小池メンマのラーメン日誌   作:◯岳◯

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3話 : 開店

 

 諸君 私はラーメンが好きだ

 諸君 私はラーメンが好きだ

諸君 私はラーメンが大好きだ

 

しょうゆが好きだ

みそが好きだ

とんこつが好きだ

塩が好きだ

魚介系が好きだ

付け麺が好きだ

和風が好きだ

四川風が好きだ

担々麺が好きだ

 

北海道で 津軽で

博多で 横浜で

神戸で 大阪で

京都で 尾道で

熊本で 鹿児島で

 

我が祖国で作られる ありとあらゆるラーメンが大好きだ

 

戦列をならべたチャーシューの一斉発射が 轟音と共に舌鼓を打ち据えるのが好きだ

油を多く含んだ焼き豚が 口の中でとろける時など心が躍る

 

どんぶりの端に添えられた海苔に スープを染みこませるのが好きだ

ラーメンに巻いて食べてみた結果 一風変わった味付けになった時など胸がすくような気持ちだった

 

計算された量のニンニクの味が えもいわれぬ美味を生み出すのが好きだ

口の中を蹂躙しながら旨味を引き出す 絶妙なるハーモニーには感動すら覚える

 

給料日に好きな具をふんだんに頼み 思うがままに蹂躙する事などもうたまらない

並び立った至高の具達が 私の振り下ろした箸とともに舌へと運ばれるのは最高だ

 

煮玉子がスープの上で健気にも抵抗しながらも やがて箸につかまれ

口の中でそのとろける黄身が 舌とスープによって蹂躙される時など絶頂すら覚える

 

特盛りチャーシュー増し増しに 財布の中を蹂躙されるのが好きだ

必死に守るはずだった生活費が ラーメン費に食らいつくされていくのはとてもとても悲しいものだ

 

背脂の物量に押され 刻一刻と太っていくのが好きだ

心配するおふくろに追い回され 豚になるから走れと懇願されるのは屈辱の極みだ

 

 

諸君 私はラーメンを 天国の様なラーメンを望んでいる

諸君 私に付き従うラーメン戦友諸君

君達は一体 何を望んでいる?

 

更なるラーメンを望むか?

情け容赦のない 究極のラーメンを望むか?

麺風雷汁の限りを尽くし 三千世界の饂飩を殺す 嵐の様なラーメンを望むか?

 

 

 「 ラーメン!! ラーメン!! ラーメン!! 」

 

 

よろしい ならばラーメンだ

 

 

我々は満身の力をこめて今まさに振り下ろさんとする握り拳だ

だがこの暗い闇の底で5年もの間 堪え続けてきた我々に

ただのラーメンでは もはや足りない!!

 

 

大ラーメンを!! 一心不乱の大ラーメンを!!

 

 

我らはわずかに一個小隊 4人に届かぬ隠遁者にすぎない

だが諸君は 万夫不倒の古強者だと私は信仰している

ならば我らは 諸君と私で総兵力3万で1人の麺集団となろう

 

――――我々を忘却の彼方へと追いやり 眠りこけている連中を叩き起こそう

髪の毛をつかんで引きずり降ろし 眼を開けさせ思い出させよう

 

連中にラーメンの味を思い出させてやる

連中に麺をすする甘美な音を思い出させてやる

 

天と地のはざまには 奴ら饂飩主義者では思いもよらない事があることを思い出させてやる

 

3人のラーメン主義者の戦闘団で

麺類界を燃やし尽くしてやる

 

「最後のラーメン隊 小隊指揮官より全ラーメン主義者へ」

 

第二次 麺王強奪作戦 

 

状況を開始せよ

 

 

「征くぞ 諸君」

 

 

 

~小池メンマ少佐著ラーメン全史第一巻 「終末を越えて」序説第三章より抜粋~

 

 

 

 

 

 

と、いうことで開店だぁ!

 

『ちょっとは落ち着こうね君』

 

『まったくじゃ。第一私はきつねうどんの方が好きだというに』

 

「いきなり裏切り!?」

 

 

 

一年の修行が終わり、無事自分の店を持つ事とあいまった。テウチのおっちゃんには世話になった。あの人の仕事は、本当に勉強になったとです。

 

弟子として働けた事、誇りに思う。まあ店を持つ資金もないし、この店は屋台なんですけどね。町中に店を出すと、どうしても戸籍関係のチェックが厳しくなるし。

 

『偽造だしねー』

 

「暗部の緩さも、時には良いことを生み出すんだねー」

 

一部死亡フラグになりそうだが、今は置いておこう。木の葉も平和ボケしたもんだ。

 

『トップがあれな状態だしね』

 

現役バリバリがいないというのが厳しい。色々と中途半端過ぎる。理想しか語らない上司っていうのは大変だね。下の方は忍びの質を保つのに一苦労だと思われ。

 

「まあ、今はそんなことどうでもいいか」

 

『よくないけどね。まあ、取りあえずはおめでとう』

 

テウチのおっちゃんには、太鼓判をもらったこれぞ、各地を放浪し、現代人の知識を総動員して編み出した至高のラーメン!

 

………には、ほど遠い。未完だ。まだまだ技術的に未熟なものがあるから。色々と試行錯誤して煮詰めていくしかあるまい。ラーメンだけに。

 

『上手くないよ』

 

「だあってろ!」

 

 

 

店は、木の葉の里の外れ。辺りには草原が広がります。ここならば森の中に潜んでの修行もしやすいし、人通りもそんなに多くない。

 

………多すぎるとばれそうで結構危ない感じがするからだ。

 

それでも、少なすぎても駄目、という複雑な背景。それらの条件を満たし、かつセーフハウスに近い場所といえば、この場所しか無かった。

 

『ていうか、ここ僕の実家近くなんだけど』

 

「そうですか………はやく言えよ」

 

まあ、四代目の家なんて、危なくて近寄れないんだけど。

あと、戦闘の方の修行だが、暫くは生身で行う必要が出てきた。

 

口寄せの術を覚える段階に入ったからだ。

 

『基本的に影分身だと口寄せできないからねー』

 

血、出すとボンって消えるもんね。チャクラ篭めても、数秒伸ばせるだけで。その次は、飛雷神の術である。

 

そう、至高にて究極の逃走手段、ワープを修得するためである。

これがあれば、色々と行動範囲が広まるし。

 

『逃亡のためなんだ………でもワープっていうのが何なのか分からないけど、アレめっちゃ難しいよ?』

 

まあ、簡単に修得できるとは思っていない。四代目マダオの最秘奥だしね。いざとなれば自慢の逃げ足とタフネスで逃げる。

 

『戦わないんだ。あくまで』

 

「まあ、必要な時以外は」

 

ぶっちゃけ、面倒くさいし、しんどい。前のあれは例外でしかない。

必要以上にそっち側には関わりたくないし。

 

『一理あるね』

 

「大体、どっちが強いとか下らない。キエサルヒマの赤毛さんを見習え。アミダか何かで決めればいいんだよ、そんなもん」

 

殺すとか、殺されるとか下らない。そんなことよりラーメン食おうぜ!である。

 

『それは無理でしょ』

 

「分かってるよ」

 

人間だものね。そう考えると、九尾とか妖魔とか尾獣とか歪な生態だよね。殺し合いで向き合う事が前提。本質が破壊すること、なのか。

 

『………そのための存在だからの』

 

化生と呼ばれる程の獣が、枠外になった動物は、太極でいう陰の気、負の気を受けることによって、妖魔になるらしい。そしてその陰の気の大半は、人間から発せられるとか。

 

「………白面の者じゃん」

 

尾獣という存在。それは、自然の防衛機構か。負の気、陰の気が最も発生するのは、戦争の中で。そして戦争は、その多くが自然破壊を伴う。

 

それを防ぐために、陰の気を纏った尾を持つ獣、妖魔が発生し、その原因である人間を殺すことで、汚物を浄化しようとしているのか。推測だけど、間違ってないような気がする。

 

『………ふむ、面白い事を考えるの』

 

「元いた世界での受け売りだよ」

 

 

最初の麺の師匠から教えられた。全ては自然から生まれ、自然に帰る。不自然はいずれ淘汰されるか、全体を駄目にする。

 

だから、その原因を見極めろ、と。自然の食材は自然のまま、その味を活かせと。

自然に生まれたものは何か、不自然なものは何か、淘汰されるものは何か。

 

そう考えると答えが出てきそうな気がする。

 

『………そうかも、な』

 

珍しくしおらしい声を出したキューちゃん。

そういった事は考えた事も無かったのだろうか。

 

………破壊が本質って、ちょっと悲しいかな。それは。

 

『ふん、同情などいらんぞ』

 

それは分かってる。てーか最近のキューちゃん見てると、そうでもない感じがするし。

見た目もあるけど、陰のチャクラが切り離されたせいか、柔らかくなってるような気がする。

 

まあ、完全に童女として扱っているんだけど。

長い付き合いもあって………今では、俺から見れば妹みたいなもんかな。

 

………それは、取りあえずは置いておいて。

 

 

いよいよ、開店だ。

 

今より、夢の一歩目を。ここから、夢へ続く旅が始まる。

 

 

 

ラーメン屋台「九頭竜(くずりゅう)」!

 

 

 

本日開店でございます!

 

 

 

 


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