ!』

 

(ああ!)

 

両手は封じた、とほくそ笑む。初撃、牽制の掌打で出した手は、二撃目の腹部の掌打を放つ際に既に引き寄せていた。

 

(裏の裏!)

 

二撃目も牽制。牽制で手打ちだった初撃とは違う、倒すための一打。至近で最速、最小限の震脚、同時踏み込みによる反動を殺さず、腰に乗せ、その腰をひねる。

 

全身を連動させた上で、生まれた力を作用点である掌に手中する。最速を意識した一撃、その狙いは肋骨だ。相手の動きを制限するため。痛みにより相手の動きを制限するためのもの。

 

(なっ、固い!?)

 

だが、掌に感じた手応えはメンマが満足できるものでは無かった。まるで岩か何かを殴ったかのような感触に、失策を悟る。

 

(………くそ!)

 

メンマは心の中で叫ぶ。その硬さ、恐らくは土遁による防御術だろうと。

 

(裏目に出たな)

 

奥義である衝撃を浸透する掌打を放っていれば、あるいは幾らかのダメージを与えられていたのかもしれない。だが、今のは速度と外部破壊という観点での威力を重視した掌打だった。土遁による防御で防がれてしまったので、ダメージはほぼゼロであろう。

 

メンマはその事実を悟り、内心で舌打ちをした。

 

「しっ!」

 

長門は手を退いたメンマへ追撃を仕掛けた。袖口から黒い刀を取りだし、俺の首目掛けて振り下ろす、が。

 

「ん!」

 

相当な速さだったが、メンマが防げない程でもなかった。メンマは懐から再びクナイを取り出し、その一撃を防ぐ。合わさる刃。鉄と鉄がぶつかる甲高い音。

 

メンマはそれを背景に、考えた。相手は刀で、自分はクナイだ。お互いに突き出し、力を篭めて押し合うが、どうするかと。

 

(くそ………突破口は………)

 

メンマは押し合いながら、一連の攻防を思い出しながら戦術を考えた。

 

(術の威力と種類は比べ物になんねえ………中距離では圧倒的に不利だ)

 

メンマの見たところ、相手の術の種類、印の速度、忍術の威力…精度………全てにおいて相手の方が比べ物にならなかった。

 

(近接戦闘に限っては………俺の方が有利か?)

 

体術の練度は普通の上忍に比べても高い位階にあるが、そっち方面であれば勝ち目はある。土遁による防御忍術は確かに厄介だが、浸透の一撃ならば問題は無いだろう。防御の上から打ち砕く事のできる切り札、螺旋丸もある。メンマそう判断して戦術を変えようとしたが、同時に相手も察したのだろう、動きを変えた。

 

「くっ……!」

 

長門は刀を押すのをやめ、その力を横に逸らした。押していたクナイを横にいなされ、メンマは体勢を崩した………かのように見せた。それはフェイクによる誘い。だが、長門は乗ってこなかった。取りだした黒い刀を再び袖口に収めながら、後方へと跳躍したのだ。

「………っ、逃がすか!」

 

距離を離されてはたまらないと、メンマは下がる長門に追いすがる。長門は後方に着地した後、再び距離を取るために後方へと跳躍するかのように思われたが、その場に留まった。直後の動作はメンマをして予想外だった。

 

印を組まず、ただこちらに向かって手をかざしただけ。

 

「っなん………!?」

 

それだけで、メンマは弾き飛ばされていた。予想外の事態に混乱し、体勢を整えることもできずに、後方の大樹へと叩きつけられる。

 

(………っつ~、今のは一体何だよ……)

 

困惑する。だが考えている暇は無かった。背にある大樹をスタート台代わりに、勢いよく蹴りつけながら俺は再び間合いを詰めようとする。対する長門は、後ろにさがりながら印を組みだした。

 

(忍術!)

 

迎撃の忍術だろう。

 

(ここは行くべきか、退くべきか)

 

一瞬の思考。逡巡しながらも、メンマは決断した。

 

(………肉を切らせて骨を『退け!』)

 

 

その直前、九那実の叫びが。コンマ数秒以下の速度で、メンマは答えた。

 

 

(了解!)

 

 

距離を詰めるため、前方に体重を傾けていたが、キューちゃんの声に従い、その体重を後方にシフトさせる後ろに跳躍、着地する。

 

――――その直後だった。

 

 

「風遁」

 

 

尋常じゃない速度で印を組んでいた長門。複雑かつ長大な印を組み終えたと同時、両手を少し広げた。森の中、柏手が鳴った。

 

 

「風神烈破」

 

 

手と手が合わさり、乾いた音が周囲に響いた。同時、大気が鳴動した。

 

合わされた掌から生じた烈風が、全てを蹂躙したのだ。周囲にある大気、岩、木々、地面硬度や大小問わず、一定の範囲内にある全てのものが切り刻まれた。それは圧倒的な真空の刃。カマイタチの術と同じ原理の術だった。

 

「なんつー無茶苦茶な………!」

 

メンマをして、冷や汗が出る。威力も範囲も桁違いだったからだ。真空の刃による全方位無差別攻撃は尋常ではなかった。極大かつ多数の烈風は勢いのまま広がり、数秒後には全てを飲み込む竜巻となっていく。

 

「くっ…………!」

 

 

メンマはそれに呑まれないよう、地面にしがみついた。冗談みたいな規模の術。突っ込まなくてよかったと心底思わされる程の。メンマの背中には冷や汗が殺到していた。

 

『………冗談じゃないね、まったく』

 

(同意する)

 

Aランク、いやSに近いのではないかという程の風遁術。あれだけの術………今までお目に掛かった事がないね、とメンマは首を横に振った。あのまま突っ込んでいたら骨も肉もなかった。挽肉にされていたと。

 

『………迂闊じゃぞ!』

 

(ごめん、キューちゃん)

 

キューちゃんの怒鳴り声に、メンマは謝罪した。

 

『そうだね………あれは、誘いだった』

 

(………そうだな)

 

誘い込み、仕留めるつもりだったのだろう。まんまと引っかかる所だった。

 

『ひとまず、落ち着いて』

 

(ああ)

 

深呼吸をする。やがて竜巻は拡散し、消え去った。メンマはしがみついていた岩を放し、立ち上がった後に長門の方を見た。

 

(あれだけの忍術を使ったってのに………!)

 

まるでチャクラが減っていないかのよう。無表情のまま、腕を組みこちらを見ている。どうやら、まだまだ余裕がありそうな長門を前に、メンマはため息を吐いた。

 

(迂闊には近づけないな………)

 

まだまだ使える、と判断した方がいいだろう。

 

(札の枚数が見えない。切り札がいくらあるのか………予想していたより遙かに厄介な相手だ。口寄せの術は俺と同じで使えないようだけど)

 

『どっちにしろ、底が見えないね』

 

(そうだな………)

 

『不用意な踏み込み、御法度じゃぞ』

 

(そうだね………)

 

風遁・風神烈破。メンマはあの術の威力と範囲を思い出し、身震いしていた。

 

『あれを完全に防ぐ手だては…………無い、ね』

 

マダオの呟きに同意する。火遁忍術が使えないメンマには、あの術を破る方法がない。

 

(そうだ、キューちゃんの狐火………無理か)

 

『………瞳術による幻術が厄介じゃの』

 

キューちゃんを外に出した直後、先程のように幻術を使われるかもしれない。

 

『う~ん、まず間違いなく使ってくるだろうね』

 

それを見越しての風遁術かもしれない。どこまで見透かされているのかわからない今、最悪を考えて行動しなければいけない。

 

(いよいよ手詰まりか………)

 

メンマは頭を抱え込んだ。長門はそんな俺の様子を見た後、嘲笑を浴びせかけてくる。

 

「なんだ、どうした?」

 

(………どうしたもこうしたも)

 

メンマは頭をぽりぽりとかきながら答えた。

 

………あ、そうだ。

 

「俺一般人なんで…………デタラメーズのやりとりにはついていけないんでお家に帰っていいっすか?」

 

塾があるんで、と笑ってみるが、長門は取り合ってくれなかった。

 

「駄目だ………ふん、時間稼ぎにも付き合わんぞ」

 

一瞬で狙いを看破された。ちくしょう、増援を期待しての時間稼ぎも無駄か。

 

(………はははのは)

 

『………げへへのへ』

 

『お主ら………』

 

いや、だってねキューちゃん。もう苦笑するしかないじゃないですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かくなる上は………」

 

「ふん、かくなる上は?」

 

メンマは両手を前方に翳し、その手を踊らせた。円を描くかのような軌道。深く呼気を発しながらチャクラを身に纏い、相手を睨み付ける。

 

(手詰まりな以上、取れる選択肢はたった一つ)

 

『………手は、あるのか?』

 

『まさか、あれを使うのかい!?』

 

(できれば使いたくなかったがな)

 

足を広げ、構えを取る。

 

「九尾流奥義………」

 

奥義、という言葉を聞いた長門は表情を真剣なものに替え、迎撃の構えを取った。

 

直後、メンマは両目をキュピーンと光らせた後、片腕を腰に添えた。

 

「………敵前!」

 

片方の拳を前に出し、全速力で駆け出した。

 

 

「大逆走!!」

 

 

――――後方に。

 

 

「………は?」

 

長門の間抜けな声を尻に、メンマはマジで逃げ出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ 小池メンマ ~

 

「何とか逃げ出せた………ってそりゃ追ってくるよな」

 

遠く、後方から、長門の怒声が聞こえてくる。どうやら正気を取り直したようだ。

 

(………足はあっちの方が速いか)

 

振り返り、呟く。なにやら足に少量の雷を纏って移動しているようだけど。

 

『うーん、どこかで見たような………でもちょっと違うようだし………』

 

(つーか速すぎるよ………)

 

僅か数秒で結構な距離まで近づかれてしまった。

 

「………待て!」

 

はっきりと声が聞こえる距離まで近づかれた。だが、無視だ。

 

「けっ、待てと言われて待つ馬鹿がいるか!」

 

尻を叩きながら答え、逃げ続ける。方針変更だ。ここは、時間稼ぎに徹する。自来也か誰か、この結界内に介入するまで逃げまくる。避けと逃げに徹すれば、何とかしのげるだろう。

 

『かつ、戦術を考えるんだね』

 

(その通り。まず俺を吹き飛ばした術だけど、あれ………どう見た?)

 

『限定した対象を弾き飛ばす術だね』

 

確かに。地面には何の影響も及ぼしていなかったし、弾き飛ばされたのは俺だけだった。

『つまり飛び道具は不可。クナイも手裏剣も無駄。あるいは中距離術全てを防ぐ………しかも、無印。厄介な術だよ』

 

精霊麺も弾くだろう。まあ口寄せが使えない以上、それも使えないんだけどね。

 

『ああ、くそ………万能の防御忍術だね』

 

(全てを遠ざけるんだもんな)

 

マダオの呟きに同意する。単純が故に破る手段は限られてくる。しかし、弾き飛ばす、遠ざける力とは………いったいどういう力なんだろうか。

 

(………斥力、みたいなもんか)

 

弾きとばされた様子を思い出しながら、俺は昔の事を思い出していた。昔見た漫画、タ○るーと君だ。確か、斥力んだったっけか。すると、あいつは重力でも操っているのだろうか。

 

(………まあ、影を操る忍者もいる事だし)

 

そう珍しい事ではないのかもしれない。

 

(引力も操る、とかありそうだな)

 

『そうすると厄介だね』

 

(ああ。でも、近接戦は望む所だぞ?)

 

『………まあ、こちらに分はあるかもね。だけど、そんなに甘い相手ではないよ』

 

(それは分かってるよ)

 

不意を打たない限り、あるいは向こうから来ない限り、近接戦に持ち込むのは無理だろう。迂闊に近づけばやられるだけだし。近接するにしても一瞬で懐に飛び込み、一撃加えた後は直ぐに距離を取らなければならないだろう。

 

(まあ、油断はしないが………!?)

 

『っ回り込まれたよ!』

 

一瞬だった。背後の気配、木の枝の上で止まったかと思うと消えた。目の前に現れたのだ。先程とは違い、何やら全身に雷を纏っているが、あれは何かの術だろうか。

 

『あれは…………!』

 

マダオが叫ぶ。だが、今は取り合っている暇はない。余裕の表情を浮かべる長門。その面に。

 

()ッ!」

 

一発くれてやる方を優先する。回り込んだ長門を前に、俺は止まらない。俺がたじろぐとでも思ったのだろうか、長門の目が驚愕の色を見せる。即座に構えるが、少し遅い。

 

だが、タイミング的には微妙だった。

 

相討ちになるか………こちらが若干遅いか。

 

(だが、ここは行く!)

 

先程とは違い、長門は印を組んでいない。つまり、あの風遁術は使えない筈だ。決断した俺は最後の一歩で更に速度を上げる。

 

『吶喊じゃ!』

 

「応よ!」

 

大きさよりも速度重視。突っ込みながら小規模の螺旋丸を叩き込む。

 

「くっ!」

 

だが、それは後一歩の所で届かない。例の斥力を操る術だろう。当たる前に、弾かれてしまった。

 

(も、いっちょ!)

 

だけどまだまだ。俺は弾き飛ばされながらも、後ろ手に持っていたクナイにチャクラを込めた後、無造作に投じる。それを操襲刃の術で操り、死角から長門を襲わせる。

 

だが相手は手練れ。そのクナイに気づかない筈がない。長門は飛来するクナイの軌道を見切り、たたき落とそうとクナイを振る――――だが。

 

「………ボン」

 

俺はつぶやきと同時に、そのクナイを爆発させる。

 

影分身+クナイ変化+分身大爆破の術。禁術クラスのチャクラを消費する忍術だが、効果はあったようだ。

 

先に見せた起爆札付きのクナイも、フェイクとなった。直撃とはいかないが、ダメージは与えられたようだ。

 

「………くっ」

 

爆発する一瞬前に悟ったのか、長門は後方に飛んだようだ。だが、爆圧の影響範囲からは逃れられなかった。そのまま吹き飛ばされ、後方にあった大樹でしたたかに背中を打ったのか、咳き込んでいる。

 

(まずは、一撃)

 

何とか、どうにかしての一撃だった。まともに正面から対峙すればこちらが負けるだろうが、逃げながらの乱戦に持ち込めば何とかいける。相手のペースに合わせる必要もないし、ここで踏ん張る理由もない。

 

(臨機応変に………追ってこなければ………そのまま、逃げてもいい)

 

何より、生き残る方を優先する。

 

『距離を取った方がいいよ』

 

(分かった)

 

次は煙玉を使って、距離を取ろう。そう思った俺は跳躍し、少し離れた所に着地し

その時だった。

 

(………………っ!?)

 

鋭い殺気が相手から発せられた。強烈な殺気に、身が竦む。

 

(………)

 

だが、ここで弱気を見せてはいかない。俺は何とか余裕の表情を取り繕い、肩を竦めてやる。

 

「…………」

 

長門が、額に青筋を浮かべる。そして印を組み始めた。なにがしかの術を使おうというのだろう。俺は待たずに、煙玉を炸裂させた。

 

「………また、逃げるか!」

 

「明日への撤退だ! いい加減お家に帰れ、神様!」

 

煙の中、俺は再び逃げだそうと、後ろを向く――――

 

「させるか!」

 

――――振りをして、長門がいる方向へと全力で跳躍する。

 

「万象天引!」

 

長門の声を聞き、そして身体に作用した力を感じた俺は、ほくそ笑む。

 

(やっぱり!)

 

「なっ!?」

 

跳躍力に引力を加え、全速で接近。相手にとっては予想外の速度。

 

迎撃も、間に合わない。

 

「しっ!」

 

黒い刀を取り出そうとしていた長門の手を払って、逆手で掌打。長門の胴部に浸透の掌打を放った。

 

「ぐあっ!?」

 

困惑気味の叫び声が聞こえる。今度は、例の土遁術で防げなかったようだ。斥力で弾き飛ばされもしなかった。掌の先、手応えを感じた俺は即座に後方へと跳躍し、距離を取る。深追いは禁物だ。

 

(これで、逃げられるか………)

 

手応えはあった。戦闘不能、とまではいかないが、痛撃は与えられた筈。

 

『逃げようか』

 

 

(ああ、そうだな……………………………っ!?)

 

 

全身に悪寒が走った。尋常じゃない殺気を感じた俺は、その発生源…………木の枝で俯き佇む長門の方を見る。

 

視線の先、長門は顔をゆっくりと上げる。その顔には、笑みが浮かんでいた。

 

「………本気になったようだな?」

 

俺の問い。それに対し、長門は笑みを浮かべながら「ああ」と答えた。

 

「正直、お前の事を舐めていた………それについて、謝罪しよう」

 

「………それは別にいいです。それより、お家に帰して下さい」

 

「………駄目だ」

 

笑顔で、断言された。

 

「眠る場所なら作ってやる…………だから、泊まっていけ」

 

――――此処に、地の底に、永遠に。死刑宣告を言葉に、長門は木の枝から飛び降りた

 

(印、また長いな………!)

 

先程のような大威力広範囲の忍術を使うつもりなのだろう。

 

(目で見ながらきっちりと避けきる)

 

迂闊に逃げれば、やられるかもしれないと考えた俺は、防御の体勢を取った。

 

(さっきは風遁だったけど………)

 

見るに、どうも五行の忍術の全てを使いこなせているようだ。

 

(雷遁ならば風陣壁で防げる)

 

だが、その可能性は薄い。雷遁はもう使ってこないだろう。五行の術全てを扱える相手が、わざわざ相性の悪い術を選んで使ってくるとは思えない。

 

果たして、その通りであった。長門は地面に着地した直後、そのまま地面に両の手を叩きつけ、静かな声で告げた。

 

「土遁・千山峰」

 

手をついた箇所の地面が僅かに撓む。

 

直後、土は山と成り、牙となった。

 

最初に見えたのは、先程と同じ土の槍、その数は僅かに三つ。だが、槍の大きさも長さも、その迫り来る速度も桁違い。まるで先程の土流槍の術がつまようじに見えるほどあまりにも巨大で凶悪な槍。

 

「くあっ!?」

 

かなりの速度で迫り来る巨大な槍を、俺は何とか斜め後ろ方向に飛び退く事で避ける。際どいタイミングだったが、避けられた。

 

『まだ終わってないよ!』

 

マダオの叫びと同時だ。土の巨槍が僅かに蠢く。

 

「ってまたかよ!?」

 

巨大な土の槍の側面から、土の槍再び生えてきたのだ。再び俺を貫かんと、槍が殺到する。

 

 

「くっ!」

 

そこからは繰り返し。槍から槍が生まれ、繰り返し俺を貫かんと襲ってくる。瞬身の術で大きく距離を取ろうとするが、隙がない。避ける事だけで精一杯だった。注意を術の方に逸らしてしまうと、たちまち貫かれてしまう。跳躍しながら逃げ続ける俺に向かって、幾重にも襲ってくる土の槍。9割9分は砕き、あるいは逸らす事で捌いていったが、全てを防ぎきるのは無理だった。

 

「あぐっ!」

 

細く尖った土の槍の先端が、左手と右足を貫いた。だが、まだ動ける。俺は山の頂上から、長門がいる方向とは逆の方向に飛び降りる。そして、再び逃げようとした、が。

 

(…………!?)

 

直後、背後から熱気を感じた。

 

振り返る。目の前にあるのは、幾百の土の槍が折り重なってできた山だったが、その向こうから熱風が吹いていた。

 

山の死角にいるせいで、長門の姿は見えなかったが………

 

「火遁・火龍槍」

 

声が聞こえた。同時、山の向こうが一際大きく、更に赤く染まった。土の槍で出来た山、その僅かな隙間から燃えさかる炎が見えた。

 

「なっ!?」

 

直後、その隙間を砕きながら二つ。そして山の上方と左右から迂回して、八つ。合計で十を数える炎の槍が俺目掛けて飛んできた。

 

(速っ!)

 

まず最初にやってきたのは、隙間から一直線にこちらにやってきた炎。数は二つ。

火遁にあるまじき速度で飛来したそれを、瞬身の術で横に移動し避ける。標的を見失った炎の槍は、俺の背後にあった大樹を焼き貫く。

 

(マジかよ!)

 

刺さった直後、一瞬でその大樹を貫通したのだ。大穴が開き、支えである幹の部分を失った大樹が倒れていく。

 

(まだ!)

 

だが、それを見ている暇は無い。四方八方から迫ってくる炎の槍をどうにかしないといけないからだ。

 

「………こなくそ!」

 

ほぼ同時にやってくる炎の槍を見切り、その間を何とかすりぬけ、そのまま飛び上がった。標的を見失った炎の槍は互いに激突しあい、合わさった後爆発して四散する。

 

「熱ちちち!」

 

予想が出来た事なので、距離は十分取っていたつもりだったが、距離が足りなかったようだ。服がある場所は無事だったし、顔は腕で庇っていたので問題はなかったが、剥き出しになっている両手部が熱い。軽度の火傷を負ってしまったようだ。髪の毛の先も、ちりちりと焼けている。とんでもない熱量だ。

 

(ってパンチパーマになってしまうがな!)

 

正真正銘の小池さんになってしまう。小池さんは尊敬に値する人物だが、パンチパーマは嫌だ。ラーメンは大好きだが、金髪のパンチパーマは嫌なのだ。キリハが見たら卒倒してしまうことうけあいだ。

 

『でもパンチパーマに悪い奴はいない』

 

(………それ、天然の間違いだろ………っておい)

 

視界の端に、赤が移る。そして、再び熱気を感じた。

 

(まさか………!)

 

炎の槍が、再び迫り来る。

 

(おかわりかよ………くそ!)

 

決断は一瞬だった。影分身の術を使わざるをえなかった。チャクラを大量に消費する影分身の術はあまり使いたくないのだが、そうも言っていられない。余波と大樹の傷痕を見て分かったが、あの火炎の槍の威力………ちょっと洒落になっていない。

 

直撃されれば即死は必死。即死せずとも、重度の火傷を負うことだろう。

 

(………それは不味い)

 

切り傷や擦り傷はともかく、火傷はまずい。痛みにより集中力が下がってしまう。そうなると負けは確定だ。

 

「「「螺旋丸!」」」

 

それを防ぐため、まず俺と2人の影分身が大玉螺旋丸を使い、それを胸元で合わせる。螺旋の大玉が合成し、超大玉の螺旋丸が出来上がる。

 

(螺旋砲弾の応用だ!)

 

失敗技の応用とも言う。合わさった大玉を尻に、本体の俺だけその大玉から距離を取った。制御する者が一人欠けたことで、抑えきれなくなった大玉が暴れだす。

 

「「「解放!」」」

 

留めるのを止め、解放する。砲弾のように、留めながら相手に放つのではなく、その場で拡散させたのだ。

 

抑圧された大量のチャクラは拡散しながら渦を生み出す。やがては、小規模の竜巻となる。その暴風は襲い来る炎の槍を全て飲み込んだ上で、消し飛ばした。

 

同時、竜巻の余波で影分身体も消し飛ばされた。

 

少し離れていた俺も吹き飛ばされるが、それが狙いでもある。

 

(このまま!)

 

弾き飛ばされた勢いを活かして、距離を離す。即ち、逃げるのだ。結界の外まで行けば、飛雷神の術を使える。相手の本気に付き合う義理はないし、守らなければいけない何かがある訳でもない。相手の方も、この一戦で随分と消耗した筈だ。このまま綱手の方に行くとも思えない。

 

(長門の位置は…………)

 

逃げる直前、俺は上空高く舞い上がりながらも、長門の位置を確かめようと振り返る。

 

すると。

 

(………飛んでる!?)

 

火遁を放った直後、飛び上がったのか。

 

(また………!)

 

印を組んでいるのが見える。こちらに向けて、最後の術を放つようだ

 

(だが、距離は離れている………いける!)

 

この距離ならば、術を使っても辿り着くまでにいくらかの時間がかかる。どんな術がこようとも、防御する時間は十分にある。直線でくるならば、螺旋丸で弾ける。術の衝撃による反動を活かして、弾き飛ばされれば更に距離を稼げる。

 

このまま何事もなく逃げられる、そう思っていた。

 

 

だが、その考えは甘かった。

 

 

印を組み終えた後、長門は両手を重ねて抱え込み、脇に添える。

 

(両手に………大気が吸い込まれてく?)

 

周囲の煙が、長門に集まっていくのが見えた。

 

(空気がクソみたいに凝縮されて……………っ来る!)

 

長門は両手をこちらに突き出し、何事か呟いた。距離が遠いので音は届かなかったが、唇は読めた。

 

 

(風遁・風神砲弾?)

 

 

長門から、不可視の何かが放たれと同時に、大気が唸った。空気を切り裂く音が盛大に聞こえた。

 

(速すぎ…………)

 

威力を知らせる轟音を聞いて、背筋に悪寒が走った。繰り出しておいた螺旋丸を両手に展開、そのまま突き出す。だが、核の部分が見えないため、何処に突き出せばいいのか分からない。

 

(優先して守るのは………!)

 

二つ。頭と、急所である。両部を守るため、俺は螺旋丸を前に構える。

 

………手応えは、あった。二つの螺旋丸で風の砲弾、その一部は削れたようだ。

 

 

だが、全ては防げなかった。肝心要の核の部分は消せなかったのだ。

 

 

「ガアッ!?」

 

腹に、衝撃が走る。大気の塊で出来た砲弾は、頭と急所を守るために突き出された螺旋丸の防御をすり抜け、腹部へと直撃した。

 

肋骨が折れる音が聞こえる。直後、固まっていた砲弾が破裂。

 

 

「……………………!?」

 

 

あまりの激痛に声も出せなかった。腹部を中心として、炸裂した風の暴刃に全身が切り刻まれたのだ。防刃服の上を、風の刃が蹂躙する。風神烈破ほどの切断力はないようだが、それでもかなりの威力だった。

 

 

俺は炸裂する風の刃と激風に押され、矢のような速度で更に空中へと吹き飛ばされた。

 

 

『メンマ!?』

 

吹き飛ばされる中、キューちゃんの悲痛な叫びが聞こえた。

 

『気絶しちゃ駄目だ!』

 

(ああ、分かって、る)

 

吹き飛ばされた勢いで、頭が揺さぶられた。

 

しかも、身体が前後左右に回転している。脳が揺れる。

 

体勢を整えなければ………

 

(えっと、着地、しなけりゃ、不味い、もんな)

 

高度が高度だし、勢いもある。このまま受け身もとらずに地面に叩きつけられれば、ひとたまりもないだろう。

 

だけど、身体が上手く動かない。

 

 

『メ……………』

 

 

声が遠い。全身を襲う疲労感と激痛、そして三半規管に掛かる負担。

 

 

『まず……………』

 

 

遠雷のような声が、頭のどこかで鳴り響く。

 

 

 

「く…………ゴホッ…………ゴボッ……」

 

 

体勢を整えるのには成功したが、咳が止まらない。

 

 

(血が…………)

 

 

胸が痛い。咳に血が混じっている。どうやら折れた肋骨が肺に刺さったようだ。

 

 

(まず、い)

 

 

息がはき出せない。気管が血で詰まっているのか。

 

 

(呼吸が、できな…………)

 

 

意識が遠ざかる。

 

 

『………駄目!』

 

 

『気を確か…………』

 

 

キューちゃんとマダオの悲痛な叫びを聞きながら。

 

 

(…………ごめ…………ん………)

 

 

 

 

俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。