小池メンマのラーメン日誌   作:◯岳◯

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6話 : 暗中飛躍

「叩く理由は見つかったぜ? ――――麺棒(バディ)

 

 

~小池メンマのラーメン風雲伝 第十八話

 

 「スープコンバット・ZERO “意志ある大樹に夢を咲かせて”」より抜粋

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――答えは得た。大丈夫だよマダオ。オレも、これから頑張っていくから」

 

心からの笑顔を浮かべる。するとどうだろう。優しい日の光が俺を包みこむ。

その誘惑に抗えるはずもない、俺はあの空へ――――

 

『何処逝くの!?』

 

はっ!? いかんいかん。予想外すぎる展開に、昇天しそうになってしまった。

 

「落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない」

 

誰もいない森の中で1人、手をひらひらさせる。

あの後ですが、盛大に見つかった。

 

そりゃそうだ。で、取りあえず一目散に逃げた。勿論追いつかれてなんかいない。

俺に追いつきたいのならまず上忍の壁を破ってこいってんだ。

 

ともあれ、ちょっと考える時間が欲しかったので離れた場所にまで避難している。

 

『ていうか………何にそんなに驚いてるの?』

 

「だってよ、女の子なんだぜ?」

 

白が。シーブックさんっぽく言ってみます。

つーか"あの"白が女とか。白×TS=∞ですよマジで。

 

そう、∞です。でんぷしーです。

やっくでかるちゃです。わっちの歌を聞け!

 

………いかん、混乱が激しくて頭痛が痛い。

 

『いつものことだと思うけどねー』

 

「なんせ熱い血潮を持ってますから!」

 

これはもう必中熱血魂ひらめきに愛を使うしかない。

 

『効果かぶってるよ。ていうか本格的に駄目っぽい………取りあえず、男か女かの最終確認はしようね』

 

「それは当たり前でしょう。むしろどんとこい超常現象」

 

wktkが止まらない。ロマンチックも止まらない。さあどうにも止まらない。

全ては売り子改め、看板娘獲得の為に!

 

「ジーク、白!」

 

キング・オブ・良妻賢母!

あ、女性だからクイーンか。いけない、いけない。

 

『メタ過ぎるから。あと桃地君の方どうすんの?』

 

「眉毛を書いてあげます」

 

それで協力してくれるに違いない。

 

『………ワシ、もう寝て良いか?』

 

『良いと思うよ。メンマ君めっちゃ疲れてるみたいだし』

 

フハハハア! ―――――と笑っていたら、隣の部屋の人が「五月蠅え!」と壁を叩きいたもよう。不意打ち気味の一撃に、瞬時に正気に戻った。

 

頼むから包丁持って襲ってこないでね。つーか壁ドンって普通にビクっとなる。

 

冷めたというか覚めたので、その後はすぐに寝ました。

どうも疲れすぎて、テンションがおかしい模様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――翌朝。

 

「ということで、我が家の頭脳に期待します」

 

『無理でしょ』

 

「………」

 

ほじりだした鼻くそを見るかのような目で見つめてやる。

 

『いやそんな顔されても無理なものは無理。男女云々はおいといて、あの人達って霧隠れの抜け忍でしょ?』

 

「って俺、前に言ったよね? 紹介したよね?」

 

何でその時言わなかったの?

 

『キリちゃんが心配で。てへぺろ』

 

「氏ね」

 

まあ気持ちは分かるけどさ。

 

『なんにせよ勧誘とという目的を達成するなら………最低でも、カカシ君達に彼女の面が割れる前に何とかしなきゃ。顔見られると色々と不味いよね』

 

「いやでも、それまでに何とかっていうのも無理っぽいなあ。それに、それはそれで駄目っぽいし」

 

何とか直接対決はしてもらわんと。この任務でうちはサスケの写輪眼が覚醒しないと、中忍試験がやう゛ぁいですがな。大蛇○が来たときに少年の貞操が散らされそうですがな。いや、サスケ少年はいいんですけど、少年と一緒の班のキリハ嬢がやばそうで。

 

え、サクラ?

知らんがな。

 

「と、いうことで最後に介入します。そっとだぜ、そっと」

 

『OK、それまでに何か考えとくよ』

 

 

 

 

 

(しっかし、波の国か………何もないなあ、ここ)

 

魚介系スープの参考にと色々歩き回ってみたけど、見事に収穫がない。こんなんだったっけ? あいつの話を聞くに、もっとマシだったような………やっぱりガトーの仕業か。商人達からはブラックリストに挙げられてたみたいだけど、何をやっていたのやら。

 

『調べてみる?』

 

「ああ。どうせ暇だし」

 

 

 

と、軽い気持ちで調査をはじめて数日。えらいもん見せられました。ぶっちゃけると人身売買。親が、養えなくなった幼子を仕方なくガトーに売り渡していた様子。

調べると見知った抜け忍組織の人も居て、事情を聞くとまた頭が痛くなった。

 

(口減らしを利用したって訳か。一応国内法では禁止されているけど、訴える奴なんていない)

 

力で黙らされている。国外へ出ることも容易ではない。売り先は過酷な労働を強いられる場所だろう。五大国ではそのような場所は少ないが、この世の果てみたいな場所は探せばいくらでもある。

 

(しかしガトーさんよ。自分で流通を止めておきながら、よくやるもんだぜ。久しぶりに積極的に動きたくなっちまったじゃないか)

 

問題を前にした人達を通りすがりに見て――――助けられる力はある。それだけの力量は保持している。

 

だが、大抵は見ないフリをしていた。目立って暁や木の葉隠れに見つかるのはまずいというのもあるが、何より困っている人を全部助けていたらキリがないからだ。一人で世界を回って過ちを片っ端から正すなんて、やるつもりはない。

 

それに助力には責任が伴う。力による解決は周囲の関係に歪なものを残す。ならば、放っておくしかない。

 

それに、どうしようもない状況に陥っている人間は少ない。問題は世界中のどこにでもあるが、その全部が手に負えない程酷いってこともない。大抵が、隣人と力を合わせればどうにかなるレベルの困難だ。だから、そんな場合はスルーしてきた。

 

『この場合は………あの希望の橋が完成すればねえ。一変に改善すると思うけど』

 

「ガトーが死ぬ必要があるな。それに側近も」

 

『動くのか?』

 

「ああ。それに………子供だろ? ちょっとこれは見過ごせない」

 

俺の一線に触れやがった。ならば動くしかあるまい。

まずは影分身を偵察に出して、と。

 

準備している内にカカシ班の様子を見とくか。

 

 

 

 

 

 

 

「木登り修行ですね。分かります」

 

『………何で、こう、基本中の基本でもあるこの修行をやらしてるかな………それも実戦を経験した後に』

 

馬鹿弟子がぁ、と叫びそうなマダオだけど遅刻魔な先生という所でお察し下さい。

 

『察したくない………でもキリちゃん、チャクラコントロール上手いね』

 

「昨日の速さもそれのお陰だろうね。下忍であの速さは………ちょっと、な。よその里でも見たことないぞ。あの才能はマダオ譲りなんじゃないのか」

 

ちなみに、俺に忍術の才能は無い。五感の強化は結構なレベルに達したが、忍術に関しては風遁の上級忍術と雷遁の初歩忍術だけ。あれだけ修行したというのに、この才能の偏り具合はなんだってんだ。ナルトって才能もとことん母親似らしいのな。

 

金返せマダオ。

 

『でも螺旋丸できるから良いじゃん。素のチャクラ量もうずまき一族らしく、馬鹿みたい多いし』

 

「まあ、格下相手ならゴリ押しで何とかなるけどね」

 

あとチャクラによる肉体強化。この二つがあれば、まあ負けない。特に体術の方は徹底的に鍛えたし。何事も体が資本ですよ、資本。体術は練習と経験を積み重ねれば才能無くても上達するからね。逃げ足とスタミナにも直結するから、逃亡生活をしている俺にとっては必須技能。

 

ちなみに体術はネタに走った。源流は中国の北派、円華拳。後の先を狙う捌き主体の拳法を意識して。割と肉体やら砂やらで堅牢な防御をしてくる忍者対策に。内部を破壊するのを目的とした拳理を徹底的に追求した。

 

割と理に適っていると思う。鍛えるのは復讐のためにでは無いけど。

 

絶招はもちろん、あの技だ。マダオと一緒にちょっとだけアレンジしました。

流石は腐っても、そこら辺は四代目。実戦に有効かどうか、実際の戦闘で試行錯誤を重ねて検討を重ね、二人で考えながら組み立てた拳法。

 

結構な形に仕上がっています。柔拳ほどの威力は無いけどね。でも応用力なら負けてないぜ。

 

「しかしこの体術、流派名どうしよう。ネタ元のあの人忍者関係ないしなー」

 

九鬼流じゃまんますぎるし。

 

『なら九尾流でOK?』

 

「厨二乙」

 

それにしてもキリハ嬢ってばコントロールが凄いが、チャクラ量も結構多いでやんの。

俺の立場なくないか、これ。

 

『いや、君も大したものだと思うけどね』

 

「まあ、今更普通の上忍クラスには負けんけど」

 

でも大蛇○クラスには通じない罠。戦争を幾度も経験した老獪な忍者には、勝てないだろう。たった7年やそこらで化物を越えられるとも思っていない。

 

『でも、筋はいいよ。血かね』

 

「遺伝子の結晶って意味ならキリハ嬢だけどな」

 

こっちが考えている内に木登りマスターしてやんの。

サスケは横で悔しい表情をしている。でも、変に曲がったチャクラは出していない。

 

あの分では橋の上の決戦、心配いらんかもしれん。

 

 

 

 

 

 

 

なら、こちらも暇なので口寄せの術でも練習しよう。忍具口寄せは出来るから、後は生物の口寄せだけ。これが出来て本当の一人前という里もあるようだし。

 

『そうだね』

 

と言うことでこちらも修行。

 

「口寄せの術」

 

ボン、と出てくるは一匹の狐。いや、最初はガマにしようと思ったんだけどね?

でも巻物無いし、でかいの呼び寄せると木の葉にバレるし。

 

『しかし、何で狐が出てくるのかねえ』

 

『ワシのチャクラの影響じゃろう』

 

「むしろそれ以外考えられん」

 

気合い入れると、結構な大きさの狐が出てきます。

 

『全て、ワシの眷属じゃ。一定時間経つと自動で里の方に帰るようじゃが………』

 

里ってあるんだ。つーか口寄せってそういうものなの?

まあ、あの口寄せの巻物を最初に作った人も同じような事をしていたのかもしれんし。

 

深くは考えない事にしました。起源よりも使えるかどうかですよマジで。

 

(でも、これなら………もしかして出来るかもなあ)

 

ちょっと、かねてより考えていた事がある。里に帰ったら試してみるか。

 

『ん? 何か企んでおるようじゃが』

 

「いや、何でも」

 

(今は、最終確認と)

 

そのために練習の続きをするか。大きく息を吸い込んで、と。

 

 

「――――イア! イア! ハスター・ウグ・ウグ・イア・イア・ハスター・クフアヤク・ブルグトム『やめい!』グフゥ!?」

 

怒声にびっくりして喉つまった。なんで止める、一応風属性なのに。

 

『止めいでか』

 

 

 

 

 

 

 

次の日、例のシーンに出くわしました。とはいっても、ナルトのポジションには我らが妹。キリハ嬢は笑顔で対応。

 

いや、ちょっと警戒しようよ。前から思ってたけど、あいつもしかして天然なのか?

 

心配だ。ちょっと聴覚を強化して聞いてみよう。

 

「ボクは大切な人を守りたい………」

 

「私も、だよ」

 

何とも心温まる会話。笑顔を浮かべながら、美少女二人が見つめ合っています。

絵になります。ストーカーちっくな自分が少し嫌になりました。

 

というか白ってば最後までキリハが言った"お姉さん"発言を否定しなかったけど、実のところどうなんでしょう。見た目は女にしか思えん。ひょっとして期待していいんでしょうか。

 

『………今の会話で、思うところはそれだけ?』

 

ん、守る人がどうとか?

命を捨ててまで守りたいとか、そんな価値があるものは持ってねーよ。縁も物も。

 

あるのは夢だけ。だから、俺は俺の夢を守る。今、夢以外に守るものがあるとでも? え、木の葉隠れ? 馬鹿いっちゃいけねえなあ。

 

『ん~………割り切りって大事だけどね』

 

「大事だよね。大荷物持ってたら鈍るもんね色々な意味で!」

 

だからといって持たないのはどうなのかと。それに関しての正誤云々は知らんけど、俺はそう生きることに決めましたので。というか大人の武力ある集団が怖い。特に木の葉隠れの大人が怖いね。

 

俺の心の端にも、ナルトが受けた仕打ちと、憎しみが僅かに残っているから。

まあ、我愛羅とかに比べたら遥かにマシだから耐えられるけど。

 

『………』

 

マダオは珍しく、沈黙だけを返してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。早朝に動き出す桃地一行を見て、俺達は動き出した。

 

『襲撃は橋に出てから………予定では午後らしいね』

 

「なら仕込みますか。ガトーはガトーで仕込んでるようだし、そいつも利用して」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、一仕事おえて一息。そこで大変な事を思い出した。イナリと未亡人の方、忘れてた。護衛の4人ってば全員が橋に向かっちゃってるじゃん。

 

『む、稲荷とな?』

 

眼を輝かせるなキューちゃん。違うから。寿司じゃないから。座って座って。

 

「と、仕方ない………行きますか」

 

子供の見殺しはいくない。瞬身の術で急いでイナリ宅へと戻った。

間もなく、居合いの二人が見える。

 

それでもイナリは必死な形相で、「母ちゃんを連れて行くな」と叫ぶ。

 

対峙する居合使いも、所詮はチンピラ。短気にも程がある結論を元に、腰に差している刀に手を走らせた。

 

「イナリ!」

 

叫ぶ未亡人。名前は忘れたが、手を伸ばして息子を助けようとしている。

 

だが、その手は届かない。

 

半裸と頭巾の居合使いのコンビから抜かれた白刃は、イナリの身体をそのまま切り裂いた――――

 

 

「なっ、何?!」

 

 

――――かに見えた。だが、そこにあるのは刻まれたネギの切れ端だけ。

 

ていうか隙だらけぇ、なので。

 

葱よ(アッリウム・ポッルム)!」

 

「あぐぅ?!」

 

そして、馬鹿二人に突き刺さる、白ネギ二つ。つーか突き刺したのは俺なんだけどね。

 

「ふう、危なかった………」

 

あと一秒身代わりの術が遅れていたら、イナリの輪切りが出来上がっていたことだろう。間一髪だった。思わず、額の汗をぬぐう。

 

そこで視線を感じた。

 

「「………」」

 

口を開けてあんぐり。未亡人は地面に落ちるネギと息子とを交互に見ている。

 

『ん、二人とも呆然としてるね』

 

「な、何故に!?」

 

『鏡見ろ』

 

鏡? つまり客観的に見ろってこと?

 

えーと、いきなり現れてネギで身代わりの術、敵の尻にネギをさして、そして汗をぬぐって笑ってる人。

 

 

どうみても変態です。本当にありがとうございました。

 

 

(く、変態は語らずただ去るのみ)

 

何より恥ずかしいので。

木に飛び上がり、そのまま無言で立ち去ろうとするが、未亡人の方に呼び止められた。

 

「あの………助けて頂いたんですよね?」

 

息子を抱きしめながら疑問形の未亡人。微妙なラインだが助けたのは事実だから頷きを返すと、笑顔を返してくれた。

 

「本当にありがとうございました。その、お名前を聞いてもよろしいでしょうか」

 

少し怯えているが、お礼をいってくれた。いい人だ。

 

でもこっちは本当の名前を言えないのよね。偽名を名乗るしかないか。心苦しいが、これも仕方ない。

 

 

 

 

 

「春原ネギです」

 

 

 

 

 

俺は背中から新しいネギを取り出し、肩に担ぎながらその場を去った。

 

 


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