小池メンマのラーメン日誌   作:◯岳◯

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19話 : 木の葉崩し(1)

 

4試合目油女シノ 対 カンクロウ

 

「俺は・・・棄権する!」

 

だったけど、いきなりのカンクロウ氏の棄権発言。いやいやめっちゃ怪しいですがな。ほら、横のテマリも怪しんでるし、って。

 

『え………何で怪しんでるんだろ。予定通りならおかしいよね』

 

そうだ。もしかして、木の葉崩しの事を知らされてない?

 

『分からないけど、どういう事だろう』

 

情報が足りないな。まあ、ここで考えても分からんか。それよりも、次だ。

シカマルはシードなので、一回戦は試合がない。ということは、だ。

 

 

我愛羅 対 うちはサスケ

 

出番が来たとたん、やってきました。木の葉を携えて。出待ちか、おうい。でもあれ、盛大に遅刻した人がやることじゃないよね。

 

『………』

 

もう言葉もないマダオさん。さて、そろそろ用意しときますか。

 

試合は、原作通りの展開。修行の成果を見せるサスケ。速さに翻弄され、守勢に回る我愛羅。そして、場面は決定的なものに。壁に立つサスケと、砂玉子に引きこもる我愛羅の姿が。

 

(………って、ここで覚醒するつもりかよおい!?)

 

まさか、俺もまとめて此処で相手してヤルゥアー!とか思ってるんじゃ。流石にここでは相手できんぞ!

 

焦る俺を尻目に、サスケ君が千鳥を放った。

 

「いけいけ、サスケ!ゴーゴー、サスケ!」

 

かつてない程にサスケ君を応援する。その応援の声があったお陰か、千鳥が炸裂。

破られる殻。そして、出てくる守鶴の腕。

 

飛び降りるテマリとキバとカンクロウ。何やら、テマリがキバとカンクロウに言っているようだ。

 

(『どういうことだ』だって?テマリは知らんのか)

 

キバがなにがしか言い終えた後、我愛羅がテマリに連れられて試合会場から出て行く。

ということは、だ。

 

 

『来るよ』

 

「――――イッツ・ア・ショウ・タイムってか?」

 

 

涅槃精舎の術。会場に幻術で映された白い羽が舞い踊った。

羽の動きに捕らえられた幾人かが、夢の中へと旅立っていく。

 

でも、俺には効かない。人柱力の特権だ。キューちゃんと完全に共生しているので、幻術にかかってたとしても一瞬で元の状態に戻る。

 

 

(始まる、か)

 

 

3代目がいる展覧場から、煙幕が上がった。その少し後、屋上へと飛び上がる火影と風影。それを追って、四人集も屋上へと辿り着く、そして、四紫炎陣で結界を―――って。

 

「はあっ!?」

 

あり得ない四人集の顔ぶれを見て、思わず叫んだ。

 

「何で、ここに、君麻呂が来てんの?」

 

病気じゃなかったのか!ホネホネの実の能力者!

 

(………これも、考えても仕方ないか。イレギュラーばっかりだなクソ)

 

俺自体もイレギュラーか。まあ、これは仕方ないのかもしれないが、予測が外れるのは心臓に悪い。

 

それに、極めつけは――――と、クナイを懐から取り出す。

 

 

「甘い」

 

そして背中に向けて投擲された、クスリメガネの千本の一撃を弾いた。

 

「………やっぱりね。君だったか」

 

カブトか。なんで―――ーって、君麻呂って名前が出たらそりゃ怪しむわな。

 

『呟き、聞こえてたようだね』

 

流石に迂闊だったか。5秒前の自分を殴ってやりたい。

 

『ん………我愛羅追って、キリちゃん達いっちゃったね』

 

カカシとガイのいる方向を見る。下忍の幾人かが、試合会場から外へ、我愛羅を追って出て行った。

 

(サスケ、シノ………続いて、忍犬(名前忘れた)、キリハとサクラとシカマルか。でも、あいつらを追うその前に)

 

「まずはこのメガネを何とかするか」

 

宣言しながら構える。俺の後を追ってこられても厄介だから。

 

「この僕を前に、自信満々だね。時間がないし、君が何者か率直に聞くよ?」

 

メガネ君は、試合会場内で繰り広げられている修羅場を横目で見ながら、聞いてくる。

 

(ま、聞かれても答えないけど)

 

「大蛇丸様と互角にやりあったという――――ロジャー・サスケの、手の者だね?」

 

「グホッ!」

 

思いも寄らない名前に、咳き込む。真面目な顔なのでツボに入った。

 

『そんな反応したらダメだよ。知り合いだってバレバレじゃないか』

 

(いや、急だったから!ていうか真面目な顔して言われると、そんなもんいくらなんでも吹きだすわ!)

 

あー、といいながら、顔の前で手をパタパタと横に振る。

 

「………違うでゲスよ?」

 

「もの凄い白々しいよ? それに今、一尾の人柱力の方を見ていたね。思った通りだ。やはり、君は―――」

 

(やはり君は?)

 

「『暁』の手の者だね?」

 

「断じて違うわっ! あんな万国吃驚人間衆と一緒にすんなっ! 不名誉な!」

 

『………ダウト』

 

(しまった!)

 

「万国吃驚人間衆、不名誉………」

 

 

とメガネ君は屋根の上の方を見る。俺も見る。蛇を見る。二人で見る。

そして思い出す。あの集団の面々を。

 

 

 

二人静かに、そして深く頷いた。

 

 

 

「………まあ………き、気を取り直して。その物言い、『暁』の事を知ってるのは知っているんだね?」

 

咳をしながら、仕切り直しとメガネが真面目な顔をする。

 

「イエス!イエス!イエス!」

 

もう自棄だ。どうせ戦るしかないなら、早いほうがいい。これ以上時間取られると我愛羅を追っていった下忍達が危ない。

 

もう、こんなイレギュラーだらけの状態では、何が起こるか分からんし。

 

と、いうことで一刻も早く目の前のメガネ君を倒さなければならない。話の途中で、俺は殴りかかった。やや相手の意識を外しての一撃、ただの上忍ならば十分すぎる拳打、それでも。

 

「甘いっ!」

 

届かない。掌打はメガネ君の脇腹をかすめただけだった。ちっ、このメガネ慎重になってるな。もしかして、俺の事をを格上の相手と見ているのか。

 

いくつか攻防を交わしている内に分かった。油断がない上に、基本的には守勢に回っている。それに、確かこいつは自動回復っぽい術を使っている筈だ。

 

(拙いな。かなり時間がかかりそうだ)

 

時間稼ぎにはもってこいの戦術だ。かといって、こんな場所できゅうびのチャクラは使えない。ここはまだ試合会場の中。いくらなんでも目立ちすぎてしまう。螺旋丸も同じ。ばれますがな。

 

「今、一尾を奪わせるわけにもいかない。時間稼ぎをさせてもらうよ」

 

「誤解だっつーの!」

 

もう、言葉は意味を成さない。

 

俺は叫びながら、メガネ君に殴りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリハ!」

 

「うん、このまま追う!」

 

サクラちゃんの声に答えながら、パックンに尋ねた。

 

「パックン、サスケ君はどっちの方角へ行ったの?」

 

「あっちじゃ!」

 

スリーマンセル+1で、我愛羅って子を追いかけていったサスケ君を追いかける。

 

「絶対に、追いつく前に止めなきゃいけない。あれは、今の私達が策も無しに勝てる相手じゃない!」

 

先ほど、試合会場で見た禍々しい形をした砂の腕を思い出す。

 

「どういうこと、キリハ!何か知ってるの?」

 

「うん、サクラちゃん。あれ、きっと人柱力ってやつだと思う」

 

「………人柱力?」

 

初めて耳にする単語に、シカマル君とサクラちゃんが首を傾げる。

 

「………シカマル君。10年前、私達が生まれた頃に起きた、事件のこと知ってるでしょ?」

 

「当たり前だろ。九尾の妖狐が里を襲った事件だ。けど、それと何の関係が………」

 

とシカマル君の言動が止まる。人柱力という言葉と、今の私の言葉から色々と推測しているのだろう。

 

「九尾の妖狐はお父さんに、四代目火影に封印されたって伝えられているよね?」

 

「キリハ殿!?それは「黙ってて」」

 

パックンの言葉を途中で遮る。

 

「敵を追っている今、伝えなくちゃいけない。話すべき情報でしょう。敵の情報にもつながるんだから」

 

「そう、いう、ことか………ちっ、胸くそわりーな!」

 

流石にシカマル君だ。今の言葉だけで答えに辿り着いた。あまり、私も口に出したくないから、助かる。

 

「人柱、そして、会場で見せたあの異形。そこから推測するに………人柱力ってのは妖魔を宿した忍者って所か。でも、何でキリハはその事を知ってるんだ?」

 

キリハが四代目の娘ってことだけじゃないだろう、と言外にシカマルは訪ねる。

 

「兄さんが、ね」

 

「兄ぃ? 初耳だぞ、キリハに兄がいたとか」

 

「あの時、大蛇丸って人………『キリハのお兄さんは木の葉の暗部に殺された』っていってたよね」

 

サクラちゃんの口から出た新しい単語に、シカマル君が立ち止まる。そして、虚空を見上げたあと、何かに気づいたような表情を浮かべる。

 

「おいおいおいおいおい、まじかよ、くそっ………時々見せてた、キリハを見る親父達の目は………そういう訳か!」

 

珍しく激昂するシカマル君は叫びながら、地面を叩いた。

 

「シカマル君、きづいてたんだ………シカクさんの事とか」

 

「何となく、だけどな………わりい。叫びたいのはむしろキリハの方だよな」

 

「ううん、ありがとう」

 

そうやって怒ってくれる所とか好きだよ、と私が笑いかけると、シカマル君は何故かそっぽを向いた。

 

(どうしたんだろう、頬を赤く染めて)

 

「あー、話を戻すと、だ」

 

ごほんと咳をするシカマル君。複雑な表情をしながらも、呆れた顔をしているサクラちゃん。

 

「いいよ。今考える事はあの我愛羅って子の事だから」

 

「ああ。つまりは、だ。九尾ほどとは行かなくても、それに準ずる力を持ってるって訳だな。そりゃ俺達じゃ勝てねーわ」

 

「と言うことはサスケ君見つけた後は一目散ね。でも、状況次第では仕掛ける事も頭に入れておいた方が良いんじゃない?」

 

「ほっとくわけにもいかんだろーしな。と、その前に、だ」

 

「気づいておったか。追手がきとるぞ。後方に5、6人か。音か砂じゃな」

 

「次から次へと厄介な」

 

頭を抱えるシカマル君。

 

「少なくとも中忍クラス。しかも音の忍者となると、ここらの地形にも詳しいか………撒けないな、こりゃ」

 

大蛇丸の配下だし、事前に予習は済んでいると考えるべきだ。

 

「対するこっちは、ここいらの地形は詳しくない。待ち伏せは使えないわね」

 

「ああ。誰かが残って足止めをするのが最善だろうな」

 

「………私が「言うなって」」

 

シカマル君ははっきりと、私の言葉を遮った。

 

「分かってんだろ? 陽動に向いてるのが誰か、足止めできそうなのは誰か、試合をしていなくてチャクラがまだまだあるのは誰なのか」

 

「うん、でも………それは」

 

「キリハ、お前が優しいのは分かるけどよ。今ここでのその判断は、優しさじゃねーぞ。ああ、泣きそうな顔するなって」

 

「シカマル………やれるの?」

 

「大丈夫だ。俺は臆病者だからよ。ちょっと足止めしたら直ぐに逃げっから。だからキリハとサスケの方頼むぞ」

 

「ええ」

 

「………うん」

 

「小僧………最悪は降伏して助けを待て。生命を無駄に投げ捨てるな」

 

「いざとなったらそうするさ――――それじゃあな」

 

3人で拳をこつんとぶつける。シカマル君は立ち止まり、地面に降り立って後方へと振り返った。私とサクラちゃんは木の枝の上で、サスケ君が居る前方の方向を見る。

 

私とサクラちゃんは、半身だけ振り返って、シカマル君へと声をかける。

 

「またね、だよ………死なないでよ、絶対だよ?」

 

「ああ、約束でも何でもするさ」

 

シカマル君は振り返らず、片手だけあげて答えた。

 

「死なないでね、シカマル」

 

「死なねーよ。俺は、『死ぬ時には大勢の孫に囲まれながら』って決めてんだ」

 

 

そして、その手を横に振る。

 

 

「行け――――ここは俺に任せろ」

 

「「うん」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー面倒くせーことになったな。胸くそ悪い事を聞いちまったし。

 

(俺、1人か)

 

援軍が期待できそうな、同班の面々を思い出す。いのは怪我、アスマとチョウジはその付き添い。恐らくは怪我したいのを守るために、会場に残ってる。

 

援軍は絶望的、と見ていいだろう。下手に援軍に期待しても危険だ。

 

(助けはこない。なら、俺が何とかしなけりゃな)

 

仲間を守るために。ったく柄じゃねーっての、と呟き頭をかく。でも、逃げる訳にもいかねえだろ、と気を引き締める。

 

(男が女に任せろ、って言ったんだからよ)

 

一試合目。キリハが日向ネジ相手に言った、あの言葉。あの言葉を、そしてあの笑顔を曇らせないためにも。

 

(俺がここで死ぬわけにはいかねーよな………!)

 

約束を守らなければ泣くだろう幼馴染の顔を思い浮かべ、そんなのはゴメンだと却下し。俺は頭をフル回転させ、自分より強い敵に勝利する方法を考え始めた。

 

 


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