メンマ邸爆発より、遡ること1日前。
「この一杯のために生きてるわ~」
火の国の宝麺をすすりながら、恍惚の声を上げる。これでもう3杯目だ。
昨日の夜は鶏ガラベースのスープにこってこての叉焼を入れたしょうゆラーメン。今日の朝はあっさり木の葉風ラーメンと白印の特製稲荷ずし。そして今は火の国の宝麺を食べている。久しぶりのラーメン三昧だ。何かこう、生き返るって感じ。
「煮玉子と肉の旨味も、スープのコクも、ネギの香りも………そして麺も」
何もかもが懐かしい………と浸っている横で、マダオがため息を吐いていた。
「生き返るって………言い得て妙だね。チャクラ回復速度がほんとに上がってるし」
キューちゃんが呆れながらも頷く。
「………ラーメンは有る意味こやつの魂そのものなんじゃろう」
最初からそう言ってるじゃん。
「で、戻った?チャクラ」
「いいや、まだ」
使い切る寸前までいったのは初めてだったりする。木の葉崩しの時よりもヤバイ領域まで使ってしまったし。
「やっぱり、今の状態だと飛雷神の術は危なくて使えないね」
「………今回は術の反動を抑えるのを、チャクラ量で補ったからなあ。相変わらずコントロールが激ムズだし」
御陰で、戦闘前にチャクラ量がごっそりと減ってしまう事態になった。まあ、視界がぐちゃぐちゃになるよりはマシだったけど。
「純粋なチャクラコントロールの技術で言えばねえ。もう十分使用可能なレベルなんだけど」
「それでも使いこなせていないのは、別の要因………コツというか、感覚が掴めていないってことか?」
「そうだと思う。要練習だね」
「イメージが明確にできれば、結構形になるもんなんだけどなあ」
ワープのイメージが固まっていないのが不味いんだろう。そも、ワープってイメージするものなのか?
「イメージが無理なら、方法は一つしかないね………ある程度の回数使って、身体で覚えるしかないと思うよ」
「結局それしかないのな………ってもうこんな時間か」
時計を見ながら、立ち上がる。
多由也は白に任せてあるし。容態を聞いたが、心配ないとの事だ。
「そろそろ、エロ仙人とこ行くか」
呼ばれて着いた先。木の葉隠れの里、その演習場に、鈍い音が響き渡っていた。ボグシ、ドゴォ、メメタァ!、メキョ、ドコ、づがん!
拳がめり込む毎に、骨と肉がぶつかりあい、軋みを上げる。
「「まっくのうち!!まっくのうち!!」」
マダオとキューちゃんが、背後から応援してくれている。
説明しよう。事の発端は、カカシの一言だった。自来也に連れられ、やってきたカカシ。月読の後遺症は消えたそうだ。まだ全開ではない、と言っていたが、まあそれはいい。
問題は、だ。その初めて対面するカカシが、俺に向かって、こういったのだ。あの時、お前を守れなかったのは俺の責任だ………とか、どうか殴ってくれ………とか。目を瞑るカカシ。俺は無言でカカシを指をさしながら、自来也に聞く。
(これ、どうすんの?)
もう過ぎた事なので………というか、思い出す事はあれど、あの時にリアルタイムで俺が受けたわけじゃないから。クナイと起爆札はかなーり痛かったのだが、別に死ぬ程じゃなかった。いやほんとは致命傷だったか知らんけど。本当に殴る権利のある人は、既に他界しているので………うん、正直俺にこんなこと言われても困るのだが。
(まあ、仕方ないじゃろ)
だが、自来也は殴るのを促す。
(一応、ケジメは付けておきたいのか)
それも今更なんだけどなあ、と思いつつも殴ることにした。これがいのしかちょうの親父さん達だったら話は別だったろうが、なにしろ相手はカカシだ。日頃のアレっぷりを矯正する意味も兼ねて。またマダオの怒りを拳に篭めて、ね。
(………前にしこたま殴ったけど、まあそれはそれだ!)
頷き、まず右を振りかぶって
「歯あ食いしばれぇ!」
と顎を引くカカシに向けて、一歩踏み出す。だが振りかぶった右は囮。本命は違う。インステップしながらの踏み込み、それににより発生する地面からの反発力を腰に溜め、回転。
地面から伝わる反力+拳の推力を左の拳の先に乗せる。手加減抜きの一撃が、カカシの肝臓を打ちすえた。
「グホォ!?」
予想外の角度からの打撃に驚いたカカシ。膝から崩れ落ちようとするが、何とか踏みとどまったようだ。
………それでいい。
「もういっちょ!」
「ヘグン!?」
しゃがみ込み、立ち上がるその勢いのままにアッパー。足のバネを活かしたカモシカの如き一撃が、カカシの脳を縦に揺らす。
「そして、ここからが本番だ!」
「おお、あれは………!」
「知っているのか、マダオ!」
マダオとキューちゃんの解説を背後に、俺は身体を左右に揺らし始める。最初は右、左。やがて軌道が弧を描き出す。
「
やがてその軌道が、∞に変わる――――!
「ろーりんぐとぅえんてぃーず? いにしえのぶろー?」
キューちゃんがマダオに聞き返す。意味が分からないのだろう。つか一度話しただけなのによく覚えてるなマダオ。何その無駄な記憶力。てか首を傾げ、ひらがなでしゃべるキューちゃんがかわええ。
………テンションゲージが最高に。ボルテージがマックスに。
み な ぎ っ て き た 。
更に速度が上がる。高速の
「さあ、皆さんご一緒に!」
マダオがコールを始める。
「まっくのうち!!まっくのうち!!」
キューちゃんも真似し始める。
「「まっくのうち!!まっくのうち!!」」
更に、キリハが加わった。日頃の不満と鬱憤が溜まっていたのだろうか、ヤケにノリノリだ。日頃の行いが悪いんだろうね。俺の中では数時間待たされる=宣戦布告だし。
そりゃ、どんなに忍耐強い人でも、いい加減キレるよなあ。
「「「まっくのうち!!まっくのうち!!」」」
3人のコールにより、テンションは最骨頂となった。そして拳は続く。
「遅刻すんな! かつ開き直るな! 公衆の面前でエロ本読むな!」
めり込む。めり込む、めり込む。
「サスケをちゃんと見てろよ! 担当上忍だろ! あと修行の順番滅茶苦茶! ロリコン乙!」
あと遅刻を真似るのはオビトに対しての羞恥プレイか!と付け加える。流石に口に出すと不味いことになるので、心の中のみでの叫びだが。
「フィニッシュだ!」
拳を止め、一歩下がり、
「ダスヴィダーニャ」
また再度踏み込む。さようならの言葉と共に、拳が閃光となる。
「適当に――――」
まずは右のアッパー。
「生きるな!」
同時、左の打ち下ろしが、カカシの顎を打ち据えた。上下の高速コンビネーション。
下の牙を止めても、上の牙が突き刺さる………!(注:両方突き刺さってます)
「これは、親父さんとマダオからの一撃だと思え………!」
「………ありがとうございましたっ!」
カカシは前のめりに倒れ込んだ。
痙攣するカカシを放置し、俺はエロ仙人と多由也の処遇について話す。
「………それで? 多由也と言ったかの。怪我をしたと聞いたが、傷はもう良いのか?」
「ああ。掌仙術と秘薬を併用して治癒したからな。明日には歩ける程度には回復するらしい………ああ、言っておくけど尋問なんかさせないからな?」
完全にタメ口であるが、もういいのである。取り繕うのも面倒くさいのである。
「………どういう事じゃ?」
「今現在、多由也は仲間、つまり身内だ………最初に約束したことだよな? 身内及び仲間に手え出すなって」
覚えてる? と聞くと、自来也が渋い表情を浮かべる。
「まあ、のう」
「これで貸し借り無しって事にしていいから。大蛇○戦の手助けを含めて、これで差し引きゼロね」
忠告はしておく。強めに言わんとなあ。これ以上近寄りたくないんだよなあ。距離を保ちたい。そうしないと、なあなあの関係になってどこまでも利用されそうだし………本人には自覚なさそうだけど)
良かれと思ってやっているのか分からないが………正直迷惑だ。うっとうしい。元より、表向きでも関わり合いを持つ気は無かったのだから。
自来也もなあ。基本、善人だからなあ。良心が邪魔をするのか、すっぱりと割り切って物事を考えてくれない分、付き合いが面倒くさいのである。非情に徹しきれないのは優しさであり美点なのでもあるが、俺に取っては有り難くない事実。でもこういう相手こそが敵に回すと怖いんだけどね。イタチさんが直接戦闘を躊躇うぐらいには厄介だ。
「………分かった。それで、あの娘の処遇はどうするつもりじゃ?」
「どうもしないよ。自分で決めて貰う。面倒見るし、可能な限り手助けはするけどね………あ、そうだ」
「………まだ他に何かあるのか?」
「明日だけどさ。うちはサスケとサシで会いたいんだけど」
「何とか上手くやってて、場を用意して欲しい」という。
自来也は渋々といった様子で、了承した。別れた後、家に戻る。
「………で」
一言置き、マダオが訪ねてくる。
「サスケ君を呼ぶってことは………これから、動き出すんだね?」
「ああ」
「………このまま木の葉に潜伏するつもりじゃ無かったの?」
「それが一番安全だと思ってたんだけどなあ」
頬をかきながら、答える。
「別の組織については考えて無かったよ。下手に留まると………綱手とか自来也とかキリハとかの傍にいると、ダンゾウ率いる『根』が裏から絡んでくるやもしれんし」
「確かに、ねえ。そうなると………木の葉が二つに割れるか」
「そうなるね。………手はあるし」
憂鬱そうに呟く。
「正直、木の葉隠れの里人が持っている九尾に対しての悪感情………あれほどまで酷いとは思わなかった。ありゃあ、情報の使い方次第で、どうとでも利用できるわ」
九尾のあることないこと色々な噂を流布すればイチコロだろう。その場合、暗部を含めた全ての忍者が俺の敵に回るだろう。
(木の葉に居なかったのが不味かったな。怨敵について、想像するしかなかったんだろうなあ………頭の中のイメージでしか存在しなくて、それでどんどんと悪い方に印象が傾いて)
今や九尾とうずまきナルトは木の葉の者から蛇蝎の如く嫌われていると見ていい。事情を知らない者が大半なのだから、それは仕方ない事なのだけど。
(あるいは、『根』や暗部かの仕業かもしれないが)
考えるが、すぐ止めた。探している理由なんて一々考えたくもない。
(迂闊に動きすぎたしなあ)
でもまあ色々と狙いは達成できたので、動いた事については後悔していないが。そも完璧にばれずに器用に全てを丸く収めるなんて、不可能だし。
「そうなった場合、ねえ。カカシとか先生とか」
「キリハとか、俺を庇うよなあ。今更見捨てるってのは無さそうだし」
「当たり前でしょ」
「そうだよなあ………ああ、くそ。失態だ」
近づきすぎた。失敗した、と愚痴る。自来也もああだし、緊張感が足りてない気がする。どうも危機感にギャップがある気がするのだ。いやまあ俺もそう人の事は言えないが。
で、結論。木の葉にいると別の意味でやばい。
「内乱の出汁にされるのはなあ………上手くない展開だし」
擁護派VS抹殺派とか………まあ考えられる中では最悪のケースだけど。有り得ない事もないってのがどうにもいかんね。ダンゾウが綱手落としに取りうる手段の中では、一番効率的な方法だという事は分かっている。
現状、5代目火影、綱手への信頼感は揺るがないものがある。何しろ、初代火影の孫だ。血統で言えば文句なし。それに、三忍としての功績もある。火影の座を狙っているダンゾウが、現在の綱手の盤石の地位あるいは信頼感を崩そうとするために、逆に一部を味方にするために、俺が利用されるかもしれない。材料が揃ったら、即座に実行に移すだろう。手段は選ばないだろうし。あの根暗さんなら。
「ダンゾウならやるね。昔から、そういう人だったよ」
でもその可能性についてよく気づけたね、と言うマダオに、お前に教わったんだよ、と返す。
「『考え得る限り、最悪のケースを予想して動け。それならば、最悪を上回る事態が起こっても、いくらかは耐えることはできるかもしれない』」
「『後は運だ。最悪は予想できないから最悪なのだ。だが、備えは常にしておけ。それはきっと無駄にはならない』………うん、よく覚えてるね」
「基本、俺はチキンだからな」
常に最悪を考えて備えてないと不安になるんだよ、と笑う。
「………どうだか」
俺の言うことが面白かったのか、マダオも笑った。
「ははっ………ん?」
起きる気配を感じた。
「じゃ、ちょっと行ってくるわ」
多由也が寝ている部屋へと向かった。
「入るよー」
部屋に入ると、目に映ったのは放心状態の多由也だった。まだ布団に入っている多由也は、身動きせずに天井を見上げながら硬直していた。
(現状が把握できていないのか)
「大丈夫?」
「………はい。ええっと」
「今はうずまきナルトでいい。それで、だけど」
「はい」
「色々と、聞きたいことがあるんだけど、話せる?」
順序だてて、色々と話してもらった。呪印の事、施された洗脳のこと、忘れていた夢の事。驚いたのは、小池メンマ=うずまきナルト、というのを知っていた事だ。
「あの時のガアラとの会話、もしかして聞いてた?」
「はい。遠間だったんで、全部は聞こえなかったですけど」
あぶねえ、ともしかしたらの事を想像してみて、震えた。周囲への警戒が散漫だったにしろ、もしばれていたら致命的な事態に陥ってたかもしれない。
「それで、ウチはこれからどうなる………んですか?」
「ああ、敬語はいいよ。一応タメなんで。タメ口でおk」
「ええ!?」
それを聞いた多由也が驚く。
「えっと………参考までに聞くけど、何歳ぐらいだと思ってたの?」
「………」
沈黙が雄弁に語ってくれた。そうか、口に出せない程、あれに見えたのか。
「………ま、それはおいといて、取りあえず木の葉に渡したりはしないから、それだけは安心していいよ」
「本当、か?」
「そうそう。タメ口でおk。そも、渡すつもりなら端から助けたりなんかしないって」
多由也が、安堵のため息を吐く。
「傷は明日ぐらいには完治すると思うから」
放浪中に見つけた秘薬。俺は傷薬要らずだったので、使わずに取っておいたのだが、こんな所で役に立つとは。
「それでも体力の方はまだまだ戻らないと思う。今日いっぱいは休んでた方がいいよ」
「そう、か」
黙り込む多由也。やがて俺が立ち上がろうとすると、服の裾を掴まれた。
「何?」
「………あ」
「あ?」
「………あ、あり、ありがとう」
言い慣れてないのか、かなり顔が赤くなっていた。
「どういたしまして」
微笑ましすぎるので、笑みを浮かべながら一礼を返す。
「…………あ」
すると、多由也の腹の虫がなった。真っ赤になった後、顔を向こうに向けてこっちに見せないようにする多由也。
「何か食べる?ラーメン………は流石に重たすぎるか」
おかゆと薬膳スープでも作るか。前に白が得意だと言っていたなそういえば。
よし、頼んでみるか。
「………じゃ、適当に持ってくるよ。お大事にー」
夕食時。
「………では。これより、第2回ラーメン会議を始めます」
「まず始めに、宣誓の言葉」
「宣誓! 我々は、ラーメンマンシップに則り!正々堂々戦い抜く事を誓います!」
「………ラーメンマンシップって何だ?」
「メンマさんの生き様そのもの何でしょう。ノリと勢いと場当たり的な感じですね」
「というか、会議で宣誓はないと思うんですけど」
「でも会議ってそういうものだし」
「あー………早くもグダグダに成っておるのお」
うん、仕切りなおして。
「あー、その、ここ隠れ家な………放棄する」
はは、と笑うと場が静かになった。
「そうなんだ」
「それでその、次の拠点とする場所に関してですが………ツテはあるんですか?」
ネタ振りは無視されました。マダオのスルー。僕ちょっと寂しい。
「………俺達が昔修行していた所にね。現在、木造の隠れ家を作っている最中です」
「影分身建設」に発注済みです。工期は3日らしいです。チート乙。でも使いすぎかもしれん。
「そのうち影分身に反乱とか起こされたらどうしよう」
「………有り得んじゃろ。なんじゃ、その1人芝居は」
1人クローン戦争である。主人公:俺、敵:俺、ヒロイン:俺。脚本:俺、監督:俺。
これがほんとの全部俺である。
「絵を想像しちゃったよ。シュールだなあ………ま、それはともかく、次の秘密基地だけど、山奥の中だから見つかりにくいし、周囲3里に渡って、隠蔽…遮音用の結界も配置済みだから、今よりも安全と言えるよ。
広いのもあるし、修行には最適の環境と言えるかもね」秘密基地は男のロマンである。異論は認めない。
「それであの元音忍の………多由也さんでしたっけ。連れて行くんですか?」
「ああ、勿論だよ…………帰る場所も、ないだろうからね。それと、あともう1人連れて行こうかと思ってる。ま、こっちに関しては、ほら、気むずかしい相手だし」
話してみないことには何ともいえないんだけどね、と苦笑する。
「僕達が知っている人なんですか?」
「一度、戦ったことあるね………うちはサスケだよ」
いきなりの爆弾発言。再不斬と白が驚いた表情を浮かべた。
「お前、正気か? うちは一族の最後の1人なんだろ。血継限界の事もあるし、連れ出すのは不可能だろ」
「大丈夫だよー。きっかり置きみやげもするし。まあサスケに関しては、木の葉に残られる方が危ないんだよね」
ダンゾウとか、ダンゾウとか、ダンゾウとか。
あと大蛇○とか、オカマ○とか、お○とか。
………今思うとサスケも不憫だなあ。
「………だが、本人に聞いたとしても了承するとは思えんが。何か、考えがあるのか?」
「一応は、ある。それも含めて………そうだな。本人の前で話すよ。前々から聞きたかったであろう情報も含めて」
「………!」
では、本日はこれまで。
次の日。街の茶屋にて、サスケと待ち合わせ。隣には、同じく変化した影分身がいる。ちなみに今は変化中。見事な一般人になりすましているのだ。やってきたサスケは、俺を見るなり顔をしかめた。
「………アンタか? 兄貴の居場所を知っているっていう奴は」
後半は小声。まあ当たり前ですが。
「ああ」
乗ってくれたか。エロ仙人、上手く説明してくれたようです。
「で………」
せっかちなサスケの言葉を遮り、ひとまず提案する。
「あー、そうだな………まず話す前に、やることがあるんだけど」
周囲の気配を探る。
(見られてるな………1………2、と離れた所に3人目。こっちは相当な手練れだな。単独だし。『根』か)
サスケを監視しているのだろう。
「ラーメン食べてから話そうか」
「………ちっ」
焦っているのか、舌打ちをするサスケ。まあ原作と違って、あれっきり一度も再会してないから、焦るのも仕方ないか。
その10分後。俺は気絶したサスケを肩に担ぎ、一息ついていた。
「根のストーカー共は………よし、完全に撒けたな」
『やったね』
「ああ」
簡単な任務だった。まず、影分身と俺とサスケでラーメンを食べる。食べている最中、ちょっとトイレと席を外す。あらかじめ出していた影分身を1人残し、俺とサスケがトイレに行く………振りをして、サスケを気絶させる。そしてトイレの窓から脱出。
俺の姿をした影分身と、サスケの姿に変化した影分身を、元の席に戻す。残っているのは影分身だけ、という作戦だ。
「話を聞かれる訳にもいかないからな」
すぐにばれるだろうが、一瞬見失わせるだけでいい。後は影分身をばらまけばいい。数にものを言わして攪乱すれば、どれが本物が特定できまい。
………これからサスケに話す内容は、極秘中の極秘。木の葉のトップシークレットだ。おいそれとそこら辺で話す訳にもいかない。
「う………」
「あ、目醒めた?」
「!?」
ばばっと起きあがるサスケ。即座に、俺から距離を取る。
「………ちっ、ここはどこだ!?」
「俺ん家」
「………何ぃ?」
「怒るなって。事情があるんだ」
警戒するサスケに、ここに運ばざるをえなかった事情を説明する。だが、サスケはそれを聞いても、まだ警戒体勢を解かない。
「そもそも、だ………お前は一体何者だ?」
「ああ。そういえば変化解いて無かったな---よっと」
変化を解き、
「!?」
更なる警戒態勢に入ったサスケを無視し
「口寄せの術」
キューちゃんとマダオを呼び出した。
「………お前、確か」
キューちゃんを見て驚くサスケ。あ、こらこら指ささない。キューちゃんもにっこり笑って「無礼な小僧じゃの、噛むぞ?」とか言わない。
「名乗るのは初めてだね。俺の名前はうずまきナルト。四代目火影、波風ミナトとうずまきクシナとの間に生まれた、長男坊です」
これからもよろしくね、という言葉に、サスケは驚く。
「………つまりは、キリハの兄貴か!?」
そんな話、聞いたことないぞ、とまだ警戒を解かない。
「で、こちら元九尾の妖魔。今は怪力八重歯油揚げ好き童女、キューちゃんです………痛い」
説明が不味かったのか、ものを投げられた。
「そしてこちら」
ボン、と元の姿に戻るマダオ。
「夢見るダンディー、今や引退したみんなのアイドル、波風ミナトです。ミナもしくはガッカリウルフって呼んでぐぇ」
しばらく生き返らないように、キューちゃんと俺でボコっておきました。
「………え、ぁ」
後に、隠れて見ていた白が語ってくれた。
『その時のサスケの顔。口を開けて驚いているアホな表情は見物だった』と。