小池メンマのラーメン日誌   作:◯岳◯

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21話 : 木の葉崩し(3)

 

 

走り続けて数分。キリハ達はようやくサスケに追いついていた、

 

だが、そこには暴れ回る我愛羅の姿もあった。異形を剥き出しにして暴れ回る我愛羅に、サスケは苦戦しているようで、あちこちに傷を負っていた。

 

そこに、二人は割り込んだ。全速力で走ってきた勢いのまま、二人がかりで不意打ちの飛び蹴りを直撃させ、我愛羅を吹き飛ばした。

 

「キリハ、サクラ!?」

 

「助けに来たわ、サスケ君!」

 

「もう、一人で無理しないで! 私達はチームなんだから………ってきたぁ!?」

 

蹴りなど効いていないとばかりの、即座の反撃。散らばる木片が開戦の合図となり、4者入り乱れた混戦となった。キリハ達は連携を駆使して幾度か攻撃をするが、尋常じゃない速度で飛び回る我愛羅を捕らえきれなかった。

 

仮に攻撃が当たったとしても、その堅い砂の壁に阻まれて、ダメージを与えることができない。回避にも気を配る必要があった。あの砂に一度でも掴まれたら、そこで終わりになるからだ。

 

「くそっ、こいつのチャクラは無尽蔵か?それに、何だこのチャクラの質は………」

 

「………サスケ君、ここは分が悪いよ。一端退こう」

 

「………断る。それに、退いたとしても追ってくるぞ、コイツは」

 

サスケの言葉を聞いて、キリハが呻く。確かに、今背を向けたら追ってくるだろう。移動の速度からいって、逃げ切れるとも思えなかった。何とか、隙を見て逃げ出すしかないのだ、が。

 

「ギャハハハア!その程度かァ!?」

 

「くそっ、化け物が………!?」

 

一向に堪えた様子のない我愛羅を相手に、体力だけが消耗されていく。

そうして、サスケが忌々しげに呟いたと同時だった。

 

辺りに響く炸裂音。同時、我愛羅からキリハ達に向けて幾本もの砂の槍が放たれた。

 

「っ!?」

 

突き出された砂の槍。それを、三人ともが紙一重で避けきった。

 

「何て威力………!?」

 

背後からの轟音、振り返ったキリハは回避した砂のその威力に戦慄した。後ろにあった巨木に大穴が空いている。あれが直撃すれば、身体にも風穴が空くことだろう。

 

その前に何とかしなければならない。同じことを考えていたサスケが、二人に号令を飛ばした。

 

「キリハ!サクラ!連携の五だ!」

 

直後、サスケが我愛羅との距離をある程度詰める。中距離で攻撃を繰り返し、我愛羅の攻撃も避ける。写輪眼を持つサスケが相応しい役どころだ。

 

「サスケ君!」

 

掛け声と同時に、サクラが我愛羅に向かって光玉を投げた。視界を眩まされた我愛羅。その動きが、一瞬だが止まる。

 

「そこ!」

 

「もらった!」

 

その隙を狙い、全員でクナイを投げつける。

 

「ソンナモノハキカネエ………!?」

 

直後、突き刺さったクナイに付けられた起爆札が爆発。至近距離からの爆圧を受けた我愛羅が、大きく吹き飛んだ。

 

「爆発は防げても、衝撃は防げないでしょう………!」

 

「ひとまず、退くわよ!」

 

煙の向こうに消えた我愛羅を確認し、下がる三人。

 

「ああ、分か………っサクラ!上だ!」

 

「オソイゾォ!」

 

サクラが声に反応して見上げるが、間に合わない。我愛羅は膨れあがった腕を振り上げ、サクラの脳天めがけ、降りおろした。

 

間合いと腕の速度を認識した瞬間、サクラは硬直した。

 

避けようにも間に合わないと悟って。

 

我愛羅から伸びる、その振り上げられた巨腕が、サクラに叩きつけられる――――

 

「キャッ!?」

 

「コレハッ!?」

 

寸前に、我愛羅とサクラは横から吹く風で吹き飛んだ。

 

「あなた、砂隠れの!?」

 

いのと試合をしていた、テマリ。見れば、その姿はぼろぼろだった。

 

「………勘違いするな、お前等を助けた訳じゃない………っ!」

 

痛そうに、脇腹を押さえる。先ほどの試合で痛めた箇所だった。

 

「………我愛羅!もう止めろ!それ以上暴れると、元に戻れなくなるぞ!」

 

テマリが、我愛羅へ向かって必死に叫ぶ。

 

「ウルサイ!黙れ!今更、何の用だ!俺はもう戻れなくてもいい!強い奴をこの手で殺せれば、それで良い!」

 

化物とは違った質の声色。化物と混ざっていない、素の我愛羅の言葉だった。

 

「生きている実感を感じられれば、何でも良い!どうせ、お前も俺の事を化け物だと思っているのだろう!」

 

「違う!」

 

「口では何とでも言えるな!暗殺されようとした時も、姉さんは何も言ってはくれなかった!怖いんだろう、俺が、化け物だから。死ねば良いとでも思っていたんだろう」

 

「違う!確かに私には何もできなかったけど、そんなことは思っていない」

 

「は、どうだか!あの時の事を忘れたのか!?あの夜、里の少女と一緒に姉さんを殺そうとした俺を………憎んでいるんだろう!」

 

「何度も違うと言っただろう、我愛羅!話しを聞いてくれ!」

 

「ウルサイ!どうせ、俺は化け物だ!化け物には相応しい生き方がある!化け物の俺が、姉弟とは言ってもお前達と一緒にいれるものか」

 

拒絶の言葉と同時、我愛羅は術を発動した。

術の名は、風遁・無限砂塵・大突破

 

我愛羅の口から放たれた圧倒的な暴風が周囲にある全てを薙ぎ払った。

 

 

「きゃあっ!?」

 

「くっ!」

 

「くそっ!」

 

踏ん張るも即座に飛ばされた、二人の剣幕に硬直していたキリハとサスケ。そして、近くにいたテマリ。我愛羅と近い距離に居た3人が吹き飛ばされ、その勢いのまま木へと叩きつけられた。

 

「……………ッ!」

 

受け身をとることもできない暴風。3人は激突した衝撃に、呼吸が出来なくなった。痛みに、全身が硬直しているのだ。

 

風に飛ばされて遠ざかっていたサクラが戻ってきた。そこでみた光景は、禍々しい黒が所々に入っている砂の塊だった。

 

「………クタバレェ!」

 

 

キリハとサスケの方向へ向け、今正に放たれんとする砂の槍。サクラは思った。先程よりも更に巨大な塊となっているそれは、まともに受ければ跡形も残らないと。

 

「っ、避けてぇ!」

 

サクラの声に、痛みに歯を食いしばっていた2人が反応した。

最初に動いたのはサスケ。よろめきながらも攻撃を見据え、動き出した。

 

だが、キリハは動けなかった。

 

(さっきの、ネジさんの一撃が………っ)

 

キリハの顔が苦悶の表情に染まった。柔拳による内臓の痛みが、今頃になって仇をなすとは、と。

 

 

それを察したサクラはキリハに向けて手を伸ばすが、届かない。離された距離は、あまりにも遠かった。サスケも避けるので精一杯。迫り来るキリハの窮地に、気づいた時は遅かった。

 

 

「キリハァ!」

 

 

「キリハ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ 波風キリハ ~

 

 

(あ、これ死んだかな)

 

どこか人ごとのように、心中で呟く。動こうにも身体は動いてくれない。知らず、口からは血が零れていた。木に激突した衝撃で、痛めていた内臓のダメージが更に広がったみたいだ。鈍い、だが大質量の痛みが全身を硬直させる。

 

世界が遅くなったかのよう。ゆっくりと、私に向けて、砂の槍が近づいてくる。

 

でも、目は閉じない。死ぬその時までは。

 

(ゴメン、シカマル君。約束、果たせそうにない)

 

ここにいない、先ほど約束した幼なじみに謝る。ぶっきらぼうでも、優しいシカマル君のことだから、私が死んだらきっと泣くんだろうなあ。それに、律儀だから約束は守ってくれてるんだろうなあ。

 

心の中でもう一度謝り、もう一つの未練ごとを呟いた。

 

 

(………せめて、兄さんに一度でもいいから会いたかったなあ)

 

 

一度で良いから、会いたかったのに。その呟きも適わない事となる。

 

 

 

 

そう、思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかで聞いた、誰かの声が私の身を包むまでは。

 

 

眼前で、爆裂する衝撃。

 

 

そこで、私の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ 小池メンマ ~

 

 

キリハを襲う砂の槍。それを、螺旋丸で砕いた後、安堵のため息をつく。

 

(…………間に合った!)

 

危なかった。しつこすぎるクスリメガネに、時間を掛けすぎた。肩で息をしながら、我愛羅を睨み付ける。

 

『間一髪だったね』

 

気配を探る。道中みつけた、シカマル、ヒナタ、キバの気配。シノはシビさんが回収しているのを、気配で確認した。カンクロウは砂の中忍が回収していった。

 

そして、今ここにいる、サクラ、サスケ………そして、キリハ。テマリも、満身創痍だけど生きている。

 

(全員、生き残ったか)

 

最悪の事態は免れたようだ。それを確認した後、サスケとサクラに向けて伝えた。

 

「キリハを頼むぞ、うちは、春野」

 

影分身が、キリハを担いでサスケの元へと運ぶ。サクラは喜び、サスケは訝しんでいるようだった。

 

「てめえ………キリハを助けてくれた事は感謝するが、いったい何者だ?」

 

「今は名乗る名は持ち合わせていない。時機がくれば、必ず話すよ。だが、今優先すべきはその部分じゃない」

 

「………ちっ」

 

「すいません、足止めを頼みます………!」

 

サスケがキリハを担いで、後方へと下がっていく。

 

「ああ、任された」

 

背を向ける。サクラはそれを確認したあと、サスケについて下がろうとする。そこに、安心させる一言をつけ加える。この少年、少女が、後ろを、俺の無事を気にしないように。

 

「………だが別に、倒してしまっても構わんのだろう?」

 

 

その言葉に、背後の二人がきょとんとする気配を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『行ったね』

 

「ああ。後は、こいつをどうにかする必要がある」

 

テマリは影分身を使って避難させた。ここから先の戦闘、近くにいれば確実に巻き添えとなる。誇張ではなく、四方半里にいて無事にすむとは思えない。

 

「で、何笑ってるんだ?」

 

心底可笑しそうに、我愛羅は腹を抑えて笑い転げている。

 

「………ッハハハハァ!倒すだと?よりにもよって、この俺を倒すだと!?」

 

直後、空気が変わった。我愛羅が、更なる変質を遂げる。

 

「………ヤッテミロォォォォォォォォォォォ!」

 

雄叫びに似た声。

 

『…………完全に覚醒したか…………!』

 

キューちゃんの叫びが木霊する。見上げる程に大きくなった、眼前の敵。それを前にして、俺は叫んだ。

 

 

「それがどうした!」

 

 

震えているだろう声、それでも恐怖に負けないよう張り上げる。

その勢いを脚にこめて大きく跳躍し、辺りでも一際高い丘へ立った。

 

見上げる程に高い、聳え立つ尾獣が傲慢に名乗った。

 

『……………ワガナは尾獣ガ一尾、守鶴!ワレにアラガオウトスル、オロカシイニンゲンヨ!イチオウ、名ヲキイテオコウカ!』

 

「応!」

 

これも戦の作法だ。忍者らしくなかろうか、知ったことじゃない。俺は敵の呼び声に答え、きゅうびのチャクラを放った。全身に、凶暴なチャクラの奔流が行き渡っていく。以前に砂隠れの里の中で対峙した時とは違う、正真正銘の全力全開だ。

 

 

「俺の名はうずまきナルトォ! 麺を追い求めるラーメン探偵! あとついでに九尾の人柱力!」

 

 

チャクラの勢いそのままに。世界よ震え、といわんばかりに全力で震脚した。

開幕のベルを鳴らすように。

 

 

「いいか守鶴! よく聞け、我愛羅! お前の選択は、二つに一つ! 一、ラーメン食ってぶっとばされるか、二、ぶっとばされてラーメン食うかだ!」

 

 

異端とされる者が二人。ここに、舞台は整った。ここには居ない。代役であろうとも認められない悲劇があるならば。

 

 

「加え、我が友の意志を汲んで! 遠い昔に去った、亡き少年の代役となって!」」

 

 

ここには居ないうずまきナルトの代わりに、俺が開幕の口上を告げよう。

 

 

 

「――――麺の意志の名の元に! 今からお前をぶっとばす!」

 

 

 

色の異なる莫大なチャクラが2つ、衝突して。

 

直後、世界が激震した。

 

 

 

 


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