小池メンマのラーメン日誌   作:◯岳◯

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25話 : 転機(1)

 

 

何故、こんな事になったのだろう。

 

今の状況を歌にしてみた。

 

 

あーるーはれたー、ひーるーさがりー、やーたーいーをひらーいたらー♪

 

イーターチーとーキーサーメーが、ラーーメーンをたべーにきたー♪

 

 

(かーわいーいキューちゃん、さらわれていーくーよー)

 

『何を………!』

 

(てれくさそうーなー、ひーとーみーでー、みーてーいーるーよ♪)

 

『ドナドナドーナー、っておーい。いい加減帰って来なさい』

 

見事なノリツッコミ。やるね、マダオ。

 

『主旨はそこじゃないから。って聞いてる?』

 

(なあ、マダオ。俺、このラーメンを作ったら結婚するんだ………!)

 

『いや、無理に死亡フラグ立てなくていいから。つか誰と結婚するの!相手いないでしょ!』

 

死のう。鬱だ。

 

『待って、待って、待って!戦わなきゃ、現実と!』

 

つまり、現実は敵なんですね。わかります。

ああ神様、神様ようお前ら絶対に敵だ。

 

『いい加減にせんか………もぐぞ?』

 

キューちゃんの声が怖かったので、元に戻った。からかわれたのが分かったのか、怒り心頭のキューちゃん。赤く光った彼女の眼光は間違いなく本気を示すものでした―――じゃなくて。あまりにも、危険が危ない状況に、頭を抱えそうになる。

 

が、何とか思いとどまった。この敵対すれば致死必死な相手にのっけから怪しまれるのはゴメンですたい。

 

次から次へと厄介ごとがまったくもう。そんなに俺の運を試したいのか。不運(ハードラック)とダンスさせたいのか。今回はいくらなんでも厳しいっちゅうの。ばれたら終わりじゃないすか。

 

その場合の展開。流れとしてはこうだろう。

 

ばれる→戦闘→負ける→な、何をするきさまらー!

 

あるいは、こうだ。

 

ばれる→戦闘→勝つor逃げきる→十中八九満身創痍になる→木の葉の暗部or根に見つかる→捕まる→な、何をするきさまらー!

 

どうやっても、ガラハドの後を追う事になります。

 

『うずまきナルト、ゲットだぜ!』

 

うるせーよマダオ。誰がゲットされるか。でも、そんな事になったらもう………!

 

(確実にジ…エンドです。ダス…エンデです。ゲームオーバーです。投了です。ありません)

 

もてる男は辛いぜ。本当に辛いぜ。死ぬほど辛いぜ。いっそ殺せ。

 

『ビークール、ビークール、ステイステイ』

 

あ、クをグに変えるとス○ーピーになるねー。

 

『誰がうまいことを言えと』

 

『だから落ち着かんか馬鹿共』

 

了解です………ええと、気を取り直して。取りあえず、正体は気づかれてないよね?この二人、普通に注文しようとしてるし。

 

『どうやら気づかれてないようだけど………警戒を怠ったらダメだよ』

 

マダオの真面目な声。つか、警戒しすぎても藪蛇になりかせん。もしばれたら、逃げるしかないか。この二人が相手じゃあ、勝ち目ないし。

 

(世界はこんな筈じゃないことばっかりだよ………)

 

注文を聞きましょうか。

 

「木の葉風ラーメンで」

 

干柿の鬼鮫さん。注文は木の葉風ラーメン。共食いですね、わかります。いや、魚介系と言っても魚だけじゃないんだけどね。というかこの切り裂きポチョムキンっぽい人、帰ってくれないだろうか。ガーリックトーストを3回唱えるからさ。それと、チャクラ量が馬鹿みたいに多いんですけど。それに、この大刀。ヤヴァイ臭いがぷんぷんする。

 

あと、口。口が、全部とんがってる。何これ、怖い。

 

「………火の国の宝麺」

 

そして隣のうちはイタチさん。つか、眼、眼が写輪眼のまま!

隠せよ!隠れないのかよ!いや、見せるのが目的か知らんけど、全然忍ぶ気無しだよね。ああ、だから里外れのこの店に食いにきたのか。

 

そういえば相対する事考えてなかったけど、万華鏡写輪眼はどうしよう。月読はいいけど、天照の方がもっと怖い。視界に入ったら燃やされて終わりって、あーた。無茶にも程がありますがね。何というチート。大蛇丸とは別の意味で心底やりあいたくない相手だ。勝ち目ないもん。取りあえず、会話、会話をしよう。空気がもたん。

 

「………注文は以上ですか?」

 

ああ、と返事をするお二人さん。慎重に、慎重に、と。

 

でも、食事をしている間は普通だった。これが不味いラーメンだったら、どうだったんだろう。やっぱり、不味い、死ねとか言うんだろうか。いや、でもこの二人は常識人っぽいしなー、着ている服以外は。

 

つつがなく、食べ終わりました。普通に代金を払ってくれました。「金が無いので死ね」、とか言われなくてよかったよう。

 

「ありがとうございましたー」

 

心の底からお礼を言おう。本当に、何事もなくてよかった。

 

「美味しかったですよ」

 

見た目常識人の鬼醒さんからの賛辞。嬉しいんだけど、嬉しくない。こんな時どういう顔したらいいか分からないんだ。

 

『笑えばいいと思うよ』

 

笑いました。すると、鬼鮫さんに笑みを返されました。顔の怖さが倍増しました。

 

(恫喝しているようにしか見えん)

 

歯が怖いって。頭から囓られそうで。

 

「………」

 

黙って頷くイタチさん。この世界でもダントツの、不幸な生い立ちのせいだろうか。背中に漂う哀愁が酷い。10代どころか20代にも見えない。超弩級の苦労人だしな。

 

やがて、二人は里の方に消えていった。

 

『ひとまず、家に帰ろうか』

 

そのつもりだ。非常事態を前に、影分身を代わりに残して急いで家へと向かう。

そして、帰宅すると急いで仲間を呼び寄せた。

 

「再不斬!」

 

「ここに居るぜ。どうした………そんなに急いで」

 

「えーっと…………あった」

 

道具箱から水晶球を出して、術を発動。

遠眼鏡の術だ。そこに、さっき去っていった二人の姿が映る。

 

「こいつは………!」

 

再不斬が見覚えのある姿に驚きを見せた。

 

「しっ、静かに。落ち着いて。取りあえず、相手の動きを分析しよう」

 

「しかし、相手に気取られないのか?」

 

「この二人クラスが相手なら気取られると思う。でも、誰が何処で見ているのかまでは、分からない」

 

迂闊に近寄ってばれる方が怖い。だが、この二人の戦闘は見ておきたい。まず相手の動きを見てみない事には、対策も立てられん。S級犯罪者だ。戦術の引き出しは馬鹿みたいに多いだろう。基礎の能力だけでも、人づてではなく実際の目で見ておきたい。

 

と、思っている内に戦闘が始まった。対峙するのは木の葉の上忍、その中でもトップクラスであろう猿飛アスマと夕日紅だ。それが、全くと言っていいほど相手になっていない。

「野郎………最後に会った時より、動きが良くなってやがんな。それに、隣の………」

 

「ああ、うちはイタチね。あのサスケの兄貴。同じ、S級犯罪者だ」

 

「印のスピードもそうだが、身のこなしが異常過ぎる………天才ってやつか」

 

「そうだな………っと、カカシさん登場。いよいよだ、反則級の忍術が出るぞ」

 

乱入して、いくつかの攻防を交わした後だった。イタチがやった事と言えば、睨みつけただけ。それだけでカカシは一瞬硬直した後、前に崩れ落ちた。今の一瞬で、一日中戦い続けた後のように、疲労している。

 

「傍目で見ていると、異様だな………これが、万華鏡写輪眼の特別な幻術、『月読』か」

ガイのように目をあわさずに戦うという戦法もあるにはあるが。

 

「そうしたら、天照を避けられないんだよなあ………」

 

尾獣の力をコントロールできる人柱力なら、月読は効かないので相手にできるけど。

 

(他には………同じ万華鏡写輪眼を開眼した、サスケだけか)

 

それ以外の忍びでは、相手の仕様がない。死角が無いのだ。数で挑むにも、隣の鬼醒が厄介すぎる。あのチャクラ量に、チャクラを喰らう大刀。そして、多様な水遁系忍術。

 

「極めつけは、あの………水遁・爆水衝波だったっけか」

 

「………ああ」

 

チャクラ量に頼んだ、力業。水遁使いに有利なフィールドに変えてくる。水場の傍とか関係なく、常に高いレベルで自分の能力を発揮できす。一定の強さを保てるわけだ。

 

やがて戦闘は終わり、二人はカカシに止めをささずに去っていった。

 

「………それにしても野郎、何しにきやがった」

 

「恐らくは、俺を捜しにきたんだろうね」

 

目的はそれだけじゃないと思うけど。

 

『木の葉にいる、ってことを嗅ぎつけたと思う?』

 

(それも分からん。マダオはどう思う)

 

『可能性の問題じゃないかな。潜伏するには最適な場所だし』

 

バレるってことも想定しておいた方がいいか。ふいー、しかし、九死に一生だった。店に戻って一息をつく。

 

ああ、愛おしラーメンよ。おお、麗しのラーメンよ。私は帰ってきた!うきうき気分で、昼飯分のラーメンを作る。全力で食べて、全力で癒されよう。さっきの一件で、どうも胃が痛いし。いや、ほんとにやばかった。

 

『大丈夫なの………って、あれは、サスケ君じゃない?』

 

ラーメンを作りかけた時です。サスケがいました。何かすごい顔しながら、全力で走ってる………あ、そうか。イタチ帰ってきたのを、聞いたのか。

 

(………追うか)

 

イタチとサスケの事。どうするか、まだ決めているわけではなかった。情報を売ってどうにかするか、あるいは放っておくか。

 

(………マダラ対策にも、必要になるか………味方につけておいた方がいいかもな)

 

蛇の道は蛇。写輪眼には、写輪眼。それが恐らく、一番良い方法だろう。マダラの能力が不明な現状、イタチは何とでもこっち側に引き込みたい。共通する敵もいることだし、何とかなる………かもしれない。

 

(どっちにせよ、ダンゾウは絶対にどうにかしないといけないし)

 

昔の襲撃の一件。『根』の首領であるダンゾウが絡んでいないとは思えない。暗部の暴走に一枚かんでいても、なんらおかしくない。

 

(あの結果、引き起こされたであろう、事態………三代目の発言力の低下、威信の低下………あるいは、責任問題にまで発展させようとしたのかも)

 

推測にすぎない。でも、どちらにせよ同じ事だ。

 

いずれ、普通に暮らしていくには障害となる人物。話してどうにかなるとも思えないし。

(ま、それは置いといて)

 

考える猶予が欲しい今………あの二人は会わさない方がいいと判断した。速いといっても、所詮は下忍、せいぜいが中忍レベル。追って間もなく、すぐに追いついた。

 

そして、殺気を放つ。

 

「…………っつ!?」

 

振り返るサスケ。でも、遅い。

 

「ぐあっ!?」

 

瞬身で背後に回って、首筋への一撃を放つ。しかし、首を捩られ、狙いがはずれた。

 

(反応良し。以前よりは、成長している)

 

「誰だ!?」

 

(………答える馬鹿はいないだろ)

 

そのまま、正面に立つ。

 

一瞬の停滞。サスケが写輪眼を発動するが、それに構わず懐に一歩踏み込んだ。

 

「喰らえ!」

 

こちらの動きを先読みして、サスケが拳を突き出す。だが、俺の踏み込みは虚動だ。サスケから放たれた拳を避けながら、また虚動の拳を見せ、上半身に意識を集中させて、視界の外である下からの攻撃を繰り出した。

 

「何!?」

 

足下がお留守ですよな足払いを、サスケは避けられなかった。

体勢を崩した様子を見て、思う。ああ、やっぱりかと。

 

身体の運用は大したもんだけど、判断する思考の方が疎かだ。誰にも師事した事が無い者、特有の状態。いくら目だけ良くても、それだけでゴリ押しできるのは格下か少し格上の相手だけなのに。

 

ため息を吐きながら、体勢が今だ崩れているサスケに掌打を放つ。だが、それは防御された。いや、防御『させた』。当てた手のひらを開き、防御するサスケの手を掴む。そして掴んだ手で、腕のガードをこじ開ける。

 

鳩尾打ち(ソーラープレキサスブロー)!」

 

ガードが開いた先に、拳をねじこむ。本気でやるとゲロ吐くので、弱設定。

 

「…………っ!」

 

急所であるみぞおちへの一撃。息ができないだろう。動きを止めたサスケに近寄り、気絶させるために掌打を放とうとするが。

 

「くそっ!」

 

予想より早く立ち直ったようだ。後方に飛び退く。そしてそのまま、逃げようと背中を見せるが、逃がす筈もない。

 

印を組んで、忍具口寄せ。そして改良した、脱衣にならない精霊麺を繰り出す。

 

「………フィッシュ、オン!」

 

練習用に作った時の残り。簡易版の精霊麺でも十分だった。先ほどの鳩尾打ちで、チャクラのマーキングは済んでいる。封印の効力は弱いし、本数も少ないが、サスケ程度ならばこれで十分。

 

「くそぉ!」

 

簡単に捕まえられたサスケが、忌々しげに叫ぶ。

 

「じゃあ、おやすみ」

 

顎へ左右の掌打を当て、脳を揺らした上で手刀を放って意識を刈り取る。呪印を解放されたら面倒になるので、早めに昏倒させた。

 

疲れた…………とここで休んでいる訳にもいかないか。

 

ということで、サスケは病院前に放置することにした。

ささっと置いて一目散。お医者様、後は頼み申す。

 

『今日はイベントが多すぎるね』

 

ああ、それも超級に嫌なイベントがな。誰か俺に癒しをくれ。

 

『お疲れ様』

 

ほんとに疲れたよ。次から次へと。

 

 

休憩しなければやってられん。ということで、帰宅してようやくラーメンができあがった時だった。

 

今日のラーメンは、塩風ラーメン。風、なのはそのままじゃないから。鶏ガラベースの出汁に、鶏団子のつみれの旨味をメインにして、隠し味はしょうがで。麺は適度な大きさのストレート麺で、出汁と一緒に食べるとのどごしも爽やかになる。麺の太さは企業秘密です。

 

塩で味付けたエリンギをいれて、コリコリとした食感で楽しませる。これは割りと重要なのだ。柔らかいだけじゃ飽きてしまうから。湿気ったポテトチップスや、玉ねぎの入っていないハンバーグなどを思えば分かると思う。

 

「いただきまー……………おいおい」

 

周辺を巡回していた、暗部の気配が遠ざかる。複数の組が一定間隔で見回っているので、この屋台の近くに来る時もあれば、少し遠ざかっている時もある。木の葉隠れは広いので、常時全体を見張ることなどできないからだ。

 

だが、今は少し違った。

 

      ・・・・・・・

(不自然に、遠ざかり過ぎている…………?)

 

 

ぽっかりと、空いていた。この屋台の周辺だけ。

 

そして、違和感に戸惑っている暇もなかった。とある人物が屋台の前に現れたからだ。

 

 

『その時、特派員が見たものは!』

 

古いよ。続きはCMの後か。

 

『と、いう訳にもいかなそうだね』

 

 

逃げるのも無理だ。

 

何故って、現れたのは格上。

 

 

――――三忍が1人、自来也。四代目の師匠であり、今の木の葉隠れの忍者の中では最強と思われる存在。

 

その相手が、暗部が遠ざかっている今のこのタイミングで姿を見せるということは。

………考えるまでもなかったな。

 

「………厄日、決定だな」

 

『同意しておこうか。で、どうするの?』

 

 

さあ、どうしようか。

 

 

取りあえずは、俺に優しくない神にでも祈っておこうかね。

 

 

 

 

 


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